太ももにかかる重み、小さく聞こえる吐息にレミリアは懐かしさを感じていた。
何年ぶりだろうか、十年もしかすると数十年以上ぶりかもしれないと口には出さす、心の中で呟いた。
安らかな眠りを妨げないように、そっと手櫛で髪を整える。
指の間を通るこの感触も久しぶりで、自身にはあまり似合わない慈しみという感情が湧き上がる。
昔は何度も膝枕をしていた。しかしレミリア以外に世話をする者ができて、レミリアはその役目を果たすことがなくなっていった。
(私は世話される側で世話する側ではないのだから、しなくなっておかしくはないのだけど。
ほんの少しだけ寂しかったりもするのよね。
まあ、生まれたばかりの赤子でもないし、こういう扱いは嫌がるかもしれないわね)
百年を生きる魔女を赤子扱い、自身の考えに小さく笑みを漏らす。
現状は、話している最中に反応のなくなったパチュリーをレミリアが診断し、ソファーまで運び膝枕しているというものだ。
普段こういった世話をする小悪魔は用事をいいつかって紅魔館外に出ている。
微笑みの気配を感じ取ったのか、目覚める頃合だったのか、レミリアの太ももを枕にしていたパチュリーはゆっくりと目をあけた。
「んっ……レミィ?」
「調子はどう? 話してる最中にいきなり崩れ落ちるから驚いたわ」
「ここ最近、調べもので睡眠時間減ってたから。
ごめんなさい、心配かけたわね」
「体調管理はきちんとしなさないと昔から言ってあるでしょう?
あなたは体が丈夫じゃないんだから人一倍健康を気にするくらいでちょうどいいのよ」
「レミィにそう言われるのは久しぶりね。昔に戻ったみたい。
もう少しこのままでいたいの。膝を借りてていいかしら?」
「しかたないわね、特別よ?」
「ありがとう」
パチュリーは再び目を閉じる。
寝なおすのというわけではなく、思い出に浸りたいのだろう。
レミリアはそれを察してか口を開かず、髪をなで続ける。
しんっと静まり返り時間が停滞したかのような図書館。聞こえるものは腕を動かす際に発せられる衣擦れの小さな音のみ。
後頭部から感じるレミリアの体温が心地よく、自然と口の端が動き笑みをかたどる。
幾分かしてパチュリーは目を開け、髪をなでるレミリアの手をとり、自身の頬に当てる。
「こうしていると永遠に紅い幼き月という二つ名が嘘のようね。
幼さなんて感じられない」
「五百年生きてるからね。幼いままでいられないことだってある。
たまにはこんなのも悪くないのじゃないかしら?
常にこうであれというのは勘弁願うけど」
「そうね。たまには悪くないわ」
レミリアの手を離し、今度はパチュリーがレミリアの頬に手を当てる。傷つけないように、そっと大事な美術品に触れるように。
(たまにでいいわ。この表情を誰かに見られる機会が減るもの)
慈愛のこもった笑みを、できるならば誰にも見せることなく独り占めしたいとさえ思っている。
出会って十数年ほどは何度も見ていた、小悪魔という使い魔を得た今となっては滅多に見ることのできない表情。
この表情を見るということは心配をかけるということ。それが嫌で小悪魔にも協力してもらい、見る頻度は減った。
心配をかけないという点では満足しているが、この表情自体を見ることができなくなったことは残念でもあった。
見たいけど、見たくない。そんなジレンマをパチュリーは抱えている。
「大好きよレミィ」
「突然どうしたの?」
「伝えたくなっただけ」
「そう……私も好きよ」
パチュリーはふわりと花咲くような笑みとなる。つられるようにレミリアも笑みを浮かべた。
この時間が長く続けばいいのにと、心の底から願い目を閉じる。
この穏やかな雰囲気はパチュリーによって破られることになる。
懐かしさを十分に堪能し、むくむくと膨れ上がった情欲を我慢できず満たそうと動き出したことが原因だ。
騒がしい図書館に懐古の雰囲気は欠片もなくなっていた。
本能に従っただけなのか、もう大丈夫だと示すためわざとそういう行動をとったのか、それはパチュリーだけの秘密だ。
何年ぶりだろうか、十年もしかすると数十年以上ぶりかもしれないと口には出さす、心の中で呟いた。
安らかな眠りを妨げないように、そっと手櫛で髪を整える。
指の間を通るこの感触も久しぶりで、自身にはあまり似合わない慈しみという感情が湧き上がる。
昔は何度も膝枕をしていた。しかしレミリア以外に世話をする者ができて、レミリアはその役目を果たすことがなくなっていった。
(私は世話される側で世話する側ではないのだから、しなくなっておかしくはないのだけど。
ほんの少しだけ寂しかったりもするのよね。
まあ、生まれたばかりの赤子でもないし、こういう扱いは嫌がるかもしれないわね)
百年を生きる魔女を赤子扱い、自身の考えに小さく笑みを漏らす。
現状は、話している最中に反応のなくなったパチュリーをレミリアが診断し、ソファーまで運び膝枕しているというものだ。
普段こういった世話をする小悪魔は用事をいいつかって紅魔館外に出ている。
微笑みの気配を感じ取ったのか、目覚める頃合だったのか、レミリアの太ももを枕にしていたパチュリーはゆっくりと目をあけた。
「んっ……レミィ?」
「調子はどう? 話してる最中にいきなり崩れ落ちるから驚いたわ」
「ここ最近、調べもので睡眠時間減ってたから。
ごめんなさい、心配かけたわね」
「体調管理はきちんとしなさないと昔から言ってあるでしょう?
あなたは体が丈夫じゃないんだから人一倍健康を気にするくらいでちょうどいいのよ」
「レミィにそう言われるのは久しぶりね。昔に戻ったみたい。
もう少しこのままでいたいの。膝を借りてていいかしら?」
「しかたないわね、特別よ?」
「ありがとう」
パチュリーは再び目を閉じる。
寝なおすのというわけではなく、思い出に浸りたいのだろう。
レミリアはそれを察してか口を開かず、髪をなで続ける。
しんっと静まり返り時間が停滞したかのような図書館。聞こえるものは腕を動かす際に発せられる衣擦れの小さな音のみ。
後頭部から感じるレミリアの体温が心地よく、自然と口の端が動き笑みをかたどる。
幾分かしてパチュリーは目を開け、髪をなでるレミリアの手をとり、自身の頬に当てる。
「こうしていると永遠に紅い幼き月という二つ名が嘘のようね。
幼さなんて感じられない」
「五百年生きてるからね。幼いままでいられないことだってある。
たまにはこんなのも悪くないのじゃないかしら?
常にこうであれというのは勘弁願うけど」
「そうね。たまには悪くないわ」
レミリアの手を離し、今度はパチュリーがレミリアの頬に手を当てる。傷つけないように、そっと大事な美術品に触れるように。
(たまにでいいわ。この表情を誰かに見られる機会が減るもの)
慈愛のこもった笑みを、できるならば誰にも見せることなく独り占めしたいとさえ思っている。
出会って十数年ほどは何度も見ていた、小悪魔という使い魔を得た今となっては滅多に見ることのできない表情。
この表情を見るということは心配をかけるということ。それが嫌で小悪魔にも協力してもらい、見る頻度は減った。
心配をかけないという点では満足しているが、この表情自体を見ることができなくなったことは残念でもあった。
見たいけど、見たくない。そんなジレンマをパチュリーは抱えている。
「大好きよレミィ」
「突然どうしたの?」
「伝えたくなっただけ」
「そう……私も好きよ」
パチュリーはふわりと花咲くような笑みとなる。つられるようにレミリアも笑みを浮かべた。
この時間が長く続けばいいのにと、心の底から願い目を閉じる。
この穏やかな雰囲気はパチュリーによって破られることになる。
懐かしさを十分に堪能し、むくむくと膨れ上がった情欲を我慢できず満たそうと動き出したことが原因だ。
騒がしい図書館に懐古の雰囲気は欠片もなくなっていた。
本能に従っただけなのか、もう大丈夫だと示すためわざとそういう行動をとったのか、それはパチュリーだけの秘密だ。
大好きっていうのが何十年と親友やってるだろう二人だからこそ深く感じるものがありました
いいですねぇ
レミパチュはやれ
二人だけが知るお互いの顔、みたいな。
でもパチュリー、自重しようね?
でもぱっちぇさん自重www