※当タイトルは『拝啓、親愛なるレミリア様へ。大好きです。心底お慕い申し上げております。あなたのことを考えているだけで身は風を受け天に昇るが如く、心は春の花畑に寝転ぶが如く愛に充ち足る想いです。それなので、いつまでも健やかにいてください。あなたの乙より。追伸、おはようのキスくらいいいじゃない!』の略となっております。
朝起きたら、馬乗りだった。
妹が。
私に。
「というわけでキスして欲しい」
「妹が寝起きの姉に跨って云う科白じゃないわ」
「だって朝云わないとおはようのちゅーにならないじゃない」
「前日予約制」
「ショック!」
とりあえず妹は退いてくれた。
「明日の分の予約は今可能?」
「残念ながら三年待ちよ」
「ショックだ!」
フランドールのこういう素直なところが好きだわ。
でも、恐いから寝込みを襲うのは止めて欲しい
「じゃあ私がキスする」
襲われる!
妹の目が狩人の目に!
しかし、あからさまに痛がって妹の心に傷を負わせるわけにはいかない。ここは紳士的対応の出番ね。
「手の甲なら空いてるわよ」
「首筋が好い」
血が狙われている!?
「吸血鬼に首筋差し出すほどチャレンジャーじゃないわよ」
「キスするだけだもん!」
「姉は妹を信じはしない」
「愛が足りない!」
妹はまるで天を呪うかのように床に伏せた。その内何か悟りでも開けそう。
呆れるわ。なんでそんなにキスを求めるのかしら。家族愛ならハグで充分じゃない。
「ねー、じゃあおはようじゃなくていいからキスしようよー。フレンチキスでいいから」
……フランの愛情表現は家族愛だと思ってるのだけど、もしかすると誤りなのかも知れない。
否。そんなハズはない。
「ねぇ、フラン。フレンチキスってどういうのか知ってる?」
「舌と舌でボクシング」
私は世界を呪った。
妹が壊れていた。
「そのキスは恋人同士がするキスで姉妹でするキスじゃないわ」
「それはそれ」
右から左へのジェスチャー。
それじゃ本題ノータッチ。
「流さない」
「細かいこと拘ってるとずっとちっさいままだよ! お胸とか身長とかカリスマとか!」
「自分の身長と乳を鏡で見てから云いなさい、遺伝よ。カリスマはちょっとした鉄分不足よ」
「鏡映らない」
「迂闊だった」
うちにある等身大の鏡って誰が使ってるのかしらね。
とりあえず私の部屋にある鏡台が空しい。
「待つのよ! レミィ、フラン!」
何故かパチェ来襲。
「何、どうしたの?」
「姉妹でキスするなら私にも見せなさい。むしろレミィは私とキスしなさい」
「落ち着け」
そしてパチェは止まらなかった。
誰かまともな人材はいないのか。
というか、寝起きに周囲のテンションが高すぎて温度差が。
「お嬢様と妹様がキスをなさると聞いて横合いから最高のタイミングでお嬢様のキスを奪おうと私もここに待機しております」
「さすが完璧な従者ね私の指示に従ってさっさと三人揃ってこの部屋を出て行きなさい」
「何故ですか非想天則ではあれほどキス魔なのに!」
「そうよレミィ、躊躇なくキスしてたのに!」
「え、何それ!? 私も出れば好かった! お姉様キスミー!」
眩暈が。
仕方ないので念波で応援を要請するわ。
そこで何故かパチェが胸を張る。
「レミィ。あなたは私とキスしても私以外とキスしてもいいわ。私はキスする光景を目に焼き付けてBL同人誌描くから」
「その話詳しく聞かせてください」
美鈴が湧いた。
「美鈴。どうしたの?」
「あ、レミリア様。いえ、正直BLには興味はないのですが、男性の同性愛の話となるとつい耳が反応を」
「淀みないわね」
駄目な子ばっかり。
「同人誌描くなら私も描くー。私×お姉様」
「以前フランの自由帳を見ていたら私が思う様凌辱されていたのだけど」
「愛です」
「もっと姉を尊んでくれるとありがたいわね」
「……大好き」
「ちょっと方向違うかな」
目を潤ませるな、恐いから。
と、美鈴がそっと私の横に立った。
「愛されてますね」
「もうちょっと距離のある愛情がいいわ。というか、ホモ本読みながら……濃い」
妖夢の師に妖忌というのがいた。あれくらいの年齢の男二人が愛を囁き合っていた。
正直直視に堪えない。
「あぁ、愛っていいですねぇ」
「その本片手に云われるとものごっつ否定したくなるんだけど」
差し当たってその素晴らしさは私には判らない。
ちなみに眼前でぎゃーぎゃー叫び合ってる妹とメイドと図書館の食客は、一体何について揉めているのか。
「ジャンケン勝った人からお姉様とキスってことで」
「異議ありません」
「異議ないわね」
私は逃げ出した。
「あ、お姉様が逃げた!」
「大丈夫、今は昼、館の外には出られません」
主を追うなメイド! 妹は姉を追っても好いのだけど童女のような好奇心で追うこと以外は認めないわ。
とりあえず館内の廊下を猛ダッシュ。
「蝙蝠になって逃げればこっちのもの!」
「レミィ。蝙蝠になったら小悪魔使って一斉捕縛するからね」
「なんでこういう時だけ元気なのよあんたは!」
※『こういう時』には萃夢想や緋想天等々を含みます。
「私は読書とレミィへの求愛と朝顔の観察だけには命を掛けるわ」
「私への求愛と朝顔の観察同レベル!?」
恐るべし朝顔。私への求愛が実は結構どうでもいいレベルなのかも知れないけどそれはそれで助かるわ。
でも……朝顔の観察って夏季限定?
「ちなみに夏以外はちりめんじゃこの育成をしてるわ」
「パチュリー様。そろそろ家庭菜園にちりめんじゃこ埋めていくのやめませんか?」
「じゃこを育てなさい」
奇々怪々な行動をするわね。
「お姉様隙あり!」
油断してたら急接近された!
「美鈴!」
「はい」
なんで平然と併走してるか。
というか、ホモ本をいい加減置け。読みながら走るな。
「オチどうしよう!」
「え、何の話ですか?」
真顔で返された。
「早くオチないと私の唇が奪われるわ!」
「減るもんじゃなし」
「とりあえずホモ本で顔を赤らめるな」
とか云ってる間に妹が迫る。
「くっ、かくなる上は!」
~~~そして三年後~~~
「お姉様ぁ!」
「くっ、駄目だった!」
「……さすがに三年走ると喘息もあって呼吸困難だわ」
喘息関係なくよく走ってるわね。そろそろ戻って好いわよ。
「時間操ったので実質八時間ほどですが」
「この同人誌凄い。三年戦える」
「まだ読んでた!」
そろそろ私が限界だわ。
……もうなんで逃げてたのかさえ忘れてきた。
「ねぇ、一つ提案があるわ」
この鬼ごっこ、目的憶えてる人いるのかしら。
「そろそろお風呂は入りましょうか」
「「「「異議なし」」」」
「その後御飯食べて、寝ましょうか」
「「「「賛成」」」」
鬼ごっこは終結した。
私の勝ちなのかも知れない。
……しかし。
「なんで鬼ごっこしてたんだっけ?」
「レミリア様が咲夜さんやパチュリーさんやフランドール様に唇狙われててイヤンバカンだったからじゃないでしたっけ?」
「あぁー……いい加減その本置きなさい」
「あと一周」
「耐久スペルかなんかかそれは」
疲れた。精神的に。
「お姉様! 洗いっこしよ!」
「下心があったら拒絶するわ」
「お嬢様、背中流します」
「前へ手が伸びたら逃げるから」
「レミィ。このボディーソープ手で泡立つのよ」
「へぇ。でも洗うときはスポンジかタオル使いなさい」
「パチュリーさん。この本防水加工してくれません?」
「まだ読む気!?」
「いえ、これは別のです」
「ひぃ、ご老輩の方々が全裸!」
トラウマになりそうだわ……
「レミリア様より若いのに」
「見た目って大事よ美鈴」
実年齢じゃないわ。
「わぁ、見て見てお姉様! 泡風呂ー!」
「あら本当」
「時間を止めて一生懸命泡立てました」
「……どうやって?」
「掻き混ぜて」
泡風呂ってそうやって作るものだったかしら?
「……この泡」
パチェが泡を舐めてた。
「石鹸の泡なんて身体に悪いわよ」
「……メレンゲだわ」
「卵白!?」
「お陰で右腕が痛みます」
「その所為で咲夜さん右腕だけやたらマッシヴなんですね」
「おいしー」
「やめなさいフラン! って、美味しいってもしかして砂糖入り?」
「……やっちゃった」
べったべただった。
ある程度浸かった後は、パチェのロイヤルフレアで夕餉代わりになったわ。
お風呂も食事も終わったし。
寝ましょう。
「お姉様ぁ。まだぁ?」
「なんで私のベッドにいるの?」
「ジャンケンで勝ったから」
「……そこにパチェや咲夜がいた可能性もあったのね」
「愛で勝ったよ!」
「親愛であることを切に願うわ」
頬赤らめてる妹が恐いけど眠れば無の境地。
ぐんない。
そして三年たったからフランちゃんはおはようのちゅーをするのですね。
テンポ良く楽しませていただきました。そしてフランちゃんの壊れっぷりに涙が……w
美鈴、淀みねぇな。というかすごいあれだ。
皆オチツケw
>「ねぇ、フラン。フレンチキスってどういうのか知ってる?」
>「舌と舌でボクシング」
あんたは馬鹿だと思った(褒め言葉)
フランに何を言わせてるんだよwww
えっちなのかそうじゃないのか全然わからないのがスゲェww
うん、強いて一つ言わせてもらうなら、注意書きと後書きが逆だ!ww
美鈴がすきなのはBOYS LOVEではなくGENTLEMEN LOVEなのか。
勝った人から?
もう駄目だこの紅魔館wwwww
>>やたら右腕がマッシブヴ
誤字なのかわかんねぇですが多分「マッシブ」か「マッシヴ」なんじゃないかなぁと思います。
あと美鈴隊長、その本下さい。まぢで。
そして焼き芋さん、お嬢様に紅魔館以外の魔の手を伸ばしましょう。