「聖白蓮、私はあなたを認めない」
静かな。それは静かな声でパチュリーは呟いた。
本から目を離して、まっすぐに白蓮を見つめている。まるで当然のことを言っただけというような瞳からは、なんの感情も読み取ることはできない。
「そうですか」
それを言われた当人である白蓮は、目を細め、唇の端を僅かに上げただけの微かな笑みでそれに答える。ぱっと見ただけなら、いつも通りのぽやんとした笑顔に見える。しかし、同意を示した後に続く沈黙は、怒りか悲しみか動揺か。
いずれにせよ、平常ではないことを如実に示している。
一触即発。
弦のように張りつめた緊張感に、図書館の静寂はいつも以上に重く、澱んでいる。そんな状況にアリスは息苦しささえ覚えてしまう。
「おいおい、どうしたんだよ、二人とも。喧嘩すんなって」
あえて明るい調子を作ったということがはっきりと分かる魔理沙の声。しかし、その甲斐虚しく、言葉は空滑りしていって、余計に沈黙を際立たせた。
黙って、白蓮とパチュリーの様子を窺っていたアリスはそんな魔理沙を小突く。
「魔理沙」
「だ、だって!」
どうにかしてくれよ、とすがるような瞳で魔理沙はアリスを見る。けれど、アリスだってどうすることもできない。立場としては魔理沙とそう大差ないのだから。
そんな二人を見かねたのか、すんと鼻でため息をついたパチュリーが言葉を溢す。
「魔理沙、アリス」
「パチュリー?」
テーブルの上に開いていた本をぱたんと閉じる。栞を挟むことはしない。
そうしてそのまま分厚いそれを胸に抱いて、パチュリーは安楽椅子から立ち上がった。
「後は勝手にして。本を借りていくなら小悪魔に声をかけてくれればいいから」
「ちょっとパチュリー? どこに行くの?」
どこか掠れた声で、一言呟いたパチュリーは二人の顔を見ることもなく、ゆっくりと歩き出した。その背中にアリスは慌てて問いかける。
困り果てたように白蓮とパチュリーとを交互に見やっていた魔理沙も、不安げに瞳を揺らしている。
「……体調が」
「……パチュリー?」
「体調が優れないの。部屋で休むことにするわ」
極めて機械的に、無味乾燥な堅い声。耳を澄ましていなければ聞こえないようなか細い声にも関わらず、静寂の中ではよく響いた。
そう言われてしまえば、二人には引き止めることはできない。
言外に匂わされた拒絶に追いかけるということも出来ず、アリスと魔理沙はちらりと横目でお互いを見やる。
どうしたらいい? 知らないわよ。
アイコンタクトで伝わる思いはそればかりで、なんの解決にもなりはしない。
困り果てた二人はパチュリーの背中と白蓮の横顔を交互に見やる。
振り返ることなく歩き去るパチュリーを見送る白蓮はまるで無表情。
普段の柔和さを欠片も感じさせないその表情は空っぽで、二人の心をざわつかせる。
けれども、不安げに様子を窺う魔理沙とアリスに気がつくと、白蓮は困ったような柔らかい笑みを浮かべた。
「……大丈夫か?」
安心させるような笑顔にかえって魔理沙は心配を煽られてしまう。
誰だって一方的に拒絶されれば、傷付かないはずがない。ましてや、パチュリーと白蓮は同業者。本当ならば、かなり近しい存在なのだから。
魔理沙の言葉に、更に笑みを深めた白蓮は小さく頷いてみせる。
「ええ、なかなか理解してもらえないことも昔はよくありました。慣れていますよ」
「それとは違うだろ?」
「彼女の言っていることは間違ってはいませんしね」
そう言う白蓮の表情は寂しげで魔理沙の小さな胸はつきんと痛みを訴える。
「あんなこと言う奴じゃないと思ってた」
もともとパチュリーは素直な優しい気質と言うわけではない。かなりひねくれているし、皮肉っぽい毒舌家でもある。
けれど、むやみに他人を、仲間を傷つけるようなことを言うとは思っていなかった。
なぜか、それがやたらとショックで魔理沙は表情を曇らせる。
ぽつり、と呟いた声に白蓮は魔理沙の柔らかな金髪を宥めるように撫でた。
「あなたが落ち込むことはありません」
「でも」
「私は平気ですから」
「うん……」
納得がいかないような表情のまま頷く魔理沙。白蓮は優しく微笑んでいる。
アリスはそんな二人を尻目に、思案げにパチュリーの去っていった方を見つめていた。
「はあ……」
柔らかなベッドの上、ころりとパチュリーは身を投げ出す。
持ってきた本はもう読んでしまったし、何より心にわだかまるものがあるせいで、どうにも集中しきれない。
図書館を出る口実に体調不良という嘘をついた。けれど、今のままでは、本当に具合が悪くなってしまいそうだった。ストレスも、喘息には良くない。
小さく身体を丸めて、パチュリーはただ思索に耽る。
新しく幻想郷に居を構えた聖白蓮は魔法使いだ。千年の時を生き、魔界に封じられた大魔法使い。得意な分野は肉体強化。
それを魔理沙に聞いた時、パチュリーは白蓮に強い興味を抱いた。
幻想郷には、未だ居なかったパチュリーよりも年長の魔法使いである。基本能力の差はあれど、生きてきた年月が知識量と比例する。魔法使いとはそういう生き物だ。
ライバル意識がなかったとは言わない。自分より優れた知識を持つ相手を妬む、越えようとする気持ちなくして、大成することなどできない。
その意味でも興味があった。
それに白蓮は精霊魔法を究めるパチュリーとは大きく専門分野が違う。自分とは違う切り口から魔法を使う白蓮と話してみたいと思っていた。
その願いを知ってか知らずか――おそらく後者――、今日、魔理沙が白蓮を連れてきたのである。
いつもの三人でのお茶会兼研究会に白蓮が加わって四人は魔法談義に花を咲かせた。
人見知りをするきらいのあるパチュリーも、好奇心に突き動かされた時は例外だ。力の性質やら、どんな魔法を使うのか、など実践も交えつつ、語り合った。
予想通り、強い力を持つ白蓮との交流はパチュリーにとっていい刺激になり、とても楽しかったように思う。
けれど。
「流石に千年は伊達じゃないわね」
「いえ、私の魔法など、褒められたものではありませんから」
「どういうこと?」
きっと白蓮は、僧侶らしく謙遜してみせただけなのだけれど。その成り行きで問い詰められ、白蓮が語った魔法使いになるに至った経緯。彼女の信念。ありさま。
それは、生粋の魔女の憤りを呼び起こすのに、十分すぎるほどの威力を持っていた。
こん、こん
不意にノックの音が響く。
小悪魔だろうか。そういえば、何も言わずにここに来てしまったから、心配しているかもしれない。
そう考えたパチュリーはノックの音に答えることにする。ちょうど喉も渇いていたところだ。香り高く熱い紅茶の一杯でも飲めば、このおかしな気分も落ち着くに違いない。
「いいわ、入って」
やがて、ノブを捻る音ときぃ、という留め具の軋む音。重々しい扉の端から見えたのは見慣れた紅色ではなくカナリア色。
「調子はいかが?パチュリー」
「アリス……」
現れたのは七色の魔法使い、アリス・マーガトロイドだった。
微笑むアリスは、一度ひらひらと手を振ると、ゆっくりベッドへと歩みよる。
「突然、具合が悪いなんて言うから心配したじゃない」
「……分かってて言っているでしょう」
「まあね」
「意地悪」
「パチュリー程じゃないわ」
澄まして言うアリスをじと目で睨み付けながらパチュリーは身体を起こす。
するとベッドの端に腰を下ろしたアリスが、手櫛で長い髪を整えていった。されるがままのパチュリーは、ばつが悪そうに目を伏せながら呟く。
「アレは?」
「帰ったわよ。魔理沙も送りがてら、帰ったし」
「そう」
その事実にパチュリーは安堵する。
本当ならば、あの時叩き出してやりたいぐらいだった。
あえて、立ち去るだけに止めたのは、白蓮の実力を認めている自分がいたことにも気付いていたから。
白蓮がいなくなったのならば、図書館に戻って本が読める。知識欲が再び首をもたげ始めた。そわそわと立ち上がろうとするパチュリーは、しかしアリスの声に押し止められる。
「ねぇ、パチュリー」
困ったような、姉が駄々をこねる妹を諭すような。そんな言い方にパチュリーは、ぷい、とそっぽを向く。
「撤回ならしないわよ。私は魔法使いとして聖白蓮を認めない」
「頑固ね」
「魔女だもの」
あくまで態度を崩さないパチュリーに、一層困った表情のアリスは嘆息する。
「魔理沙が泣きそうな顔してたわよ?」
「分からないうちは、未熟な半人前。それだけのことよ」
「魔理沙はまだ幼いし、捨食すらしていない人間だもの。分からなくてもしかたないじゃない」
嫌そうな顔でそっけなく言うパチュリーに、アリスはやれやれと肩を竦める。
その反応に興味をひかれたというように、パチュリーは首を傾げてみせた。
「……その言い方だとアリスは分かってるとでも言いたげね?」
「分からなくはないわよ。でなきゃ、わざわざ来たりしないし」
「そう」
「私も後天的な魔法使いだし、完璧には分かってるわけじゃないかもしれないけど」
ま、一応魔理沙よりは年食ってるしね。と小さく笑む。
そんなアリスをじとっとねめつけるパチュリーは、やがてひとつため息を吐く。
そうして、仕方ないわね、と口の中でため息混じりに呟くと、囁くような小さな声で語り出す。
「魔法使いという生き物は」
「魔法、真理、この世界の理を追求するものよ。好奇心と知識欲、それが全ての行動原理となる。生きる理由、目的、まあ、表現はなんでもいいけれど」
魔理沙がキノコを集め実験を繰り返すように。
アリスが自立人形の作成を求めるように。
パチュリーがひたすら本を読み続けるように。
ただ貪欲に叡知を求めるのが、魔法使いという生き方だ。
それは際限のない欲望で、全てを求めるには、人としての生では到底足りない。
「だから、魔法使いは捨虫捨食の術を生み出した」
知識欲に忠実に生きるならば、他のことをする手間すら惜しい。それこそ幻想郷縁起に家に引きこもりがちと書かれるほどに。
寝食を忘れひたすら研究に没頭することができるよう、魔法使いは不老長寿を選ぶ。
「アリスみたいなのもいるけどね」
「いいでしょ、別に」
「悪いとは言ってないわ」
「ある程度の気分転換は新しい発想への足掛かりになるもの」
つん、と澄まして言うアリスを見たパチュリーは鼻を鳴らす。
絶対量を重視するパチュリーと、効率化を目指すアリスとでは、どうもこのあたりの意見は不一致だ。とはいえ、どちらも己にとって最善の手段をとっているというだけで、争うようなことではないのだが。
自らの好奇心を満たすためならば、手段を選ばない。
たとえば、魔理沙がこの図書館から本を盗み出すように。
他人の命はもちろん、自分の命さえ簡単に危険に晒す。
禁忌の術だの、悪魔召喚だのに結果が分かっていたとしても手を出すものが後を絶たないことからも明らかだ。
利となるものは全て食らいつくし、障害となるものは容赦なく切り捨てる。
「そういう種族でしょう?」
「うん」
「だから、私は聖白蓮を魔法使いとは認めない」
白蓮は違う。死への恐怖から捨虫捨食の術に手を出し、魔法使いとなった。
力を維持するために妖怪を助け、自らの術式を強化していった。
「それだけならよかったんだけどね」
「へえ? 死への恐怖から魔法を使うなんてとか言うのかと思った」
「動機はどうでもいいの。究めようとする意思さえあれば」
白蓮は。
最初こそ、私欲のために魔法を極めていた。あくまで妖怪を救うのは己の力を高めるため。いかにも、魔法使いらしい在り方だ。
それは結局のところ、研究、真理への探究へ結びつくのだから。
彼女は途中で考えを改めてしまった。
自らの欲のために力を欲していたことを恥じ、最初手段であったはずの妖怪を助ける行動が目的へと転じた。少なくとも一妖怪としての立場から見れば、それは褒められこそすれ、否定されるようなことではない。
だが、魔法使いという種族としては、堕落している。
妖怪を助けていたら、力がついた。封印されていた場所が魔界だったから、力がついた。
白蓮が強い力を持つとすれば、あくまでそれは活動の副産物でしかない。
白蓮自身がそれを欲し、求めていたというわけではないのだから。
白蓮は魔法に魅入られた存在ではない。
魔法のために生きているわけではない。
「魔法のために殉じる覚悟のない奴に魔法使いを名乗る資格はないわ」
だから、パチュリーは聖白蓮を魔法使いとは認めない。
いつもぼそぼそとした喋りをする彼女らしくもなく、はっきりとした声でそう言い放った。話しているうちに興奮してきたのか、色白の頬は赤く上気している。
身を乗り出して、アリスの前で強い語調で語る。
アリスはそんなパチュリーの迫力にやや気押されてしまう。
「パチュリー、分かった、分かったから!」
「それ以上でもそれ以下でもないんだから」
それだけ言って、大きく息を吐いたパチュリーはぐったりと身体から力を抜いた。
疲れたのか、言いたいことをすべて言い切ったからか。分からないけれど。
確かにパチュリーの言っていることは事実であると、アリスも思う。
白蓮がアリス達と同じ魔法使いだ、と言われても若干の違和感を覚えてしまうのはきっとそのせいだ。
生まれついての魔法使い。百年の時を魔法のためだけに費やし、それを誇りとしているパチュリーが、アリス以上に憤りを覚えるのも無理はない。
知識のためならば、身体も回りも全く顧みないことを、アリスはよく知っている。
けれど。
だからと言って、白蓮を拒絶してしまうのも何かが間違っている。
うまく言葉にすることはできないけれど、アリスは言いようのない焦燥感に駆られた。
頭の中はうまくまとまらないけれど、迷いながらアリスは言葉を発する。
「……でも、パチュリー」
「何よ」
「そんな目しないでよ。怖いから」
「怖がってないんだからいいじゃないの」
アリスの反論の気配を感じ取ったのか、じろり、と睨みつけてくる。乱れた髪も相まって、迫力は半端なものではない。
それに反論すれば、いつも通りのしれっとした調子で返事が返ってきた。
「私から見て、今日のパチュリーはいつもより楽しそうだったと思う」
「は?」
「私や魔理沙じゃ、まだそのレベルまで追い付けてないから」
「……」
認めてしまうのはとても悔しいけれど、百年以上生きたパチュリーには、アリスも魔理沙も知識や経験の面で追い付けないところがある。それは仕方のないことだ。
しかし、白蓮なら。
千年の時を生き、魔界で修行を重ねた白蓮は、パチュリーを超える大魔法使いだ。
アリスや魔理沙と話すよりも実りが大きいことは明らかだった。ましてや、肉体強化なんて、パチュリーに一番必要な魔法だと思われるし。
「経緯はともかく、白蓮はすごい実力者よ。それはパチュリーも認めているでしょ?」
「……癪だけどね」
苦い薬を口に含んだ子供のような顔で、パチュリーは呟く。正直、認めてしまっているからこそ、余計に気に食わないところもあるのだ。
そんなパチュリーを見て、アリスは少しだけほっとする。
それを否定してしまうほど、意固地にはなっていないということだ。
「だから、それだけで白蓮を拒絶するのはもったいないと思うわよ」
「アリス」
「利用できるものは利用する。それが魔法使いでしょう?」
「……」
「それに、白蓮はいい人だし。話していて楽しかったじゃない」
「むう」
どこか人を安心させるような笑顔に、アリスは母を思い出した。魔理沙も実の祖母のように白蓮を慕っている。パチュリーとて、表には出さなかったけれど、そういう思いを抱かなかったと言えば嘘になる。
魔女らしくなく、穏やかな物腰や素直な、それでいて思慮を感じさせるもの言いは、好感がもてた。皮肉が通じなくて、少し焦ったりもしたけれど。
なにより、全身から滲み出る包容力はどうにも魅力的だった。魔理沙いわく、おばあちゃんぱわーなのだそうだけれど。
いろいろ言いつつも、それに安心感を得ていたことを否定できないパチュリーはますます複雑な表情になる。思いきりしかめられた表情はどこか子どもっぽい。
これ以上の深追いは逆効果。
これまでの経験から、なんとなくそれを察したアリスはすっと立ち上がる。
「ま、単なる選り好みじゃなくて、価値観の問題だから、口出しはしないわよ。人から言われたところでどうなるもんでもないだろうし」
「……」
「じゃあ、私もそろそろ帰るわね。また明日来るから、それまでに機嫌直しといてよ?」
一度振り返って微笑んで。黙り込むパチュリーに背を向けたアリスは、姿勢よく扉のほうへと歩いて行く。
ドアノブに手をかけたところで、かけられる声。
「……アリス」
「ん?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
パチュリーがどのような結論に至るかは分からない。
けれど、一度だけ振り返って微笑んだアリスは、そう悪いことにはならない、そんな予感がしていた。
「白蓮、白蓮ってば」
白蓮は自身を呼ぶ声にはっと我にかえる。どうやら考え事に熱中するあまり、ぼんやりしてしまったらしい。
僧侶ならば、このような雑念に取り憑かれていてはいけない。白蓮は反省と共に気を引き締める。
もうだいぶ聞き慣れた声、封印を解かれた時から好ましく思っていた人間の少女の声。縁側に腰掛けていた白蓮の目の前にいたのは魔理沙だった。
図書館を座して、白蓮は命蓮寺に帰ってきた。今は、出来事が出来事だったためか、心配そうな表情で送ってきてくれた魔理沙にお茶を出したところである。
お茶菓子も出して、ほっと一息。少し気が緩んだせいか、思考にふけりすぎてしまったらしい。
心配そうな表情をしている魔理沙に、申し訳なく思いながら、白蓮は微笑みかける。
子どもにこんな顔をさせていてはいけない。
「ごめんなさい。少しぼんやりしてしまったみたい」
「さっきのこと、考えてたのか?」
苦虫を噛み潰したような表情で魔理沙は問いかける。その瞳の奥に宿るのは怒りと憤りと不安とその他もろもろ。
魔理沙は白蓮をとても好きだ。
もちろん、魔法がらみでの語り合いもあるけれど、これまで魔理沙が経験したことのないような穏やかな雰囲気は心を安らげてくれる。
おばあちゃんみたいなものですよ、と笑う白蓮は、家出をして以来誰にも頼ることのなかった魔理沙が寄りかかることのできる雰囲気を持っていた。
そして、アリスとパチュリーも好きだ。
三人で魔法について語り合っている時の充実感。他愛もないことを話している時の暖かさ。三人でいるのが好きだ。
未来のことなんて分かりっこないけれど、ずっと仲良く楽しく過ごしていけると、なぜか確信している。
魔理沙にとって大切な三人は魔法使いという共通点がある。
だから、そんな二人と一人が付き合いを持てば、もっと楽しいに違いない。
白蓮にはアリスとパチュリーを、アリスとパチュリーには白蓮を紹介したかったのだ。
けれど。
今日の初顔合わせは、散々な結果に終わってしまった。
予想もしなかったパチュリーの言葉の理由が魔理沙は今も分からない。
「そう、ですね。少し考えさせられました」
「白蓮……」
少しだけ眉が下がっているのは、心配している時の魔理沙の癖だ。少し泣きそうにも見える表情は普段の悪戯っ子のような強気とのギャップで、余計に見ていられない。
白蓮はそんな魔理沙を慰めるようにそっとそのやわらかい金髪を撫でる。
「魔理沙?」
「白蓮は魔法使いだよな?」
撫でられて目を細める魔理沙は、顔をあげて問いかける。白蓮をまっすぐに見上げる表情はどこかすがるようなニュアンスを含んでいた。
そうですよ、だから心配しなくても大丈夫ですよ、と言ってほしそうな、そんな表情。
しかし、白蓮はそれに反する答えをしなければならない。
少なくとも、七曜の魔女が言う意味での魔法使いとは異なる存在であると言えるのだから。
「広義では、魔法使いですけど、狭義ではそういえないでしょうね」
「広義、狭義?」
イエスかノーか。どちらにせよはっきりした回答を求めていた魔理沙はきょとんとする。
もちろん、広義、狭義の意味ぐらい分かっている。しかし、魔法使いの定義に広義も狭義もあるだろうか。
訝しげな魔理沙に一度微笑みかけて、白蓮は穏やかな声で語り始める。
捨虫、捨食の術を使った白蓮はまぎれもなく、肉体は種族魔法使いだ。
弾幕ごっこで使うのも法力だけではなく、魔力も存分に活用している。魔法を使う存在であるという意味では紛れもなく魔法使いである。
けれど、白蓮の生き方、本質は別の所にある。
虐げられてきた妖怪を助け、人間と平等に過ごしていける世の中を作ること。
そんな理想を胸に白蓮は活動してきた。
白蓮が魔法を使うのは、他人のため。誰かを救い、誰かを罰する。自らの信念を貫き通すための手段でしかない。
「私はこの命連寺の僧侶ですから」
世のため、妖怪のため。エゴを捨て、欲を捨て。
僧侶として優れた人物を目指せば目指すほど、魔法使いとしては堕落していく。
パチュリーはそんな白蓮をさして、“魔法使い”として認めないと、そう言ったのだ。
それは紛れもなく事実。
白蓮とて結局は浅ましい性根の人間であるから、私欲に駆られることもある。しかし、それを極力抑える努力をしてきて、そうして今の白蓮がある。
故に、パチュリーの言葉は、ある意味、僧侶としての白蓮に対する褒め言葉でさえある。
「だから、魔法使いではない、というのも間違ってはいませんし、悪いことばかりではないのよ」
「うーん……?」
理屈は理解しているけれど、納得がいかないというような不可思議な表情を浮かべた魔理沙は首を捻っている。
その様子に白蓮は少し困った笑顔を浮かべた。人差し指に長い髪をひと房巻きつけるようにいじりながら、どう言えば正確なニュアンスが伝わるだろうか、と考える。
お互いに次に続ける言葉を選びきることが出来ずに、不意に沈黙が訪れる。
春風がさらさらと木々を揺らす音に乗って、村紗やぬえが遊んでいるような声が聞こえる。
白蓮は少しほっとした心持になる。彼女たちの笑顔は、少なくとも白蓮のしてきたことが無駄ではなかったということの証明である。
なにより、大切な家族が笑っている。そのこと以上に幸福なことなどない。
「なあ、白蓮」
「はい?」
やがて、先に口火を切ったのは魔理沙の方だった。
先ほどの話を頭の中で自分なりに消化したのか、しっかりした声に惑いは少ない。
「じゃあ、一体白蓮は何を悩んでいたんだ?」
魔理沙はじっと覗き込むようにして、白蓮を見つめている。純粋で真摯な瞳が白蓮には少し眩しい。
「魔理沙にとって魔法とはなんですか?」
「え?」
「……なんて。答えなくていいですよ。分かっていますから」
「う、うん……」
魔理沙は魔法を愛している。魔法使いであることに誇りを持っている。
けれど、こうして改めて聞かれたところで、答えられるほど確固たる信念を持っているかと言えば、そうではない。
まだ、捨虫の術を使うか否か、その決意さえできていない。覚悟が足りない。
何度かその件について、白蓮に相談したこともある。意地悪な質問をしてしまってごめんなさい、と囁いた白蓮は口ごもる魔理沙の頬をそっと撫でる。
「私にとって魔法は手段です。けれど、アリスやパチュリーにとってはどうでしょうね」
「それは……」
考える。
百年も昔、魔理沙が生まれるずっと前から知識を蓄え、今なお貪欲に本を読み続けているパチュリー。七曜の魔法を完成させ、魔法使いの夢である賢者の石にさえ到達したのにも関わらず、愚直なまでに知識を得ようとすることをやめない。
病弱な身体をおして苦しみながらも、なお歩みを止めない理由は。
今の魔理沙より少し上、しかし少女と呼ばれる年齢のうちから、魔法使いとして生きる覚悟を決めたアリス。人間であることをやめ、人形を操る魔法の技術の向上を図っている。アリスの人形たちは日々、より自然な生き物のようになっていく。
まるで不可能にも思える自律人形を作るという目標に邁進する理由は。
「生きがい、とか。存在理由とか」
「そうですね。……彼女たちにとっては魔法がすべてなんでしょう」
魔法のために生き、魔法のために死ぬ。二人はそういう生き方をしている。
魔法使いにとって、魔法は己を形作るすべてなのだ。
「そんな魔法を私はあくまで手段として、利用しています」
「白蓮」
彼女たちが何より大切にしているものを、白蓮は矜持もこだわりもなく使う。
それは、彼女たちに対するひどい侮辱に当たるのではないだろうか。
妖怪を救う行動が、別の妖怪を貶める行為になっていたのではないか。
それが、気がかりだった。
かと言って、魔法を使うことをやめるなどありえないのだけれど。
白蓮とて、魔法使いは魔法使いなのだから。
どうにか、それを理解してもらえればよいのだけれど。
「ですから、少しばかり考えなければならないな、と思ったんです」
「白蓮……」
「とはいえ、私は魔法使いでもありますから、やり方を変えることなどできません」
そう言って、白蓮はなんとも形容しがたい笑顔で微笑む。一言で語るには複雑で多くの感情が入り混じりすぎている。
魔理沙は口の中に空気を含んだふくれっ面で何かを考えている。
「分かりあえないというのは、悲しいことですね」
ぽつりと。再び訪れた沈黙の中で、白蓮が洩らす。
どこか寂寥感を伴うその声に魔理沙は、ふ、と目の前が開けたような心地になる。
先ほどまでのごちゃごちゃしていた状況を打開する道筋に思い至る。
まだ、十年と少ししか生きていない人間の魔理沙にはパチュリーのこだわりも、白蓮の葛藤も、理屈は理解できても、実感として感じ取ることはできなかった。
そこに関して、口を出すことはできないし、ましてや解決させることなんてできるはずもない。
けれど。
白蓮がパチュリーと分かりあいたいというのなら。
そこに至る手段はいつだってシンプルだ。
白蓮はすべてを受け入れる包容力を持っている。
パチュリーだって、話して分からないような性格ではない。
「だったら、パチュリーと話でもしてくればいいじゃないか」
「え?」
「まあ、あいつは頑固だけどさ。おまえ、そう言う奴の相手をするの得意だろ?」
魔理沙は、ほら、村紗とか雲山とか、昔はやんちゃしてたって聞いたぜ? と白蓮の瞳を覗き込む。それが、今では千年の時を超えてなお白蓮を慕い続けている。
「それは説法ですから。私はただ彼らに手を差し伸べただけです」
「いいじゃん、それでさ」
「……」
「結局はあれだ。白蓮が何を考えているか、相手が何を望んでいるかをガチでぶつけ合うってことじゃないのか?」
困惑した表情で微笑む白蓮の手をとり、ぎゅうっと握りしめる。
そうして、にかっと白い前歯を見せて笑いかける。いたずらな子供のようでありながら、力強く咲く向日葵のような笑顔。
「白蓮は白蓮のやりたいようにやればいいだろ」
「魔理沙」
「なんて、な。そう言ったのはお前じゃないか」
一瞬、虚をつかれたような表情で目を見開いた白蓮は、すぐに顔を綻ばせる。
今日、命蓮寺に帰ってきてから見せた笑顔の中で、どれよりも輝いた心からの笑顔だ。
「そうです、そうでしたね」
「だからさ、ガンガンいっとけ。いざとなったら、幻想郷には便利な決闘ルールもあるからな」
「弾幕ごっこ?」
「拳で分かりあえることもあるって」
てか、その方がすっきりしてて分かりやすいしさ、と笑う魔理沙のまっすぐさが愛おしくて。
たまらなくなった白蓮はそっとその小さな頭を胸に抱く。
「びゃ、白蓮?」
「あなたは本当に……」
続く言葉はあまりにも小さくて、魔理沙の耳へは届かなかった。
温かい気持ちに満たされた白蓮にもはや迷いはない。
聖母のように微笑んで、明日、もう一度図書館へと向かうことを心の中で誓った。
「なによ、また来たの?」
翌日、再び大図書館を訪れた白蓮は、冷たい視線と共にそんな言葉をかけられる。
昨日とまったく同じように安楽椅子に腰掛け、本に目を通していたパチュリーが億劫そうに顔をあげた。
あんなことを言ったのに、昨日の今日でまた来るなんてね、と独り言のように呟くパチュリーは内心はともかく表情を変えることはしない。
「昨日の件で少しお話をしたくて来てしまいました」
白蓮はにっこりと満面の笑みを浮かべて、かすかに首を傾ける。ふわふわと柔らかい髪がその拍子に肩から落ちた。
パチュリーの冷たい視線をまったく気にした様子もなく、ただにこにことしている。
それだけなのに。なぜかパチュリーは白蓮を無視することができない。
騒ぐこともなく、ただそこにいるだけならば、放っておいて読書に戻れるはずなのに。
「何を言おうと、撤回はしない」
「ええ。そうですね」
「だったら、あなたは何をしにきたのかしら?」
やはりふわりと微笑んだ白蓮はこともなげに同意する。それでは一体何をしにきたのだろう、見当もつかないパチュリーは訝しげに眉を寄せた。
「今日の私は、僧侶、聖白蓮です」
「布教なら間にあってるわ。魔女と宗教は相性が悪い」
「ああ、あなたは外の世界から来たのでしたね」
「ん」
「西洋と言えば、魔女狩りと称して罪もない妖怪たちが残虐な手段で虐げられてきたとか」
「昔の話よ」
「私は」
嫌なことを思い出したといわんばかりに、渋い顔をするパチュリーの手をつかむ白蓮。
慈しむように小さなその手を撫でながら、白蓮は柔らかく微笑んだ。
「私はそんな妖怪たちの力になるために魔法を使っています。それは間違っているのでしょうか?」
「……正しいか、間違っているかは関係ない」
「あなたは私が魔法を使い続けることを許してくれますか?」
まっすぐ、パチュリーの目を見て微笑む白蓮だが、その目は決して笑っていない。
「言ったでしょう? 私はあなたを魔法使いとは認めない」
「そうですか」
「力を、真理を求める姿勢なくして、何が魔法使いよ」
「私は、己のことしか考えず、周りを顧みない存在には戻りたくありません」
柔らかな物腰でありながら、決してぶれることのない芯を持った白蓮は、パチュリーのきつい視線にも全く動じることはない。ただ、落ち着いた様子で、静かに語る。
「もちろん、あなたが何を言おうが、魔法使いであることを止めようとも思っていません」
「……」
「私が力を捨てるのは、真に妖怪と人間の間に平等な関係が生まれたその時です。この幻想郷は確かに理想に近いけれど、まだ不十分だわ」
「そう」
「そのために力を尽くすことが魔法使いである私の使命」
とうとうと語る白蓮の目的が読めず、パチュリーは困惑する。動揺している。
しかし、パチュリーだって負けてはいない。
一度深呼吸をして、早口にまくしたてる。
「私は魔女。魔法を、真理を愛している。魔女であることに矜持がある」
「ええ」
「だから、中途半端な気持ちで、極めるつもりもなく、魔法使いを名乗る存在を認めない」
「……」
「当然、許すこともできないわ」
興奮のあまり頬を紅潮させ、珍しくも苛立たしげに言うパチュリー。
しかし、白蓮は微笑んだまま。すうっと瞳を細めて、さらに優しげな印象が増していく。
「なによ」
「……この幻想郷には素晴らしい決闘ルールがあると聞きました」
「弾幕ごっこ。やる気なの?」
「言葉で分かりあえないのなら、力の行使も辞さない覚悟です」
にっこりと満面の笑みを浮かべた白蓮に、パチュリーも獰猛さを感じさせる笑みを浮かべる。
「あなたは自らの信念に囚われて、他人を受け入れることをしない。誠に愚かで、自分勝手である!」
「えーと、目の前の人物の信念を消極的にねじ伏せる方法は……」
揃って臨戦態勢。もうどちらも今すぐにでもスペルを唱えられる状態だ。
きっ、と、鋭くお互いを睨みあって、にやりと不敵に微笑みあう。
聖母のような白蓮と、日陰の少女たるパチュリー、それぞれに似つかわしくない、好戦的な表情だった。
「今日は喘息も調子いいから、とっておきの魔法見せてあげるわ!」
「いざ、南無三――!」
「むきゅー……」
「大丈夫ですか?」
ぜえぜえ、と疲れ果てた様子のパチュリーは、ペタンと床に直接正座した白蓮の膝に頭を乗せている。
白蓮はそんなパチュリーの髪をそっと撫でながら、心配そうに問いかけた。
ともに実力のある魔法使い同士の弾幕ごっこ。
相性の問題もあったのか、そうそう簡単には決着がつかなかった。
どれだけ長いこと闘っていたのかは定かではない。だが、体力の面で、超人である白蓮に人間以下のパチュリーがかなうはずもなく。
先にへばったのがパチュリーだった。
スペルも残している。被弾もしていない。
それなのに落下していくパチュリーに驚いたのか、床に落ちるより先に白蓮が受け止めた結果が今の状況だった。
「無理、もう無理。疲れた」
「もう少し体力をつけたほうがいいんじゃないでしょうか?」
「……流石に前向きに考えようかと思うわ」
起き上がるだけの体力もないのか、ぐったりとしたパチュリーは珍しくも素直に頷く。
魔理沙やアリスが聞いたらまず信じないであろう素直さ。
「なんだかおかしなことになりましたね」
「うう……」
お互いの信念をかけた決闘の幕切れがこれではいかにもしまらない。
白蓮がパチュリーを見下ろしたことによって、顔を見合わせた形になった二人はどちらからともなく笑ってしまう。
「ふふっ」
なにが楽しいのか、分からないまま、ただ笑う。
滑稽な幕切れか、本気でケンカをしてしまった気まずさか。
「引き分け、ですね」
「引き分け?」
ぽわん、と微笑んだ白蓮にパチュリーは首を傾げる。
「先に落ちたのは私だから、私の負けよ」
「でも、それは不慮の事態ですし」
「……」
「パチュリー?」
「……こっちが素直に負けを認めてるんだから、乗っかればいいのに」
「いえ、とても勝ったとは言えませんから」
胡乱げな瞳で見上げてくるパチュリーに、ゆっくりと首を横に振ることで応える白蓮。
それを見たパチュリーは、はあ、と一度ため息をつく。
「本当にあなたは魔法使いとは思えない」
「そうですか?」
そもそも弾幕ごっこの原因となった話題に、ぴしりと空気が凍る。
ただ、黙ってパチュリーを見つめる白蓮は一体何を思っているのだろうか。笑顔というのは無表情以上に感情が読み取りづらい。
しばし、見つめあう。
やがて、パチュリーは仕方無い、と言うように鼻を鳴らして、口を開く。
その表情は決して暗いものではなくて。
「私はあなたを魔法使いとしては認めることはできない」
「そうですか」
強情なパチュリーが、確固たる信念を持って白蓮を拒絶したパチュリーがこんなことで白蓮を認めるとは思えない。
分かっていたことではあったけれど、少しばかり気落ちした白蓮の顔にわずかばかり影がさす。
「だけど、魔法を使う僧侶としてなら、認めてもいいかもね」
「え?」
「二度は言わないわよ」
白蓮は魔法使いだ。白蓮は魔法使いではない。
二律背反する答えを無理やりひとつにまとめたような結論だった。
少し照れているのか、パチュリーは寝返りをうつことで白蓮の視線から逃れようとする。
結果として、うっかり内側に転がってしまったためにより接近した結果ではあるのだが。
「屁理屈ですね」
「魔女だもの」
「……ありがとうございます」
花が咲くように微笑んだ白蓮をパチュリーは見ることができなかったのだけれど。
衣服についたかぎ慣れないお香の香り、ワンピース越しに伝わる温かさは、とても好ましいもので。優しくパチュリーの頭に触れた手も心地よい。
「また、あなたの魔法について教えてくれる?」
「もちろんです。私もまた、来てもいいですか?」
「本を盗まないならね」
「はい。うちの子たちも連れてきても?」
「騒がないならね」
ぽつりぽつりと言葉を交わして、お互いの間にあった壁がゆっくりと溶けていく。
ひねくれた物言いにも慌てず微笑む白蓮も、素直なのかそうではないのかよく分からないパチュリーも。
やがて、アリスや魔理沙も交えた楽しい時間の訪れを信じていた。
「ちょっと、魔理沙。本当なの? 弾幕ごっこけしかけたって」
「んー? だってほら、やっぱ一番手っとり早いし」
「そう言う問題じゃないでしょうに」
「違うか?」
「違わないこともないけど。そう簡単にうまくいかないわよ」
「なんで?」
「アイデンティティの問題だもの。もっとこうゆっくりと……」
「難しいことはいいって。ああ、ほら、もう図書館着いたぞ」
「……もう」
重い図書館の扉を開けて、アリスと魔理沙は足を踏み入れる。
少しでも気持ちを引き立てようと気合いを入れてお茶会の準備をしてきたアリスと魔理沙。もちろん、白蓮が来ていることは想定済みだったのだが。
「うわ」
「えー?」
図書館の床に座り込んで膝枕をしている白蓮とパチュリーの姿を目にして。白蓮は楽しそうに微笑んでいて、パチュリーはじと目ながらも早口で何かを語っている。
よく見れば、パチュリーの頬には白蓮の手が添えられ、パチュリーはその手をそっと撫でていた。
険悪な空気とは正反対の、穏やかで温かい雰囲気に二人は揃って驚きの声を上げる。
和解ぐらいならば想像もしていたけれど、このいちゃいちゃした感じはなんなのだろうか。
「魔理沙、アリス」
「昨日はすいません」
そんな二人に気がついたのか、少し申し訳なさそうな顔をする白蓮とパチュリー。
「いったい何があったんだよ?」
「そうよ、パチュリー。驚いたんだけど!」
二人の追及に、一度顔を見合わせたパチュリーと白蓮は小さく微笑みあう。
そして、声を揃えて言うのだ。
「ひみつよ。ね、白蓮」
「ひみつです。ええ、パチュリー」
やたらと仲のよさげな二人に目を白黒させていたアリスと魔理沙だったけれど。
「もう、どれだけ心配したと思ってるのよ」
「そーだそーだ。秘密ってのはないんじゃないか?」
「百年も生きれば秘密の一つや二つできるわよ」
「いや、ここ一日の話でしょ?」
「魔女だもの」
「いや、意味が分からないぜ」
「最近、魔女だもので全部済まそうとしてない……?」
「魔女だもの」
「いや、だから!」
「あらあらあら」
しれっとしたパチュリーと、微笑ましそうに微笑む白蓮を見て、アリスは大きくため息をついた。魔理沙も、おいおい、と疲れた声。
だが、続くいつもどおりのやり取りに、自然と表情は綻んでいて。
二人、細かいことはまあいいか、とばかりに一度頷き合う。
「それじゃあ、お茶会にしようぜ? いっぱいお菓子を用意して来たんだ」
「用意したのは私でしょうが。パチュリー、この机の本片付けていい?」
「ちょっと待って、今読むから」
「何かお手伝いすることはありますか?」
そうして、今日の図書館は四人揃って賑やかで。
それはとても幸せなことだった。
白蓮
凄く良かったです!!
認めることは
イイハナシダナー
やっぱPekoさん最高です…!
弾幕ごっこを始めるちょっと前のところの、
「たから、中途半端な気持ちで、極めるつもりもなく、魔法使いを名乗る存在を認めない」
→「だから、~」
でしょうか。
三魔女と聖☆お姉さんとの夢の競演だぜ、ありがとおおおお!!
さあ次は吸血鬼の魔法少女を入れて五魔女でよろしく
白蓮は封印されてる間は自由なんて無かっただろうから、そのほぼ全ての時間を瞑想とか自己鍛錬に使ってたはずで、結果的に魔力が強くなったんだろうなと思う。
ドラクエ的に言うなら白蓮は僧侶(数10年)→魔法使い(約1000年)→僧侶(現在)と転職した感じですかね。だから魔法使いとしての能力が高い僧侶になったと。
頑固だけど最後には譲歩するパチェもかわいい。
なんとなく、パチェが1000歳になる頃はどんな考え方に至ってるんだろうと思った。
四魔女になっても大好きや!
なら、魔法の実在を証明し研究する為に科学を極めた夢美教授をどう見るのか。
魔理沙、アリス、パチュリー、白蓮…エレンやフランもいいけど、ユキやマイもいいと思うんだ。