「・・・」
パチュリーは、ちょっとだけ感覚がおかしくなった。
どこの感覚なのか、というと、
右手の親指の付け根からちょっとだけ下に行って
さらにその位置から左にほんのすこしだけいって、ちょっとだけ上に行って
右にほんのすこしだけいったところの感覚がおかしくなった。
言い表すのなら、それは麻痺。
かゆみ止めではない。
問うものでもない。
麻痺である。
「いつの間に、ここはこんなににぎやかな図書館になったのかしら」
ぼそりと、動く唇を動かして攻撃的な言葉を吐く。
その言葉はあまりにも小さすぎて、目の前の喧騒に届く前に消されてしまった。
「れいむー、そこの本とってー」
「はい、桃太郎」
「浦島太郎じゃねえか!」
「らんらんるー、あっちにある本とってー」
「らんは一回ですし、るーは必要ありません。ご自分でお取りになってください、つまんないですよそれ、私も本読みたいんです」
「らんさまー、この字ってどう読むのー?」
「ああ、それはさんぴーって読むんだよ」
「ぶーぶー、藍のひいきー」
「総領娘様、そこにある本読んでもいいですかね?」
「いいわよー、割と難しいから読めない字があったら言ってね」
「うわっ、本当ですねぇ。」
「じゃあ勝負だ萃香!この10冊どっちが早く読めるか!勝ったら酒10杯で!」
「ほうほう、勇儀は私に勝てる自信があると。霊夢んちでガンガン本を読んだ私をなめんなよー!」
「ふふふ、それが碌な本じゃなかったことを証明してやるぜ!どうせ簡単な本だったんだろ!」
「やまめー、一緒に本読もー♪」
「あ、パルる、そこにあるやつ一緒に読もう!あれ確か面白いよ!」
「了解了解ー!ていっ!」
「うわあああ!?キャプチャーウェブっ!」
「・・・そして、あるえらい人は字をもう一度読み始めました。そして、さとりました。「読めなくても、生きていけるんだ」と。」
「お姉ちゃん、無理しないで。もう目次の文字じゃなくて、「目次」が読めないとかいう時点から私は聞いてないから」
「おりんー!」
「図書館では静かに。ね?」
「本好きが増えるのはいいんだけど、これはねえ」
最近、紅魔館の図書館に異様に人が集まってきている。
異変かと思ったが霊夢も巻き込まれているのでただのブームであろう。
そうパチュリーは考えていたのだが、1週間に一回の頻度で行われる「紅魔館の図書館での読書大会」とかいう
なんとも身勝手な大会には、嫌気が差していた。
本好きが増えるというのは嬉しいのだが、うるさすぎる。
小悪魔は最近自室に篭りっきりで、あんまり顔を見ていない。
まあこの顔ぶれならば、そうしたくなるのも無理は無いが。
(最強の巫女さんに、核エネルギーを持つ烏に、スキマジックに、神社をも壊す力を持つ天人などなど)
(でも、突然なんで増えたのかしらね?)
パチュリーの疑問が解けたのは、
この身勝手な大会が終わってからのことだった。
一ヶ月後。
うにょーんと変な音がなった。
スキマが開いた音だったようだ。
「あらあら、やっとわかったの?」
ゆかりんが登場した。
「あなたがゆかりんって言うと結構違和感あるわねぇ」
「自覚はしてるわ」
「まあ、確かに唐突だしわかりにくかったことではあるわね。
何気に全員が本好きになったわけでないのもヒントだったのかもしれないわよ?」
「言われてみるとそうね。幻想郷の住人が全員本好きになったというわけではなかったし」
「幻想入りしたのかしら?相変わらず不思議ね、外の世は。
楽しいわよね」
「あなたがそういうのも意外ね」
「あらあら、私は賢者とまで呼ばれちゃってるのよー?」
読み終えて平積みになる本の数が次々と増えていく。
ページがどんどん捲られていく。
読める本の数がまた図書館に増えていく。
そして、またパチュリーは本を読む。ページを捲る。
時々、妖怪の賢者と言葉を交わしながら。
本の文章の行間に入っている思い。
本にこめられている思い。
幻想入り、あなたもしてみます?
薄型のモニターを使う人や簡単なものでは携帯。PCでも今は探そうと思えば結構ありますし
もう少し時代が進めば紙媒体の本が全てなくなってしまうかもしれませんね
紙媒体はかさばり、木を切る性質から温暖化の温床になりかねない(必ずしもそういうわけではありませんが)
日本は得に紙を使う国なのでそれを減らすべきなのかもしれません
この際なので、そして誰もいなくなったを読んできます。