禁書と呼ばれる物がある。
一般的には主に、時の権力を代表する政府あるいは宗教的、イデオロギー的な権威によって禁止された書物である。
だが、魔道の世界においては異なる。
文字通りの閲覧すら禁止されるほど危険な書物と言う意味になる。
書自体に籠る力は絶大。精神への影響も絶大。
心得の無いものが目にすればたちまち心が焼かれて廃人となる。
そのようなものに書かれている内容は何か?
死者の復活や異世界神の召喚などこの世の事割を捻じ曲げてしまう事象などだ。
大概の物が筆者も流通も不明。
気が付けばそこにあり、いずれも恐ろしい悲劇を生んできた禁書達。
それ故に、いや、だからこそか。禁書は人々を……主に魔法使いを引きつける。
否応なきにでも知識欲を刺激させ、そして惑わしその手に取らせて表に出ようとする。
それがここ、紅魔館の図書館にも保管されているという噂がまことしやかに囁かれていた。
パチュリーはただそれを見下ろしている。
目の前には倒れた人影があった。
魔理沙である。
全身に焦げ目をつけて僅かに痙攣していた。
なんて事はない、ダミーの入り口の罠にかかったのだ。
どこからか禁書の存在を嗅ぎつけて、最近ではそれを探す様になった。
魔法で作り出した異空間へと保管しているが魔法使いならば見つけるのはそう難しくないだろう。
まだ年若いとはいえ魔理沙はれっきとした魔法使いで、意外な事に攻撃以外の魔法もそれなりに使えるのだ。
故にパチュリーはダミーの入り口をたくさん用意した。
それぞれには素敵な罠が仕掛けられている。
とりもちや墨汁を降らす可愛い物から、触手地獄やランダムテレポーターと言う洒落にならないものまで様々だ。
そして、いま魔理沙がかかったものは電撃の罠で、しばらく作用によって動けないだろう。
「今日もまた盛大にかかりましたね~」
何時の間にやら現れた赤毛の少女がそんな事を言った。
図書館に住みつく小悪魔で一応、図書館司書の役職を与えられている。
「懲りないわね本当に」
パチュリーがそんな事を呟く。
この若い魔法使いは何度罠にかかろうとやってくる。
ダミーが多ければ全てを調べつくせばよいと、そんな考えでもあるかのように。
「医務室へ運んでおいて」
了解、と返事をして小悪魔が魔理沙を運んで行く。
其れを見届けるとパチュリーは手を掲げた。
短く呪を呟くと煙が立ち、そこには木製のドアが現れていた。
取っ手を引いて開くと、そこには明らかに図書館とは違うただ真白い内装の部屋が広がっていた。
「惜しかったわね」
あと少しだけ探索場所をずらせばここを見つける事が出来たかもしれない。
まあ、そうしたらそうしたで、中の封印は解けないだろうし問題ないとパチュリーは思いながらドアをくぐる。
台座に置かれている、箱にかけられた九つの封印を全て解除する。
それを開いたパチュリーの目の前に映るのは三冊の禁書で、その一冊を手に取った。
ぱらぱらとページを捲り、内容を確かめる。
そこにはこう書かれていた。
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パチュリー・ノーレッジ。
伝説の魔法使いの家系で、天使と悪魔の力を操る。
その力を危険視した教会により目の前で家族を惨殺されたトラウマを持つ。
その時に生まれた破壊と殺戮を好むもう一人の自分に恐怖しており、その人格を必死で抑えている。
普段は孤独を好みそっけない態度をとる。
それは自分の問題に他人を巻き込む事を恐れているからである。
天才的な頭脳を持ち、また身体能力も高い。人知れず世界を滅ぼそうとする異世界からの侵略者達と戦い続けている。
それにより多くの敵に恐怖と絶望を与え、其の事から「黒き夜に舞う鮮血の執行者」の異名を持つ。
また僕として雷帝や剣聖など十二人からなるナイツオブラウンドを配下に持ちそれぞれ個人が絶大な力を誇る。
その代表的な人物としては大殺戮の女帝レミリアや堅牢地神紅美鈴、心持たぬ絶望者フランドールなどがあげられる。
その全てがいずれも変わらずにパチュリーに忠誠を誓っていて、決して裏切ることはない。
パチュリーの操る魔法はどれも絶大で主に得意とするものは以下のものである。
聖逆十字反天雷烈波(クロス=クルセイドリバースデリンジャー)
雷帝の真の力で放った、凄まじい破壊力の雷を敵に叩き込む超絶魔法。相手は死ぬ。
葬炎舞鎮魂花(ラ・バーメイル マリー)
四黒元素方陣の力によって山一つを軽くふき飛ばせる強力な魔法。相手は死ぬ。
詠唱:滅びよ豊饒の大地!!罷り通るは葬列の炎!!我が名はノーレッジ!!七曜の魔女!!死を纏う炎の花嫁を見よ!!葬炎舞鎮魂花!!
聖魔炎滅(ジャスティス)
あらゆる者を焼き尽くす、神聖なる炎系魔法。この世の終わりに全ての邪悪を焼き尽くすという“メキドの火”を円法陣形の剣に封じてから使用する。
力を分散させ複数の標的に攻撃することも、集中させ単体を攻撃することも可能。相手は死ぬ。
餓哭喰噛嚥魂(ブラッディ・デスイーター)
三世紀前の古代呪文で高等呪文。床に大きな牙を持った口を召喚し敵を喰らい尽くす。相手は死ぬ。
第三の業火(マキシ・ブラスト)
熱と衝撃が触れるもの全てを完膚なきまでに破壊し、目標領域を徹底的に殲滅する。相手は死ぬ。
しかしその真価は火力の大きさではなく、狙点周辺の気流も制御する事で制御力を上げ、より遠くに、威力を集中して、精密に攻撃できることにある。
詠唱:我・法を破り・理を超え・破軍の力・ここに得んとする者なり…爆炎よ・猛炎よ・荒ぶる火炎よ・焼却し・滅殺し・駆逐せよ
我の戦意を以って・敵に等しく滅びを与えよ……我求めるは完璧なる殲滅!<マキシ・ブラスト>イグジストッ!
他にも「神滅斬」や「我が契約により聖戦よ終われ」など恐ろしい魔法を多数操る。
だが、其れらの強大すぎる魔法は使用するたびにパチュリーを蝕み呪詛を溜めていく。
呪詛が溜り過ぎると体に変調をきたし、変異し、化け物となり果てる恐ろしい未来が待っている。
しかし己の信念の為にパチュリー・ノーレッジは魔法を使用する事を恐れないのだ。
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そこまで読み終えてパチュリーは息を吐く。
こんな様な内容が延々と記されているのだ。
昔の、若いころに記したパチュリーにとっての禁書だ。
間違いなく禁書である。
書自体に籠る痛さは絶大。精神への影響も色々絶大。
誰か知り合いが目にすればたちまち(パチュリーの)心が焼かれて廃人となる。
こんなものが見つかったら自身の魔法使いとしての権威は地に落ちるだろう。だが……
「なんでか、捨てられないのよねぇ」
そう呟いて、彼女は封印をかけなおすべく詠唱を始めるのだ。
-終-
でも痛さが割増しになって戻ってきたwww
目にすればパチュリーの心が焼かれる。しかし目にしたこっちの精神ダメージも計り知れない諸刃の剣。
さっさと燃やせwww
懐かしいなぁ
確かに見た人間にも不幸をまき散らすな、これは…
でも堅牢地神って何故か水属性なんだよね
そして俺は死んだ