Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

小悪魔です、本日よりアリスさんの紅魔館居住が始まります。

2010/03/18 11:57:06
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拙作[小悪魔、己が主人とその友人との関係を心配する事]から続いています。
とはいえ、前作は3KBにも満たない短編ですので、読んでなくても問題はないと思われます。

*******

パチュリー様が変です。










いつもの事でした。言いなおします。
パチュリー様が挙動不審です。

本と時計の間をうろうろする視線。
妙に浮ついた座り方。
廊下で足音が聞こえるたびにすわ何事かと身構える姿勢。
普段のパチュリー様ならば、その動かざる事山の如しと据えられたお尻は廊下で爆発音が聞こえようが剣戟音が聞こえようが微動だにしないはずなのです。
これは一体何なのでしょう、また異常気象や地震が起こっちゃうのでしょうか。

なんてね。実は私、その理由はとっくの昔に知っています。

アリスさんです。アリスさんなんです、こあー。


つい3日ほど前。白黒の魔法によって家が焼却処分されてしまったアリスさんは、パチュリー様を通じてレミリア様に紅魔館への逗留願いを出されました。
それで、アリスさんが紅魔館に来るのが今日と言う訳です。

アリスさんがお部屋を取られている人里の宿場までその旨を伝えに行ったこの私が言うのだからまちがいありません。

パチュリー様も「仕様がない未熟者だ事、あの狡賢い鼠になんて気を許すからそう言う事になるのよ」なんていいつつも昨日一日かけてアリスさんを迎え入れる準備をしていたぐらいには舞い上がっているようです。

具体的にいえば、普段パチュリー様が使っている机の周辺の本棚にアリスさんが興味を持つであろう本を大量に移動したりとか。

「これは魔道を志す先達としてあの未熟者の生活態度云々」などと呟きながらアリスさんが入居する部屋でごそごそしてみたりとか。

そうやってパチュリー様の面白い行動を思い出していたら、図書館の扉に備え付けられているノッカーが控え目な音を立てました。
パチュリー様の様子はと眼を走らせてみれば、先ほどの浮ついた様子や視線は何処へやら。
本に埋めた迷惑そうな顔で、扉の方を睨みつけ。
「入りなさい」と呟きました。
伊達に年はとってないですね、取り繕うのがお上手です。
しかし図書館に入ってきたのは妖精メイドで。
「何の用かしら、用もないのに図書館に来ないようにと言っておいた筈だけれど。」
肩すかしを食らったパチュリー様が怒っているのが手に取るように解りました。
けれど妖精メイドの彼女にとってみればとんだとばっちりな訳で。
不満気にその柔らかそうな頬をぷうと膨らませ、妖精特有の舌足らずな口調でアリスさんが来たようですと告げました。
彼女の話によると、アリスさんは今現在門番長である美鈴さんが応対しているようで、美鈴さんに言われてパチュリー様にそれを伝えに来たそうです。
それを聞いたパチュリー様は彼女への態度を一転。
わざわざありがとうこれは不快な思いをさせたお詫びよチップ代わりにとっておきなさいなんぞと早口でまくしたてて彼女に飴玉を握らせ。
彼女が上機嫌で図書館を飛び出したそのあとすぐに、私の方に向き直ってこうおっしゃいました。

「さあ小悪魔、アリスを迎えに行くわよ。
 彼女の要請を受けたのは私だもの、私が迎えに出るのが礼儀という物よね?」

そういってふよふよと移動を始めたパチュリー様の速度は普段の1.4倍(こあ比)
いえ、何も言いませんよ。だってお叱りを受けるのは嫌ですからね。
あいにくと、私は痛覚を刺激されて喜ぶような性癖は持ち合わせていないのです。こあー。


エントランスに入れば、咲夜さんに先導されたアリスさんが丁度玄関から入って来る所でした。
お二人もこちらに気がついたとみえ、こちらに近寄ってきます。

「あらパチュリー様、お出迎えですか?」
「冗談、野鼠に家を焼かれた愚か者の出迎えをするような趣味は無いわ。
 監視よ、監視。紅魔館まで燃やされたんじゃあたまらないもの。」

そう言って首を振るパチュリー様。
アリスさんは反論できない自分が恨めしいと肩を落として。
咲夜さんはまあまあとパチュリー様を諌めます。
パチュリー様はああいうけれど気にしないでね私達の仲じゃないとアリスさんの手をとるおまけ付き。
流石に瀟洒なメイドは格が違った。我が主人に出来ない事を平然とやってのける。
お前門番とイチャこいたんだろゴルァいますぐアリスから手を離しやがれその娘はお前と違って清い体なのよと言わんばかりのパチュリー様の視線をいともたやすく受け流すその姿勢も流石に瀟洒でいらっしゃる。ああいらっしゃる。

結局パチュリー様がふんと荒い鼻息を一つ。
咲夜さんからアリスさんの手をもぎ取ってアリスさんが入居予定の部屋へと引っ張って行きました。
それを黙って見送る咲夜さんと私。

「咲夜さぁん、後でとばっちりを受けるのは私なんだから勘弁してくださいよぉ。」
ボヤく私を尻目に、咲夜さんは知らん顔。
「んー・・・どうしようかしらねえ。」
「第一なんでアリスさんに手を出すんですか、もう。」
「だって」

「だってアリスからは幼上の匂いがするんだもの」

※幼上:ある特定の趣味嗜好を持つ者にだけ通じる言葉。
    ある物に対する最上級の賛辞として用いる 類義語:特上、極上

使用例:レミリア様のおふぁんつは今日も幼上でいらっしゃる
    悪戯兎の罠を華麗に回避してやった時の視線は幼上だった

「門番さんは幼上には見えないですけど」
「愛と恋とは別物なのよ」
「そうスか・・・」

それじゃあ私は夕食の用意があるからと厨房にはしる咲夜さん。
っていうか幼上の臭いて。犬かよ。犬か。
レミリア様も「あいつから乙女臭がする」とか言ってたし。
類は友を呼ぶって奴でしょうか。
乙女臭は兎も角、アリスさんから幼女臭がするって言うのも妙な話ですけど。

兎も角私は咲夜さんと別れて、アリスさんの部屋へと到着しました。
アリスさんに宛がわれた部屋は紅魔館の中でも結構上等な部類に入る奴で、ぶっちゃけ私よりも待遇がいいです。
まず私の部屋よりも広いです。ソファーだって私の部屋においてある奴より上等でふかふかしてる奴ですし。棚とかもいかにも高そうな奴が置いてあります。
・・・ベッドがキングサイズなのには後ろ暗い理由は無いと思います。

部屋の感想を聞いてみれば、
アリスさんは苦笑しながら、「ここの生活に慣れると魔法の森の生活に戻るのが辛そうだわ」と返してくれました。
残念ですが、まさにそれがパチュリー様やレミリア様の狙いの一つだったりします。
一見普段の仏頂面にしか見えないパチュリー様も内心でほくそ笑んでいるのが解ります。
こうやって、「七色を我らが紅で染め直せ作戦」第一陣は成功に終わりました。
いや、私が勝手に付けた名前なんですけどね、これ。


気心のしれた相手と相対していれば、時間はすぐに過ぎる物。好意を持っていれば尚更。
かくして時間は過ぎて行き、今は夕食の時間と相成りました。

…かっこつけました、ごめんなさい。


ともかく、お夕飯の時間です。
アリスさんを食堂に案内する事は、私こと小悪魔が、部屋にみにょんと現れた咲夜さんから承った大事な大事なお仕事です。こあー。

「驚いたわアリス、この子が食堂の場所を覚えているなんて。」
流石にそれは失礼だと思いますパチュリー様。
いくら私でも自分の主人が普段使ってる食堂の場所ぐらい覚えてますって。
…パチュリー様のなかで、私ってどんな存在なんだろう。
溜息を一つ付いて、食堂の扉を開きます。

食欲をそそる酸味の効いた香りを出しているのはスープでしょうか。
中央に置かれた大皿に盛られているのはロールキャベツのような物。
新鮮な野菜をざっくりと斬ったサラダにかけられているのはサワークリーム。
その隣に並べられたお肉も一見して解る程に良い焼き加減。
チーズにヨーグルトと豊富な乳製品が並び、パン代わりにおいてある付け合わせはトウモロコシの粉を水で練ったものでしょうか。

そうしてそれらの揃った食卓の向かい側で私達を、否、アリスさんを待っていた人。

「よくぞ来た。」

我が主であるパチュリー様のご友人であり。

「お前が我ら紅魔館を頼ってくれて、非常に嬉しく思っている。」

また、紅魔館に生きる全ての者にとっての憧れである。

「何、他意は無い。
 私と、そして私と共に紅魔館に生きる全ての者達が、お前のような優れた魔法使いをして、非常時に頼るべき存在であると認識されている事がただ嬉しくてな。」

薄桃色の服に引かれた、その瞳と同じ血の色のライン。

「それに、我ら姉妹とお前の間には浅からぬ縁がある事でもあるし。」

血管と言う物の存在が信じられぬその肌はまるで病人のようで。
風もないのに静かに揺れるその髪は薄紫色。

「今夜の料理はお前と、そして我ら姉妹の為に特別に作らせた物だ。
 材料の産地まではどうにもできなかったが、其処は少々我慢してほしい。
 なに、味付けのほうは完璧だよ。我が従者のやった事ながらな。」

光栄の極み、とお辞儀をするのは左手側に佇む美鈴さん。
美鈴さんを挟んで向かい側、左の席に付いているのは金の髪と虹色の羽を持つ妹君。

「お前の紅魔館入居を記念して、まずは舌で持って懐かしき故郷を回想するとしよう。
 なあ、ブクレシュティの年若い賢き同胞、アリス・マーガトロイド。」

にやりと持ちあがった唇の間から、ぎらりと鈍色に光る犬歯。
右手に咲夜さんを侍らせるこの人こそ、永遠に紅き幼き月。
レミリア・スカーレット嬢です。

「ん、解せぬといった様子だが、どうかしたかね?。
 自分の出身地を言った覚えは無い、という顔だな、それは。
 なに、私の力を持ってすればお前の運命の発生点がどこで在るかという事ぐらいはすぐにでも解ると言う事だ。
 細かい事は気にせず今日は楽しんでいってくれたまえ。
 かく言う私も美鈴の作る故郷の味を口にするのは久しぶりでねえ、年甲斐もなくはしゃいでいるのが自分でも解る。
 幻想郷に来てからはずっとこちらの料理しか口にする機会が無かったからな。
 だから咲夜も我らが故郷の料理についての知識なんて持ち合わせてなどいなかったのでね。
 ルーマニア料理を作れと言った時の咲夜の顔と言ったらお前にも見せてやりたかったぐらいだな、完璧で瀟洒が聞いて呆れる。
 今日の昼過ぎに美鈴に稽古を付けてくれと頼み込む姿などは昔の咲夜を思い出して…
 おっと失礼、話が横に逸れてしまったようだ。
 何事にも昔の話を持ち出してしまうのは長生きした物の宿命だから許してくれたまえ。
 だが昔の咲夜などは今の咲夜からは想像もつかないほど可愛らしく…」
「レミィ」
「なんだ」
「話が長い」
「そんなあっ!」
せっかく考えてきたんだから最後まで喋らせろようと食卓をばんばん叩く永遠に幼き(笑)紅い月ことレミリア嬢。 あ、これ故意ですから、誤字じゃないですから。
普段偉ぶれないんだからこういう時ぐらい偉ぶらせてくれようなんぞと喚くその姿からは先ほどまで放出していたカリスマ的な何かが微塵も感じられません。
「だいたいあなたの話なんて真面目に聞いていたら脱線脱線でいつまでたっても終わった試しが無いじゃない。
 ほらアリス。あなたもぼーっとしてないで早く食卓に付きなさい。」
「え、ええ…。」
いいのかなあ、といった調子でパチュリー様に引っ張られ、レミリア様と対面する場所に座るアリスさん。
納得いかんと騒ぐレミリア様をなだめてすかしておだてて乗せて。
すっかり機嫌の治ったレミリア様の音頭で乾杯し、夕食が始まりました。

結論から言うと。
アリスさんに対する質問やその逆が多かったぐらいで、全体的には普通な食卓の会話でした。
…レミリア様がセクハラ疑惑でパチュリー様に焼かれたのを除けば。

「故郷の料理を食べた後は故郷の女の血が飲みたくなるものだ。
 なあアリス、もしもお前が望むのであれば、私というダンスホールの上で、我ら種族が行う最も甘美かつ魅力的なダンスの振り付けを伝授しようと思うのだが。」

なんて言ったら焼かれますよね、そりゃあ。
だれだってそうする。パチュリー様はそうした。


食事が終わって、私達は一旦解散しました。
私とパチュリー様は普段通り図書館に。アリスさんは部屋で荷物の整理など。
門番さんと咲夜さんは職務に戻って、レミリア様とフランドール様は各々のお部屋にお戻りになられました。

定位置に座って、なにやらじっと水晶玉を見ていらしたパチュリー様が急にいそいそと動き出ました。
何かあったのですかと尋ねた所。「どうやらアリスが入浴するみたいなのよ、浴室へ移動を始めるわ」との返答。
…ああ、部屋でごそごそしていたのはその水晶玉の下準備だったのですね。
嫌われない程度にしてくださいね、本当に。


途中、水晶玉のスイッチを入れっぱなしにしてきた事に気がついたパチュリー様は一旦図書館に帰り、私は先に浴室へと向かう事になりました。
脱衣場へと着い時には、アリスさんはもう脱衣を済ませた後でした。
もしパチュリー様がいたらこう思ったでしょう。
「残念、アリスの脱衣シーンは見れなかったのね。」
そしてこうも思ったでしょう。
「なんでタオル巻いてないのよこの娘は。殺す気か、私を。」
もうね、丸見えです。
内腿とかふくらはぎとか二の腕とかうなじとか
それどころか幻想郷の平均でいえば少し大き目の胸とか!他の所が少し大人っぽいだけに余計に目立つ生えてな(自主規制)とか!
けしからん!実にけしからん!もっと見せろ!
もう辛抱たまらん、こああーっ!


「そう、こういう所だとタオルとか巻いて隠した方がいいのね。
 魔界だとそういう習慣って無かったから。全員身内だったし。
 ありがとう。お礼を言っておくわ。」

いえいえ、お気になさらず。
アリスさんに恥をかかせるとパチュリー様に怒られますから。
いや、ちょっと悪魔の本能が暴走しただけで。だからこれは仕様がない事なんです。
元はと言えばアリスさんがそんな恰好で、あ、今はタオル巻いてますけど。
でもあんなカッコでいるから悪いんですよ、だから上海人形は勘弁して下さ、あっ。
レミリアのセクハラ発言に対する反応

アリス:血を寄越せぐらいな事は言われると思って覚悟して来たので
    どうしてあんなに婉曲した言いまわしだったのか不思議に思った
パチュリー:親友として見てられなかった
咲夜:主の恥を記憶に留めておくのは不忠に当たるので直に忘れた
美鈴:昔似たような事を言われてたので慣れてる
フランドール:おねえさまかっこいいなあ

*

今回途中まで小悪魔のレミリアに対する三人称を「お嬢様」として書いていたんですが。
「よく考えたら小悪魔ってパチュリーに仕えてるわけであってレミリアの事をお嬢様って呼ぶのは何かおかしいんじゃないか」という事に気が付きました。

時間の経過を美味く書ける人は羨ましいです。

追記:
>>2様>>4様
誤字指摘感謝します。修正しておきました。
蛍石
[email protected]
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
愛されアリスいいねえ
2.名前が無い程度の能力削除
>私達の中じゃないとアリスさんの手を
中ではなく仲じゃないかと。あとどういう仲かkwsk

お嬢様くどすぎる。だがそれがいい。
3.名前が無い程度の能力削除
さて、中編も面白かったし

夜(後編)が楽しみである。
4.名前が無い程度の能力削除
幼上……勉強になります。このおぜう様の語り最高ですね。あと誤字?報告。
アリスさんが恥をかかせるとパチュリー様に怒られますから。
アリスさんが→アリスさんに の方がいいかと。
では続きを楽しみにしてますね こあー。
5.名前が無い程度の能力削除
生えてない……だと……
6.名前が無い程度の能力削除
小悪魔かわいい
7.名前が無い程度の能力削除
いいですね
全員素敵
8.奇声を発する程度の能力削除
>不満げにその柔らかそうな頬をぷうと膨らませ
やだ、この妖精凄く可愛い。

続きが楽しみです!
9.ずわいがに削除
正直この作品はとんでもなくツボでやヴぇえです。アリスさんマジぱねぇッス。
ていうか小悪魔の一人称も魅力的です。ずわー。
10.名前が無い程度の能力削除
フランは物事をまっすぐに見るいい子なんですね…
11.名前が無い程度の能力削除
もりあがってまいりました!!!
12.名前が無い程度の能力削除
つまり咲夜さんの理想生活は、美鈴に愛でられつつアリスを愛でる日々ってことですね。

一秒でも早くアリスを紅魔館から奪還すべく、連日連夜の貫徹工事でマガトロ邸の復興に努める魔理沙の汗と涙を幻視しました。
13.名前が無い程度の能力削除
こあー。
全裸で入浴とはけしからんです、こあー。
愛されアリスは癒されます。
アリスは周到に張り巡らされたパチュリー包囲網を突破できるのだろうか。
14.名前が無い程度の能力削除
かまわん、続けろ
15.名前が無い程度の能力削除
お嬢様がカリスマックスかと思ったらそんなことはなかったぜ。
今から続きが楽しみです。
16.無休削除
なんて幼上なSSなんだ

紅魔館の住民になっても違和感が無いなアリスは…なぜだ
17.名前が無い程度の能力削除
幼上wwwwwwwwwwwwwww