Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

何がと言ったら答えは一つ

2009/06/01 01:34:40
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 それはある宴会での出来事。
その時彼女が発した言葉は、外の世界にまで広まったという。







 夜の博麗神社。
普段は参拝客もなく、暇な妖怪たちがちらほら見えるだけの神社も、宴会のときは人妖で溢れかえっていた。
ある者はひたすら食べ続け、ある者はそれをたしなめる。(そして無駄に終わる)ある者は給仕に徹し、またある者たちは喧嘩をする。
皆思い思いに宴会を楽しんでいる。神社に響く楽団の軽快な演奏が会場を盛り上げた。
しかし、宴会というものには絡んでくる酔っ払いが付き物で、今回は一匹の猫が被害にあっていた。

「やだー! 離せー!」
「ああん? わたしの酒が飲めないってのかあ?」

 橙は必死になって魔理沙から逃れようとしていた。味覚が人間の子供と変わらない橙にとって酒はおいしくないのだ。
橙はジタバタともがいた。しかし、がっちりと捕まってしまって身動きが取れない。

「ほれほれほれぇ」
「うー! 助けてー!」

 魔理沙はお猪口を橙の口に押し付けて、無理やり飲ませようとした。
しかしそこで助けが入った。

「こら! 魔理沙! 飲めない人に無理やり飲ませるのはマナー違反ってものだぞ!」
「藍さまぁ!」

 助けに入ったのは八雲藍だった。
藍は咲夜と共に皆の世話をして回っていたのだが、自分の式の悲鳴を聞いて飛んできたのだった。
 
「ああん? 宴会で酒を飲まないでどうすんだよ」
「無理強いは善くない。飲める人に勧めなさい」
「そーそー。藍の言う通り。酒はおいしく飲まれるために存在してるのさ。飲めないやつに無理に勧めちゃあいけないねえ」

 藍の意見に同意を示したのは、顔を赤くした鬼、伊吹萃香だった。
萃香は魔理沙から橙を引き剥がし、ぽいっと藍に向かって投げ渡した。
魔理沙は、ちぇっ、と頬を膨らませながら、再び酒を飲み始めた。

「萃香様。ありがとうございます」

 藍は橙を下ろし、お礼を言い、再び皆の世話に戻ろうとした。しかしそこで後ろから声をかけられた。

「あー、ちょっとちょっと。藍。つれないねえ。ちょっとくらい話でもしようよ。久々に会ったんだしさ」
「はあ。では、失礼します」

 藍は萃香の隣に座った。
萃香は騒いでいる皆を楽しそうに眺めながら話し始めた。

「いやあ、楽しいねえ。人間も幽霊も妖怪も関係なく騒げる。素晴らしいことだと思わないかい?」
「そうですね。平和なのは好いことです。……主に平和なのは頭の中ですけどね」
「ハハッ! 違いない!」

 萃香は続けた。

「酒はそのまま飲んでも美味いが、誰かと騒ぎながら飲むともっと美味い。だからと言って、さっきの魔理沙のように飲めないやつに無理やり勧めるのは善くないけどね」
「おっしゃる通りで」
「わたしは楽しく美味く酒を飲むために、飲めないやつには勧めない。逆に言えば、飲めるやつにはとことん勧める」

 あどけない少女のようだった萃香の顔が途端に邪悪な笑みへと変わった。

「さあ。飲もうか。藍」

 やはりこうなるのか……。
藍は半ば諦観しながら鬼との一騎打ちを始めた。








数十分後。
藍と萃香は完全に出来上がっていた。

「八雲藍! 今から酒を浴びまーす! 式が解ける? そんなの関係ねえ!」
「ワハハ! いいぞー!」
「藍様もうやめてー!」
「ら、藍さん……」

 式である橙はもちろんのこと、割りと仲の良い妖夢も心配になって近くに待機していた。

「んー? なんら妖夢ぅ。飲んれないのかあ? らめだぞ楽しまなきゃあ」
「藍さん。少し休みましょう。橙も心配していますよ」
「んぅー……?」

 橙が心配そうに藍のことを見つめる。

「むう。そうらな。ちょっと休もう」

 二人はほっとしたが、それも束の間だった。

「……暑い」

 そう言うと藍は服を脱ぎ始めた。

「ちょ、ちょっと藍さん何してるんですか!?」
「藍様やめてー!」
「いいぞー!」

 慌てて二人が止めに入った。(一人は笑って囃し立てた)

「む。なんら? そんなに引っ付いてたら脱げないじゃないか」
「脱げなくていいんですよ!」
「みんな見てますからー!」

それでも藍は力任せにぐいぐい脱ごうとするので二人は必死にそれを制した。

「全裸はさすがにまずいですって! 鴉天狗もいるんですよ!?」
「藍様! せ、せめて家に帰ってから!」
「大丈夫! 尻尾九本もあるから!」
「いやもう意味わかりませんから!」

 二人の必死の懇願も、まともな思考ができなくなった藍には届かなかった。

「暑いから脱ぐのは自然なことだぞー!」
「人前で脱ぐことに不自然さを感じてください!」
「紫さまぁー! 藍さまがぁー!」

 むう。なぜこの二人は邪魔をするのだろう。暑いから脱ぐだけなのに。大体尻尾が九本もあって暑いんだから服なんていらないんじゃないのか?
そんな酔っ払い特有のぶっ飛んだ思考が藍の口からその言葉を吐き出させた。




「全裸で何が悪いッッ!!!」

 それに対して二人は声を揃えて言った。

「「頭が悪いですッ!!」」




 その後、一ヶ月ほど八雲藍は自宅謹慎となったそうな。







スッパEND
こんばんわ。葉月ヴァンホーテンです。
三作目になります。

今作っている作品がちょっと行き詰ってしまったので、息抜きがてら書いてみました。
おそらく散々使い古されたネタでしょうけど、自分だけの二番煎じになるよう頑張ってみました。(自作品ネタですみません)
というか二番煎じどころの話じゃないような気もしますね。

誤字脱字、面白かったとこ、つまらなかったとこ教えてくれたら嬉しいです。


※推敲手伝ってくれたK君ありがとう!
葉月ヴァンホーテン
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
シンゴー!シンゴー!
2.名前が無い程度の能力削除
なんという時事・・・時事ネタ?
しかし橙が可愛いので許す!

シンゴー!シンゴー!
3.名前が無い程度の能力削除
橙が可愛かった
4.名前が無い程度の能力削除
レスで思い出した、なるほど時事ネタだったわけだ
5.市原エビゾー削除
酒は飲んでも呑まれるな!