※『奇跡的契約』の続編と言うよりは掌編のようなものです。
※第_部って形はとっているけど、あまり繋がりはありません。いわゆる短編集。
第1部 【小悪魔、冒険する】
「うわー、海だー!」
小悪魔は浜辺をはしゃぎながら走り回った。
「小悪魔、遊びに来たわけじゃないのよ。さっさと海水をビンにつめたら帰るわよ」
「分かってますって。でも、海ですよ、海ー!」
話は、昨日にさかのぼる。
「小悪魔、あなた、テレポーテーションくらいは使えるわよね」
「そりゃ勿論ですよ。それが何か?」
「今からでかけるわよ。海の水が研究用に欲しいの」
「海って、あの海ですか?」
「他にどの海があるのよ」
「いやったー、海だー!私、1度行ってみたかったんですよぉ!」
「魔界には海はなかったの?」
「魔界の海は3層構造で、飛び込んだら最後、1層目と2層目の間に宙ぶらりんになるんです。
溺死スポットとして繁盛していましたが、カナヅチの私にはどうも………」
「色々と言いたいことがあるけど、後回しよ。まずは、海に行きたいから連れてって」
「連れてって、って?」
「テレポーテーション魔法くらい使えるんでしょ?」
「は、はいッ、じゃあ行きますよ。離れないでくださいね、【テレポーテーション】!」
……………………………………………
………………………………
…………………
………
「小悪魔、ここどこ?」
「はて、どこですか?」
「見て。遠くに地球が見えるわ」
「綺麗ですねぇ」
「………小悪魔、私が何を言いたいか、分かる?」
「はい。ゴメンなさい」
「テレポーテーションくらい使えるって言ったわよね?」
「て、定員オーバーだったみたいで……」
「こんなことならあなたを置いていけばよかったわ」
「置いていかないでー」
「さあ、とにかく、次こそ海に行くわよ」
「魔力切れです」
「………結局私がやらなきゃいけないんじゃないの」
「ゴメンなさい」
(こうして準備に丸1日。話は現在に戻る)
「海だーッ」
「まったく、子供なんだから」
「パチュリー様、一緒に泳ぎましょうよ。せっかくの海ですよ?」
「カナヅチじゃなかったの?」
「今なら森羅万象の不可能が可能になってる気がしますッ」
「それはちょうどよかったわ。でも、その意気込みはテレポーテーションに使ってちょうだい」
「1番、小悪魔、飛び込みまーすッ」
「話を聞いてよ」
小悪魔は海に向かって飛び込んだ。
そして、爆発した。
「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁ………………」
可哀想な小悪魔の声が、あわれ水しぶきの中に消えていく。
10分後。
「なんであなたは私の手をこんなにもわずらわせるのよッ」
「ゴメンなさいぃ」
救出された小悪魔。なぜか露出度がおおいに増えている。はて。
「いちいち召喚魔法使わせないでよね。疲れるんだから」
「はいぃ」
「で、服はどうしたの?」
「爆発しちゃいました」
「何でできてるのよ」
「あ、割と万能なんですよ。防火防水防花粉、防毒防圧安眠妨害、
時差ぼけ、ドライアイ、お小遣いの浪費もばっちりカバー。蚊が寄ってこないおまけつき」
「頭のネジを引き締める機能はないの?」
「フランケンシュタインさんがやめてくれと言ったのでなくなりました」
「そういう意味じゃないんだけど」
「それにしても、なんで爆発しちゃったんでしょう」
「魔界で使えたものがこっちだと使えないってのはよくあることらしいわよ。
事実、向こうでの知識や常識はこちらで通用しないのは今あなたが体験した通り。覚えておくことね」
「はい、へ、へくちぃっ」
「風邪?」
「寒いだけですよ、へくちぃっ」
「さあ、海水を集めてきて。帰りのテレポーテーションも私がやってあげるから。
で、帰ったらさっさと上着を着て、暖炉にあたること」
「ありがとうございます」
「パチュリー様、カニに挟まれました、助けてくださいぃッ」
「あー、もう」
第2部 【小悪魔、外出する】
「小悪魔、本が滞ってるわよ」
返事がない。
「ちょっと、小悪魔?」
姿も見えない。
「まったく、どこ行ったのかしら」
席を立った途端に、
「はいはーい、呼びましたかー?」
ひょっこりと小悪魔が現れた。頭には白い雪。
「どこに行ってたのよ」
「パチュリー様、雪ですよ、雪♪お外は大雪でございます」
「あら、そうなの。で?本は?」
「噂に聞いていた通り、こちらの雪は美しいですねぇ」
「そうなの?そうなのかもね。で、本は?」
「そうなんですよ、魔界の雪には風流さが微塵もなくてですねぇ」
「聞いてないわね」
「第一、魔界の雪は交通ルールを知らないんです。きちんと上から下に降る雪なんて稀で、
大体の雪が下から上、右から左、前から後ろと大暴れですよ。楽しむ暇もありません」
「騒々しいわね」
「騒々しいと言えば、お外はやけに静かですね」
「雪だからよ」
「はて」
小悪魔は首をかしげた。頭の雪もぽろぽろ落ちる。
「雪は周りの音を吸い取るのよ。もしくは、音が凍りつくからかもね」
「融けたら騒がしそうですね。雪合戦なんてできやしない」
「あら、魔界にも雪合戦があるの?」
「あるも何も、この小悪魔、雪合戦では未だ負け知らずでございます」
「あなたが?」
パチュリーはちょっとばかり意外に思った。
そして、外敵対策のために雪を常備しようかとも思ったが、コスト面を考えてやっぱりやめた。
「学生時代は友達を何人も泣かせました。ええ、泣かせましたとも」
「泣かすまでやらなくても」
「その考えは命取りです。やらなければやられるのです」
「それで、あなたはどんなことをしていたの?」
「ニュークリア・スノーマンをつくりました。もちろん時限式です」
「どこでそんな危険物手に入れたのよ」
「駄菓子のおまけでついてくるんです」
「それにしても、よくお友達は泣くぐらいですんだわね」
「校舎は吹き飛んじゃいました。てへへ」
「お友達は強いのね。同情するわ」
「私には?私は1人で校舎を建て直したんですよ?」
「早く頭の雪をはらいなさい。風邪ひくわよ」
「は、はいぃ」
「それが終わったら本を持ってきて」
「ねぇ、パチュリー様」
「何よ」
「今度、一緒に雪だるま作りません?」
「………………………」
「ああ、すみません。パチュリー様の読書の邪魔になるのなら、別に──」
「いいわよ」
「ええ、分かってます。ダメですよね、ダメに決まって─────へ?」
「ここ久しく、雪なんて見てないもの。あなたの話を聞いてると、たまにそういうのもいいかもって思えるのよね」
「じゃあ私、これからパチュリー様のために手袋編みますね」
「別にいいわよ、そこまでしてくれなくても」
「いえいえ、その手が霜焼けになったら大変です。さっそく毛糸と編み針を調達してきますね」
小悪魔はその言葉を言い残し、どこかへとテレポーテーションしてしまった。
「別に防寒魔法があるからいいのに」
今年からは防寒魔法の出番が減りそうなのであった。
「パチュリー様、編み物ってどうやるんですか?」
「知らないで買ってきたの?って言うか、本の供給が滞っているんだけど」
第3部 【小悪魔、看病する】
パチュリーが風邪をひいた。
「パチュリー様、今日くらいは寝てくださいよ」
「大丈夫、ちょっと熱っぽいだけよ」
「いえいえ、いけません。風邪は難病のもとです。さっさと治してしまうに限るのです」
「第一、誰が看病してくれるのよ」
「パチュリー様、灯台もと暗し、ですよ。なんのために私がいると思っているんですか」
「書庫整理」
「…………」
「本当に任せて大丈夫なの?」
「任せてくださいッ」
というわけで寝室。
「さあ、横になってください」
「ああ、これで私もまな板の上の鯉なのね」
「食べませんよ、大丈夫です」
「まあ、いいわ。それで、これからどうするつもり?」
「こっちの世界では、風邪にはネギがいいんですって」
「魔界ではどうなの?」
「風邪に限らず、身体の病気は、身体を木っ端微塵に吹き飛ばし、再生を待つのが一番確実なんです」
「お願いだからそれを私に施さないでね」
「むしろ、精神面が廃れてくると、力もだんだん衰退して、死んでしまうんです。鬱病ほど怖い病はありません」
「そこは魔女と共通点があるわね」
「恥ずかしながら、私も昔は枕を涙でよくよく濡らしていたもので。よく生き延びられたなぁ」
「あなた、実は悪魔向いてないんじゃないの?」
「私もそう思います」
えへへ、となぜか照れる小悪魔。
「まあ、軟弱な魔女ってのも珍しいけどね」
「いえいえ。じゃあ、私、ネギを持ってきますね」
30分後
「パチュリー様、大変です。ネギを適度な大きさにしようと思っても、うまくいかないんです」
「それが30分かかって言う台詞?包丁くらいあるでしょう?」
「ああ、そうか。包丁を使えばよかったのか」
「何していたのよ」
「いや、分裂するのを待っていたんです」
「あなたは本格的にこっちの常識を学ぶ必要があるわね」
「おかしいなぁ、学校できちんと習ったはずなんだけど」
「魔界ではどうやって切るの?」
「切るのは後です。分けるのが先」
「そんなことがあり得るの?」
「ええ。“先に切る奴があるか”って文句がお笑いで大ブレイクしたほどです」
「なんだかよく分からないわね」
「じゃあ、いますぐ切ってきますね」
…………………………………………………
………………………………
………………
「できましたよ、ぐすん」
その手にはみじん切りにしすぎて、ペースト状になった玉ねぎ。
「玉ねぎのことだったの?」
「もう号泣ものですよ」
「まあ、健康に悪いことはないだろうけど、それをどうするの?」
「はて」
「先が思いやられるわね」
「分かった、これでポーション作ってきますね!」
思い立った小悪魔は、ペースト玉ねぎを持って、調合室へと走っていった。
「あ、いや、あなたがポーション?」
そのパチュリーの不安そうな声を聞く者は、いない。
「できましたッ」
小悪魔の手には、なぜかおにぎり。
「ポーションじゃなっかたの?」
「そのつもりだったんですが、失敗しちゃいました」
「やっぱりね。あなたのことだから、予想はついていたわ」
「その代わり、ほら、おにぎり作ってきました」
「すごい進行方向転換ね」
「私もよく友達につくってもらったんですよ。食べると元気がでるおまじないつきです」
「ふーん、じゃ、いただくわ」
パチュリーはさっそくそのおにぎりを食べてみた。
ちょっといびつで、崩れやすくて、中に何もはいっていなかった。けれど、不思議と元気は出た。
「おにぎりって、作った人に似るのね」
「え?」
「美味しかったわよ」
「私は美味しいんですか?」
「誰もあなたを食べようとしないわよ。おにぎりの話」
「よく分かりませんが、喜んでもらえたならよかったです」
「食後の紅茶いれてきてくれる?」
「はい、分かりました」
がちゃーん
「何かしら、今の音。調合室から聞こえたけど」
「ああ、さっきのポーション製造中に、副作用でなぜかゴリラを大量召喚しちゃいまして」
「待っ」
※第_部って形はとっているけど、あまり繋がりはありません。いわゆる短編集。
第1部 【小悪魔、冒険する】
「うわー、海だー!」
小悪魔は浜辺をはしゃぎながら走り回った。
「小悪魔、遊びに来たわけじゃないのよ。さっさと海水をビンにつめたら帰るわよ」
「分かってますって。でも、海ですよ、海ー!」
話は、昨日にさかのぼる。
「小悪魔、あなた、テレポーテーションくらいは使えるわよね」
「そりゃ勿論ですよ。それが何か?」
「今からでかけるわよ。海の水が研究用に欲しいの」
「海って、あの海ですか?」
「他にどの海があるのよ」
「いやったー、海だー!私、1度行ってみたかったんですよぉ!」
「魔界には海はなかったの?」
「魔界の海は3層構造で、飛び込んだら最後、1層目と2層目の間に宙ぶらりんになるんです。
溺死スポットとして繁盛していましたが、カナヅチの私にはどうも………」
「色々と言いたいことがあるけど、後回しよ。まずは、海に行きたいから連れてって」
「連れてって、って?」
「テレポーテーション魔法くらい使えるんでしょ?」
「は、はいッ、じゃあ行きますよ。離れないでくださいね、【テレポーテーション】!」
……………………………………………
………………………………
…………………
………
「小悪魔、ここどこ?」
「はて、どこですか?」
「見て。遠くに地球が見えるわ」
「綺麗ですねぇ」
「………小悪魔、私が何を言いたいか、分かる?」
「はい。ゴメンなさい」
「テレポーテーションくらい使えるって言ったわよね?」
「て、定員オーバーだったみたいで……」
「こんなことならあなたを置いていけばよかったわ」
「置いていかないでー」
「さあ、とにかく、次こそ海に行くわよ」
「魔力切れです」
「………結局私がやらなきゃいけないんじゃないの」
「ゴメンなさい」
(こうして準備に丸1日。話は現在に戻る)
「海だーッ」
「まったく、子供なんだから」
「パチュリー様、一緒に泳ぎましょうよ。せっかくの海ですよ?」
「カナヅチじゃなかったの?」
「今なら森羅万象の不可能が可能になってる気がしますッ」
「それはちょうどよかったわ。でも、その意気込みはテレポーテーションに使ってちょうだい」
「1番、小悪魔、飛び込みまーすッ」
「話を聞いてよ」
小悪魔は海に向かって飛び込んだ。
そして、爆発した。
「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁ………………」
可哀想な小悪魔の声が、あわれ水しぶきの中に消えていく。
10分後。
「なんであなたは私の手をこんなにもわずらわせるのよッ」
「ゴメンなさいぃ」
救出された小悪魔。なぜか露出度がおおいに増えている。はて。
「いちいち召喚魔法使わせないでよね。疲れるんだから」
「はいぃ」
「で、服はどうしたの?」
「爆発しちゃいました」
「何でできてるのよ」
「あ、割と万能なんですよ。防火防水防花粉、防毒防圧安眠妨害、
時差ぼけ、ドライアイ、お小遣いの浪費もばっちりカバー。蚊が寄ってこないおまけつき」
「頭のネジを引き締める機能はないの?」
「フランケンシュタインさんがやめてくれと言ったのでなくなりました」
「そういう意味じゃないんだけど」
「それにしても、なんで爆発しちゃったんでしょう」
「魔界で使えたものがこっちだと使えないってのはよくあることらしいわよ。
事実、向こうでの知識や常識はこちらで通用しないのは今あなたが体験した通り。覚えておくことね」
「はい、へ、へくちぃっ」
「風邪?」
「寒いだけですよ、へくちぃっ」
「さあ、海水を集めてきて。帰りのテレポーテーションも私がやってあげるから。
で、帰ったらさっさと上着を着て、暖炉にあたること」
「ありがとうございます」
「パチュリー様、カニに挟まれました、助けてくださいぃッ」
「あー、もう」
第2部 【小悪魔、外出する】
「小悪魔、本が滞ってるわよ」
返事がない。
「ちょっと、小悪魔?」
姿も見えない。
「まったく、どこ行ったのかしら」
席を立った途端に、
「はいはーい、呼びましたかー?」
ひょっこりと小悪魔が現れた。頭には白い雪。
「どこに行ってたのよ」
「パチュリー様、雪ですよ、雪♪お外は大雪でございます」
「あら、そうなの。で?本は?」
「噂に聞いていた通り、こちらの雪は美しいですねぇ」
「そうなの?そうなのかもね。で、本は?」
「そうなんですよ、魔界の雪には風流さが微塵もなくてですねぇ」
「聞いてないわね」
「第一、魔界の雪は交通ルールを知らないんです。きちんと上から下に降る雪なんて稀で、
大体の雪が下から上、右から左、前から後ろと大暴れですよ。楽しむ暇もありません」
「騒々しいわね」
「騒々しいと言えば、お外はやけに静かですね」
「雪だからよ」
「はて」
小悪魔は首をかしげた。頭の雪もぽろぽろ落ちる。
「雪は周りの音を吸い取るのよ。もしくは、音が凍りつくからかもね」
「融けたら騒がしそうですね。雪合戦なんてできやしない」
「あら、魔界にも雪合戦があるの?」
「あるも何も、この小悪魔、雪合戦では未だ負け知らずでございます」
「あなたが?」
パチュリーはちょっとばかり意外に思った。
そして、外敵対策のために雪を常備しようかとも思ったが、コスト面を考えてやっぱりやめた。
「学生時代は友達を何人も泣かせました。ええ、泣かせましたとも」
「泣かすまでやらなくても」
「その考えは命取りです。やらなければやられるのです」
「それで、あなたはどんなことをしていたの?」
「ニュークリア・スノーマンをつくりました。もちろん時限式です」
「どこでそんな危険物手に入れたのよ」
「駄菓子のおまけでついてくるんです」
「それにしても、よくお友達は泣くぐらいですんだわね」
「校舎は吹き飛んじゃいました。てへへ」
「お友達は強いのね。同情するわ」
「私には?私は1人で校舎を建て直したんですよ?」
「早く頭の雪をはらいなさい。風邪ひくわよ」
「は、はいぃ」
「それが終わったら本を持ってきて」
「ねぇ、パチュリー様」
「何よ」
「今度、一緒に雪だるま作りません?」
「………………………」
「ああ、すみません。パチュリー様の読書の邪魔になるのなら、別に──」
「いいわよ」
「ええ、分かってます。ダメですよね、ダメに決まって─────へ?」
「ここ久しく、雪なんて見てないもの。あなたの話を聞いてると、たまにそういうのもいいかもって思えるのよね」
「じゃあ私、これからパチュリー様のために手袋編みますね」
「別にいいわよ、そこまでしてくれなくても」
「いえいえ、その手が霜焼けになったら大変です。さっそく毛糸と編み針を調達してきますね」
小悪魔はその言葉を言い残し、どこかへとテレポーテーションしてしまった。
「別に防寒魔法があるからいいのに」
今年からは防寒魔法の出番が減りそうなのであった。
「パチュリー様、編み物ってどうやるんですか?」
「知らないで買ってきたの?って言うか、本の供給が滞っているんだけど」
第3部 【小悪魔、看病する】
パチュリーが風邪をひいた。
「パチュリー様、今日くらいは寝てくださいよ」
「大丈夫、ちょっと熱っぽいだけよ」
「いえいえ、いけません。風邪は難病のもとです。さっさと治してしまうに限るのです」
「第一、誰が看病してくれるのよ」
「パチュリー様、灯台もと暗し、ですよ。なんのために私がいると思っているんですか」
「書庫整理」
「…………」
「本当に任せて大丈夫なの?」
「任せてくださいッ」
というわけで寝室。
「さあ、横になってください」
「ああ、これで私もまな板の上の鯉なのね」
「食べませんよ、大丈夫です」
「まあ、いいわ。それで、これからどうするつもり?」
「こっちの世界では、風邪にはネギがいいんですって」
「魔界ではどうなの?」
「風邪に限らず、身体の病気は、身体を木っ端微塵に吹き飛ばし、再生を待つのが一番確実なんです」
「お願いだからそれを私に施さないでね」
「むしろ、精神面が廃れてくると、力もだんだん衰退して、死んでしまうんです。鬱病ほど怖い病はありません」
「そこは魔女と共通点があるわね」
「恥ずかしながら、私も昔は枕を涙でよくよく濡らしていたもので。よく生き延びられたなぁ」
「あなた、実は悪魔向いてないんじゃないの?」
「私もそう思います」
えへへ、となぜか照れる小悪魔。
「まあ、軟弱な魔女ってのも珍しいけどね」
「いえいえ。じゃあ、私、ネギを持ってきますね」
30分後
「パチュリー様、大変です。ネギを適度な大きさにしようと思っても、うまくいかないんです」
「それが30分かかって言う台詞?包丁くらいあるでしょう?」
「ああ、そうか。包丁を使えばよかったのか」
「何していたのよ」
「いや、分裂するのを待っていたんです」
「あなたは本格的にこっちの常識を学ぶ必要があるわね」
「おかしいなぁ、学校できちんと習ったはずなんだけど」
「魔界ではどうやって切るの?」
「切るのは後です。分けるのが先」
「そんなことがあり得るの?」
「ええ。“先に切る奴があるか”って文句がお笑いで大ブレイクしたほどです」
「なんだかよく分からないわね」
「じゃあ、いますぐ切ってきますね」
…………………………………………………
………………………………
………………
「できましたよ、ぐすん」
その手にはみじん切りにしすぎて、ペースト状になった玉ねぎ。
「玉ねぎのことだったの?」
「もう号泣ものですよ」
「まあ、健康に悪いことはないだろうけど、それをどうするの?」
「はて」
「先が思いやられるわね」
「分かった、これでポーション作ってきますね!」
思い立った小悪魔は、ペースト玉ねぎを持って、調合室へと走っていった。
「あ、いや、あなたがポーション?」
そのパチュリーの不安そうな声を聞く者は、いない。
「できましたッ」
小悪魔の手には、なぜかおにぎり。
「ポーションじゃなっかたの?」
「そのつもりだったんですが、失敗しちゃいました」
「やっぱりね。あなたのことだから、予想はついていたわ」
「その代わり、ほら、おにぎり作ってきました」
「すごい進行方向転換ね」
「私もよく友達につくってもらったんですよ。食べると元気がでるおまじないつきです」
「ふーん、じゃ、いただくわ」
パチュリーはさっそくそのおにぎりを食べてみた。
ちょっといびつで、崩れやすくて、中に何もはいっていなかった。けれど、不思議と元気は出た。
「おにぎりって、作った人に似るのね」
「え?」
「美味しかったわよ」
「私は美味しいんですか?」
「誰もあなたを食べようとしないわよ。おにぎりの話」
「よく分かりませんが、喜んでもらえたならよかったです」
「食後の紅茶いれてきてくれる?」
「はい、分かりました」
がちゃーん
「何かしら、今の音。調合室から聞こえたけど」
「ああ、さっきのポーション製造中に、副作用でなぜかゴリラを大量召喚しちゃいまして」
「待っ」
本当に、あなたの書く小悪魔は物凄いwww
長編に無いのが惜しいくらいです、長編なら100点が最低点ですね、大体1万点ぐらいでしょうかね、もし点数付けるならwww
見てて暖かくなるような…そんな作品ですねぇ…
無邪気な小悪魔さんがとってもナイスです
小悪魔が美鈴みたいだ。
しかしあまりにもほのぼのした二人にある意味くやしい、でも頬が緩んじゃうっ(ビクンビクン)
ただいかに小悪魔の魔界的文化が幻想郷ですら非常識なのかがよくわかったww
てっきり小悪魔が変な本で調べてアッー!な展開だと思った私は汚れてますね、わかります
パチュリーが「!」を使わない辺り凄い「らしい」と思いました、これからも頑張ってくださいね
さりげなく子悪魔の服の効果に安眠妨害入ってた(笑)
つまりこぁは服を着てると寝れ無いので(ry
この二人はもう結婚すればいいとおも(ry
>1
ありがとうございます。もう嬉しくて大気圏突入しちゃいそうw
作者はこれからも、プチ専でがんばっていこうと思います。ここの空気が好きなので。
>2
ありがとうございます。
小悪魔さんは悪魔には向いてないのかもしれないとかちょっぴり思ったり。
>3
説明不足でしたね、ゴメンなさい。
パチュリーと小悪魔が幻想入りする前、という時間軸で書かせていただきました。無論、場所も幻想郷の外です。
それと、ケ○シィと小悪魔を比べてはいけませんよ。
小悪魔は、テレポートしようとしても失敗する可能性が高く、赤と白のボールでも簡単にゲットできて、
なおかつ、ゲットするとパチュリーが報復にやってきます。持って行っちゃ駄目ですよ。
>4
してやったり。
神綺クオリティはどこにも通用しない独自のカルチャーを実現したのでした。
ナンバーワンよりオンリーワン。
>5
『家庭の医学大辞典』ですね、分かっています。
「らしさ」の元は、萃夢想EDと個人的イメージからでした。
応援のお言葉を糧にこれからもがんばっていきたいと思います。ありがとうございました。
>6
うほっ
>7
お願いします、なんて言おうとしたら既に向こうにもレスはいってたよ。さすが百徒さん仕事が速い。
授業中はこの服を着ればよく、寝るときはパジャマを着ればよいのです。
作者、パジャマが大好きで、いつかパジャマSS書きたいと思ってますw
>8
け、けけけけ、結婚んんんッ!?(ぶぼぁ
確かにそいつは素晴らしい響きだ、が、残念。
作者は、この2人は主と従者だからこそ素晴らしいと思い込んでいるのでした。