Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

アリス・マーガトロイドの受難

2010/06/03 11:27:23
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紅魔図書館にアリスが来た。
それ自体は別に珍しいことではない。
むしろ、最近の出来事で言えば、よくあることと言える。
魔法遣いであるアリスにとって、ここの書物は魅力的なのだ。
「お邪魔……します」
重厚な扉を静かに開けて、恐る恐る中に入るアリス。
薄暗い館内を真っ直ぐに進んでいると
「……また来たの?」
奥にあるテーブルの方から声が聞こえてきた。
そこには、図書館の主であるパチュリー・ノーレッジが座っていた。
「う、うん。調べたいことがあって」
ここにある書物は、どれも自分が初めて目を通すものばかりであり、これでもかと言うほど知的好奇心をくすぐられる。
また、人形に関する本も多数存在しているからなおさらである。
だが、アリスにはもう一つ目的があった。
「……なに?人のことじろじろ眺めて」
「う、うぅん何でもない」
魔法遣いに『成った』自分とは違い、パチュリーは生粋の魔女である。
故に知識や経験も豊富だ。
交友を深めておけば、後々のためにもなるだろう。
それに、彼女は魔理沙を含め、幻想郷の中でも数少ない魔法遣いの一人だし、話も合いそうだし、この前の宴会の時とか声かけてくれたし、まだ友人と呼べる人ってそんなにいないし、別に寂しいとかそういうのじゃなくて友人は多い方がなにかと便利だからであって……
とかなんとかいろいろ理由を並べて自分で混乱しているが
、要はアリスはパチュリーと仲良くなりたかったのである。
しかし、口数が少ないのに加えて、表情はいつも本の裏に隠れてしまっているので、パチュリーの自分に対する態度を伺い知ることは難しかった。
本の向こう側から返ってくる言葉だけで、反応を確かめるしかないのだ。
そして、いつ話しかけても、「そう」とか、「ふぅん」とか冷めた反応ばかりだった為
(もしかして、嫌われてるのかなぁ……)
と思うのはごく自然なことであった。

だが待ってほしい。
もし、アリスが本当に嫌われているのだとしたら、パチュリーは図書館内に入ることさえも許さないはず。
……まぁ中には無理矢理突破して来る鼠もいるにはいるが、これは例外とする。
しかし、パチュリーはそれをアリスにしない。

面倒だから?否
どうでもいいから?否
やっぱり勝手に進入されるから?否

では何故か?
……はてさて、いつも本で隠れているパチュリーの表情はというと

(クスクス、あんなに怯えた顔しちゃって……あぁもう可愛いったらないわ)
ニヤケていた。
誰が見ても気持ち悪いくらいにニヤケまくっていた。
なにを隠そう、パチュリーはアリスのことをいたく気に入っていた。
もとい、アリスをいじめるのが大好きであった。
それはもう三度の飯より好きだった。
……食事をとる習慣はなかったが、とにかく好きだった。
悲しきかな、アリスはパチュリーを想うが故に、その毒牙にかかってしまっているのである。
そんな事情はいざ知らず、アリスは健気にもアタックを試みる。
「あの……」
「なに?」
「こ、この本なんだけど……」
「本?勝手に読めばいいじゃない」
あくまで突き放した態度をとるパチュリー。
ちなみに、現在進行形でニヤケ顔なのだが、声は普段通りのまま。
ポーカーフェイスならぬ、ポーカーボイスといったところだろうか。
さすが魔女である。
「その、聞きたいことが……」
本の後ろに隠れるように、おどおどと顔を出しながら伺うアリス。
その行動が、パチュリーの嗜虐心をかき立てていることに他ならないのだが、本人はまったく気づいていない。
「ふん……仮にも魔法遣いを名乗る者なら、自分で調べることを学びなさい」
「で、でも……」
実は、アリスは本の内容についてはどうでもよかったりする。
ただ話すきっかけが欲しかっただけだったのだ。
「ちょっとだけでいいから……」
アリスは、必死にかけあってみる。
「そんな義理はないわ」
が、パチュリーの態度は変わることはなかった。
取り付く島もないとはこのことである。
まぁこれもわざとなのだが……なんとも不憫な掛け合いである。
「あぅ……」
最早、アリスは涙目になっていた。
一方、パチュリーは光悦の表情を浮かべている。
魔女はドSだった。
「き、今日はもう帰るね……ごめんなさい」
さすがに諦めたのか、アリスはしょんぼりとした様子で図書館を後にしようとする。
「ぁ……」
しまった、やりすぎた……とでも言わんばかりにバツの悪い表情をするパチュリー。
このままでは、アリスは図書館に来ること自体をやめてしまうかもしれない。
それは望ましくない。
アリスをいじめるのは好きだが、嫌われるのは絶対にいやだ。
魔女は我侭だった。
慌ててフォローにはいる。
「しりゃ!」
噛んだ。
「?」
が、いきなりの奇声にアリスは振り返った。
とりあえずはアリスの足を止めることはできたようだ。
「……コホン」
落ち着くために、一呼吸おく。
「調べて、それでも理解できないようならもう一度来なさい。話くらいは聞いてあげるわ」
自分で散々突き放しといて……とも思ったが、いわゆる飴と鞭というやつである。
効果は思いの外あったようで、アリスの表情は沈んでいたそれから一気に明るくなっていくのが見て取れた。
「え、えぇ!絶対よ!」
「はいはい」
満面の笑顔で図書館を後にするアリス。
適当にあしらう振りをしていたが、パチュリーは内心ほっとしていた。
これでまた来てくれることだろう。
それにしても、いじめた時の表情もいいが、今みたいな笑顔もなかなか……
次来たときは、少しは優しくしてみようかな、なんて考えていると
「アリスさん、嬉しそうでしたね」
背後から声を掛けられた。
使い魔兼図書館の司書、小悪魔である。
「……見ていたの?」
「えぇ、ずっと」
実はこの小悪魔、終始本棚の裏から隠れて見ていたのである。
「悪趣味だこと」
「これでも一応『悪』魔ですから」
ふふん、と何故か偉そうに胸を張る小悪魔。
「……で、何の用?今は特に頼みたいことは」
「パチュリー様って、好きな子いじめちゃうタイプですよね」
「それ以上言ったらロイヤルフレアね」
「アリスさーん!実はですねー!」
「おやつ半分で手を打ちましょう!!」

こうして、パチュリーの秘密は守られるのでした。















※この前の宴会


「アリス・マーガトロイド」
「へ?」
「そこ、私の指定席なんだけど」
「あ、そ、そうなんだ。ごめんなさい」
「別に立つ必要はないわ。少し、横にずれるだけでいい」
「あ、ありがと……」
ぽふっ
「……」
「……ねぇ」
「貴方、飲まないの?折角の宴会なのに」
「あ、うん、飲む」
コクコク……
「ふぅ……あの、パチュ」
「あら、まだ残ってるわよ。もったいないわ」
「あ、うん、飲む飲む」
コクコク……
「ふぅ……でね、パ」
「結構いける口なのね、もう一杯どう?」
「う、うん……飲む」
コクコク……

…………

……

「う~ん」
「まさかあのまま飲み過ぎて潰れるなんて」
「うぅ……」
「……面白い子」



おしまい
いじわる魔女さんのお話。
ライサンダーZ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
作者名見てからクリック余裕でした。
いぢめてるパチェさんもいいがいぢめられてるアリスが可愛すぎる。
2.奇声を発する程度の能力削除
ライサンダーさんだー!!!!(別に二回言ってる訳ではない
苛められてるアリス可愛いよ!アリス
>いきなりの奇声に
しりゃ!
3.名前が無い程度の能力削除
めっちゃニヤニヤしたw ww
4.無休削除
…どうしようこのパチュリーにめっちゃ共感してしまった…

まぁアリスが可愛いから仕方ないな。
5.名前が無い程度の能力削除
しりゃ!

絵だけでなくSSでもにやけさせられるとは・・・
6.名前が無い程度の能力削除
レイアリ派(正確にはアリレイ)なのに…不覚にも悶える罠
7.名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤしてる俺きめえw
かわいいアリスもいいが、俺はこのパチュリーが大好きなんだぜ
8.名前が無い程度の能力削除
しりゃ!
パチュリー様に萌えた
9.名前が無い程度の能力削除
アリス抱きしめたい!ニヤニヤした顔が戻りませんw
10.名前が無い程度の能力削除
パッチェさんが策士すぎるw
アリスわいいよアリス
11.名前が無い程度の能力削除
これから仲良くなっていく妄想をするだけでご飯三杯はイケる
12.名前が無い程度の能力削除
こっちの顔もにやけすぎてやばいw
13.名前が無い程度の能力削除
くそうパッチェさんが良すぎる
このパッチェさんはロリ化魔法あったら即アリスに使いそう