ある雪が降り積もった日のこと。
目を覚ますと目の前に幽々子様が寝てました。
「あ~、これは…」
まあ、落ち着こう。まずは状況の整理だ。
私は幽々子様と同じ布団で寝ている。そしてがっちりと抱きしめられているせいで動けない。
首を動かして部屋を見る。枕もとには二振りの刀がある。ということはここは私の部屋だということだ。
そして、何故幽々子様がここにいるのかは寝ぼけたとかそんなとこだろう。
「よし、把握した」
把握はした。後は行動するだけだ。
「幽々子様、起きてください」
くかーとカリスマとかそんなものはない寝息を立てる幽々子様を揺さぶってみるが、効果はない。
なおも揺さぶってみるが
「わひゃあ!?」
余計に眠りに入ろうとし、さらに強く抱きすくめられ、自然と顔が近づく。
「…っ!」
息がかかるくらいに近づき、心臓が跳ね上がる。
鼓動が寺の鐘のようにうるさくなり、呼吸がうまくできない。
「ふみゅう…」
「ひゃ!?」
頬にかかる息がこそばゆく、密着した体からは心音まで伝わってくる。
そして、柔らかな寝顔を見ていると何もかもがわからなくなっってくる。
自分でも何を考えているのか分からなくってきて、
「みょん…」
私は考えることをやめた。
ある雪が降り積もった日のこと。
目を覚ますと目の前に妖夢が寝てました。
「ふむ…」
ここは枕元に刀があることから妖夢の部屋だ。
何故一緒の布団にいるのかと言えば、夜寒かったので妖夢をカイロ替わりにしようと思ったのだ。
なので、一緒に寝ていることは何の問題もない。
問題は
「なんだか妖夢うなされてるわね」
何故だか顔を赤くして唸っている。何か夢でも見ているのだろうか。
「まあ、いいかしら」
こちらの服をしっかりとつかんで離さないようにしている妖夢はかわいいし。
頭を撫でてやるとその力は少し弱まる。ぎゅっと抱きしめてやると体温と柔らかさが伝わってきて、とても気持ちがよかった。
「ふふ、妖夢あったかいわ」
さて、妖夢も寝ていることだし。二度寝でもしましょうか。
目を覚ますと幽々子様の顔があった。
「冷静に。冷静に…」
よし、大丈夫。私は冷静だ。さっきまで一緒の布団にいたのだから何の問題もない。
問題なのはさっきよりさらに抱きしめられていることだ。腕どころか足まで絡めて、身動きが全く取れない。
視界にあるものは幽々子様の顔ぐらいしかない。
そして、それも問題だった。
「ん…ふう」
あんまりにも綺麗な寝顔だから。
いつまでも見ていたくなって。
いつの間にか起こそうなんて気にはなれなかった。
「動けないのだから…しょうがないんです」
自分に言い訳をしてから、私は寝顔を眺めていることにした。
すやすやと安らかに眠る姿を見ているとなんだか私まで眠くなってきて。
「すう…」
私もいつの間にか寝てしまっていた。
「あらら、妖夢ったら。寝ぼすけさんね。まだ寝てるなんて」
「ん、む…ゆゆこさま…」
「かわいいことね。もう少し寝てもいいかしら」
「 幽々子様まだ寝てる…。もう少しだけ…」
「ん~。妖夢あったかいわ~」
「…おはようございます、幽々子様」
「おはよう妖夢。もう夕方だけど」
「すいませんでした…。こんな時間まで惰眠を貪るなどと。従者として失格です」
「別に気にしてないわ。たまにはいいでしょう」
「ですが」
「それに。妖夢ったらかわいい寝言を言って」
「へっ!?」
「『ゆゆこ様~』なんて、昔を思い出すわね」
「そ、それは、その!
「私に抱きついてきて、すごく可愛かったわ」
「う、あ…」
「また一緒に寝ましょうね?」
「い、いや…その…」
「またと言わず、今からでもいいかしら?」
「え、ちょ、幽々子様!だ、抱きつかないでください!」
「やーだ」
「だ、だれか!助けて!」
「よーむかわいいわー」
「アッー!」
妖夢の照れが微笑ましくてよかった。
しかし「寺の鐘のように」という表現は妖夢っぽいなぁw
ははは、御冗談を。