紅魔館の薄暗い通路をパチュリーは黙々と歩いていた
(待ってなさいよレミィ)
向かうのは紅魔館の当主にして自分の親友の部屋
(絶対に認めさせてやるわ)
理由は己の信念を相手にわからせるため
そのために己の手には渾身ともいえる三つの切り札を用意してある
それを握り締めると、自らの親友の部屋の前に立ち
(見てなさいレミィ……貴方に我が全力を解らせてやる)
覚悟を決めて、その部屋の扉を叩く
しばらくしてから、親友が部屋に入るようにと声を返してきた
中に入るとカーテンが閉められ少し暗くなっている部屋の中に
テーブルと二つの椅子があり、その片方にレミリアが座っていた
「……既に準備は万端みたいね」
「ええ、貴方が此処に来ることは運命が教えてくれたわ」
レミリアがそう言うと、口元をニヤつかせた
「なら話は早いわね」
その様子を見て、パチュリーは椅子に座り
手にした切り札を軽く握りながらレミリアに宣言した
「勝負よレミィ!貴方に認めさせてあげる」
「ええ、かかって来なさい」
パチュリーがそう言って三枚の切り札を手にすると
レミリアも懐から取り出した三枚のカードを取り出す
「勝負の方法は解っているわね?」
「解っているわ……貴方の切り札の後に私が提示する切り札をぶつける」
勝負は単純、持つ切り札を提示して相手にわからせるだけ
「さあ、私の切り札にパチェの信念が何処まで喰らいつくかやってみなさい!」
レミリアがそう言って嬉しそうに告げると
「此方は始めっから叩き潰すつもりでいくわ!」
切り札を一枚かざした
その切り札を見たパチュリーが覚悟を決める
その切り札に書かれているのは屋敷の門番の写真
だが、それだけではない
映っている姿は朝焼けを浴びながら
『さあこれから仕事だ!』と言う笑顔で
片手を首の後ろからもう片方の手につけて
軽く背伸びをして居ると言う姿
つまり『これでもか!』と言う具合に胸が強調されている
さらに、スリットから覗いた脚が威力を増している
「さあパチュ……私の切り札『紅魔の太陽』よ」
(凄まじいまでの正攻法……まさにレミィらしいわ)
余計な装飾等を一切つけて居ない真っ向からの正攻法
それ故にこれに匹敵する切り札はそう簡単に見つかるはずが無い
(だけど……)
パチュリーは無言で手にしている三枚の切り札を見つめると
そのうちの一枚を提示した
「レミィ……此方も決してそちらに劣ってないわ」
パチュリーがテーブルに出したのは
「これが此方の切り札」
「むっ!?」
そこに写るのは小悪魔が本を真正面から手渡そうとしている姿
極普通の写真のはずなのだが、本を両手で渡そうとしているために
はからずとも胸が強調されるようにしている
そして、笑顔なのだがその口から覗くちょっとした八重歯
それがアクセントになりより魅力を醸し出している
「題して『天然の奇跡』」
偶然に偶然が重なって手に入れる事が出来たパチュリーの切り札であった
「これなら美鈴の胸にも十分対抗できるわ」
「なるほど、確かに美鈴にも勝るとは言えないけど劣ってないわ」
レミリアがそう言って満足そうに頷くと、美鈴の写真を戻す
「さあ、次の勝負に行くわよ」
「わかってるわ……」
レミリアの言葉にパチュリーが頷くと
レミリアが次の切り札を取り出した
「さあ、次はこれよ!」
レミリアがそう言って提示した切り札に写るのは
十六夜咲夜の姿であった
無論、切り札と呼ばれるにはキッチリとした理由がある
そこに写っていた咲夜はパジャマ姿でベッドに座り
眠そうに片目を擦りながら大きな犬のヌイグルミを抱きしめていたのだ
「どう?『十六夜休暇』に対抗できるかしら」
(なんというギャップ……恐ろしい切り札を切ってきたものね)
パチュリーはそう思いつつも、手にした切り札を見つめる
(でも、こっちも負けるわけにはいかない!)
「こっちの切り札を提示するわ」
パチュリーがそう言って手にした切り札をテーブルに置いた
そこに写されている切り札に描かれているのは
無論小悪魔…
「私の切り札の一つ『聖骸を纏う者』よ」
ベッドの上でペタンと女の子座りをしながら
大きめのシャツを一枚を羽織り
「なるほど…これなら咲夜にも喰らいつけるのは認めるわ」
その目にインテリ気味の眼鏡をかけてキョトンとしている姿であった
驚くまでのほんの一瞬、その隙を捉えた奇跡一枚であった
「希少価値とギャップなら貴方の切り札にも劣らないはず」
パチュリーの言葉にレミリアが頷く
「眼鏡に大き目のシャツ……そして、このキョトンとしている顔
なるほど、私の『十六夜休暇』に喰らいつく事は出来るわね」
レミリアがそう言ってテーブルの上に置いた切り札を手に戻した
「…正直言って驚いているわ」
レミリアがそう言いながら最後に残った切り札を手にした
「私の切り札に此処まで喰らいついて来るなんて」
本来なら、一枚目の時点で勝負になる者を探すだけでも大変なのだ
そして、二枚目に来た者も誰もが勝負にならずに消えて行った
「……久しぶりに三枚目の切り札を出すわ」
その言葉にパチュリーが手にした最後の切り札を掴む
「さあ、行くわよパチェ!」
そう言ってレミリアがテーブルの上に提示した切り札
「題して『スカーレットエンジェル』!」
テーブルに提示されたのはレミリアの妹であるフランドールの姿
「どう!?このフランの姿は!」
手にしたレヴァティンをグッと握りながら
今にも泣きそうな顔で上目使いをしている姿
それだけでも恐ろしい破壊力を持っているのだが
何よりも、その背中に生えている綺麗な羽が
まるで叱られた猫のようにしゅんとしているのだ
これこそまさに『最終兵器』の名に相応しい切り札であった
(やはり来たわね……レミィの最後の切り札)
パチュリーもその切り札を知っていた
そして、知っていてなおその威力は恐ろしいものがあった
(だけど!小悪魔にも喰らいついてくれるだけのポテンシャルがあるはず!)
パチュリーがそう心で叫びながら最後の切り札を掲げる
「レミィ……」
そしてそれをテーブルの上に置く
その写真を見たレミリアがその写真に驚きの表情を見せる
「この姿は……」
その写真に写っていた小悪魔の姿は
ぶつけたと思われる額に手を置いて
「私の最後の切り札…題して『リトルデビル』」
口を真一文字に閉じて、泣くのを堪えようとしているが
その目からは涙がもう少しでこぼれようとしている寸前の姿
その姿に思わず抱きしめてしまいたくなるような
「奇しくも同じ構えよ…」
そんな泣いている姿であった
「童顔な顔である事がより一層魅力を引き立ているわ」
「フランの純粋な泣き顔に引けを取らないわね」
パチュリーの説明にレミリアがもう一度その切り札を見る
「そして、これが最後の武器……」
パチュリーがそう言って写真の一部を指差す
「ぬっ!?」
指差された所を見てレミリアが目を見開く
そこに写っていた物は
「妹様の羽に劣らない武器……」
「ま、まさか……」
額を押さえて我慢はしているが
「小悪魔の尻尾よ!」
その尻尾が痛そうにくねっていた
パチュリーの言葉を聞いてレミリアが無言で椅子に背中を預ける
「さあ…判定をしてもらうわ」
そんなレミリアにパチュリーが声をかけると
レミリアが目を閉じて口元をニヤつかせながらため息をついて
「判定もなにも…此処まで喰らいついてきたもの……」
後ろにある机に向かって歩き出し
「資格は十分にあるわ」
「それじゃあ……」
椅子から立ち上がったパチュリーに対してレミリアが
『許可』の文字が判子で押された紙を手渡す
「ええ、本日付で紅魔館に『小悪魔ファン倶楽部』の設立を許可するわ」
その言葉にパチュリーが全力で喜んだ
パチュリーの信念である『小悪魔萌え!』が表立って形になった瞬間であった
誰かイラストを描いてください!!!!
お願いします!!!
小悪魔は
眼鏡が似合う
な
この勝負どっかで見たような…
おのおの結束力は凄そうだw