「萌えが足りない」
唐突にも程があるタイミングで、幽々子様がそんなことを言い出した。ちなみに私は幽々子様が「今すぐ宇治金時食べなきゃ暑くて溶けそう」とか申されたので氷を削っている最中だ。残暑もなくなってきたこの時期によく言う。というか、手元が狂うからじっとしていてほしいのだが。
「……なんと仰いましたか?」
「萌えよ萌え。萌えが足りないのよ」
幽々子様が意味深なことを言うのはいつものことだが、今回のは度を抜いて意味が分からない。萌えってなんだろう。山口さんのことだろうか。
「私のために料理を作っているというこの状況はシチュエーションとして何の問題もないどころか一般の男性諸君なら内心うはぁい(はぁと)な感じになるはずなのに……妖夢、あなたのその恰好は何? 萌え成分の欠片も無いじゃない。笑わせるわ」
「生まれてこの方、服装についてここまでボロクソに言われたの初めてです」
「とりあえず地味なのよソレ。そして地味でやっぱり地味なのよ」
なんだろうコレ、泣けってことだろうか。
「それで、私にどうしろと?」
「そうねぇ……一番と二番、どっちがいい?」
「それを選ぶことの意味は」
「いいから」
「いや」
「いいから」
「……じゃあ一番で」
「それじゃあはいコレ」
目上の権力をフル活用した幽々子様が取り出したのは、黒を主体に彩られ、そこに純白のフリル付きエプロンなんかが追加されているドレス。
「……これって」
「メイド服」
「まさか着ろと?」
「えぇ♪」
「何故?」
「萌えが足りないから」
「そもそもその萌えというのが私にはよく分らないんですが、これを着ることによって私になんら得が無いどころかむしろ何かを失いそうなのでお断りしたいです」
「得るものならあるわよぉ? 萌えについての知識とかぁ、主人を悩殺する際に必要なものとかぁ、私の満足度とか」
「最後以外特に欲しいと思えないんですが」
「じゃあその最後のを得るためにも」
「それ以外の方法で得ることは出来ないんですか?」
「現状、他に策は――」
「はい、宇治金時」
うわぁい(はぁと)とか言いながら子供のように無邪気な笑顔で宇治金時を食す幽々子様。
「……満足なんてしてないわよ」
「まるまる喰らい尽くしておいてよく言えますね」
すごいコレ。洗い立てみたいに器ピッカピカ。幽々子様食器洗浄機として機能できるかもしれない。清潔さに問題があり過ぎるけど。
「とにかく、まだまだこんなんじゃ足りないのよっ」
「はいおかわり」
「ハッ、食なんかで今の私が満たせると思って?」
じゃあその器を置いてください。
「いいからメーイードー、メーイードー、妖メーイードー」
「どちら様ですかその御方」
じたばたと駄々をこね出した幽々子様に溜め息を一つ。とても齢千年の時を過ごしてきた者の姿とは思えない。ちなみに宇治金時は瞬間的に食されていた。あ、失礼、飲まれていた、が正しい。
「はぁ……着替えればいいんですか、着替えれば」
「うんっ☆」
私はもう一つ溜め息を吐いて、ニッコニッコしている幽々子様からメイド服を受け取る。これでもかとフリルの付いたソレはとても剣を持つ庭師の着る物とは思えない。
「じゃあ着替えてきます」
「えぇ、早くね(はぁと)」
ものっそい上機嫌に手を振る幽々子様に見送られて、メイド服をその手に別室へ移る。
近場にメイド服を置き、とりあえず上着に手をかけて――あ、サービスシーンここまでです。
早い? サービスシーンと呼べる域にすら達してない? 私からすれば部屋を出た時点で「~分後」とかならなかったんですから遅いくらいです。
はい着替え終了。色気も何も無い? ……悪かったですね、どうせ胸無いですよ。
部屋を出て、後ろ姿でもルンルン♪みたいな感じになっているのが分かる幽々子様の肩を叩く。
「幽々子様、着替えてきました」
「ふっふっふ~、待ってたわよ~。さぁて、妖夢はどんな感じに変…身……」
勢いよく振り返った幽々子様は私の姿を見て、どんどん顔から表情が無くなっていく。
「……あの、妖夢さん?」
「どうしました? どこか変なところありますかね?」
「いや、全く無いどころかそれはもうとてもとてもお似合いなんですがっていうか一ついいかしら?」
「はい、なんでしょう?」
「……なんでいつもの格好?」
「誰も“メイド服に”着替えるなんて言ってませんよ?」
そう言って私が悪戯っぽく微笑むと、幽々子様はキョトンとした目でこちらを見る。まさか私がここでこんな態度を取るとは思ってもみなかったのだろう。
まぁ、いつもの私ならそう思うのは間違ってないと思うけど。
「……反抗期?」
「それはまた随分と遅れてきた反抗期ですね」
「ザブンg――」
「ストーップ、ここは幻想郷。混ぜるな危険」
「妖夢? 私は貴女にメイド服を着るようにと、そう命じたつもりだったんだけど?」
「はい、承知しております。なんならもう一太刀くらい入れてきましょうか」
「誰が斬れと言ったのよ」
「つい先程幽々子様が仰ったと記憶しておりますが」
「ええと……何? つまり私の言うことを聞かないと、そういうこと?」
「結論から言いますと、そういうことになりますね」
あ、空気が変わった。
「ふ・ふ・ふ~♪ 妖夢ぅ……? いつから貴女は私に対してそんな態度を取るような娘になったのかしらぁ~?」
うわぁー生半可じゃない妖気が集束してるー。生身の人間に直撃させたら余裕で私達の仲間入りできるくらいの妖気ですよコレ。
はぁ……仕方ない。
「主の言うことも聞けない悪い子にはお仕置きが必要よねぇ……ふふふ、いくわよ幽曲『リポジトリ――』」
「――このままでは、ダメですか?」
「……はい?」
瞳に涙を溜めつつ、ギリギリ聞こえるレベルの蚊の鳴くような声で呟く。
「このままの私では……幽々子様を満足させることは、できないのでしょうか……?」
「え、あの、妖夢さん……?」
「確かに私は未熟です。幽々子様を満足させるためならば、身なりぐらい整えてお仕えするべきだということも存じております。ですが……そんなものに頼らなければ幽々子様を満足させられないのかと思うと……悔しくて、不甲斐無さがこみ上げてきて……」
俯き、下唇を噛んで、泣いてはダメだと必死に堪える健気な様をアピール。
「えぇーっとぉ……何かなこのシリアス……?」
「ダメでしょうか? このままの私ではダメでしょうかっ?」
「…………(汗)」
ふふ、困ってる困ってる。幽々子様普段はとびきりのSなのにこうなると弱いからなぁ。泣く子には勝てない、とはよく言ったものだ。
やがて、脳内で何かと格闘していたらしき幽々子様は、瞳を潤ませながら言い寄ってくる私に耐えられなくなったのか、視線を逸らして告げた。
「……妖夢」
「はい……?」
「――ひどくお腹が空いたわ。そのままでいいから早々に何か作ってちょうだい」
「はっ、はいっ!」
ぱあぁ、と自分で言うのもアレだが花の咲くような笑顔、プラス乙女の涙が弾けるオプション付きである。それを目にした幽々子様は「ぐっ」と見えない何かからダメージを受けていた。計画通り。
というか、今も貴女様のお手には宇治金時が握られているんですけど。着替えに行く前は半分以上あったおかわりの山があと幽々子様の手元にある一個しかないように見えるんだけど、きっと私の視力が一瞬にして格段に落ちたんだろうな、うん。
と、そこでひたすらにしゃくしゃくと宇治金時を食べ続ける幽々子様を見て、私の脳が瞬時に面白いことを提案してきた。それを実行に移した際の結果を予想して、思わずクスリと笑みがこぼれた。
「あの、幽々子様」
「何? メニューはできれば焼き鳥とかがいいわねぇ、さっきそこら辺を夜雀が飛んでいるのを見て食べたくなっちゃった」
「了解しました、狩ってきます。ですが、私がお聞きしたいのは別にありまして」
「ん、何?」
「実は私もちょっと小腹が空いてしまいまして、つきましては幽々子様が手にしているものを微量でいいので分けていただけないかと」
「あら、私の娯楽の一つである食を取ろうとはいい度胸ね」
食以外に娯楽を持っているのなら是非聞きたいところではあるが、回答に少々の不安を感じたため、自分自身に止める勇気を提案しておく。
「けどいいわ、流石に六十二杯目ともなると舌が麻痺してきたから」
あれ、私視力だけじゃなくて耳の方もおかしくなってたか。近いうちに眼科と耳鼻科行こう。
「ありがとうございます」
一言礼を言って、幽々子様が差し出してきた器とスプーンを受け――取らずに私は伸ばしたその手をテーブルに置いて。
「――いただきます」
小さく呟いた後ゆっくり瞳を閉じて――自分のソレを幽々子様の唇に重ねた。
「…………」
ん、ちょっと苦くて甘い。抹茶とあずきが混ざってていい感じ。
「……っ!?!?!?」
やっぱり温かくはないか。冷たいものを食べた後ってのもあるんだろうけど、幽々子様は元々死人だし。けど柔らかいなぁ、コレ。
「~~~~っ!?!?」
私はその滅多に味わえない格別のデザートを十分に堪能してから、幽々子様がちょっと暴れ始めたのを機に唇を離した。
瞳を開けて見てみると、幽々子様は私が見たこともないほど顔を真っ赤にして、自分の唇に指を添えて驚きに目を見開いてぱちくりさせていた。何が起こったかは理解できているけど、頭がどう反応すればいいのか分からずフリーズしてるってトコだろうか。こんな幽々子様、新鮮でちょっと可愛いかもしれない。ふふ、やっぱりやって正解だった。
「ごちそうさまでした。普通に食べるよりも格段に美味しかったですよ」
指を唇に添えてニッコリ微笑んだ瞬間――。
「ふー……何か飲み物を……」
――私がこの場に出現した。
「ん? お前……私!?」
あ、まずい雰囲気。これは早々に退散した方がいいかも。
「あ、おいっ! ちょっと待て!」
駆け出した私に私が何か言っていたような気がするが、生憎私は耳が悪くなっているのだ。何も聞こえないとばかりに足を速めてそこから脱出した。
「あいつ……姿が見えないと思ったら……って幽々子様? 大丈夫ですか? 何かちょっと顔が赤いですけど、私に変なことされませんでしたか幽々子様?」
「よ、妖夢……」
「……補給完了どころか、ちょっと過剰摂取…」
「はい?」
唐突にも程があるタイミングで、幽々子様がそんなことを言い出した。ちなみに私は幽々子様が「今すぐ宇治金時食べなきゃ暑くて溶けそう」とか申されたので氷を削っている最中だ。残暑もなくなってきたこの時期によく言う。というか、手元が狂うからじっとしていてほしいのだが。
「……なんと仰いましたか?」
「萌えよ萌え。萌えが足りないのよ」
幽々子様が意味深なことを言うのはいつものことだが、今回のは度を抜いて意味が分からない。萌えってなんだろう。山口さんのことだろうか。
「私のために料理を作っているというこの状況はシチュエーションとして何の問題もないどころか一般の男性諸君なら内心うはぁい(はぁと)な感じになるはずなのに……妖夢、あなたのその恰好は何? 萌え成分の欠片も無いじゃない。笑わせるわ」
「生まれてこの方、服装についてここまでボロクソに言われたの初めてです」
「とりあえず地味なのよソレ。そして地味でやっぱり地味なのよ」
なんだろうコレ、泣けってことだろうか。
「それで、私にどうしろと?」
「そうねぇ……一番と二番、どっちがいい?」
「それを選ぶことの意味は」
「いいから」
「いや」
「いいから」
「……じゃあ一番で」
「それじゃあはいコレ」
目上の権力をフル活用した幽々子様が取り出したのは、黒を主体に彩られ、そこに純白のフリル付きエプロンなんかが追加されているドレス。
「……これって」
「メイド服」
「まさか着ろと?」
「えぇ♪」
「何故?」
「萌えが足りないから」
「そもそもその萌えというのが私にはよく分らないんですが、これを着ることによって私になんら得が無いどころかむしろ何かを失いそうなのでお断りしたいです」
「得るものならあるわよぉ? 萌えについての知識とかぁ、主人を悩殺する際に必要なものとかぁ、私の満足度とか」
「最後以外特に欲しいと思えないんですが」
「じゃあその最後のを得るためにも」
「それ以外の方法で得ることは出来ないんですか?」
「現状、他に策は――」
「はい、宇治金時」
うわぁい(はぁと)とか言いながら子供のように無邪気な笑顔で宇治金時を食す幽々子様。
「……満足なんてしてないわよ」
「まるまる喰らい尽くしておいてよく言えますね」
すごいコレ。洗い立てみたいに器ピッカピカ。幽々子様食器洗浄機として機能できるかもしれない。清潔さに問題があり過ぎるけど。
「とにかく、まだまだこんなんじゃ足りないのよっ」
「はいおかわり」
「ハッ、食なんかで今の私が満たせると思って?」
じゃあその器を置いてください。
「いいからメーイードー、メーイードー、妖メーイードー」
「どちら様ですかその御方」
じたばたと駄々をこね出した幽々子様に溜め息を一つ。とても齢千年の時を過ごしてきた者の姿とは思えない。ちなみに宇治金時は瞬間的に食されていた。あ、失礼、飲まれていた、が正しい。
「はぁ……着替えればいいんですか、着替えれば」
「うんっ☆」
私はもう一つ溜め息を吐いて、ニッコニッコしている幽々子様からメイド服を受け取る。これでもかとフリルの付いたソレはとても剣を持つ庭師の着る物とは思えない。
「じゃあ着替えてきます」
「えぇ、早くね(はぁと)」
ものっそい上機嫌に手を振る幽々子様に見送られて、メイド服をその手に別室へ移る。
近場にメイド服を置き、とりあえず上着に手をかけて――あ、サービスシーンここまでです。
早い? サービスシーンと呼べる域にすら達してない? 私からすれば部屋を出た時点で「~分後」とかならなかったんですから遅いくらいです。
はい着替え終了。色気も何も無い? ……悪かったですね、どうせ胸無いですよ。
部屋を出て、後ろ姿でもルンルン♪みたいな感じになっているのが分かる幽々子様の肩を叩く。
「幽々子様、着替えてきました」
「ふっふっふ~、待ってたわよ~。さぁて、妖夢はどんな感じに変…身……」
勢いよく振り返った幽々子様は私の姿を見て、どんどん顔から表情が無くなっていく。
「……あの、妖夢さん?」
「どうしました? どこか変なところありますかね?」
「いや、全く無いどころかそれはもうとてもとてもお似合いなんですがっていうか一ついいかしら?」
「はい、なんでしょう?」
「……なんでいつもの格好?」
「誰も“メイド服に”着替えるなんて言ってませんよ?」
そう言って私が悪戯っぽく微笑むと、幽々子様はキョトンとした目でこちらを見る。まさか私がここでこんな態度を取るとは思ってもみなかったのだろう。
まぁ、いつもの私ならそう思うのは間違ってないと思うけど。
「……反抗期?」
「それはまた随分と遅れてきた反抗期ですね」
「ザブンg――」
「ストーップ、ここは幻想郷。混ぜるな危険」
「妖夢? 私は貴女にメイド服を着るようにと、そう命じたつもりだったんだけど?」
「はい、承知しております。なんならもう一太刀くらい入れてきましょうか」
「誰が斬れと言ったのよ」
「つい先程幽々子様が仰ったと記憶しておりますが」
「ええと……何? つまり私の言うことを聞かないと、そういうこと?」
「結論から言いますと、そういうことになりますね」
あ、空気が変わった。
「ふ・ふ・ふ~♪ 妖夢ぅ……? いつから貴女は私に対してそんな態度を取るような娘になったのかしらぁ~?」
うわぁー生半可じゃない妖気が集束してるー。生身の人間に直撃させたら余裕で私達の仲間入りできるくらいの妖気ですよコレ。
はぁ……仕方ない。
「主の言うことも聞けない悪い子にはお仕置きが必要よねぇ……ふふふ、いくわよ幽曲『リポジトリ――』」
「――このままでは、ダメですか?」
「……はい?」
瞳に涙を溜めつつ、ギリギリ聞こえるレベルの蚊の鳴くような声で呟く。
「このままの私では……幽々子様を満足させることは、できないのでしょうか……?」
「え、あの、妖夢さん……?」
「確かに私は未熟です。幽々子様を満足させるためならば、身なりぐらい整えてお仕えするべきだということも存じております。ですが……そんなものに頼らなければ幽々子様を満足させられないのかと思うと……悔しくて、不甲斐無さがこみ上げてきて……」
俯き、下唇を噛んで、泣いてはダメだと必死に堪える健気な様をアピール。
「えぇーっとぉ……何かなこのシリアス……?」
「ダメでしょうか? このままの私ではダメでしょうかっ?」
「…………(汗)」
ふふ、困ってる困ってる。幽々子様普段はとびきりのSなのにこうなると弱いからなぁ。泣く子には勝てない、とはよく言ったものだ。
やがて、脳内で何かと格闘していたらしき幽々子様は、瞳を潤ませながら言い寄ってくる私に耐えられなくなったのか、視線を逸らして告げた。
「……妖夢」
「はい……?」
「――ひどくお腹が空いたわ。そのままでいいから早々に何か作ってちょうだい」
「はっ、はいっ!」
ぱあぁ、と自分で言うのもアレだが花の咲くような笑顔、プラス乙女の涙が弾けるオプション付きである。それを目にした幽々子様は「ぐっ」と見えない何かからダメージを受けていた。計画通り。
というか、今も貴女様のお手には宇治金時が握られているんですけど。着替えに行く前は半分以上あったおかわりの山があと幽々子様の手元にある一個しかないように見えるんだけど、きっと私の視力が一瞬にして格段に落ちたんだろうな、うん。
と、そこでひたすらにしゃくしゃくと宇治金時を食べ続ける幽々子様を見て、私の脳が瞬時に面白いことを提案してきた。それを実行に移した際の結果を予想して、思わずクスリと笑みがこぼれた。
「あの、幽々子様」
「何? メニューはできれば焼き鳥とかがいいわねぇ、さっきそこら辺を夜雀が飛んでいるのを見て食べたくなっちゃった」
「了解しました、狩ってきます。ですが、私がお聞きしたいのは別にありまして」
「ん、何?」
「実は私もちょっと小腹が空いてしまいまして、つきましては幽々子様が手にしているものを微量でいいので分けていただけないかと」
「あら、私の娯楽の一つである食を取ろうとはいい度胸ね」
食以外に娯楽を持っているのなら是非聞きたいところではあるが、回答に少々の不安を感じたため、自分自身に止める勇気を提案しておく。
「けどいいわ、流石に六十二杯目ともなると舌が麻痺してきたから」
あれ、私視力だけじゃなくて耳の方もおかしくなってたか。近いうちに眼科と耳鼻科行こう。
「ありがとうございます」
一言礼を言って、幽々子様が差し出してきた器とスプーンを受け――取らずに私は伸ばしたその手をテーブルに置いて。
「――いただきます」
小さく呟いた後ゆっくり瞳を閉じて――自分のソレを幽々子様の唇に重ねた。
「…………」
ん、ちょっと苦くて甘い。抹茶とあずきが混ざってていい感じ。
「……っ!?!?!?」
やっぱり温かくはないか。冷たいものを食べた後ってのもあるんだろうけど、幽々子様は元々死人だし。けど柔らかいなぁ、コレ。
「~~~~っ!?!?」
私はその滅多に味わえない格別のデザートを十分に堪能してから、幽々子様がちょっと暴れ始めたのを機に唇を離した。
瞳を開けて見てみると、幽々子様は私が見たこともないほど顔を真っ赤にして、自分の唇に指を添えて驚きに目を見開いてぱちくりさせていた。何が起こったかは理解できているけど、頭がどう反応すればいいのか分からずフリーズしてるってトコだろうか。こんな幽々子様、新鮮でちょっと可愛いかもしれない。ふふ、やっぱりやって正解だった。
「ごちそうさまでした。普通に食べるよりも格段に美味しかったですよ」
指を唇に添えてニッコリ微笑んだ瞬間――。
「ふー……何か飲み物を……」
――私がこの場に出現した。
「ん? お前……私!?」
あ、まずい雰囲気。これは早々に退散した方がいいかも。
「あ、おいっ! ちょっと待て!」
駆け出した私に私が何か言っていたような気がするが、生憎私は耳が悪くなっているのだ。何も聞こえないとばかりに足を速めてそこから脱出した。
「あいつ……姿が見えないと思ったら……って幽々子様? 大丈夫ですか? 何かちょっと顔が赤いですけど、私に変なことされませんでしたか幽々子様?」
「よ、妖夢……」
「……補給完了どころか、ちょっと過剰摂取…」
「はい?」
真っ赤になる幽々子様かわいい!!!!!
これが冥界の盾の本気……!(違
私の妖×幽分が過剰摂取にwww
妖×幽々おいしいです。
ご馳走様でした!
一言。赤面にかなうスキルなし!(ぉ
>謳魚様
守護する対象にある意味で攻撃しかけてますけどね、盾w
>3様
表が自重し過ぎてるせいか裏は自重知らずなのですw
>4様
俺の中で半霊はデフォでこんなんだから困るw
>5様
日々憑かれて吸われていったんでしょうねw
>6様
取りすぎると糖妖病になるので注意が必要ですw
>7様
こんな作品でも補給していただけたなら幸いですw
>8様
お粗末さまでしたw
人体があの性格だからといって霊体まで同じ性格とは限らないわけか
ザブングルじゃなくてカンニングですよ。ザブングルは「中濃の笑撃波」だった筈。