「どうだった?」
「べ、別に……普通だったよ。まぁまぁ暇が潰せた程度かな」
ベッドに腰掛けたフランドールが、少し震えた声で、レミリアに言う。
薄暗く、少し冷えた部屋。ランプの灯だけが、ゆらりゆらりと光を生む。フランドールの部屋である。
「それじゃあ、もう一つ話をしてやろうか?」
「うにゅわ!? も、もういいよ!」
「何で? 暇なんでしょう?」
先刻までレミリアは話を聞かせてあげていた。フランドールが暇だ暇だと喚き、暇潰し程度に何かないかと言い出したのが原因だ。そこでレミリアは、つい最近パチュリーから聞かせてもらった話を思い出し、それをフランドールに話した。レミリアがパチュリーに暇だ暇だと喚き、暇潰し程度に何かないかと言い出して、聞かせてもらい、覚えた話だ。
内容は実に簡単な怪談話。壊した人形が寝ている間、枕元に立っているとか、金縛りにあって動けない状態の中、目の前にオバケが不気味に笑っているなどなど。
ただ、パチュリーの話し方は中々上手かったのだが、レミリアに恐怖を与えるまででは無かった。だからこそ、レミリアは軽い気持ちでフランドールに話したのだが、
「ぁう……」
「これは……良いわね」
「ふぇ?」
「あぁ、こっちの話」
分かりやすい程、怯えてしまった。
いつもの天真爛漫な笑顔も良いが、涙目でちょっと強がっている姿も、良い。そんなことをレミリアは思って悶えていた。表向き表情はクールな表情でだが、心の中では小さなレミリアが頭を抱えながら悶えて、うひゃひゃひゃと笑っているような状態。
「そう、なら私はそろそろ自室に戻るわよ?」
「え!?」
「だってもう良いのでしょう? 暇潰しが済んだのなら、私は必要無いじゃない」
「ぁぅ……」
ここでフランドールがレミリアを引き止めるには、怪談をまた聞きたい、と言わなきゃいけない。だけどこれ以上聞きたくない。
葛藤するフランドール。
そんな様子を楽しそうに見つめるレミリア。
「あ、あのさ、お姉様」
「ん?」
「私、実はちょっと怖――」
「怖いなんて無いわよねぇ。私はパチェから聞いた時は、鼻で笑ってやったくらいだし」
「ぅ……」
「しかも吸血鬼がオバケなんてものを怖がったりしないわよね」
「あー……も、もちろん!」
「そ、それじゃあ私は戻るわね」
レミリアがゆっくりと、一歩、また一歩と、扉へ歩む。
扉に手をかけ、
「ぅにぃー!?」
「ぐっ!?」
突然、レミリアの背後からタックルの勢いで抱き付くフランドール。
振り向き、フランドールを見ると、涙目で睨んでいた。
「イジワル……」
「何のこと?」
「……分かってるくせに」
「あーはいはい」
正面に向き直り、ギュッと抱き締め返す。レミリアよりも小柄な身体は、やけに温かい。あやすように、髪を指で梳く。くすぐったいのか、少しだけ身をよじるフランドールだが、決して嫌そうな顔はしていない。目を細めて、安心しきっている感じだ。
「お姉様はイジワルだ」
「そうかしら?」
「許してあげない」
「それは困るわ」
「今日……一緒に寝てくれたら、許す」
「それくらい、御安いご用ね」
互いに視線を交わして、なんとなく笑う。
その日は、手を繋いで一緒に眠ったそうな。
オマケ
「――っていう話をこの前レミィに話したら、鼻で笑われたわ。まぁ吸血鬼に怪談話なんてのがいけなかったのかしらね」
「あ、あはは……そうですか」
淡々として話すパチュリーに、何故か冷や汗のようなものを流している小悪魔。
「小悪魔」
「ひ、ひゃい!?」
小悪魔のその態度を見て、妖しく口の端をつりあげるパチュリー。その様子に怯えている小悪魔。
走り逃げる小悪魔、追うパチュリー。パチュリーが賢者の石を振りかぶり、投げる。小悪魔の後頭部に162キロの速度で直撃。パチュリーは俯せに倒れる小悪魔の上に馬乗り、耳元で怪談話を呟き続ける。軽く120分ほど。泣いても喚いても、止めなかった。
「あー面白かった。まさか小悪魔が怪談話苦手なんてね」
「うぅぅ……」
涙を浮かべながら、放心状態の小悪魔。
全く動く気配の無い小悪魔。
それを見たパチュリーは、
「大丈夫小悪魔!? 一体誰がこんなことを!?」
「パチュリー様ですよぉ!?」
勢いよく起き上がってツッコミを入れる小悪魔。
「なんだ、立てるなら大丈夫ね」
「酷い……」
そう言って、何処かへ行こうとするパチュリーの背後に、小悪魔は――
「あ、あの」
「随分積極的じゃない」
ギュッと弱々しく腰にしがみついた。
顔を真っ赤にしてる小悪魔に対して、パチュリーは全く動じていない。
「ぱ、パチュリー様」
「何かしら?」
「今日一日、私から離れないで下さい……」
「……」
「お願いしますからぁ……」
ふにゃふにゃした口調になっている小悪魔。
「一日だけでいいのかしら?」
「え?」
小悪魔の髪を、優しく撫でる。
「あなたが望むなら、これからずっと、一緒よ?」
「ふぇ?」
プロポーズに近い言葉を理解するのに、小悪魔はしばらくかかった。そして理解した瞬間、
「ふわぁっ!? ふぇぇぇぇ!? ぱ、パチュリー様!?」
「小悪魔は、どうしたいのかしら?」
「わ、私は――」
この後、小悪魔が何て答えたか。二人が、約束を交わしたのかは、パチュリーと小悪魔だけが知っている。
もうなんだか甘さの基準がわからなくなってきた…
これは…微糖…?甘々?
この場合、残る咲夜さんと美鈴が同じシチュだとどっちがどっちなんだ……?
姉妹の睦まじさも捨てがたいですが……私としてはパチュリー様と小悪魔のやりとりが堪らないのですよ。おかげで普段飲めない筈のブラックを飲めてしまいました。
そうか、怪談話があったかw 自分としては、ダイレクトアタックに近い方法しか思い浮かばなかったから、勉強になりました。
ああ。やっぱり、レミフラのほのぼのはいい。
要望に応えていただきありがとうございました。
しかし「のどたん」がこんな素敵なお話を書かれたとゆーのに私は!
「レミ様とフラ様とこあさんに怪談話聞かせたらレミ様だけ怖がらなくて少し拗ね気味のパッチュさん=パチュレミ」と
「自身も怖い筈なのにこあさんを不安から救おうとするフラ様=フラこあ」を幻視してしまうっ!
ほんのり甘い作品でござんした。
鼈甲飴か氷砂糖のやうな。
甘い!甘い!!なんつーかあれですね、他のとはまた違った甘さが……
ツボすぎる!!!!!
賢者ガードとか使ってるパチェを幻視して、さらに萌えた。
軽く120分ほどで腹筋が・・・wwwww
のどさん(以前間違えて「のどたん」と打っちゃいました、すみませんorz)のフランが、突っ込みじゃないだと・・・!?
でもこのフランちゃんもまた、よし。くそ、突っ込みのフランとフランちゃんと私はどちらを選べばいいんだっ・・・!
セーブしてどっちのルートも見るk(レーヴァテイン
私も分からなくなってきましたw糖分60%くらいでしょうかね。
>>2様
甘いのですかねww
>>3様
個人的には美鈴に「イジワルしないでくださいよぉ……咲夜さん」って言わせてみたいですねw
>>4様
賢者の石は万能ですw使い方を間違えなければw
>>万葉様
オマケの方が若干甘いかもしれませんね。
そんなに甘かったですかw
>>無在様
短いからこそ、この早さで書けますw
いえいえ、シチュいただいたのにこんな短さですみません。少しでも楽しんで下さったなら、嬉しい限りです。
>>謳魚様
べっこうあめとはまた懐かしいwどうでもいいですが、昔私はべっこうあめ作って火傷して保健室運ばれたことがあります。
>>8様
いつもとは雰囲気もちょっと違った作品でしたが、楽しんで下さったようでなによりです。
>>9様
いえいえ、お好きなように呼んで下さって構いませんよwのどさんと呼ばれるのも好きですがw
セーブ出来ない運命操作ですねw
思わずもだえちゃいましたw
いやー、フランも小悪魔もかわいいですなー
甘いわぁ、激甘だわぁ。
怪談に怯える悪魔っていいよねwww
願わくばゆかれいむも見たかったが…
そろそろ小悪魔メインで書こうと思ってますw可愛く書ければいいなと。
>>奇声を発する程度の能力様
可愛く書けていれば幸いですw
>>13様
オマケの方にも力を入れましたw
>>14様
甘かったですかw
>>15様
悪魔なのに、ていうギャップが良いですよねw
ゆかれいむは今度ブログかなんかに掲載したいと思います。
涙目で、「・・・イジワル」、なんて言う所で、もう、色々と限界でした。
あと、元気すぎるパチュリーが面白かったです。