「よぅむぅよぅむぅ」
「なんでしょう幽々子様?」
「半霊食べたい」
「さっきもう食べたでしょ」
「ゆゆ~ん……」
<半霊は醤油味>
此処は冥界の白玉楼と呼ばれる場所。
長い長い階段を登ると、日本の屋敷が広い土地の中に凛と立っていた。
敷地はとても広く、豪邸といっても過言ではないほどだ。
そしてその屋敷から少し離れたところに、とても大きな桜の木が一本生えていた。
枯れているのか、葉っぱ一枚もそこには付いていない。
しかしその木、西行妖(さいぎょうあやかし)から放たれている妖気は異様なまでに強く、深く、暗い。
そんな近づいただけで気が触れてしまいそうな木の前に彼女はいた。
蒼色のドレスに身を包み、西行妖を見上げている。
頭に被っている帽子の蒼と白が彼女のやわらかな桃色の髪をより引き立てていた。
彼女の名は、西行寺 幽々子。
死を操る程度の能力を有している亡霊の姫であり、白玉楼の主でもある。
幽々子が一歩、西行妖に近づく。
もう一歩。
そして半歩。
西行妖を本当に目の前にして、人差し指と中指を自分の唇に当てる。
唇は白く潤い、男ならその唇を見るだけで昇天してしまうほどに魅力的に輝いていた。
幽々子はおもむろに両手を広げると、西行妖に抱きついた。
両の手を広げても壁に手を突いているのと変わらないほどに幹は太い。
服の上からでもわかるその豊かな胸をぎゅっと押し付け、その幹に軽く爪を立てる。
幽々子は小さくなにか呟いた後、口を大きく開き、そして……
がぶっ!
勢い良く噛み付いた。
「思ったよりもまずいわぁ~」
「幽々子……なにしてるのかしら貴方」
「あらあら、紫じゃない~ハロー」
突如、日傘を差している少女が幽々子の後ろに現れた。
さらに彼女の後ろには空間が割れて、その隙間から赤い目が大量に覗いている。
この紫と呼ばれた見た目14歳ほどの少女こそ、何千年もしかすると何万年と生きている大妖怪、八雲 紫その人である。
「ハロー幽々子。今日はまた一段と突拍子の無いことをしているわね。心配した私が馬鹿みたいですわ」
「だってこの部分が美味しそうな"うな重"に見えたんだもの~」
「アンタは雲がマンガ肉に見えてよだれをたらす小学生か!」
紫は人差し指をビシッ!っと幽々子に突きつけながら大声で突っ込む。
・・・・・・・・・
一瞬の静寂のあと、幽々子と紫は同時に笑いだした。
「ふふふ、なぁにそれ。霊夢の真似?」
「えぇ。似ていたかしら? 今のは結構自信あるのだけれど」
紫はそういうと日傘をくるくると回し始めた。すると白い煙が彼女も周りを覆い、
ぽんっ!
という音がしたと思うと、そこには幽々子と変わらないほどの歳の女性が立っていた。
「あらぁもう戻っちゃうの? 残念だわぁ」
「そのわきわきしている両手を見たら……ねぇ」
「んふふ~。可愛いものは愛でられる義務があるのよ~」
「幽々子の前でうかつに少女姿になれなくなったのはいつからだったかしら」
紫もたたまれた扇を取り出し口元に当てて、目を瞑り考える動作をとる。
さりげない動作で幽々子が紫とスキンシップを図ろうとするが、紫は扇で迫り来る手をペシッ!っといなす。
「欲求でも溜まっているのかしら? 以前は見境無く襲うなんてことなかったわよ?」
「だって妖夢が相手してくれないのだもの~。心も身体も寂しいわ」
「そんな倦怠期の夫婦みたいに……また変なちょっかい出したのでしょう?」
魂魄 妖夢。この白玉楼の庭師にして剣士であり主婦でもある。とくに料理は大の得意らしい。
そして幽々子の命令とあらば、たとえ火の中水の中、とりあえず切り刻むボブカットの似合う美少女だ。
そんな妖夢の特徴として、半人半霊があげられる。常に人型である半人(おそらく主人格はこちらにある)と、
通常はふわふわとした魂の姿をした半霊の2つに別れているのだ。
この半人と半霊は感覚をリンクすることもできるらしい。つまり同時に同じ箇所を攻められると快楽も二倍に……
「というわけで試そうとしたら泣き出して、それから一緒に寝てくれなくなったのよ~」
「そういえばこの前も、寝ている間の悪戯がたまらないって言ってたわね、この発情姫」
「陽だまりの中のヨウムね。昼寝の時が一番ガード甘いのよ~んふふ」
今、幽々子の脳内では手のカーソルでゆっくりと、寝ている妖夢の足を広げている事だろう。
紫が声をかけるが反応がない。扇で顔を隠しながらくねくねと体をよじっている。時々「フェイントか!」等呟いているが、現実世界に戻ってくる気配はないようだった。
最近の幽々子は急にこの状態に陥ることがある。
病気ともいえるこの現象を紫は、トリップモードと呼んでいる。
原因は妖夢への異常なまでの愛情だ。
突然抱きつく、膝の上に乗せる等はよかったのだが、
半霊を食べようとする、首筋を舐める、妖夢の耳をあまく噛む等、日々エスカレートしていってるのだ。
「妖夢も大変ね……」
紫は色気の無いため息を一つつき、トリップモードへと移行してしまった友人の首根っこをむんずと掴む。
ずるずると引きずり(アンダンテ)←演奏記号
ずっずっと引きずり(モデラート)←演奏記号よ
スーッっと空中を引きずり回し(プレスティッシモ)←演奏記号ですわ
「ストリンジェンド(←演奏記号ですのよ)・投・法!!」
ぽーーーーーーーーーーーいっ☆
と、妖夢が今剣術の修行をしているであろう場所へと放り投げた。
遠くから妖夢の叫び声が聞こえたが非常に小さいため、なんと言っているかは聞き取れなかった。
大方、「ゆ、幽々子様ああぁぁぁーーーーーー!?」とでも叫んでいるのだろう。
「よし、新記録達成よ」
紫は満足気にガッツポーズを決めた後、ぽんっ!と少女姿に戻り、傘を開いた。
そして傘の隙間から西行妖を一目睨んだ後、足元から隙間へと帰って行った。
「幽々子の様子がおかしい?」
「はい」
コーンとしし落としが鳴り響く白玉楼の庭。
その庭が一望できる部屋に、妖夢と少女状態の紫が正座して向かい合っていた。
真剣な妖夢に対し、紫は相変わらず扇を顔の半分を隠している。
「幽々子が可笑しいのは今に始まったことじゃないわ」
「幽々子様が可笑しいのは昔からですが……」
なにか困ったことが無いかと持ちかけたのは紫だった。
最初は慌ててなんでもないと首を横にふるだけの妖夢だったが、幽々子のことでなにか無いかと問われると、目をうるうるさせ
紫に泣きついたのが数刻前。
それから涙を拭き、気分を落ち着かせるために、茶とおかしを用意して今に至るのである。
「具体的に幽々子はどうおかしいのかしら?」
「私の半霊を……その……執拗に食べようとなさるのです。一昨日はいきなりかぶりつき、昨日は焼いて食べようと……」
「たしかに焼いて醤油つけたら美味しそうね」
「紫様!」
「冗談よ。んもぅ妖夢はちょっとまじめ過ぎるわね。社員教育が行き届いて無いせいかしら」
紫は扇をたたみ、湯飲みを掴むと優雅な動きで少しだけ口に含む。
苦味の強い煎茶。落ち着くためにあえて苦くしたのだろう。紫は文句一つ言わずそれを飲みほした。
「冗談ではないのです! 昨日は醤油に付けられて食べられる寸前だったのですよ! 今朝なんか感覚をリンクしてみたらやけに暖かくて、まるでお母さんのお腹の中に居るよう……って食べられてる私!? と、すごい勢いで抜け出したんですから!」
「どっちから?」
「……禊はもう済ませてきました」
「そう。大変だったわね」
幽々子曰く「亡霊は体に入れたものは完全にエネルギーに変換してのよ~」らしいので穢れなど少しも無く綺麗なはずだが、そこは生理的にさり気なく微妙に身を引いてしまうのは仕方の無いことなのだろう。
「明日にはもう半霊が居なくなってそうで怖くて寝れません……」
庇うようにぎゅっと自分の半霊を抱きしめる妖夢。
まるでパパに買って貰った大切なぬいぐるみを守る子供のように。
「幽々子が半霊なら私はこっちをもらってもいいわよね」
「みょん?」
「なななんでもないわ。こほん」
「どうしたら良いのでしょう紫様」
紫は少し考える動作をとる。
考える人のポーズではなく、たたんだ扇を魅惑的小悪魔チックな唇にあて、目線を左斜め上方の虚空を見つめるポーズだ。
「半霊と一緒にご飯を並べたら、幽々子はどっちを取るかしら」
「お膳を超えて半霊にかぶりつかれました……」
「重症ね」
「はい……」
先ほど妖夢は怖くて寝れないと言ったが、生物的に食べられる恐怖があるのも事実だろう。
しかし幽々子の体調を気にしての部分が、大多数を占めているのも事実だ。
もし半霊を食べてお腹を壊してしまったら?
いや、それよりも亡霊である幽々子様と魂魄である半霊が組み合わさったら、幽々子様にどんな悪い作用をおこすか分からないのだ。
だから妖夢が紫にした質問が「幽々子の様子がおかしい」なのだ。
「妖夢。とりあえず半霊をヒトガタにしておきなさいな。少しの間ならそれで凌げると思うわ」
「なるほど!」
その手があったかと、ぱぁっと明るい笑顔になる妖夢。
さっそく半霊をヒトガタにして自分同士、手と手を取り合って喜んでいる。
「といってもそれも一時しのぎ。早く原因を解決しないといけないわ」
「私に出来ることでしたらなんでもします!」
「いえ、貴方には危険すぎるわ。全て私に任せなさい」
紫が危険だと言うことは相当危険なことなのだ。
妖夢は紫に全てをゆだね、幽々子から逃げつつ、ご飯の用意などを器用にこなす日々が続いた。
その間にヒトガタ半霊の腕が一本無くなったり、胸が無くなったり等々スプラッタ事件が多数起こったが、なんとか事態は治まった。
「ようむぅおなかすいたー」
「さっき昼ごはん食べたばかりじゃないですか」
「ゆゆ~ん……」
平凡な日々の裏。
ここは西行妖の根元。
一人の少女が傘をさしながら鼻歌を歌っている。
曲名は分からないが、どこかで聞いたことがある歌だった。
少女の名前は八雲 紫。
彼女が左手に傘を、右手にはジョウロを持っていた。
「枯れ木に花をさっかせっましょう~って、咲いたらダメよね」
少女が見上げた大きすぎる木。西行妖。
その西行妖は数日までよりも、禍々しさは薄れていた。
「そりゃぁ水も太陽も魂もなかったらお腹すくわよね。ただでさえこの下で眠っている娘は大食らいなんだもの」
「・・・・・・・・・」
「お腹すいたっていう駄々っ子のくせに、好きなものを強請るだなんて。次は幽々子の能力で人間の魂でもとってきてもらいなさいな」
「・・・・・・・・・」
「でもあまりやりすぎると貧乏巫女に封印されてしまうわ。それに、異変となったら私も容赦しないから覚悟しておきなさいな」
少女はジョウロが空になったことを確認すると、隙間から何やら黒い液体がはいったボトルをとりだした。
そのラベルには「亀甲漫」と書かれていたが、あいにくそれに気付く人は周りには誰もいなかった。
西行妖だけが、ざわざわと、枝を揺らしていた。
「次コーラあげてみようかしら?」
「なんでしょう幽々子様?」
「半霊食べたい」
「さっきもう食べたでしょ」
「ゆゆ~ん……」
<半霊は醤油味>
此処は冥界の白玉楼と呼ばれる場所。
長い長い階段を登ると、日本の屋敷が広い土地の中に凛と立っていた。
敷地はとても広く、豪邸といっても過言ではないほどだ。
そしてその屋敷から少し離れたところに、とても大きな桜の木が一本生えていた。
枯れているのか、葉っぱ一枚もそこには付いていない。
しかしその木、西行妖(さいぎょうあやかし)から放たれている妖気は異様なまでに強く、深く、暗い。
そんな近づいただけで気が触れてしまいそうな木の前に彼女はいた。
蒼色のドレスに身を包み、西行妖を見上げている。
頭に被っている帽子の蒼と白が彼女のやわらかな桃色の髪をより引き立てていた。
彼女の名は、西行寺 幽々子。
死を操る程度の能力を有している亡霊の姫であり、白玉楼の主でもある。
幽々子が一歩、西行妖に近づく。
もう一歩。
そして半歩。
西行妖を本当に目の前にして、人差し指と中指を自分の唇に当てる。
唇は白く潤い、男ならその唇を見るだけで昇天してしまうほどに魅力的に輝いていた。
幽々子はおもむろに両手を広げると、西行妖に抱きついた。
両の手を広げても壁に手を突いているのと変わらないほどに幹は太い。
服の上からでもわかるその豊かな胸をぎゅっと押し付け、その幹に軽く爪を立てる。
幽々子は小さくなにか呟いた後、口を大きく開き、そして……
がぶっ!
勢い良く噛み付いた。
「思ったよりもまずいわぁ~」
「幽々子……なにしてるのかしら貴方」
「あらあら、紫じゃない~ハロー」
突如、日傘を差している少女が幽々子の後ろに現れた。
さらに彼女の後ろには空間が割れて、その隙間から赤い目が大量に覗いている。
この紫と呼ばれた見た目14歳ほどの少女こそ、何千年もしかすると何万年と生きている大妖怪、八雲 紫その人である。
「ハロー幽々子。今日はまた一段と突拍子の無いことをしているわね。心配した私が馬鹿みたいですわ」
「だってこの部分が美味しそうな"うな重"に見えたんだもの~」
「アンタは雲がマンガ肉に見えてよだれをたらす小学生か!」
紫は人差し指をビシッ!っと幽々子に突きつけながら大声で突っ込む。
・・・・・・・・・
一瞬の静寂のあと、幽々子と紫は同時に笑いだした。
「ふふふ、なぁにそれ。霊夢の真似?」
「えぇ。似ていたかしら? 今のは結構自信あるのだけれど」
紫はそういうと日傘をくるくると回し始めた。すると白い煙が彼女も周りを覆い、
ぽんっ!
という音がしたと思うと、そこには幽々子と変わらないほどの歳の女性が立っていた。
「あらぁもう戻っちゃうの? 残念だわぁ」
「そのわきわきしている両手を見たら……ねぇ」
「んふふ~。可愛いものは愛でられる義務があるのよ~」
「幽々子の前でうかつに少女姿になれなくなったのはいつからだったかしら」
紫もたたまれた扇を取り出し口元に当てて、目を瞑り考える動作をとる。
さりげない動作で幽々子が紫とスキンシップを図ろうとするが、紫は扇で迫り来る手をペシッ!っといなす。
「欲求でも溜まっているのかしら? 以前は見境無く襲うなんてことなかったわよ?」
「だって妖夢が相手してくれないのだもの~。心も身体も寂しいわ」
「そんな倦怠期の夫婦みたいに……また変なちょっかい出したのでしょう?」
魂魄 妖夢。この白玉楼の庭師にして剣士であり主婦でもある。とくに料理は大の得意らしい。
そして幽々子の命令とあらば、たとえ火の中水の中、とりあえず切り刻むボブカットの似合う美少女だ。
そんな妖夢の特徴として、半人半霊があげられる。常に人型である半人(おそらく主人格はこちらにある)と、
通常はふわふわとした魂の姿をした半霊の2つに別れているのだ。
この半人と半霊は感覚をリンクすることもできるらしい。つまり同時に同じ箇所を攻められると快楽も二倍に……
「というわけで試そうとしたら泣き出して、それから一緒に寝てくれなくなったのよ~」
「そういえばこの前も、寝ている間の悪戯がたまらないって言ってたわね、この発情姫」
「陽だまりの中のヨウムね。昼寝の時が一番ガード甘いのよ~んふふ」
今、幽々子の脳内では手のカーソルでゆっくりと、寝ている妖夢の足を広げている事だろう。
紫が声をかけるが反応がない。扇で顔を隠しながらくねくねと体をよじっている。時々「フェイントか!」等呟いているが、現実世界に戻ってくる気配はないようだった。
最近の幽々子は急にこの状態に陥ることがある。
病気ともいえるこの現象を紫は、トリップモードと呼んでいる。
原因は妖夢への異常なまでの愛情だ。
突然抱きつく、膝の上に乗せる等はよかったのだが、
半霊を食べようとする、首筋を舐める、妖夢の耳をあまく噛む等、日々エスカレートしていってるのだ。
「妖夢も大変ね……」
紫は色気の無いため息を一つつき、トリップモードへと移行してしまった友人の首根っこをむんずと掴む。
ずるずると引きずり(アンダンテ)←演奏記号
ずっずっと引きずり(モデラート)←演奏記号よ
スーッっと空中を引きずり回し(プレスティッシモ)←演奏記号ですわ
「ストリンジェンド(←演奏記号ですのよ)・投・法!!」
ぽーーーーーーーーーーーいっ☆
と、妖夢が今剣術の修行をしているであろう場所へと放り投げた。
遠くから妖夢の叫び声が聞こえたが非常に小さいため、なんと言っているかは聞き取れなかった。
大方、「ゆ、幽々子様ああぁぁぁーーーーーー!?」とでも叫んでいるのだろう。
「よし、新記録達成よ」
紫は満足気にガッツポーズを決めた後、ぽんっ!と少女姿に戻り、傘を開いた。
そして傘の隙間から西行妖を一目睨んだ後、足元から隙間へと帰って行った。
「幽々子の様子がおかしい?」
「はい」
コーンとしし落としが鳴り響く白玉楼の庭。
その庭が一望できる部屋に、妖夢と少女状態の紫が正座して向かい合っていた。
真剣な妖夢に対し、紫は相変わらず扇を顔の半分を隠している。
「幽々子が可笑しいのは今に始まったことじゃないわ」
「幽々子様が可笑しいのは昔からですが……」
なにか困ったことが無いかと持ちかけたのは紫だった。
最初は慌ててなんでもないと首を横にふるだけの妖夢だったが、幽々子のことでなにか無いかと問われると、目をうるうるさせ
紫に泣きついたのが数刻前。
それから涙を拭き、気分を落ち着かせるために、茶とおかしを用意して今に至るのである。
「具体的に幽々子はどうおかしいのかしら?」
「私の半霊を……その……執拗に食べようとなさるのです。一昨日はいきなりかぶりつき、昨日は焼いて食べようと……」
「たしかに焼いて醤油つけたら美味しそうね」
「紫様!」
「冗談よ。んもぅ妖夢はちょっとまじめ過ぎるわね。社員教育が行き届いて無いせいかしら」
紫は扇をたたみ、湯飲みを掴むと優雅な動きで少しだけ口に含む。
苦味の強い煎茶。落ち着くためにあえて苦くしたのだろう。紫は文句一つ言わずそれを飲みほした。
「冗談ではないのです! 昨日は醤油に付けられて食べられる寸前だったのですよ! 今朝なんか感覚をリンクしてみたらやけに暖かくて、まるでお母さんのお腹の中に居るよう……って食べられてる私!? と、すごい勢いで抜け出したんですから!」
「どっちから?」
「……禊はもう済ませてきました」
「そう。大変だったわね」
幽々子曰く「亡霊は体に入れたものは完全にエネルギーに変換してのよ~」らしいので穢れなど少しも無く綺麗なはずだが、そこは生理的にさり気なく微妙に身を引いてしまうのは仕方の無いことなのだろう。
「明日にはもう半霊が居なくなってそうで怖くて寝れません……」
庇うようにぎゅっと自分の半霊を抱きしめる妖夢。
まるでパパに買って貰った大切なぬいぐるみを守る子供のように。
「幽々子が半霊なら私はこっちをもらってもいいわよね」
「みょん?」
「なななんでもないわ。こほん」
「どうしたら良いのでしょう紫様」
紫は少し考える動作をとる。
考える人のポーズではなく、たたんだ扇を魅惑的小悪魔チックな唇にあて、目線を左斜め上方の虚空を見つめるポーズだ。
「半霊と一緒にご飯を並べたら、幽々子はどっちを取るかしら」
「お膳を超えて半霊にかぶりつかれました……」
「重症ね」
「はい……」
先ほど妖夢は怖くて寝れないと言ったが、生物的に食べられる恐怖があるのも事実だろう。
しかし幽々子の体調を気にしての部分が、大多数を占めているのも事実だ。
もし半霊を食べてお腹を壊してしまったら?
いや、それよりも亡霊である幽々子様と魂魄である半霊が組み合わさったら、幽々子様にどんな悪い作用をおこすか分からないのだ。
だから妖夢が紫にした質問が「幽々子の様子がおかしい」なのだ。
「妖夢。とりあえず半霊をヒトガタにしておきなさいな。少しの間ならそれで凌げると思うわ」
「なるほど!」
その手があったかと、ぱぁっと明るい笑顔になる妖夢。
さっそく半霊をヒトガタにして自分同士、手と手を取り合って喜んでいる。
「といってもそれも一時しのぎ。早く原因を解決しないといけないわ」
「私に出来ることでしたらなんでもします!」
「いえ、貴方には危険すぎるわ。全て私に任せなさい」
紫が危険だと言うことは相当危険なことなのだ。
妖夢は紫に全てをゆだね、幽々子から逃げつつ、ご飯の用意などを器用にこなす日々が続いた。
その間にヒトガタ半霊の腕が一本無くなったり、胸が無くなったり等々スプラッタ事件が多数起こったが、なんとか事態は治まった。
「ようむぅおなかすいたー」
「さっき昼ごはん食べたばかりじゃないですか」
「ゆゆ~ん……」
平凡な日々の裏。
ここは西行妖の根元。
一人の少女が傘をさしながら鼻歌を歌っている。
曲名は分からないが、どこかで聞いたことがある歌だった。
少女の名前は八雲 紫。
彼女が左手に傘を、右手にはジョウロを持っていた。
「枯れ木に花をさっかせっましょう~って、咲いたらダメよね」
少女が見上げた大きすぎる木。西行妖。
その西行妖は数日までよりも、禍々しさは薄れていた。
「そりゃぁ水も太陽も魂もなかったらお腹すくわよね。ただでさえこの下で眠っている娘は大食らいなんだもの」
「・・・・・・・・・」
「お腹すいたっていう駄々っ子のくせに、好きなものを強請るだなんて。次は幽々子の能力で人間の魂でもとってきてもらいなさいな」
「・・・・・・・・・」
「でもあまりやりすぎると貧乏巫女に封印されてしまうわ。それに、異変となったら私も容赦しないから覚悟しておきなさいな」
少女はジョウロが空になったことを確認すると、隙間から何やら黒い液体がはいったボトルをとりだした。
そのラベルには「亀甲漫」と書かれていたが、あいにくそれに気付く人は周りには誰もいなかった。
西行妖だけが、ざわざわと、枝を揺らしていた。
「次コーラあげてみようかしら?」
想像できないorzゆゆこ様似なのかな?
うるせぇ青汁流し込むぞww
醤油はあげちゃらめぇぇぇぇぇ!!
文(AYA) 妖(AYAKASHI) 仮面○イダーWアヤアヤ!
>想像できないorzゆゆこ様似なのかな?
我の中では、床まで届くピンク色の超ぼさぼさ髪で、常時半目の光なし、無口幼女。小さい頃のユユコ様にそっくりという設定ですわ
>うるせぇ青汁流し込むぞ
やめてぇぇ元気になっちゃううぅぅぅ!
ゆゆこさまの体に異変がこきちゃうのおおぉぉ!
>ロリゆゆ様になってくれると私はうれしい
ようむがその姿をみてゆゆこさまが小さくなられた!?からはじまる異変物語ですね。だれかはやく書いてくだち!
>醤油はあげちゃらめぇぇぇぇぇ!!
問題はこれが薄口か濃口かだ……
おいしいですよね関西の濃口しょうゆ(ぐびぐび
しかし何より、
“傘の隙間から西行妖を一目睨んだ”――この部分に称賛を贈りたい。
ありがとうございます!
よし向こう一ヶ月の創作意欲が沸いた。ゆかりんパワー充電です!
>ほら、稗田の――
先代をすっかり忘れていた!
阿弥と文がコントをしている姿が浮かんだのは秘密
そして脳内にある西行寺 妖の絵を描いてみたけど黒歴史しか誕生しなかったのでブログにのせるのはやめました。。。八意もとい絵心がほしい!