☆これって壊れですか? と問われても否定する材料に欠ける☆
☆それでもよろしければ☆
妖怪の賢者、神隠しの主犯、幻想郷の母。
いくつもの呼び名を持つ我が主には、困った癖がいくつかある。今日は、そのうちのひとつについて話すとしよう。
「ふふ、今日も可愛いわねぇ…………ふぅ」
自室でスキマを見つめ、にやにや顔を隠そうともしない。
比類無き力を持ち、幻想郷にかなう者なしと言われる八雲 紫が、何故あの巫女に関することではこうも簡単に自分を見失われてしまうのだろうか。
殆どの方が気づかれているだろうが、紫様が覗いているスキマの向こうには博麗神社がある。
屋内に直接繋いだ時に、巫女お得意の『勘』とやらで察知され、逆に乗り込まれて盛大にしばかれた過去が堪えているのか、現在は庭の一角にこっそりと開くに留めている。
紫様は、特に重大な用件が無い限り、このようにして己の欲求を満たしている。
それについてはいい、もう諦めた。
覗き見ているだけで十分に犯罪的だと思うが、巫女をお持ち帰りしてくるわけでもなし。それどころか、巫女の前に出ると妖怪の賢者としての風格を保とうとして、妙に持って回った言い回しをしてしまう、と嘆かれていた。
そんなところは非常に可愛らしいと思う。
それほどまでに巫女を愛でたい衝動に駆られている紫様に『素直に想いを伝えればいいじゃないですか』と言ったら、かなり本気で殴られた。
巫女に向ける愛情の数百分の一でもいいから、己の式にも向けて欲しいと思う。デリカシーがどうのと叫んでいたが、一歩間違えなくてもお縄頂戴気味の主を持った私に、そんなものを要求されても正直困る。
話が逸れた。
博麗神社には、日常的に様々な妖怪がやって来る。
巫女の人徳に依るものか、それとも単に暇つぶしとしてか。理由はともかく、巫女はその対処を余儀なくされる。
「おーっす! 霊夢、酒のもーよー」
「帰れ」
「ひどい! 折角珍しいおつまみ持ってきたのに」
「……ちょっとだけよ」
ほんの数言で買収される巫女。
鬼と共に酒盛りを始める巫女を見て、どこからともなく取り出したハンカチを噛み締め「きぃ~~」とかやってる紫様。
ハンカチの途中が千切れるんじゃなくて、食いちぎってるし。いったいどういう顎の力してるんですか。
「近くに来たから、ついでに、ほんのついでに寄ってあげたわ。ありがたく思いなさい」
「五月蠅いこの不良天人。その腰に下げた剣で脳天をかち割られたくなかったら、さっさと帰れ」
「………………(期待に満ちた目)」
「え、なにそのリアクション」
我々の業界ではご褒美です。暇だから遊びに来た、と素直に言えばここまでの扱いはされないだろうに。
紫様、いくら貴女の能力が「境界を操る程度の能力」だからって、某キースシリーズみたいに空間の断裂とか作らないでください。どちらかと言うと、紅魔館のメイド長向きの技ですよね、それ。
あとは天人の頭に向かって飛ばすだけ? 神社が血の海になりますよ。
「どうも、来ちゃいました。取材? いやいや、今日は『博麗の巫女・お賽銭に頼らない生活術』と銘打ったコラムの執筆依頼に……」
「おとなしく帰れ、二度と来るな」
「ま、待ってくださいよ。原稿料もお支払いしますから」
「別に生活に困っちゃいないわよ」
まぁ、日用品の類は巫女としての務めをこなす対価として、紫様や人里の有志から提供されているし、妖怪の存在する幻想郷では、祭事も多い。
その他、細々した仕事の報酬を考えれば、巫女はそれなりの暮らしをしている。あまり知られていないことだが。
……その上で、賽銭が入っていないのもまた事実ではある。
「ごきげんよう、いい夜ね」
「アンタが来るまではね。もう眠いんだから邪魔しないでちょうだい。てか、帰れ」
「うわーん! さくやー!!」
「……なんか悪いことした気分になるわ」
吸血鬼も懲りないな。人間とはそもそも生活リズムからして違うんだから、そういう反応をされても当然だろうに。
傲岸不遜な種族だと聞くから、人間に対してそこまでは気が回らないのかもしれない。
紫様、ざまあみろとか言わないでください。少なくとも外見少女の台詞じゃないですよ。中身はともかく。
このように、日々多くの妖怪が霊夢を訪ねてやって来る。
それだけフリーダムな場所なのだから、紫様だってもっと積極的に神社を訪ねて問題無いはずなのだが、我が主は滅多に神社へ行くことをしない。
遠慮なのか、うっとうしがられるのが怖いのか。
いずれにしても、こうして覗き見をされているよりは、直截会っていただくほうが幾分か健全というものだ。
命令などなくとも、主の為に動くが真の式神。
「てゐやっ」
戻られた後の仕置きは甘んじて受けることにして、私は紫様を目の前のスキマに蹴り込んだ。
※
※
※
どさっと音がして、紫様が神社の境内に転がり落ちる。
それを見た巫女が、びっくりした様子で紫様に駆け寄ってくる。
紫様は、慌てて立ち上がり、裾に付いた土埃を払ってから、いつも巫女を前にしたときの口調で。
「あら、霊夢。奇遇ね、こんなところで会うなんて」
いまいち本調子では無いのかもしれない。
「随分久しぶりじゃないのよ」
「そうだったかしら?」
「そうよ」
境内に沈黙が降りる。紫様が気まずそうに視線を彷徨わせている。心の準備をする間もなく、巫女の眼前にたたき落とされたのだ。当然の反応とも言える、やったのは私だが。
やがて、紫様が耐えきれなくなったのか口を開く。
「最近は壮健かしら」
「ええ、なんとかね。急に、って言ってもアンタが来るのはいつも急だったわ。もとい、何か異変でも起きたわけ?」
「そういう、わけでは、ないのですけれど」
少しどもりながら紫様が答える。まさか式に蹴り落とされました、とは言えず、おろおろする紫様萌え。
「そ、なら急がなくてもいいのね。暇ならお茶でも飲んでいきなさいよ」
「……子供は、もう眠る時間ですわ」
おお、なんとか普段の調子を取り戻そうとする紫様。いいんです、もう頑張らなくていいんですよ。
「子供扱いしない。眠気なら、いきなり境内に転がってきた誰かさんのせいですっかり覚めちゃったわ。責任取って付き合いなさい」
巫女が紫様の手を取り、引っ張って歩き出す。紫様の顔が朱に染まる。ああもう可愛いなぁ。
これ以上見るのも無粋か、と私は眼前のスキマを閉じた。
この幻想郷で、私だけが知っている事実がある。
当人達が気づく様子も無いため、しばらくはこの事実を知る者が、私だけであり続けるだろう。
ここまでお付き合いいただいた貴方にだけ、こっそりとお教えするとしよう。
「巫女は、紫様に『だけ』は決して『帰れ』とは言わないんですよ」
☆それでもよろしければ☆
妖怪の賢者、神隠しの主犯、幻想郷の母。
いくつもの呼び名を持つ我が主には、困った癖がいくつかある。今日は、そのうちのひとつについて話すとしよう。
「ふふ、今日も可愛いわねぇ…………ふぅ」
自室でスキマを見つめ、にやにや顔を隠そうともしない。
比類無き力を持ち、幻想郷にかなう者なしと言われる八雲 紫が、何故あの巫女に関することではこうも簡単に自分を見失われてしまうのだろうか。
殆どの方が気づかれているだろうが、紫様が覗いているスキマの向こうには博麗神社がある。
屋内に直接繋いだ時に、巫女お得意の『勘』とやらで察知され、逆に乗り込まれて盛大にしばかれた過去が堪えているのか、現在は庭の一角にこっそりと開くに留めている。
紫様は、特に重大な用件が無い限り、このようにして己の欲求を満たしている。
それについてはいい、もう諦めた。
覗き見ているだけで十分に犯罪的だと思うが、巫女をお持ち帰りしてくるわけでもなし。それどころか、巫女の前に出ると妖怪の賢者としての風格を保とうとして、妙に持って回った言い回しをしてしまう、と嘆かれていた。
そんなところは非常に可愛らしいと思う。
それほどまでに巫女を愛でたい衝動に駆られている紫様に『素直に想いを伝えればいいじゃないですか』と言ったら、かなり本気で殴られた。
巫女に向ける愛情の数百分の一でもいいから、己の式にも向けて欲しいと思う。デリカシーがどうのと叫んでいたが、一歩間違えなくてもお縄頂戴気味の主を持った私に、そんなものを要求されても正直困る。
話が逸れた。
博麗神社には、日常的に様々な妖怪がやって来る。
巫女の人徳に依るものか、それとも単に暇つぶしとしてか。理由はともかく、巫女はその対処を余儀なくされる。
「おーっす! 霊夢、酒のもーよー」
「帰れ」
「ひどい! 折角珍しいおつまみ持ってきたのに」
「……ちょっとだけよ」
ほんの数言で買収される巫女。
鬼と共に酒盛りを始める巫女を見て、どこからともなく取り出したハンカチを噛み締め「きぃ~~」とかやってる紫様。
ハンカチの途中が千切れるんじゃなくて、食いちぎってるし。いったいどういう顎の力してるんですか。
「近くに来たから、ついでに、ほんのついでに寄ってあげたわ。ありがたく思いなさい」
「五月蠅いこの不良天人。その腰に下げた剣で脳天をかち割られたくなかったら、さっさと帰れ」
「………………(期待に満ちた目)」
「え、なにそのリアクション」
我々の業界ではご褒美です。暇だから遊びに来た、と素直に言えばここまでの扱いはされないだろうに。
紫様、いくら貴女の能力が「境界を操る程度の能力」だからって、某キースシリーズみたいに空間の断裂とか作らないでください。どちらかと言うと、紅魔館のメイド長向きの技ですよね、それ。
あとは天人の頭に向かって飛ばすだけ? 神社が血の海になりますよ。
「どうも、来ちゃいました。取材? いやいや、今日は『博麗の巫女・お賽銭に頼らない生活術』と銘打ったコラムの執筆依頼に……」
「おとなしく帰れ、二度と来るな」
「ま、待ってくださいよ。原稿料もお支払いしますから」
「別に生活に困っちゃいないわよ」
まぁ、日用品の類は巫女としての務めをこなす対価として、紫様や人里の有志から提供されているし、妖怪の存在する幻想郷では、祭事も多い。
その他、細々した仕事の報酬を考えれば、巫女はそれなりの暮らしをしている。あまり知られていないことだが。
……その上で、賽銭が入っていないのもまた事実ではある。
「ごきげんよう、いい夜ね」
「アンタが来るまではね。もう眠いんだから邪魔しないでちょうだい。てか、帰れ」
「うわーん! さくやー!!」
「……なんか悪いことした気分になるわ」
吸血鬼も懲りないな。人間とはそもそも生活リズムからして違うんだから、そういう反応をされても当然だろうに。
傲岸不遜な種族だと聞くから、人間に対してそこまでは気が回らないのかもしれない。
紫様、ざまあみろとか言わないでください。少なくとも外見少女の台詞じゃないですよ。中身はともかく。
このように、日々多くの妖怪が霊夢を訪ねてやって来る。
それだけフリーダムな場所なのだから、紫様だってもっと積極的に神社を訪ねて問題無いはずなのだが、我が主は滅多に神社へ行くことをしない。
遠慮なのか、うっとうしがられるのが怖いのか。
いずれにしても、こうして覗き見をされているよりは、直截会っていただくほうが幾分か健全というものだ。
命令などなくとも、主の為に動くが真の式神。
「てゐやっ」
戻られた後の仕置きは甘んじて受けることにして、私は紫様を目の前のスキマに蹴り込んだ。
※
※
※
どさっと音がして、紫様が神社の境内に転がり落ちる。
それを見た巫女が、びっくりした様子で紫様に駆け寄ってくる。
紫様は、慌てて立ち上がり、裾に付いた土埃を払ってから、いつも巫女を前にしたときの口調で。
「あら、霊夢。奇遇ね、こんなところで会うなんて」
いまいち本調子では無いのかもしれない。
「随分久しぶりじゃないのよ」
「そうだったかしら?」
「そうよ」
境内に沈黙が降りる。紫様が気まずそうに視線を彷徨わせている。心の準備をする間もなく、巫女の眼前にたたき落とされたのだ。当然の反応とも言える、やったのは私だが。
やがて、紫様が耐えきれなくなったのか口を開く。
「最近は壮健かしら」
「ええ、なんとかね。急に、って言ってもアンタが来るのはいつも急だったわ。もとい、何か異変でも起きたわけ?」
「そういう、わけでは、ないのですけれど」
少しどもりながら紫様が答える。まさか式に蹴り落とされました、とは言えず、おろおろする紫様萌え。
「そ、なら急がなくてもいいのね。暇ならお茶でも飲んでいきなさいよ」
「……子供は、もう眠る時間ですわ」
おお、なんとか普段の調子を取り戻そうとする紫様。いいんです、もう頑張らなくていいんですよ。
「子供扱いしない。眠気なら、いきなり境内に転がってきた誰かさんのせいですっかり覚めちゃったわ。責任取って付き合いなさい」
巫女が紫様の手を取り、引っ張って歩き出す。紫様の顔が朱に染まる。ああもう可愛いなぁ。
これ以上見るのも無粋か、と私は眼前のスキマを閉じた。
この幻想郷で、私だけが知っている事実がある。
当人達が気づく様子も無いため、しばらくはこの事実を知る者が、私だけであり続けるだろう。
ここまでお付き合いいただいた貴方にだけ、こっそりとお教えするとしよう。
「巫女は、紫様に『だけ』は決して『帰れ』とは言わないんですよ」
ユカ×レイですね解ります。
でも私の好みはレイ×レミですから、残ねn(スキマ送り
そんなの幻想郷じゃ日常茶飯事だぜ!!
これは、たまんねぇー!!!!
なんというゆかれいむ!ご馳走様です!
あれだけて2828度MAXだぜwww
これは良いゆかれいむ!!
キースシリーズ……また懐かしいものを。空間の断裂はゆかりんか咲夜さんに緋想天とかでやってほしかった。
ごちそうさまです!
最後の一行でやられた
うひょーーーーーーーー
ゆかれいむは俺のシャングリラ