紅魔館の主、レミリア・スカーレットは、暇を持て余していた。
暇に耐えかね、親友のパチュリー・ノーレッジに相談する為、図書館に赴いた。
「ねぇ、パチェ・・・何か面白いことないかしら。」
「読書でもしなさい。」
「そういう気分じゃないないのよ。」
「咲夜に遊んでもらったら?」
「主人として、メイドに遊んで貰うって嫌じゃない。」
「じゃぁ、フランと遊べば良いじゃない。」
「だめね。フランはどうせ弾幕ごっこしたいって騒ぐだけだもの。」
「やっぱり、読書でもしなさい。」
「人間って、こう言う時何して時間を潰すのかしら?」
「霊夢ならお茶を飲んでいるでしょうし、アリスなら人形作り、魔理沙は何しているのかしらね・・・他に考えられるとしたら、旅行に出かけたり、ペットと遊んだり・・・人それぞれでしょ。」
「旅行って言っても特に行きたい場所もないし・・・ペットなんて飼うのも煩わしいだけじゃない。」
「それに、うちには既に悪魔の狗もいるしね。」
読書を中断し、相談にのっているにもかかわらず、全ての案を却下された為、パチュリーは少し腹を立ててレミリアに答えた。
「悪魔の狗・・・それがあったわね。咲夜!」
「えっ、ちょっとレミィ。何考えているの?」
パチュリーの一言に面白い事を考え付いたレミリアは早速、咲夜を呼びつけ、パチュリーは今の一言がとんでもない事を言ってしまったことに気付いた。
「お呼びでございましょうか、お嬢様。」
優秀なメイド長、十六夜咲夜が主の求めに応じ、直に現れた。
「咲夜。私、犬を飼おうと思うの。」
「はい。では早速購入してきます。どのような犬が良ろしいでしょうか。」
「私の言うことは何でもきく、優秀な犬が良いわ。」
「はい。では早速、見繕いまして・・・」
「何言ってるの。私の目の前にいるじゃない。」
一時の沈黙。
「・・・お嬢様、まさか私に犬になれと・・・」
「だって、貴方はもう悪魔の狗じゃない。」
「いえ、それはあくまでも比喩的な意味で・・・」
「いいから、さっさとこれを着けなさい。」
どこから取り出されたのか、犬耳のカチューシャとリード付きの首輪を咲夜に着けさせる。
「よく似合うわよ。それと今から『ワン』としか言っちゃだめだからね。」
不承不承犬耳カチューシャを着ける咲夜に、レミリアは追い討ちの命令を与える。
「……わん……」
「レミィ。あまり良い冗談ではないから止めてあげなさい。」
「折角、犬を飼ったんだからやっぱり誰かに自慢しないとね。やっぱり、霊夢かしらね。」
パチュリーの忠告を無視し、一人で話を進めるレミリア。
レミリアは自分の気に入ってる霊夢に自慢したいのだろうが、咲夜にとってはたまらない。
「お嬢様。それだけはお許して下さい。」
主の命令だから、多少の事は我慢しようと思っていたが、これはやり過ぎではないかと思い、咲夜は言葉に出してしまった。
「『ワン』でしょ!」
「えっ」
「『ワン!』」
「……わん……」
「まさか、咲夜を神社までその格好で連れて行くつもり?」
涙目になりながら、主の命令に従う咲夜を満足気に見るレミリアに、呆れながらパチュリーは問いかける。
「まさか。わざわざ行かなくても・・・こうすれば来るわよ。」
レミリアはそう答え、ポケットから100円を出し、放り投げた。
「あら。折角、博麗神社に入れようと思ったお賽銭を落してしまったわ。」
「そんなのでくるわけないじゃない。」
直に正門から爆音と振動が響いた。
「ほら来た。」
床に小銭を落してから僅か5分。
博麗霊夢が図書館の扉を乱雑に開け、入ってきた。
「どこ?お賽銭をどこに落したのレミリア!」
「ほら、そこに落ちているでしょ?」
「当然これは貰っていいのよね。」
「もちろん。」
「ありがとう。レミリア。じゃぁ、私は帰るわ。」
「えっちょっと待ってよ。」
「なに?」
「実は、犬を飼うことにしたから、見せてあげようと思って呼んだのよ。」
「あっそ。で、どこにいるのよ?」
「目の前にいるでしょ?」
霊夢の問いかけにリードを引いて、咲夜を傍に寄せる。
霊夢は咲夜の姿に呆気にとられ、パチュリーに目を向ける。
パチュリーは頬を赤らめ俯く咲夜から霊夢に目を向け、「何とかしてあげて」と唇を動かす。
霊夢は溜息をつく。
(仕方ないわね。)
「へえ~、可愛いじゃない。」
「でしょ!それに凄く優秀なのよ!」
自慢気に胸を張るレミリア。
「ふ~ん。で、名前は?」
「えっ・・・名前・・・名前ね・・・そう、サクヨって言うのよ。」
「サクヨねぇ。躾もしっかりしてあるんでしょ?」
「当然ね。」
更に胸を張るレミリア。
「じゃぁ、私が触っても大丈夫よね。」
そう言いながら霊夢は咲夜に手を伸ばす。
「よしよし。サクヨ。いい子ねぇ~」
霊夢は耳まで赤くなる咲夜にそう言いながら撫でた。
そして咲夜の耳元に霊夢は口を近付け、「合わせなさい。」と小声で呟いた。
その呟きに驚いた咲夜だが直にワンと小声で答えた。
霊夢は座り込むと、咲夜を膝の上に乗せ、頭から背にかけて優しく撫でる。
「本当にいい子ね。それに可愛いわね~」
そう言うと霊夢は咲夜に顔を上げさせ、口づけをした。
いきなりの事で改めて耳まで真っ赤になり硬直する咲夜。
同時にレミリアも怒鳴り始めた。
「ちょっと、霊夢!何してるの!」
「見ての通り、スキンシップよ。犬ってこういうことしてあげると喜ぶらしいのよね。」
今度は咲夜を抱きしめ、頬擦りをしながら霊夢は答えた。
「う~!!!」
傍観していたパチュリーは、なるほどと一人納得した。
その後も霊夢は文句を言うレミリアを適当に受け流し続けた。
「もういい!寝る!」
霊夢の答えに不機嫌さを募らせたレミリアは、図書館から出て行った。
「まったく。ちゃんと止めなさいよ。」
レミリアが出て行くと霊夢はパチュリーに文句を言い始めた。
「ごめんなさいね。でも、ああなっちゃったレミィってまるで人の話を聞かなくなっちゃうのよ。」
「どれだけ我侭なお子ちゃまなのよ。それと咲夜。あんたも嫌なら嫌ってちゃんと言いなさいよ。」
未だ、真っ赤になって膝の上で呆然としている咲夜にも忠告をしておく。
「えっ・・・あっ・・・えぇ、わかったわ。」
「もう用もないようだから、私は帰るわ。ほら、どいて。」
膝の上から咲夜をどかすと、霊夢は図書館の出口に向かう。
「面倒かけたわね。レミィに代わって謝罪するわ。」
パチュリーの謝罪を霊夢は振り返らず手だけ振って答えた。
咲夜も、ようやく吾に帰ると、霊夢の後を追った。
「本当に助かったわ。ありがとう霊夢。」
玄関の扉から出る頃には、いつものポーカーフェイスに戻って咲夜は霊夢に礼を言った。
「気にする事ないわよ。」
「でもね、霊夢。あれが私のファーストキスだったのよ。」
「あぁ~・・・それは悪かったわね。でも私も初めてだから許してよ。」
少し頬を赤らめて霊夢は咲夜に答える。
「もう、仕方ないわね。」
小さく溜息をつくと、今度は咲夜が霊夢の口付けをした。
「これで許してあげるわ。」
今度は耳まで真っ赤になる霊夢を残し、少し照れた微笑を浮かべた咲夜は急ぎ扉を閉めた。
10/03/13 報告頂いた誤字の修正及び読み直して、書き忘れていた台詞の追加
・・・→……(三点リーダを2n回)を使うのが一般的なようです。が、絶対ってものでもないので参考までに。
どのような犬が良ろしい→宜しい
お許して下さい→お許し下さいor許して下さい が自然かと
今度は咲夜が霊夢の口付け→霊夢に
つまらなくなんてないですよ。ありがちってわけでもないし。
自信もって下さい。
咲霊好きですので今後にも期待してます。
私も頬が痛くなってきたw
ホント咲霊咲は良いなぁ
次の作品も期待してます
しかしレミリアは本当に子供だなあ(笑)
ありがとうございます!
散歩に出かけてマーキングとかさせたりを想像してた俺は腐ってる。
クーデレとツンデレ。二人が合わさるとデレデレになるのですね。悶えそうだ。
後日談として首輪と犬耳持参で霊夢のところに通う咲夜さんがいるわけですね。滾ってきたwww
次作品も期待してますw
>>1様
誤字等の報告ありがとうございます。
>>7 ぺ・四潤様
私にはその発想はありませんでした。もっと妄想力を鍛えます