fairy tale
「理解できないわね」
響いたレミィの声に反応し、読んでいた本から顔を上げる。
「なにが?」
レミィは黙って私の読んでいた本を指差した。
グリム兄弟が集めた、ドイツ童話集の一冊だ。
最近は魔道書ばかり読んでいたので、息抜きに童話を楽しんでいたのだが、それがレミィの気に障ったのだろうか?
「なんで、たまたま出会っただけの王や王子と結婚できるのかしら?ラプンツェルも白雪も灰だらけもそうでしょう?」
レミィは心底解らないといった表情で私を見てくる。
「美形で、ちょっとだけ強引で地位とお金に不自由しない男と結婚するっていうのは女の夢みたいなものだからじゃない?童話だから、そういう夢のある話にしたいのよ」
「そうか?私は男と結婚なんて絶対に嫌だけどね」
レミィが渋い顔をして答える。
よっぽど男が嫌いなんだろう。
「あくまで人の話だからね。霊夢なんて特にそういうのが好きそうじゃない」
「ああ、確かにそうかもしれないわね。どうやら、あなたも好きそうだけど」
何気なくいわれた言葉に、持っていたティーカップを落としそうになる。
「ちょっとだけ強引なんて性格、童話には出てなかった気がするのよ。パチェはそういうのが好きなのかしら?」
「さあ、どうかしらね?」
レミィの言葉に、肯定も否定もせずに答えて紅茶を飲む。
レミィは何も言わず、ただ私をじっと見てくる。
カップをソーサーに置くと、レミィが私の方へと歩いてくる。
レミィの目的が読めず、困惑しているうちに椅子ごと押し倒された。
「ちょっとレミィ!なにするのよ!?」
反射的にレミィに非難の声を投げかける。
「黙りなさい」
レミィがゆっくりと私の唇を指でなぞりながら、強い口調で言った。
その言葉に少しだけゾクリとし、同じだけの高揚感が胸に湧いた。
「こうされるのが好きなんでしょう、パチェ?」
いつもの声とは違う、妖艶な響きを纏った声が私の身体を麻痺させる。
首筋から鎖骨へとレミィの白く華奢な指が滑っていく。
私は何も言う事ができず、かといって抗う事もできない。
ただ、レミィのなすがままになっていた。
「反抗しないの、パチェ?」
すでに、体はレミィのもので、私の意志すらもレミィの言葉によって徐々に薄くなっていく。
服の上から、胸を撫でられる。
胸に湧いた高揚は抑えられないほどに高まっていた。
「可愛いわね、パチェ」
レミィの顔が近付いている事に気付き、目を閉じる。
覚悟を決めた。
しかし、いくら待っても望んだものを感じる事ができない。
目を開けると、レミィが私に跨ったままで額に右手を当てていた。
「やっぱり理解できないわ。どうしてなのかしら?」
胸の高揚が引いていくのを感じて、レミィを突き飛ばす。
レミィは特にショックを受けた様子もなく立ち上がった。
「まったく、もう」
レミィは私の王子などではないのに、なぜあんな事を許してしまったのだろうか?
自分にも、あんな事をやってきたレミィにも腹が立つ。
「あら、どこに行くの?」
レミィの声に胸が音を立てる。
「使い魔の召喚よ」
目的の資料を探すためには、人手が必要だ。
だが、レミィに衣食住の世話を見てもらっている上、更に人手まで貸してもらう事はできない。
これは必要な事なのだ。
幸い、儀式の準備は出来ている。
ちょっとレミィの顔を見づらいから逃げるという事ではない。
これは逃げではないのだ。
「手伝いましょうか?」
優しいレミィの声が、私の脳に溶け込んでいく。
「ええ、それじゃあ成功を祈ってくれる?」
「サタンになら祈ってあげるわよ」
ドアを閉めると、走って図書館へと向かった。
体は丈夫でないが、今はそんな事関係ない。
いつも感じない心臓の音が、脈打って聞こえてくる。
レミィに触れられたところが、熱を持ったように熱い。
顔がまるでクランベリーのように赤くなっていることが自分でもわかる。
今日のこれは、なんでもない日常のことであるべきなのだ。
走る苦しさで、呼吸の苦しさで早く忘れなくてはならない。
私はレミィの親友なのだ。
すでに彼女の特別なのだから、これ以上の特別を求めてはならない。
私は彼女の親友たるべきなのだ。
「ああ、神も悪魔も私を見捨てたのだろうか?」
思わずつぶやく。
召喚は成功した。
しかし、魔方陣の中央に召喚されたのは蝙蝠の翼をもった人。
あまりにもヴァンパイアに似たその姿に、レミィを感じてしまう。
親友であるべきと誓ったのに、使い魔として召喚したのがヴァンパイアではレミィを諦めきれないではないか。
ノックの音が聞こえ、思わずドアの方を見る。
「パチェ、私よ。召喚は成功した?」
レミィだ。
ちょうど考えていたところにやってくるとは、タイミングが良いのか悪いのか。
この運命もレミィが操ったのだとしたら、なんとも悪趣味だ。
「ええ、成功よ」
レミィがドアを開ける。
「あら、まるで私の同属みたいな子ね?ストリゴイカにしては綺麗な肌をしているし・・・」
「おそらく爵位未満の上級デーモンの子供だと思うわ。ヴァンパイアほど高位な存在が私に召喚できるとは思わないし、ストリゴイカのような人の死体が使い魔として認知されるとも考えづらいからね」
適当に思いついた文句を並べる。実際にはわからない。
使い魔が召喚したものの器によるとは証明されていないし、人として死んだ後、ストリゴイカやリビングレッドのように別の存在として甦れば使い魔として認知されるかもしれない。
「そうなの?ふふ、なら可愛がれそうね」
レミィが寝ている使い魔の髪を触る。
「あら、あまり可愛がると美鈴がいじけるわよ」
「そういえば、最近は美鈴を可愛がってなかったわね」
使い魔の髪を離し、ドアの方へと向かう。
「そうだわ。パチェ、その子に名前はまだつけないでね」
ドアノブを持ったところでレミィが振り返る。
「あら、どうして?」
「その子、まるで赤ちゃんみたいじゃない。どうせなら2人で名前をつけて可愛がりましょうよ。ね、パチュリー母さん?」
言われた言葉がすぐにはわからなかったが、意味を理解すると途端に嬉しくなった。
「わかったわ。良い名前を考えてよね、レミリア父さん?」
「ええ、もちろんよ」
ひとしきり笑いあった後、レミィは出て行った。
これから美鈴と遊ぶのだろう。
「パチュリー母さん、だって」
胸に抱いた使い魔に向けて言う。
レミリア父さんと、パチュリー母さん。
2人とも女だけど、夫婦。
「案外、神も悪魔もこうなる事を見越してあなたをくれたのかもね」
そう考えると、この子がとてつもなく愛おしくなってきた。
「あなたは、私とレミィの子供になるんだもの。誰よりも美しく、思慮深く、優しく、強い女になるのよ」
「理解できないわね」
響いたレミィの声に反応し、読んでいた本から顔を上げる。
「なにが?」
レミィは黙って私の読んでいた本を指差した。
グリム兄弟が集めた、ドイツ童話集の一冊だ。
最近は魔道書ばかり読んでいたので、息抜きに童話を楽しんでいたのだが、それがレミィの気に障ったのだろうか?
「なんで、たまたま出会っただけの王や王子と結婚できるのかしら?ラプンツェルも白雪も灰だらけもそうでしょう?」
レミィは心底解らないといった表情で私を見てくる。
「美形で、ちょっとだけ強引で地位とお金に不自由しない男と結婚するっていうのは女の夢みたいなものだからじゃない?童話だから、そういう夢のある話にしたいのよ」
「そうか?私は男と結婚なんて絶対に嫌だけどね」
レミィが渋い顔をして答える。
よっぽど男が嫌いなんだろう。
「あくまで人の話だからね。霊夢なんて特にそういうのが好きそうじゃない」
「ああ、確かにそうかもしれないわね。どうやら、あなたも好きそうだけど」
何気なくいわれた言葉に、持っていたティーカップを落としそうになる。
「ちょっとだけ強引なんて性格、童話には出てなかった気がするのよ。パチェはそういうのが好きなのかしら?」
「さあ、どうかしらね?」
レミィの言葉に、肯定も否定もせずに答えて紅茶を飲む。
レミィは何も言わず、ただ私をじっと見てくる。
カップをソーサーに置くと、レミィが私の方へと歩いてくる。
レミィの目的が読めず、困惑しているうちに椅子ごと押し倒された。
「ちょっとレミィ!なにするのよ!?」
反射的にレミィに非難の声を投げかける。
「黙りなさい」
レミィがゆっくりと私の唇を指でなぞりながら、強い口調で言った。
その言葉に少しだけゾクリとし、同じだけの高揚感が胸に湧いた。
「こうされるのが好きなんでしょう、パチェ?」
いつもの声とは違う、妖艶な響きを纏った声が私の身体を麻痺させる。
首筋から鎖骨へとレミィの白く華奢な指が滑っていく。
私は何も言う事ができず、かといって抗う事もできない。
ただ、レミィのなすがままになっていた。
「反抗しないの、パチェ?」
すでに、体はレミィのもので、私の意志すらもレミィの言葉によって徐々に薄くなっていく。
服の上から、胸を撫でられる。
胸に湧いた高揚は抑えられないほどに高まっていた。
「可愛いわね、パチェ」
レミィの顔が近付いている事に気付き、目を閉じる。
覚悟を決めた。
しかし、いくら待っても望んだものを感じる事ができない。
目を開けると、レミィが私に跨ったままで額に右手を当てていた。
「やっぱり理解できないわ。どうしてなのかしら?」
胸の高揚が引いていくのを感じて、レミィを突き飛ばす。
レミィは特にショックを受けた様子もなく立ち上がった。
「まったく、もう」
レミィは私の王子などではないのに、なぜあんな事を許してしまったのだろうか?
自分にも、あんな事をやってきたレミィにも腹が立つ。
「あら、どこに行くの?」
レミィの声に胸が音を立てる。
「使い魔の召喚よ」
目的の資料を探すためには、人手が必要だ。
だが、レミィに衣食住の世話を見てもらっている上、更に人手まで貸してもらう事はできない。
これは必要な事なのだ。
幸い、儀式の準備は出来ている。
ちょっとレミィの顔を見づらいから逃げるという事ではない。
これは逃げではないのだ。
「手伝いましょうか?」
優しいレミィの声が、私の脳に溶け込んでいく。
「ええ、それじゃあ成功を祈ってくれる?」
「サタンになら祈ってあげるわよ」
ドアを閉めると、走って図書館へと向かった。
体は丈夫でないが、今はそんな事関係ない。
いつも感じない心臓の音が、脈打って聞こえてくる。
レミィに触れられたところが、熱を持ったように熱い。
顔がまるでクランベリーのように赤くなっていることが自分でもわかる。
今日のこれは、なんでもない日常のことであるべきなのだ。
走る苦しさで、呼吸の苦しさで早く忘れなくてはならない。
私はレミィの親友なのだ。
すでに彼女の特別なのだから、これ以上の特別を求めてはならない。
私は彼女の親友たるべきなのだ。
「ああ、神も悪魔も私を見捨てたのだろうか?」
思わずつぶやく。
召喚は成功した。
しかし、魔方陣の中央に召喚されたのは蝙蝠の翼をもった人。
あまりにもヴァンパイアに似たその姿に、レミィを感じてしまう。
親友であるべきと誓ったのに、使い魔として召喚したのがヴァンパイアではレミィを諦めきれないではないか。
ノックの音が聞こえ、思わずドアの方を見る。
「パチェ、私よ。召喚は成功した?」
レミィだ。
ちょうど考えていたところにやってくるとは、タイミングが良いのか悪いのか。
この運命もレミィが操ったのだとしたら、なんとも悪趣味だ。
「ええ、成功よ」
レミィがドアを開ける。
「あら、まるで私の同属みたいな子ね?ストリゴイカにしては綺麗な肌をしているし・・・」
「おそらく爵位未満の上級デーモンの子供だと思うわ。ヴァンパイアほど高位な存在が私に召喚できるとは思わないし、ストリゴイカのような人の死体が使い魔として認知されるとも考えづらいからね」
適当に思いついた文句を並べる。実際にはわからない。
使い魔が召喚したものの器によるとは証明されていないし、人として死んだ後、ストリゴイカやリビングレッドのように別の存在として甦れば使い魔として認知されるかもしれない。
「そうなの?ふふ、なら可愛がれそうね」
レミィが寝ている使い魔の髪を触る。
「あら、あまり可愛がると美鈴がいじけるわよ」
「そういえば、最近は美鈴を可愛がってなかったわね」
使い魔の髪を離し、ドアの方へと向かう。
「そうだわ。パチェ、その子に名前はまだつけないでね」
ドアノブを持ったところでレミィが振り返る。
「あら、どうして?」
「その子、まるで赤ちゃんみたいじゃない。どうせなら2人で名前をつけて可愛がりましょうよ。ね、パチュリー母さん?」
言われた言葉がすぐにはわからなかったが、意味を理解すると途端に嬉しくなった。
「わかったわ。良い名前を考えてよね、レミリア父さん?」
「ええ、もちろんよ」
ひとしきり笑いあった後、レミィは出て行った。
これから美鈴と遊ぶのだろう。
「パチュリー母さん、だって」
胸に抱いた使い魔に向けて言う。
レミリア父さんと、パチュリー母さん。
2人とも女だけど、夫婦。
「案外、神も悪魔もこうなる事を見越してあなたをくれたのかもね」
そう考えると、この子がとてつもなく愛おしくなってきた。
「あなたは、私とレミィの子供になるんだもの。誰よりも美しく、思慮深く、優しく、強い女になるのよ」
小悪魔がレミパチェの子供! その発想は無かった!
つまり腐では無いと。…そこに食い付いた自分ってorz
小悪魔=レミパチェの子供=新世界!!!