…ある、三日月の夜。一人の妖怪少女が夜道を飛んでいた。
彼女の名は、誰も知らない…
人は彼女を『名無しの本読み妖怪』という。
本読み妖怪「ここだっけな?」
私の眼下の前には、霧に覆われた湖と、紅く塗りたぐられた洋館がある。
-紅魔館- ここは、幻想郷でも屈強の、吸血鬼の姉妹が住まう館。
しかし、私の目的は、その姉妹ではない。
私は、館のある島に着くと、降りて裏口にまわった。
ここには、ひっそりと人目を拒むように、地下図書館へと続く、最近作られたばかりの、地階勝手口が備え付けられている。
理由は、館の主曰く。「魔理沙がガラスを突き破って入ってくるのがヤだから」だとか、風の噂で聞いた事があったような、ないような…結局、魔理沙さん本人は腕試しで門番と弾幕ごっこしているようなので、館の方にも被害が及んでいるようだが。
ともかく、私は一枚の手紙を頼りにここに来た。
階段の下の扉の向こうには、真に『本の山』と言わんばかりに、ずらりと並ぶ棚には上から下、右端から左端まで、古今東西様々な本が所狭しと収められていた。
図書館(というか、ここは図書館の様に凄まじい蔵書を誇る書斎だとか、なんだとか)は私が一番好きな場所だ。恐らく、一生居ても飽きないだろう。
なのに残念だ、今日は本を読みに来た訳でも、借りに来たわけでもない。
そう…よく分からない理由でここに呼ばれた…
ふと、手紙に目線を落とした。これにはこう書かれている。
『名無しの本読み妖怪様へ
普段人気のない貴女が、一気に人気を手に入れるチャンスです。
地図に従って、紅魔館・図書司書小悪魔の自室まで来て下さい。
欠席する場合は、キャンセル料として、金2000円支払ってもらいます。
出席する場合は、本人確認の為、会場までこの手紙を持って来て下さい。
幻想郷中ボス興し会会長 』
本読み妖怪「中ボスってなんだろ…」
詐欺かも知れないが、盗撮されたらしく、私の私生活ただ漏れの写真が『もし、キャンセルしても、料金を支払わない場合、これらの写真を幻想郷中にばらまきます』
という、今持ってる手紙とは別の手紙が、一緒に封筒に入っていた入っていたもんだから、たまったもんじゃない。
かといって、2000円払うのも癪なので、仕方なく出席する事にしたのだ。
と、まぁ。鬱~な気分で歩いてたら、意外と早く小悪魔さんの部屋に着いた。
私は、ノックをして、部屋の中へと入った。
キスメ「怪奇『釣瓶落としの怪』!!」
椛「ふっ!スペルカードだと…甘いな。トラップカード『霊撃』!! このカードは相手がスペルカードを出してきた場合威力を三分の一に抑える。『釣瓶落としの怪』の威力は150。よって威力は50に減る」
キスメ「結局攻撃受けてることには変わりないじゃない…」
本読み妖怪「なにやってんのよ…」
椛・キスメ「暇つぶし」
私が部屋に入ったとき、二人の妖怪がスペルカードをおもちゃにしてた。
『霊撃』のカードは、何故か無地の紙に平仮名で『れいげさ』と書いてあった。
『れいげき』でも、ましてや『れいうち』でもなく『れいげさ』だ。救いようがない。
椛「ここには来たが、私たち以外誰も居なくて、暇だったから、さっきここに来る前湖の氷精に教えて貰った、新弾幕ごっこの『スペルカードズ』をやってたのよ。貴女も呼ばれたのか。どうだ、一緒にやるか?」
本読み妖怪「やりません、というか。そもそも『霊撃』が平仮名で『れいげさ』では格好がつかないじゃないですか。それに、何所にも弾幕なんて張られてないし、妖精達の間で流行ってる弾幕ごっこを模した遊びじゃないんですか?スペルカードルールが変更になったなんて聞いたことないですし…」
椛「ん、そういえばそうね…っと、そう言えば、貴女の名前は?私の名前は犬走椛だ」
本読み妖怪「あっ、申し遅れました。私は…」
静葉「あ、椛ちゃんも来てるんだ」
私がなにやら口調がころころ変わってるような天狗に自己紹介をしようとしたら、秋姉妹の姉が入ってきた。
椛「あら、秋姉妹の姉の方ではないか。そう、貴女も呼ばれたの…」
静葉「そう、豪華ディナーに釣られちゃってね」
どうゆうことだろう、私のにはディナーなんて書いてない。
忘れたのか、忘れてて気づいたけど『まぁ、この人あまり知らないし、いいか』とか、送り主が投げやりな感覚でそのまま出したのか、意図的に忘れたものなのか…
最初のはともかく、残りの二つであって欲しくない。最後のなんかもうイジメじゃないか…
それに、どうやら会話を聞いていると、盗撮されたのは私だけにしか思えない…
やっぱこれはイジメ?イジメなの??
外の世界でイジメが薄くなってきたから、幻想郷に入ってきて、その生贄が私に…?
あれ、なんか目からポーションが…
椛「あれ、翼の朱鷺のような娘。どうして泣いているんだい」
棒読みやめれ… みなまで言うな…
キスメ「翼が朱鷺みたいな子だから、朱鷺子って名前なのかな?じゃあ、とっきゅんって呼ぶね」
朱鷺子「ちょっと!!なんも言ってないでしょうがって…そんな安直に考えないでよ!!」
キスメ「もう、遅い。お前はもう『朱鷺子』になっている!!」
椛「キスメ!!それウケる!!何?北斗○拳のマネ?」
キスメ「へ~椛、北○の拳知ってるんだ~」
こいつらうぜぇ…マジうぜぇ…
てゐ「あちゃ~結構揃っているね。遅くなったかな?一番早く来るつもりだったのに…」
そんなこんなで、今回の黒幕っぽいのが来た。
てゐ「あるぇ~、とっきゅんって呼ばれたんだ~」
ちょ…なんで知ってんの…『とっきゅん』を盗み聞きしてたんすか!?
椛「!!?なんでお前が来るんだ!!これは中ボスの会じゃないのか!!」
てゐ「私だって中ボスだよ」
キスメ「花映塚に出てるじゃないの、それ、もう立派な自機キャラだってヴぁ!」
てゐ「花映塚は別なんでしょう?私が呼んだ訳じゃないしねぇ…」
椛「何!そーなのかー?てっきりてゐが呼んだものかと…」
てゐ「ちが~うよ。わたしゃ賽銭集めで忙しいから、手紙なんて書いてる暇ないからね
~」
どおしよお、私のこの何とも言えない悲しみは何所にぶつけたら良いのだろう?
早くも容疑者が消えちったよぉ…
そして、さっきから『中ボス』とか『花映塚』とか『自機キャラ』とか、この人ら何言ってんのよぅ…
大妖精「すみませ~ん!遅くなりました!!」
まるで、修学旅行に遅刻してきた学生のように、湖に住む大妖精が入ってきた。
椛「大ちゃんじゃなかと~、元気にしておうたか?」
あんた、それ何所の方言だよ…
大妖精「もみちゃん、お前はんも元気にしとやす~?うちは最近チルノちゃんがようやく落ち着いて来てくだはって、どえりゃ~楽にのうてのぉ~」
もう、何がなんだか分からない…
大妖精「あら、とっきゅんも来てはったん?」
朱鷺子「何で知ってんのよ…」
大妖精は、今来たばかりなのに、盗み聞きなど出来ない。
なのに、何で知ってんのよ…『とっきゅん』って…
リリーW「中ボスの春ですよ~」
リリーB「…五月蠅い」
五月蠅いのと鬱っ気するのが来た…
リリーW「そして季節も春ですよぉ~!」
リリーB「五月蠅い…そもそも、声というのは空中の空気の振動によって引き起こされるもので、振動数を多くなると、人体や周辺物質への被害というものも引き起こされて…」
何いってんだコイツ…
リリーB「…だから止めなさい」
リリーW「えー別にいーじゃないのよー」
てゐ「だいたい揃ったかな?」
朱鷺子「悲惨…」
辺りを見回すと、全く落ち着きがなく、行動がバラバラだ。
リリーは互いに言い争い、キスメと大妖精と椛は世間話、静葉はこんな喧噪の中で、一人隅っこで寝ている…そのまんま起きないんじゃないのか?
一番まともに見えたのが、一番腹黒いと聞いていたてゐだった。
いや、まともに見えるからこそ、『腹黒い』のかも知れないったら知れない。
小悪魔「皆さん、静粛にお願いします」
そうして、この部屋の主がやって来た。
てゐ「あんたが、私たちをよんだのかい?」
小悪魔「ええ、そうです」
…犯人発見。
朱鷺子「あんっっっったねぇ!!あんな脅迫まがいの手紙出さないでよぉぉっ!!どぅーーーせ、あたし以外の妖怪にゃ、あんな事してないんでしょーがぁ!!」
小悪魔「えぇぇぇえっ!!?いきなり何なんですかぁ!?朱鷺子さん!」
朱鷺子「とぼけないでよ!!あわゆくば私のプライベートを世間に流そうとしたくせにっ!!ってか、何で『朱鷺子』の名前をあんたが知ってんのよぉ!!盗み聞きしてたでしょ!」
小悪魔「知りませんよぉ!!朱鷺子さんは恐らくディナーでは来ないと思ったんですが、どうしても参加して欲しかったんで、パチュリー様に『誰もが絶対参加したくなる手紙』を頼んでおいたんで、手紙を見てないんですよぉ!!」
朱鷺子「へ」
なんじゃそりゃぁぁぁぁああああああっ!!!
つまりは、こうである。
朱鷺は…もとい、時は一週間前にさかのぼる。
・・・
紅魔館-パチュリーの自室
小悪魔「こんなじゃ、来ない…かな?」
小悪魔は、困ってた。
パチュリー「どうしたの?」
小悪魔「手紙が上手く書けなくて…」
パチュリー「それなら、私が『誰もが絶対参加したくなる手紙』を書いてあげるわよ」
小悪魔「え!いいんですか?」
パチュリー「ええ」
小悪魔「それなら、よろしくお願いしますっ!!」
-以上、ものの30秒の出来事でした-
・・・
朱鷺子「で、そのテキトーな回想の結果がこれってわけね」
小悪魔「うぅ…まさかそんな失礼な手紙になるとは思ってなかったんでしゅよ~」
恥ずかしい話し、豪華ディナーが無料で食べれるとなると、恐らく私は釣られるであろう。なのに…
朱鷺子「どうゆう根拠で私がディナーでは来ないと思ったのよぉ!!それと、手紙の内容ぐらい確認したらどぉなのさぁぁぁ!!」
小悪魔「あうあうあうあうあうあうあうあうあぅぁうぁうぁうぁぅあぅあぅ…」
私が小悪魔の肩を掴んで、思いっきりゆすったら、『あうあう』言い出した。
是非とも『こあこあ」と言って欲しかったが…
って、何考えてんの私…
-因みに、朱鷺子の写真はその後一枚200円で売られていたという-
っってぉい!!↑の補足何!?どゆこと?
てゐ「気ぃ取り直して、本題はいろっか…」
大妖精「そうだげんね、いがみ合ってても仕方なかと」
あんたはまだその口調ですか…
朱鷺子「ところで、『中ボス』だとか『花映塚』って何」
小悪魔「ぁぅぁぅぁぅぁぅ…」
てゐ「とっきゅん。まずは、こぁを放してあげたら?こぁ可哀想」
大妖精「『中ボス』とかについては、今からはなすけん、こぁちゃんを放してけろ。『あうあう』させてたら、話にならんけぃのお」
朱鷺子「あ、失礼」
小悪魔「…ぅぁぅぁぅ。はにゅぅぅ…」
放してあげたよ。そしたら、『はにゅう』って…これ、なんかのネタなの?
てゐ「んじゃ、始めよっか!」
静葉「やっと落ち着きましたか」
こいつ、ほとぼり冷めるまで寝てやがった…
小悪魔「では、会場へ移動します」
-紅魔館-メイド用食堂
小悪魔「咲夜さんに借りました。ここなら、窮屈でなく、しっかりと会議が出来ると思うので…」
朱鷺子「でさ、『中ボス』とか『花映塚』とか何?で、なんの会…」
キスメ「すっげーーー豪華じゃん、メイドの部屋の割にすっげーーー豪華じゃん!!」
椛「おおっ!!私の警備宿舎より立派な食堂ではないか!!」
またこいつらかい…
それに、天狗の警備宿舎なんてあるんだ…ん?これは関係ないか。
どっちみち、今分かったこと、『中ボス何なのか、聞いても無駄』だって、流されるもん…
はぁ……
小悪魔「これは、中ボスの地位を向上する為の会議なのです」
みゅお~う!!いきなり何だね小悪魔君!!
小悪魔「朱鷺子さんは知りませんものね、あの事。だから、言っておきます。これは、『中ボス地位向上会議』なのです」
朱鷺子「だから、私はその『中ボス』ってんのが知りたいのよ…」
てゐ「でもさぁ、とっきゅんって中ボスなの?」
小悪魔「良いんじゃないですか?香霖堂で少し出ただけですが、妖精とか毛玉とか以外の歴とした妖怪ですし。そんな事言ったら、大妖精さんなんか、雑魚になっちゃいますからね」
大妖精「なにさ、わしが雑魚ゆうとるんか!!ほななぁ、お主やって雑魚じゃけんのぉ!」
小悪魔「あ、すみませんでした」
よく理解できたな…いろんな方言ごちゃまぜの言葉。
それと、私が『香霖堂に少し出てきただけ』で中ボスって何のこっちゃ…
ある一定の場所に出て来ると、中ボスなの?『花映塚』ってトコがあるの?
てゐ「ふ~ん、まーいーや。始めよ!!」
結局、私は完全に無視された。
to be こんてぃにゅ~
朱鷺子「続くんかいっ!」
てゐ「最初に前編って書いてあるよ~」