カチャ――――キィィ。
「……ただいま、お姉さん」
ポタリ、
ポタリ、
ポタリ。
「ほら、約束通り――持って来たよ」
ポタ、ポタ、ポタ、ポタ……。
「これで一安心だね。お姉さん」
ポタ……
ポタ……
タタッ。
――――――
ガチャチャチャッ、ガチン。
くくく。
お姉さん。お姉さん。
あたいの大好きなお姉さん。
好き。好き。大好き。
どうしようもなく好きだよ。
気が狂ってしまうくらいに、愛してる。
いやもう狂ってしまっているのかもしれないけどね。
だって、お姉さんの事を考えると心臓が潰れてしまいそうなんだ。
息遣いを、匂いを、手で髪を掻き上げるしぐさを思い出すだけで、頭がおかしくなってしまいそうなんだ。
ジャラリ。
もう、そんなに怖い顔しないで。
あぁそうだ。今日もお姉さんの夢を見たんだよ。
お姉さんが笑顔でね、あたいも気分がいいんだ。
お姉さんの白くて綺麗な手があたいの背中を撫で上げてくれるんだよ。
幸せすぎて死んじゃうかと本気で心配したなぁ。
あのまま死んでも悪くはなかったけどね。
夢から覚めたくないって、夢の中で思ったのは初めてだったよ。
もっとも夢だとわかっている夢を見たのも初めてだったけど。
だって、お姉さんがあんな笑顔をあたいに向けてくれるはずがないもん。
ガチン……。
えへへ、そんな不思議そうな顔しなくてもいいよ。
あたいはわかってるんだよ。
お姉さんは誰の事が好きなのか、わかってるんだ。
わかってる。わかってるんだ。知ってるよ。
だってお姉さん、その人の前に立つと心臓の音が大きくなるもん。
あたいはね、耳がいいんだ。
お姉さんの心臓の音、いつも聞いてるから変だなってすぐわかるよ。
どくんどくんって。早くなるんだ。
え? あぁ。そうだね。趣味が悪いって、反論しようもないよ。
だってしょうがないじゃん。お姉さんの心臓の音、とってもいい音なんだもん。
甘くって熱くって、凄く変な気分になるんだ。
お姉さんと繋がっているような気がして、お姉さんがあたいのモノになってくれたような気がして。
それでね、つい聞いちゃうの。
お姉さんも知らないような、お姉さんの体の事があたいだけに伝わってる気がしてね。
まるでお姉さんを独占してるような気がするの。とってもいい気分なんだ。
だから、その心臓の高鳴りが別の誰かに向いた時には凄く嫌な気分になるんだ。
あたい以外にお姉さんのドキドキが向くのが、堪らなく辛いんだ。
血が沸騰してしまいそうなんだ。
頭が爆発してしまいそうなんだ。
お姉さん、知らなかったでしょ?
ここの傷、腕の引っかき傷。
これね、お姉さんにはペットとジャレついてねって言ったよね。
それ、お姉さんはふーんって、特に興味もなさそうに納得してたよね。
本当はね、違うんだよ。
これ、自分でつけたんだ。
爪が肉に沈み込んでね、骨を引っかくんだ。
ガリガリガリガリ。とっても痛かったよ。泣いちゃったもん。
なんでそんなことしたのかって……本当にわかってないの?
そう、それなら教えてあげる。
お姉さん、お空の前に立った時ドクンっていったんだ。
嫌な夢でも見ているんじゃないかなって思ったよ。
でもそれは紛れもない現実で。
あたいにはどうしようもなくて。
ガチャガチャ、
ガチン。
……あはは。言われなくってもわかってるよ、そんなこと。
お姉さんはそういう意味でお空にときめいたんじゃないよね。
知ってるんだ、けど。でも何て言うのかな。とにかくそれが許せなくてね。
起爆剤っていうの? とにかく今まで押し込めてたものが噴き出しちゃってね。
ガチャガチャガチャッ。
そんなに暴れないでよ。手首とか足首とかに痕残っちゃうよ? せっかく綺麗な体してるのに。
あたいは別にお姉さんに酷い事をしようって考えてるんじゃないよ?
あたいは謙虚だからさ、ずっとお姉さんと一緒にいられればそれでいいんだ。
ずっと一緒にね。
ここだってさとり様にお許しを頂いて借りた部屋なんだ。見た中で一番広くて清潔でね。いい部屋でしょ。
お姉さんをペットとして献上するって約束してやっとお貸し頂けたんだ。苦労したんだよ?
まぁ、お姉さんもさとり様のモノになるって事だけどさ。
少し複雑だけど、それでもいいよ。お姉さんはあたいの部下ってことにして貰うし。
それよりも何よりも、あたいはあいつからお姉さんを遠ざけたかったんだ。
いやいや、お空の事じゃないよ?
お姉さんが大々だ~い好きなあいつの事さ。
あたいもさ、あいつの事嫌いじゃなかったんだけどね。
でもお姉さんがあいつのこと好きだって知ったときには即行ブラックリストナンバーワンだったね。
いやぁ、ずっとずっと死ねばいいなあって、ずっと思ってたよ。
ていうかさ、あり得ないよね。あいつもお姉さんの事が好きだったんだよ。
マジあり得ない。
死ねばいい。
死んじゃえばいいよ。
死体は肥溜に浮かんでればいい。
魂は、そうだね。
思いつく限り色々なことして、くくっ。
ジャラッ……ララ……。
あーそんなに不安そうな顔しないでよ。
大丈夫、お姉さんを誑かしたあいつはもうすぐ死ぬからね。あたいが殺すわ。
もちろん直接だよ。ねじ切った首は……欲しい? でも触らせては上げないよ。変な菌でもお姉さんに付いたら困るもん。
お姉さんを穢していいのはあたいだけなんだよ?
そう、あたいだけが、あたいだけが、お姉さんを穢す権利を持っているんだよ?
それなのにお姉さんときたら、あたい以外の奴を好きになるなんて。ほんとどうかしてるよ。頭のネジでも飛んじゃったのかな?
何でそんなに怖がるのさ。
あぁ……そうか。わかったよ。
要するに、お姉さんはあいつに一服盛られてたんだ。
あいつ、魔法使いって言ってたもんね。変なキノコ集めてさ。
きっと惚れ薬か何かだよ。お姉さんはそれにやられてるんだ。
だってあいつ、よくお姉さんのところに遊びに来てたじゃない。あたいがお姉さんの膝の上で寝てるときだって邪魔して。あー今更だけどほんと死ねばいいわ。
まあそれは置いといて、煎餅とかさ、お酒とか、いろいろ持ってきてたじゃん。それに何か入ってたんだよ。間違いなし。
大体お姉さんもお姉さんだよ。素気ない態度ばっかりで余計にあいつ、お姉さんに纏わりつくんだよ。
不安がってね。
お姉さんは多分、天然さんなんだろうけどさ。ダメじゃないか。
……あぁもしかして。
あたいの事を不安がらせるために、今までみたいな事をしてたのかな?
そうだよね。そうだ。そうに違いないよ。
お姉さんは意地悪だなぁ。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。
あー? あたいの勘違いなわけないじゃん。
意識してないのなら、無意識にかな。
そうだそうだ。やっとわかった。
お姉さんは無意識にあたいを惹きつけようとしてるんだよ。
お姉さんもあたいが好きだったんだ。
あははははっ。嬉しいっ。
あたいもお姉さんの事大好きだよっ。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャッッ。
何でそんなに怒っているのさ。だからあたいの勘違いじゃないってば。
……んー、まぁいいよ。もうお姉さんはあたいのモノなんだし。あいつは死ぬんだし。
え? 何で死ぬってそりゃ、あいつがもうすぐここに来るからさ。
あいつのところに手紙を送ったのさ。優秀なペットが今頃あいつのところに届け終わってるはずさ。
凄く楽しみだなあ。楽には殺してやらないよ。あたいのモノを盗った罪は重い。どんなに謝ったって絶対に許さない。
でもあたいだって鬼じゃないよ。さっき言ったように、ちゃんと顔くらい見せに戻るさ。
ガチャ――――キィィ。
んあ? あれ? お空。
えぇ? もう来ちゃったのかい。優秀って聞いてたけど、ほんと優秀だなぁ。
それじゃ行ってくるよ。あいつを殺せばお姉さんにかかっている魔法も解けるよ。きっと。
大丈夫、絶対助けてあげるから。待っててね。
それじゃ、行ってきます。
地霊殿コワイお燐コワイいやカワイイ(ぉ
なにこのおりんりん無双
ちょっと地霊殿行ってくる。
リアル幻想郷は地獄だぜぇ
オチを見て、タイトルを見直してひやりとしました
おりんりん強すぎw
お燐ちゃんは恐可愛い。それは地底の常識。
そこにはゆかりんに猫鍋にされたおりんりんの姿が!