Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

うちの小悪魔が「こあー」って鳴きません。何かの病気でしょうか。

2010/05/09 15:10:49
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 紅い悪魔が束ねる館、その地下にある大図書館で、今日も今日とて魔女は囁き、悪魔は笑う――。



「ごきげんよう、今日のドロワは何色かしら、フラン」
「きゅっとしてドカーンっ!」
「うー!?」



 眼前で行われる仲睦まじいスカーレット姉妹の交流に、‘図書館の司書‘小悪魔は、眉を寄せ微苦笑を浮かべた。

「あぁお嬢様、何時の間にあのようにエレガントな挨拶を……」
「エレガント? 少し前、さとりに教えてもらったらしいわ」
「や、パチュリー様、聞いていたんなら止めてくださいよ」
「止めたわよ。可能性に賭けるって、レミィが聞かなかったの」
「そも、さとり様が来られてたのって四月馬鹿の日ですよね?」
「だから、可能性。――それはどうでもいいとして、小悪魔」
「こいしさんなら答えそうですしねぇ。――はいな?」

 一方、親友レミリアの惨状にも動じず、従者の名を呼ぶ、‘図書館の主‘パチュリー・ノーレッジ。
 傍らで椅子に座る主に、小悪魔も視線を合わせた。
 瞳が交錯する。



 疑問の表情を小悪魔が読み取ったと同時、パチュリーが口を開いた。

「レミィは『うー』」
「……は?」
「私は『むきゅー』」
「はぁ……」
「あの霊夢でさえ、『うぎぎ』」
「えーと」
「だと言うのに、何故、貴女は『こあー』と鳴かないの?」

 それはもう、大真面目に聞いているようだった。



「だって、おかしいじゃない。貴女は小悪魔なのよ?」

 なのよと言われても。

「えー、あー、返答に困ります、パチュリー様」
「だったらほら、『こあー?』って。ね」
「ね、じゃないです」

 素敵に絶好調なパチュリーに、小悪魔はただ困惑した表情を見せた。

 ふむ、と顎に手を当てるパチュリー。
 頬を指で掻く小悪魔。
 一拍の間。

 再び、パチュリーが発言する。

「歯が浮くような台詞」
「手と手の皺を合わせれば幸せと言いますが、貴女に指先が触れるだけで、私は十二分に生まれてきたことを感謝します」
「次に、どうかと思う台詞」
「おまたとおまたの皺を合わせて幸せー、なぁむぅ……ぁん」
「じゃあ、はいっ」

 両手を打った響きだけが、空しく館内に響き渡った。

「いえ、あの、パチュリー様……?」

 突っ込みが入らない。
 それだけ言わせたいのだろう。
 その事実に、小悪魔は戦慄する。

「これまで言ってなかったから今更……、なんて恥ずかしがる必要はないのよ?」
「なんの配慮ですか。ではなくて、普通、仰るような悲鳴はあげません」
「そんな態度に言葉遣いだから言わせた……ぁ」

 両手で自身の口を塞ぐパチュリー。
 あー、と呟きつつ、小悪魔はうろんげな視線を投げる。
 ろくでもない理由なんだろうな、と思っていた。

「な、なによ、私はただ、ただ……」

 従者の瞳に含まれる感情を読めない主ではない。
 故に、くるくると指を意味なく回す。
 結局、観念して胸の内を語った。

「アリスが言っていたの。『小悪魔ってお姉さんみたいよね』って。
 魔理沙が続けたわ。『我儘な妹を持った寛容な姉ちゃんだな』と。
 確かに私は貴女より背が低いわね、我を張るところもあるかもしれない。
 でも、おかしいじゃない! 普通、主従と言えば逆でしょう!?
 冥界組然り、永遠亭然り、レミィだって咲夜の前じゃお姉さんしているわ!
 私は考えた。どうすればこの状況を覆せるか。いえ、そも、何故こうなったのか。
 わかる? わかるかしら、小悪魔? 貴女には幼さが足りない! そう、だから、『こあー』と鳴く必要があるの!! けふっ」

 久しぶりの長台詞は咳を伴った。
 片手で背を擦り、もう一方の手で水筒を取りだす小悪魔。
 器用に蓋兼コップを外し、中の水を注ぎ、淀みなくパチュリーの口にあてる。

 ――この間、数秒。

「いえ、その理屈はおかしいと思います」

 職務を果たした後、小悪魔はきっぱりと言った。

「っぷあ、まだあるわ! 貴女、口調と行動が美鈴と被ってるのよ! 一緒に出れないじゃない!」
「んなメタな……。常にパチュリー様のことを考えているのが私です」
「わかんない! それに、よそ様を見てみなさいよ! 『こあー』『こあ?』って、ほら可愛い!」
「よそはよそ、うちはうちです」
「むきゅー! こあーこあーこあー!」

 力技に出てきやがった。
 ――思いつつ、小悪魔は言う。
 背を擦っていた手は残したままだ。

「パチュリー様。
 私は、貴女の従者です。
 お護りしたいと思いつつ、様々な面で護られているのが現状です。
 他の方にどう思われようと私がそう考えている――と言うだけでは、不満でしょうか」

 言葉以上の想いを、瞳に込めた。
 真っ直ぐに見つめる。
 見つめ返された。

 視線が絡まり、パチュリーは応える。

「別に、護ってなんかいないわよ」

 ぶっきらぼうな言葉は、何時ものパチュリーの調子だった。
 だから、小悪魔は手を離し、水筒を腰のポーチに戻した。
 納得してもらえた、と思っている。

「ふふ……では、司書室に戻っていますね」

 机の上に本を広げるパチュリーに、小悪魔も平素の仕事を再開しようとする。
 振り向く間際、ペンが手に握られているのが見えた。
 珍しく、鉛筆だ。

 パチュリーが普通の本に書き込みを加えるとは考えづらい。
 となれば、普通でない、書き込むための本。
 パズルやクロスワードの類のものだろう。

「あ、ちょっと、その前に」

 ――推測し、小悪魔は額に手を当てた。

「二文字でね、マントルの内側の層ってなんて言ったっけ?」

 納得などさらさらしていないようだ。

「どんだけ言わせたいんですか……」
「何の話? ほら、いいから」
「核です」

 確かに二文字だ。

 暫しの間。

「ビル・クリントン政権の副大統領! 濁点は抜きで!」
「アルハート・アーノルト。ミスター・ブッシュJrに敗れた方ですね」
「ロボットを操作するアクションゲーム! アーマード!?」
「『貴様は、あの列車の……。好都合だ、決着をつけようか』」
「カラサワは偉大だったわ。――劇中の台詞なんて聞いてないわよぅ!」

 むっきゅー!

 なんだかどんどんパチュリーの等身が小さくなっているような。

 振りあげられる両腕。
 小悪魔はそっと肩を掴み、閉じさせる。
 激しい動作は喘息の発作を誘発しかねない。

 今更ですかね――心の内で苦笑し、小悪魔はパチュリーに向き合った。

「言えばいいんですね?」
「言ってくれるの?」
「命じて頂ければ」

 瞳を覗き込みながら、続ける。

「私は、貴女の小悪魔ですから」
「じゃあ言いなさい」
「決めたのに!?」

 自身の悲鳴などどこ吹く風のパチュリーに、一つ咳払いをして、小悪魔は言った。

「とは言え、これきりですからね」
「うんうん、わかったから。早く早く」
「私に幼さが足りないと言うか……いいですけど」



 息を小さく吸い込み、吐くと同時、呟く。

「こ、こあー」

 小悪魔にしては珍しく、頬に朱が混じっていた。



 そんな彼女に、魔女は囁く。

「うーん……思っていたより可愛くないわね」
「酷い! どないせーっちゅーんですか!?」
「あ、もういいわ。戻りなさい」

 そして、悪魔は泣き笑うのであった。



 ある季ある月ある日のお話。紅魔館は、今日も今日とて平和だったとさ。





「ちょ、貴女たち、紅い悪魔ことこの私、レミリア・スカーレットへのフォローはなし!?」
「きゅ「きゅ「きゅ「きゅっとしてぇ――ドッカーン!」」」」
「うー!?」





 平和だったとさ。






                      <了>
・流石はお嬢様、妹様のきゅっとしてドカーン四連撃にも動じない(フォロー(キリッ。お読み頂きありがとうございます。

・「こあこあ」言う小悪魔って可愛いですよね。
・ですので、ウチの小悪魔にも「こあー」って言わせたかったんです。
・でも、なんかしっくりきませんでした。パッチェさんの「むきゅー」はしっくりくるのに。

・作中のアリスの台詞は、拙作「爪かき」にコメントして頂いた6様の言葉を借りております。ありがとうございました。

いじょ
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コメント



1.名前が無い程度の能力削除
こあこあ言わなくても氏の小悪魔はやばい可愛いです。
パッチェさんも可愛いです。
ごちそうさまでした!
2.名前が無い程度の能力削除
おお、こあいこあい・・・・・・
3.名前が無い程度の能力削除
「こあー」がしっくりこないなら、
「こあっこあっこあっ」と高笑いさせてみてはいかがでしょう?
4.名前が無い程度の能力削除
こぁ ならいかがでしょう?
5.奇声を発する程度の能力削除
こあーマジ可愛いよ!
6.名前が無い程度の能力削除
語尾に「こあ」とつけるようになる病気が紅魔館図書館で流行ってるという噂ですよ。
7.名前が無い程度の能力削除
小悪魔ちゃん、おじさんのおうちに来n(ピーピーピーボボボボ
8.身も蓋も無い程度の能力削除
最終的にパッチュさんがこあこあと鳴いてしまう病気にかかるわけですね、もちろんせ(ry
9.名前が無い程度の能力削除
おぶっつだっんの、荒川~♪な~むぅ~♪

絶望リスナーですか!?

こぁ可愛いよこぁwww
10.名前が無い程度の能力削除
南無庵wwこれは流行る
11.名前が無い程度の能力削除
星「うちのナズーリンも「なずー」って鳴くべきでしょうか…」
12.ぺ・四潤削除
こあ可愛いよ!!!
「核です」その発想はなかったwww

>>11
貴様俺を殺す気か!!
13.道標削除
パスワードが間違っていて追記ができないので、此方で少しレスを。

>>3様

「こあっこあっこあっ」

 羞恥心他色々ぶっちぎって腰に手を当て笑う小悪魔に、パチュリーが言った。

「……小悪魔将軍?」
「私、小さい子どもをばらばらになんてできません」
「物理的云々じゃなくて精神的に、ね。……いや、できなさいよ、悪魔」

>>4様

「じゃあ、小悪魔、『こぁ』って、短く切るのはどうかしら?」
「パチュリー様。切り札は最後まで取っておくものなのです」
「今ばらしたじゃないの」

 勿論、もうひとつ奥の手を持っていないはずがない、小悪魔だった。


>>9様
昔よく見かけた(今もあるんですかね)CMのパロディだったのですが……件の放送は未聞です。

>>11様

「どう思います、ナズ?」

 小首を傾げ問う星に、ナズーリンは半眼を向けつつ、応える。

「やぶかさではないですが。けれどご主人、まず手本をみせてはくれないか」
「ぐるるぅ、がおー! と、ではないですね。とらーとらーとらー!」
「まさか本当に鳴くとは……」

 ――この後、ナズーリンが鳴いたか否かは、諸兄の判断にお任せしよう。
14.名前が無い程度の能力削除
中々面白かったですね♪う~ん、「こぁ~」っていう台詞を聞くと、どうにも「魔法少女な妹様のマスコット(自称)」を担当されてたりされる、強烈なこぁさんがイメージできたりしますが・・・(汗)(を)。

ちなみに、読んでてなぜかこんな妄想(?)が・・・

咲夜「・・・やはり、私も何か語尾をつけるべきかしら?・・・「さきゅっ」とか?あ、でもこれだとパチュリー様と被っちゃうわね。・・・・・・!そうよ、これなら!!」

咲夜「・・・というわけで、私なりにオリジナルの語尾を考えてみたの」
美鈴「はぁ、さよですか・・・」
咲夜「ふっ・・・、その反応は想定内よ美鈴。・・・けれど、そのような態度も今の内よ。・・・・・・さあ、とくと聞きなさい!!」

咲夜「・・・・・・いざよっ!!」

・・・なんか、いろんな意味ですんません・・・orz
15.名前が無い程度の能力削除
↑なんか強そうだW
16.名前が無い程度の能力削除
かわいくないなんて酷いなぁ紫魔女さん
超越かわいいじゃないですか
17.名前が無い程度の能力削除
こあーこあー必死に言うパッチェさんが可愛くて仕方ない
確かに幼い小悪魔も見て観たい気がする
でも時折見せる恥じらいとかの破壊力がヤバいです
18.名前が無い程度の能力削除
貴様には水底がお似合いだこあ