紅い悪魔が束ねる館、その地下にある大図書館で、今日も今日とて魔女は囁き、悪魔は笑う。
弄られた空間に、数多の星が浮かぶ。
一様ではない。小さな星と大きな星。
前者は様々な輝きを放ち、後者は青く煌めいていた。
「いくぜぇぇぇ!」
「弾けなさいっ!」
霧雨魔理沙と東風谷早苗の声の元、星――弾幕が動き出す。
数瞬後、各々の弾幕がぶつかりあう。
小気味のよい音。
爆ぜる。
二人は同時、次の弾幕を繰りだす。結果は同じ。
弾一つ一つの威力は魔理沙に分がある。
けれど、早苗は数で相殺していた。
残る互いの魔力、神力はほぼ同値。
「後が控えてるってのに……スペカじゃないと埒が明かんなぁ、おい!」
苦笑の響きを持って愚痴が零れる。
縦横無尽に室内を駆け廻りながら弾幕を放つ魔理沙。
一撃必殺を使わないのは、早苗の周りに浮かぶ防御陣が故。
仮に今、スペルカードを撃ち込んでも、対弾幕用に特化した陣に防がれるだろう。
その一瞬をつき、反撃が返ってくるのは想像に難くない。
(ま、それは早苗も一緒か)
早苗ほど堅くはないが、魔理沙も陣を組んでいる。
スペルカードを防げる防御力はないが通常弾幕程度ならばよほど集中砲火を浴びない限り壊れはしない。
そして、速度を活かした弾幕戦を旨とする魔理沙にとって、その様な事はあり得ない。
あり得ない、と思っていた。
「そうでも、ないですよ!」
「あー?」
不敵に笑う早苗。ブラフかと半眼を向ける。
「――!?」
視界の端。
弾けた早苗の弾幕が生まれ変わる。
蛇が脱皮するように、するりと線状の弾幕が形成された。
「ちぃ!」
離脱は不可能。
両手を左右に突き出し、陣を重ねる。
一瞬後、耳に伝わる激しい破裂音。陣と弾幕が爆ぜた音。
魔理沙の動きが、僅かとはいえ、止まった。
「今!」
早苗は力を膨らませる。
手に握られるのはスペルカード。
この好機を待っていた。
「奇跡!」
宣言をする早苗の瞳に、魔理沙がいる方向から一直線に何かが飛び込んでくる。
早苗は気にせず力を膨らませ、口上を続けた。
どの様な弾幕であろうと一撃ならば防げる自信がある。
弾幕ならば、防げただろう。
飛んできたのは。
尻。
「――がっ!?」
腹部への衝撃。
全身に伝わる。
早苗は吹き飛ばされた。
地面に激突する寸前、力を解放し、どうにか空中にとどまる。
見上げた魔理沙は、にやりと笑っていた。
「……体術は使わないと仰っていませんでしたか」
「ふん。サービスタイムは終わったのさ」
弄られた空間に、札と人形が浮かぶ。――浮かんでいるだけ。
アリス・マーガトロイドが呼吸を正す。
博麗霊夢は祓い棒を持つ右手を回した。
――激突。
「はっ!」
「らぁ!」
アリスは走り込み右足を払うように蹴りだす。
左手で受けた霊夢は合わせる形で祓い棒を突き出した。
髪を掠めるれたが気にせず、アリスは軸足に狙いを定め、凪ぐ。
地を蹴りかわし、そのままの態勢で体当たりを仕掛ける霊夢。
すぐさま足を戻し、サイドステップでアリスは避けた。
――至近距離を嫌い、霊夢は後方へと飛ぶ。
「接近戦は分が悪いわね」
呟く霊夢。
「……あら、そう。私は肉弾戦の方が苦手なのよ」
手をだらりと下げ、アリスは返す。嘘ではない。
「かもね。
でも、今のところ五分五分。
リーチの差があるから、持久戦になればなるほど私は不利になるの」
「貴女の方が長いんだけど?」
「あんた、お祓い棒狙ってるでしょ?」
霊夢の指摘は正しかった。故にアリスは苦笑いを浮かべる。
「下の攻撃に目を慣らして、その隙に――と思っていたんだけど。やるわね」
「……そうなの。勘だったんだけど」
「ヤな奴」
軽口を交わす傍ら、互いに力を集めていた。
霊夢とアリスの一撃は概ね同値。
しかし、経験則によりアリスは知っていた。
何故か霊夢の弾幕は当てにくく、避けにくい。
普段の自身では防ぎきれぬだろうと、力を練りながら考える。
結果。
両手を広げる。
指から伸びるのは魔法の糸。
先に結ばれているのは、アリス自らが魔力を伝わらせている人形。
「……それでいいの? 何時ものやり方と変わらないけれど」
「忠告どうも。でも、貴女は視えないものを視て、見える物を見ないのね」
アリスの言葉に、霊夢は目を見開き、――気付いた。
「人形が……普段よりも、多い!?」
「数で押すやり方は気にくわないけど――もってよ、私の魔力! 二十体、いきなさいっ!」
弄られた空間――の隅。
「あのぉ、パチュリー様?」
「なによ、小悪魔」
給湯室から戻ってきた小悪魔は、上空で舞う少女を眺めながら主人に問う。
「何やってんですか、霊夢さん達」
「弾幕ごっこ以外の何に見えるのよ」
「いえ、それ位は解りますが。なんでわざわざ図書館でやってるのかな。と」
読んでいた本を閉じ、パチュリーはぶっきら棒に応えた。
「私も参加していたからじゃない?」
「あ、それでおでこに絆創膏を貼られているのですね」
「チーム戦じゃなくてバトルロイヤル方式なのよ。
だから、危険性が高い因子をまず弾くのは常套手段。
決して、私が体力不足で真っ先に落とされた訳ではないわ」
「いい訳は後で聞きます。図書館で暴れないで下さいよ」
「むきゅ?」
小首を傾げながら返され、小悪魔は追求する事を止める。ええもん見た。
「一応、咲夜に弄ってもらっているわ」
頷き、小悪魔はパチュリーを見る。
主に傷はない。
けれど、服には埃がつき、髪は乱れている。
それだけで、小悪魔にとっては十分だった。
加えて。いい訳をすると言う事は、彼女の主は多少なりとも悔しさを感じている。
「ふむぅ。途中参加、OKですかね?」
言いながら、既に小悪魔は浮かびあがっていた。
「いいんじゃない。
って、貴女が参加してどうこうできるものじゃないでしょう。
そう言う事はスペルカードの一枚も練りだせるようになってから言いなさい」
早口にまくし立てられる言葉。
行かせまいと肩を強く掴む手。
振り返り見た瞳には、微かな不安の色があった。
微笑みと共に、手を外す。
「パチュリー様。
貴女の小悪魔、貴女の小悪魔は勤勉なのですよ。
私は、この幻想郷において、最強の技を会得致しました」
言い切る。
パチュリーは知っている。
己の使い魔が大言壮語を吐く類の者ではない事を。
言いざまだけでなく、自身の目にも、小悪魔が自信を持っている事が見て取れた。
「まぁ、まだ未完成なんですけどね。『ごっこ』レベルなら、十分に運用可能です」
「……は。大層な自惚れね。貴女の言い方だと、完成すればレミィや八雲の紫も」
「倒せますよ。木端微塵です。……お二方とも回復しちゃいそうですねぇ」
無茶苦茶だ。
名を出した二名の再生力ではない。
小悪魔の言う会得した技の威力に、パチュリーはそう思った。
「と言う訳で」
「いいわ。行きなさい、小悪魔」
「はいっ、パチュリー様、行ってきます!」
――弄られた空間に、赤い線が割って入る。
スペルカードを取り出していた四名の少女は、近づいてくる力に視線だけを向けた。
彼女達の瞳に映るのは、赤く紅く長い髪。
そして、彼女を象徴するような黒い服。
「皆様! パチュリー様が使い魔、小悪魔も参戦致しますっ」
少女達は視線を戻した。
「あぁ、悪意なき暴力!? 『お前なんて後で倒せばいいや』、そう言外に仰っているんですね!?」
ざっつらいと。
「うぎぎ、わかりました!
なれば皆様、目にものを見せてやりましょう!
我ら魔族、悪魔族に伝わる絶対扇! 幽々子さんかってーの!」
弾幕のみならず、突っ込みさえ向けられなかった。
尻尾でのの字を書きつつ、小悪魔は力を集める。
集まる力は純粋な魔力。
両手をつきだし――。
放つ。弾幕は、渦を巻き、各々に向かった。
「っさつぅぅぅ!! アクマイト光せぇぇぇぇぇんっっ!!!」
――大奇跡‘八坂の神風‘!
――魔砲‘ファイナルスパーク‘!
――魔操‘リターンイナニメトネス‘!
――神霊‘夢想封印 瞬‘!
小悪魔の頭に主の言葉が再生される。
『危険性が高い因子をまず弾くのは常套手段』。
だとすれば、今こうして弾幕を向けられているのは誇るべきなのだろうか――「うっきゃー!?」
ピチューン。
<了>
弄られた空間に、数多の星が浮かぶ。
一様ではない。小さな星と大きな星。
前者は様々な輝きを放ち、後者は青く煌めいていた。
「いくぜぇぇぇ!」
「弾けなさいっ!」
霧雨魔理沙と東風谷早苗の声の元、星――弾幕が動き出す。
数瞬後、各々の弾幕がぶつかりあう。
小気味のよい音。
爆ぜる。
二人は同時、次の弾幕を繰りだす。結果は同じ。
弾一つ一つの威力は魔理沙に分がある。
けれど、早苗は数で相殺していた。
残る互いの魔力、神力はほぼ同値。
「後が控えてるってのに……スペカじゃないと埒が明かんなぁ、おい!」
苦笑の響きを持って愚痴が零れる。
縦横無尽に室内を駆け廻りながら弾幕を放つ魔理沙。
一撃必殺を使わないのは、早苗の周りに浮かぶ防御陣が故。
仮に今、スペルカードを撃ち込んでも、対弾幕用に特化した陣に防がれるだろう。
その一瞬をつき、反撃が返ってくるのは想像に難くない。
(ま、それは早苗も一緒か)
早苗ほど堅くはないが、魔理沙も陣を組んでいる。
スペルカードを防げる防御力はないが通常弾幕程度ならばよほど集中砲火を浴びない限り壊れはしない。
そして、速度を活かした弾幕戦を旨とする魔理沙にとって、その様な事はあり得ない。
あり得ない、と思っていた。
「そうでも、ないですよ!」
「あー?」
不敵に笑う早苗。ブラフかと半眼を向ける。
「――!?」
視界の端。
弾けた早苗の弾幕が生まれ変わる。
蛇が脱皮するように、するりと線状の弾幕が形成された。
「ちぃ!」
離脱は不可能。
両手を左右に突き出し、陣を重ねる。
一瞬後、耳に伝わる激しい破裂音。陣と弾幕が爆ぜた音。
魔理沙の動きが、僅かとはいえ、止まった。
「今!」
早苗は力を膨らませる。
手に握られるのはスペルカード。
この好機を待っていた。
「奇跡!」
宣言をする早苗の瞳に、魔理沙がいる方向から一直線に何かが飛び込んでくる。
早苗は気にせず力を膨らませ、口上を続けた。
どの様な弾幕であろうと一撃ならば防げる自信がある。
弾幕ならば、防げただろう。
飛んできたのは。
尻。
「――がっ!?」
腹部への衝撃。
全身に伝わる。
早苗は吹き飛ばされた。
地面に激突する寸前、力を解放し、どうにか空中にとどまる。
見上げた魔理沙は、にやりと笑っていた。
「……体術は使わないと仰っていませんでしたか」
「ふん。サービスタイムは終わったのさ」
弄られた空間に、札と人形が浮かぶ。――浮かんでいるだけ。
アリス・マーガトロイドが呼吸を正す。
博麗霊夢は祓い棒を持つ右手を回した。
――激突。
「はっ!」
「らぁ!」
アリスは走り込み右足を払うように蹴りだす。
左手で受けた霊夢は合わせる形で祓い棒を突き出した。
髪を掠めるれたが気にせず、アリスは軸足に狙いを定め、凪ぐ。
地を蹴りかわし、そのままの態勢で体当たりを仕掛ける霊夢。
すぐさま足を戻し、サイドステップでアリスは避けた。
――至近距離を嫌い、霊夢は後方へと飛ぶ。
「接近戦は分が悪いわね」
呟く霊夢。
「……あら、そう。私は肉弾戦の方が苦手なのよ」
手をだらりと下げ、アリスは返す。嘘ではない。
「かもね。
でも、今のところ五分五分。
リーチの差があるから、持久戦になればなるほど私は不利になるの」
「貴女の方が長いんだけど?」
「あんた、お祓い棒狙ってるでしょ?」
霊夢の指摘は正しかった。故にアリスは苦笑いを浮かべる。
「下の攻撃に目を慣らして、その隙に――と思っていたんだけど。やるわね」
「……そうなの。勘だったんだけど」
「ヤな奴」
軽口を交わす傍ら、互いに力を集めていた。
霊夢とアリスの一撃は概ね同値。
しかし、経験則によりアリスは知っていた。
何故か霊夢の弾幕は当てにくく、避けにくい。
普段の自身では防ぎきれぬだろうと、力を練りながら考える。
結果。
両手を広げる。
指から伸びるのは魔法の糸。
先に結ばれているのは、アリス自らが魔力を伝わらせている人形。
「……それでいいの? 何時ものやり方と変わらないけれど」
「忠告どうも。でも、貴女は視えないものを視て、見える物を見ないのね」
アリスの言葉に、霊夢は目を見開き、――気付いた。
「人形が……普段よりも、多い!?」
「数で押すやり方は気にくわないけど――もってよ、私の魔力! 二十体、いきなさいっ!」
弄られた空間――の隅。
「あのぉ、パチュリー様?」
「なによ、小悪魔」
給湯室から戻ってきた小悪魔は、上空で舞う少女を眺めながら主人に問う。
「何やってんですか、霊夢さん達」
「弾幕ごっこ以外の何に見えるのよ」
「いえ、それ位は解りますが。なんでわざわざ図書館でやってるのかな。と」
読んでいた本を閉じ、パチュリーはぶっきら棒に応えた。
「私も参加していたからじゃない?」
「あ、それでおでこに絆創膏を貼られているのですね」
「チーム戦じゃなくてバトルロイヤル方式なのよ。
だから、危険性が高い因子をまず弾くのは常套手段。
決して、私が体力不足で真っ先に落とされた訳ではないわ」
「いい訳は後で聞きます。図書館で暴れないで下さいよ」
「むきゅ?」
小首を傾げながら返され、小悪魔は追求する事を止める。ええもん見た。
「一応、咲夜に弄ってもらっているわ」
頷き、小悪魔はパチュリーを見る。
主に傷はない。
けれど、服には埃がつき、髪は乱れている。
それだけで、小悪魔にとっては十分だった。
加えて。いい訳をすると言う事は、彼女の主は多少なりとも悔しさを感じている。
「ふむぅ。途中参加、OKですかね?」
言いながら、既に小悪魔は浮かびあがっていた。
「いいんじゃない。
って、貴女が参加してどうこうできるものじゃないでしょう。
そう言う事はスペルカードの一枚も練りだせるようになってから言いなさい」
早口にまくし立てられる言葉。
行かせまいと肩を強く掴む手。
振り返り見た瞳には、微かな不安の色があった。
微笑みと共に、手を外す。
「パチュリー様。
貴女の小悪魔、貴女の小悪魔は勤勉なのですよ。
私は、この幻想郷において、最強の技を会得致しました」
言い切る。
パチュリーは知っている。
己の使い魔が大言壮語を吐く類の者ではない事を。
言いざまだけでなく、自身の目にも、小悪魔が自信を持っている事が見て取れた。
「まぁ、まだ未完成なんですけどね。『ごっこ』レベルなら、十分に運用可能です」
「……は。大層な自惚れね。貴女の言い方だと、完成すればレミィや八雲の紫も」
「倒せますよ。木端微塵です。……お二方とも回復しちゃいそうですねぇ」
無茶苦茶だ。
名を出した二名の再生力ではない。
小悪魔の言う会得した技の威力に、パチュリーはそう思った。
「と言う訳で」
「いいわ。行きなさい、小悪魔」
「はいっ、パチュリー様、行ってきます!」
――弄られた空間に、赤い線が割って入る。
スペルカードを取り出していた四名の少女は、近づいてくる力に視線だけを向けた。
彼女達の瞳に映るのは、赤く紅く長い髪。
そして、彼女を象徴するような黒い服。
「皆様! パチュリー様が使い魔、小悪魔も参戦致しますっ」
少女達は視線を戻した。
「あぁ、悪意なき暴力!? 『お前なんて後で倒せばいいや』、そう言外に仰っているんですね!?」
ざっつらいと。
「うぎぎ、わかりました!
なれば皆様、目にものを見せてやりましょう!
我ら魔族、悪魔族に伝わる絶対扇! 幽々子さんかってーの!」
弾幕のみならず、突っ込みさえ向けられなかった。
尻尾でのの字を書きつつ、小悪魔は力を集める。
集まる力は純粋な魔力。
両手をつきだし――。
放つ。弾幕は、渦を巻き、各々に向かった。
「っさつぅぅぅ!! アクマイト光せぇぇぇぇぇんっっ!!!」
――大奇跡‘八坂の神風‘!
――魔砲‘ファイナルスパーク‘!
――魔操‘リターンイナニメトネス‘!
――神霊‘夢想封印 瞬‘!
小悪魔の頭に主の言葉が再生される。
『危険性が高い因子をまず弾くのは常套手段』。
だとすれば、今こうして弾幕を向けられているのは誇るべきなのだろうか――「うっきゃー!?」
ピチューン。
<了>
というか技名と内容のギャップがひどいよ!
まぁまずは私にスタイリッシュを決めろ、話はそれからだ。
某フリ○ザ様とかもイチコロ。
幻想郷はココロヤサシイショウジョしかいない楽園なのだから
アクマイト光線なんて効くはずないじゃないか
というか、何故あの状態からヒップ・アタックができる?
しかしどれも攻撃力0っぽいなwww
ダメージありそうな技は自分のダメージが酷いしwww
早苗さんが緋想ルールで戦ってる…
追加パッチで早苗さん使えるようにならないかなぁ…
ウルトラダイナマイトみたいな感じで
そしてそのすきに打ち落とす、と
おおぅ、ほんとに最強だ!
彼女にはボムでないと打ち消し不可能な大玉がよく似合うというのにっ。
出来ればお願いできませんか?
可哀相過ぎて泣いた。