あまり知られてはいない事ですが、この紅魔館の地下にある大図書館の主であるパチュリー様は
自身で本の執筆をされています。
ほとんどが自身が纏めた魔術書・魔道書の類なのですが、まれに物語などの創作も行っています。
外の世界から流れ着いた物語を判りやすく翻訳したり、口伝で伝えられた物語や美鈴様から
聞いた物語を纏められたり、自身で創作した物語を書き綴ったりされており、レミリア様や
フランドール様、妖精メイド等に人気がありました。
かく言う私もパチュリー様の物語のファンの一人でした。
他の妖精メイドよりは読み書きが出来るものの、外の世界の文字や、古い言い回し等は
やはり読むのが難しく、本を読むのが好きであるのに読める本が図書館には少なかった私に
とって、パチュリー様の書く本は私を夢中にさせました。
その事をパチュリー様にお伝えした所、
「新作が完成したら小悪魔にでも連絡させるわ」
とおっしゃって頂けました。
妹を救うため、一人邪悪な竜に戦いを挑む少年の話。
命を助けてもらうかわりに、王に毎夜寝物語を話す事となった少女の話。
愛し合っているのに、一族の掟により互いに戦い合う運命となった男女の話。
世界を変える事の出来る不思議な力を持った少女の話。
どんな願いでも叶うという7つの球を求めて冒険する少年と少女の話。
そのどれもが魅力的で、いつしかパチュリー様の物語を読むのが私の至上の喜びとなっていました。
そして、あの時も私は読み終えたパチュリー様の書かれた本を返却する為に、図書館へと向かったのです。
本棚に本を戻し終えた私は、物静かな図書館を一人歩いていました。
数時間前に霧雨魔理沙様が来られた折に行われた弾幕ごっこにより、喘息を再発されたパチュリー様は
現在は小悪魔様に付き添われて医務室におられ、いつにも増して図書館は静寂に包まれていました。
私は広大な図書館を歩きながら、先程返却した物語を思い出していました。
ギャングスターになる為に仲間と共に戦う、不思議な力を持った少年の物語。本は「上巻」と銘打ってあり
まだ闘いの途中で終わっていました。
嗚呼、あの氷を身に纏う恐ろしい敵を、少年と仲間の飛び道具使いはどの様にして倒すのでしょう。
飛び道具使いの攻撃を易々と受け止め笑う敵を夢想し、私は身震いをしました。
嗚呼、続きが早く読みたい。
少年と仲間が、どの様に窮地を切り抜けるのか早く知りたい。
そんな事を考えていた私は、いつしかパチュリー様が何時も使っておられるテーブルの近くまで来ていました。
そして、ふとテーブルを見た時に目に入ったのは、何時もパチュリー様が使っておられるペンとインク壷、
それに一冊の本でした。
普段の私であれば、そのまま歩いて図書館を退出していたでしょう。
パチュリー様はお嬢様の友人であられ、私達の上司では無いものの、紅魔館では客分として滞在しておられる立場。
そんなパチュリー様の私物をただのメイドである私ごときが勝手に触れる事など出来るはずが無いのですから。
しかし、私はそのテーブルの前で立ち止まってしまいました。
脳裏に浮かんだ、ある考えによって。
あれは、先程の物語の続きではないか。
その考えが、徐々に私の思考能力を奪っていきました。
冷静な自分が頭の片隅で警鐘を鳴らします。
「もし物語の続きでなかったらどうするんだ。パチュリー様の私物であったならどうするのか」
その場で立ち止まった私は、おそらく混乱していたのでしょう。
上手く思考する事が出来なくなっていました。
数秒だったのか、数分だったのか、数十分だったのか。
ついに私はその本を手にとってしまったのです。
まだ表紙には何も書かれてはいない新しい本。
手に取った時に微かにインクの匂いをかいだ気がしました。
体が微かに震えているのが自分自身でも判りました。
しかし、その震えが物語の続きへの期待なのか、パチュリー様への後ろめたさなのかは
私には判りませんでした。
しばらくの間、ただ本を持って呆然としていた私は意を決して本を開きました。
まるで初めてラブレターをもらった時の様な鼓動の高鳴りを感じながら中身を見てみると
そこに書かれていた物は私が想像していた物とは、まるで違っていました。
『
魔法少女リリカルぱっちぇStrikerS
第一話「華麗に爆誕!魔法少女リリカルぱっちぇ!」
ハーイ!私の名前はパチュリー。本が大好きで普段は図書館で働いている自分で言うのも何だけど、
ちょっと地味な女の子。あ、でもでも心の中では結構可愛いんじゃないかな?って思ってるんだけどね。
でもね、そんな私には皆に言えない秘密があるの。
アナタだけに教えてあげるね!
実は私、地球侵略を企む悪の宇宙人「スキマーン星人」と戦う魔法少女、リリカルぱっちぇなの!
今日も人里で私に助けを求める声がするわ!さぁ!行かなくちゃ!!
リリカルぱっちぇ出動よ!!
『フハハハハ!寺子屋の子供達が乗るこのバスは、我々がバスジャックした!大人しくしないと
スキマに放り込んでしまうぞぉぉ!フハハハハ……』
あれはスキマーン星人の女幹部、スキマファントム「ヤク・モーラン」!!
相変わらず痴女みたいな格好は間違いないわ!
でも、このリリカルぱっちぇが来たからには、貴女なんかの好きにはさせない!
さぁ、急いで変身よ!!
「リリカル・ラジカル・トリゴネリン!マジカル・パラソル・テトロドトキシン!」
呪文を唱えると、私は眩い光に包まれ0.005秒で戦闘スーツに変身完了よ!
「そこまでよ!!」
『な、何者だ!!』
「幻想郷を東へ西へ、遂に出た出たコンニチワ!愛と正義の魔法美少女リリカルぱっちぇ!
華麗に美麗にただいま参上!!」
『お、お前はリリカルぱっちぇ!』
「さぁ!ヤク・モーラン!子供たちを放しなさい!」
『フフフフフ……計画通り!罠に掛かったな!リリカルぱっちぇ!!』
「な、なんですって!!」
…………
……
』
どうしよう。
それが私の最初の感想でした。。
今までの本とは違い、挿絵としての綺麗なイラストも描かれている。
パチュリー様に似た少女が純白のロングコートを羽織り、ひざ上15センチ、股下2センチ位の
超ミニスカートでポーズを取っている。手には巨大な杖の様な物を持っていた。
……パチュリー様、絵が上手いな。
……と思っていたら、イラストには「こあ」とサインが入っていた。
なるほど、イラストは小悪魔様か。微妙に納得してしまう。
しかし先程も言った様に、パチュリー様……もとい、「リリカルぱっちぇ」の超ミニスカートでは
下着が丸見えになってしまう。スカートとしての役割を果たしていない。
現に挿絵のイラストの全てにおいて、「リリカルぱっちぇ」の縞ぱんが見えていた。
……ひょっとして、小悪魔様の趣味なのだろうか。
その時、不意に視線を感じた。
まるで背中に電流が走った様な感覚。
そして誰かが近づいて来る足音。
それからしばらくの事は記憶にありません。
ただ私は無我夢中で逃げ出していました。
気が付くと私は自分の部屋にいました。何処をどう走ったのかまるで覚えてはいませんでした。
ひょっとしたらパチュリー様には気づかれ無かったのではないか?
そんな甘い期待をしている自分が酷く滑稽に思えました。
だって、パチュリー様は稀代の魔女。
例え紅魔館の外に逃げたとしても、私には逃げ切る事などできないでしょう。
だから、私は残された僅かな時間で、この手記を残す事にしたのです。
他の誰かが私と同じ過ちを犯さないように。
……そして、私がどうなってしまったのかを知ってもらう為に。
……でも、もう時間切れの様です。
かすかなノックの音。カチリと鍵が開いた音。ゆっくりとドアノブが回る音。
そして、部屋のドアが静かに開い……
手記はここで途切れている。
自身で本の執筆をされています。
ほとんどが自身が纏めた魔術書・魔道書の類なのですが、まれに物語などの創作も行っています。
外の世界から流れ着いた物語を判りやすく翻訳したり、口伝で伝えられた物語や美鈴様から
聞いた物語を纏められたり、自身で創作した物語を書き綴ったりされており、レミリア様や
フランドール様、妖精メイド等に人気がありました。
かく言う私もパチュリー様の物語のファンの一人でした。
他の妖精メイドよりは読み書きが出来るものの、外の世界の文字や、古い言い回し等は
やはり読むのが難しく、本を読むのが好きであるのに読める本が図書館には少なかった私に
とって、パチュリー様の書く本は私を夢中にさせました。
その事をパチュリー様にお伝えした所、
「新作が完成したら小悪魔にでも連絡させるわ」
とおっしゃって頂けました。
妹を救うため、一人邪悪な竜に戦いを挑む少年の話。
命を助けてもらうかわりに、王に毎夜寝物語を話す事となった少女の話。
愛し合っているのに、一族の掟により互いに戦い合う運命となった男女の話。
世界を変える事の出来る不思議な力を持った少女の話。
どんな願いでも叶うという7つの球を求めて冒険する少年と少女の話。
そのどれもが魅力的で、いつしかパチュリー様の物語を読むのが私の至上の喜びとなっていました。
そして、あの時も私は読み終えたパチュリー様の書かれた本を返却する為に、図書館へと向かったのです。
本棚に本を戻し終えた私は、物静かな図書館を一人歩いていました。
数時間前に霧雨魔理沙様が来られた折に行われた弾幕ごっこにより、喘息を再発されたパチュリー様は
現在は小悪魔様に付き添われて医務室におられ、いつにも増して図書館は静寂に包まれていました。
私は広大な図書館を歩きながら、先程返却した物語を思い出していました。
ギャングスターになる為に仲間と共に戦う、不思議な力を持った少年の物語。本は「上巻」と銘打ってあり
まだ闘いの途中で終わっていました。
嗚呼、あの氷を身に纏う恐ろしい敵を、少年と仲間の飛び道具使いはどの様にして倒すのでしょう。
飛び道具使いの攻撃を易々と受け止め笑う敵を夢想し、私は身震いをしました。
嗚呼、続きが早く読みたい。
少年と仲間が、どの様に窮地を切り抜けるのか早く知りたい。
そんな事を考えていた私は、いつしかパチュリー様が何時も使っておられるテーブルの近くまで来ていました。
そして、ふとテーブルを見た時に目に入ったのは、何時もパチュリー様が使っておられるペンとインク壷、
それに一冊の本でした。
普段の私であれば、そのまま歩いて図書館を退出していたでしょう。
パチュリー様はお嬢様の友人であられ、私達の上司では無いものの、紅魔館では客分として滞在しておられる立場。
そんなパチュリー様の私物をただのメイドである私ごときが勝手に触れる事など出来るはずが無いのですから。
しかし、私はそのテーブルの前で立ち止まってしまいました。
脳裏に浮かんだ、ある考えによって。
あれは、先程の物語の続きではないか。
その考えが、徐々に私の思考能力を奪っていきました。
冷静な自分が頭の片隅で警鐘を鳴らします。
「もし物語の続きでなかったらどうするんだ。パチュリー様の私物であったならどうするのか」
その場で立ち止まった私は、おそらく混乱していたのでしょう。
上手く思考する事が出来なくなっていました。
数秒だったのか、数分だったのか、数十分だったのか。
ついに私はその本を手にとってしまったのです。
まだ表紙には何も書かれてはいない新しい本。
手に取った時に微かにインクの匂いをかいだ気がしました。
体が微かに震えているのが自分自身でも判りました。
しかし、その震えが物語の続きへの期待なのか、パチュリー様への後ろめたさなのかは
私には判りませんでした。
しばらくの間、ただ本を持って呆然としていた私は意を決して本を開きました。
まるで初めてラブレターをもらった時の様な鼓動の高鳴りを感じながら中身を見てみると
そこに書かれていた物は私が想像していた物とは、まるで違っていました。
『
魔法少女リリカルぱっちぇStrikerS
第一話「華麗に爆誕!魔法少女リリカルぱっちぇ!」
ハーイ!私の名前はパチュリー。本が大好きで普段は図書館で働いている自分で言うのも何だけど、
ちょっと地味な女の子。あ、でもでも心の中では結構可愛いんじゃないかな?って思ってるんだけどね。
でもね、そんな私には皆に言えない秘密があるの。
アナタだけに教えてあげるね!
実は私、地球侵略を企む悪の宇宙人「スキマーン星人」と戦う魔法少女、リリカルぱっちぇなの!
今日も人里で私に助けを求める声がするわ!さぁ!行かなくちゃ!!
リリカルぱっちぇ出動よ!!
『フハハハハ!寺子屋の子供達が乗るこのバスは、我々がバスジャックした!大人しくしないと
スキマに放り込んでしまうぞぉぉ!フハハハハ……』
あれはスキマーン星人の女幹部、スキマファントム「ヤク・モーラン」!!
相変わらず痴女みたいな格好は間違いないわ!
でも、このリリカルぱっちぇが来たからには、貴女なんかの好きにはさせない!
さぁ、急いで変身よ!!
「リリカル・ラジカル・トリゴネリン!マジカル・パラソル・テトロドトキシン!」
呪文を唱えると、私は眩い光に包まれ0.005秒で戦闘スーツに変身完了よ!
「そこまでよ!!」
『な、何者だ!!』
「幻想郷を東へ西へ、遂に出た出たコンニチワ!愛と正義の魔法美少女リリカルぱっちぇ!
華麗に美麗にただいま参上!!」
『お、お前はリリカルぱっちぇ!』
「さぁ!ヤク・モーラン!子供たちを放しなさい!」
『フフフフフ……計画通り!罠に掛かったな!リリカルぱっちぇ!!』
「な、なんですって!!」
…………
……
』
どうしよう。
それが私の最初の感想でした。。
今までの本とは違い、挿絵としての綺麗なイラストも描かれている。
パチュリー様に似た少女が純白のロングコートを羽織り、ひざ上15センチ、股下2センチ位の
超ミニスカートでポーズを取っている。手には巨大な杖の様な物を持っていた。
……パチュリー様、絵が上手いな。
……と思っていたら、イラストには「こあ」とサインが入っていた。
なるほど、イラストは小悪魔様か。微妙に納得してしまう。
しかし先程も言った様に、パチュリー様……もとい、「リリカルぱっちぇ」の超ミニスカートでは
下着が丸見えになってしまう。スカートとしての役割を果たしていない。
現に挿絵のイラストの全てにおいて、「リリカルぱっちぇ」の縞ぱんが見えていた。
……ひょっとして、小悪魔様の趣味なのだろうか。
その時、不意に視線を感じた。
まるで背中に電流が走った様な感覚。
そして誰かが近づいて来る足音。
それからしばらくの事は記憶にありません。
ただ私は無我夢中で逃げ出していました。
気が付くと私は自分の部屋にいました。何処をどう走ったのかまるで覚えてはいませんでした。
ひょっとしたらパチュリー様には気づかれ無かったのではないか?
そんな甘い期待をしている自分が酷く滑稽に思えました。
だって、パチュリー様は稀代の魔女。
例え紅魔館の外に逃げたとしても、私には逃げ切る事などできないでしょう。
だから、私は残された僅かな時間で、この手記を残す事にしたのです。
他の誰かが私と同じ過ちを犯さないように。
……そして、私がどうなってしまったのかを知ってもらう為に。
……でも、もう時間切れの様です。
かすかなノックの音。カチリと鍵が開いた音。ゆっくりとドアノブが回る音。
そして、部屋のドアが静かに開い……
手記はここで途切れている。
おわりかたになんとなく生物災害を感じた…
しかしまあ、名無しメイドの活き活きしてることww
名無しメイドのこだわりっぷりに舌を巻いた
>1様
幻想郷にアクセスしたら、アクセス画面には傘が回っていそうです。どんな傘かはご想像におまかせしますが。
>2様
作者の代弁じゃありませんよ?ホントウデスヨ?
>3様
5部は魂のバイブルですw
これから、パチュリー、小悪魔、名無しメイドの3人が時代を作っていくのですね。