幻想郷には、色んなものが流れ込んでくる。いまやそれは40%まで活用出来る様になってきた。流れてくるものの多くは電化製品という電気を利用した道具で、電気さえあればきちんと動くと香霖堂の店主、森近霖之助は言う。私がにとりと共同で電気発生兼増幅装置(製品名:EP《エレクトロニトリック・パッチュルーム》)、簡易電力供給装置(製品名:EED《イージー・エレクトロニトリック・ドライブ》)を開発してからは、紅魔館を始め幻想郷に新たな生活基盤を築いた。
そんな電化製品の中で一際活用されたのがゲーム機というものだった。物にもよるが、電源とメモリにソフトと呼ばれるものをそのゲーム機にセットすることで遊ぶことが出来るのだ。これは、紅魔館のある人物に大変な影響を与えた。
「今はこれだけあれば十分。ありがとう小悪魔。休んでいいわ。」
「分かりました。では、休憩に入らせてもらいますね。」
動かない大図書館こと私、パチュリー・ノーレッジが許可を出すと、司書である小悪魔はこの図書館にある自分の部屋へと消えていった。
最近はこんな傾向が多い。いままでだったら、「既にパチュリー様が読んだ本があるならそれを読ませてください。」と私の傍にいつもいるはずなのに。電化製品が利用されるようになって随分と変わったようだ。そういえば、あの子携帯型ゲーム機に夢中になっているところを見たという話を咲夜が言っていた。無理もない。私もそのゲームに夢中になったことがあった。幻想郷にあるゲーム機並びにソフトは全て把握している。長時間ではないが、それで遊ぶことを毎日の楽しみにしているらしい。休憩時間をそっちに割いていると考えていいだろう。一体何をしているのやら。脳トレでもやっているのかしら。真面目なあの子なら、きっとそれをやっているに違いない。特に心配することもないだろう、と結論付けたその時だった。
「パチュリー様、私は未熟者ですか?」
突然小悪魔が現れて話しかけて来た。
「どうしたの、急に。」
「いえ、ちょっとそんな気がしたので・・・。」
「何があったの。言ってみなさい。」
「このゲームをしていたのですが・・・。」
小悪魔はPSPを取り出してパチュリーに見せた。どれどれ、脳トレなら確か脳年齢とかが表示されてたわよね。それがあまりに酷かったから未熟者とでも思ったのかしら。あれ、脳トレじゃ・・・ない?
「このキャラなんですけれど・・・。」
で、デビル仁じゃないの!じゃあこれって・・・ああ、やっぱり。TEKKEN DARKRESURRECTIONね。モロ格闘ゲームですね分かります。最初から全キャラが出ているから特定のキャラは隠しているようににとりが改造したのよ。それで最後の隠しキャラがこのデビ仁。随分とやり込んだ見たいね。デビ仁以外全員拳神になってる。いやそれ以前にどうしてこの娘はこの格ゲーに夢中なのよ。
「質問に質問で返すのはよくないことは分かっているけど質問させて頂戴。」
「はい。なんでしょうか。」
「先ずこれをどこで手に入れたの?」
「河城にとり様から頂きました。なんでも私に近い存在が最後にいますよって言われて・・・」
「恐らくこのデビ仁のことね。もしかして、デビ仁を見て自分が未熟者だって思ったの?」
「見ただけじゃありません。技が凄いんです。まるで悪魔のようで・・・。」
「いや悪魔だから。デビルだからね小悪魔。で、どの技がそれっぽかったの?」
「雷紅波、雷紅昇波、雷紅斬波、涅槃、涅槃送り、絶無です。」
(ぜ、全部ビーム技・・・。)
「他には?」
「デビルツイスター、ヘブンズドア、六道鬼丸、等活閃空、叫喚閃空ですかね。」
どうしてこうもマニアックな技ばっかり選んでくるのか。とりあえず聞くだけ聞くことにしたパチュリーは、
「そう・・・その技を見て、何で未熟者なんて思ったわけ?」
「私、小悪魔だけど一応は悪魔なんですから、少しは悪魔に近づきたいんです。私だってあんな風になりたいです!立派な悪魔になりたいんです!」
「立派な悪魔、ねぇ・・・。」
何か意味が違う気がする。ここは小悪魔が間違った道に走らないようにきちんと言い聞かせないと。そう決心した私は小悪魔を説得し始めた。
「こぁ、私は貴女には立派な悪魔になってほしいとは思っていたわ。でもね、別にこんな難しい技が使えるな悪魔にならなくてもいいと思うのよ。今は私の司書で、きちんと仕事も出来ているんだから。」
「そ、そうですか?でも・・・。」
「大丈夫、何も気にしなくていいのよ。もっと別の、貴女が思う立派な悪魔を目指したらいいんじゃないかしら。」
「わ、分かりました。じゃあ私、もっと立派な悪魔の像を考えて、それを目指します!」
どうやら分かってくれたみたい。理解ある司書でよかった。この世の中には盗むことを《一生借りるだけ》とかいうどっか頭のおかしい魔法使いもいるから。そうだ、いい機会だから。
「こぁ、折角目標が出来たから、少し休暇をあげる。」
「ふぇ?き、休暇ですか?」
「貴女はいつも私についていてくれる。少し休みも必要よ。少しその像を探してきてごらんなさい。」
「いいんですか?」
「いいって言っているんだから、ありがとうございますって言えばいいの。」
「は、はい!ありがとうございます!」
「じゃあ明日から一週間。しっかりね。」
「分かりました!」
張り切った様子で小悪魔は自分の部屋へ戻っていった。どうやらどうすればいいかは分かっているみたい。これなら安心ね。しばらく司書の代わりは、咲夜にまかせようかしら。さて、私もちょっとはそれらしいことをしてみましょうか。
* * *
「最近は小悪魔も部屋を出たり戻っていったりで忙しそうにしているわね。」
「そうですねぇ。私としては、早めに仕事に復帰してもらいたいものですが。負担が増えるばかりで少しばかりつらいんですよ?」
「実際そうでもないくせに。」
「意外と大真面目だったりしますわ。」
咲夜と冗談交じりに会話をしていても、それが見えないかのように小悪魔は本を漁って、勉強をしているらしい。やっぱりああやって真面目に取り組む姿を見ると、とても微笑ましい。そして気持ちがいい。
「よ、パチェ。どうなんだい、司書の方は?」
「あらら、本物が来たわね。いらっしゃい。」
「なによ、本物って。私は二つ名で悪魔の二文字はあるが、吸血鬼だからね。」
「はいはいそうでした。それで、用件は?」
「だから司書の方はどうなんだって。」
「分からないわよ。あの子の自由にやっているし、覗き見は趣味じゃないもの。」
「そうか。ならちょっくら見てくるか。」
レミリアは机に向かっている小悪魔に近づいてその様子を見てみた。机の上にはノートが10冊ほど重なっている。一つ手にとって見ると、1ページ1ページみっちりと文字やら構図やらで埋まっていた。
「・・・熱心じゃないか。」
「ひゃあ!れ、レミリアお嬢様じゃないですか。びっくりさせないで下さいよ~。」
「悪い悪い、嫌がらせをしに来たんじゃないんだ。どんなことをしているのかな~って気になったからさ。」
「え、あ、あの、今はまだこれといって進歩はないんですけど・・・。」
「ノートを見る限りでは、悪魔について調べているみたいだね。」
「は、はい。あ、お嬢様、折角なのでお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「ん?私の分かる範疇でなら答えてあげるよ。」
「ありがとうございます。では。お嬢様から見て私は立派な悪魔に見えますか?」
「・・・そうだねぇ、ちょっと弱弱しいイメージがあるね。ほら、ただでさえ姿が小さい私より悪魔の羽が小さいのはちょっとね。」
「あぅ・・・。」
落ち込んだ小悪魔を見て慌ててアドバイスする。
「だ、だからってダメだって言うわけじゃない。外見、つまり姿から入っていくっていうのもいいかもしれない。」
「姿・・・ですか。」
「うん。いや、口で言うよりは見たほうが早い。百聞は一見に如かず、だ。」
レミリアは自分の力を集中し始めた。そうすると、床がだんだん揺れ始めた。まるで小さな地震を起こしながら身体全体にに紅いオーラが漲ってくる。
「ちょ、レミィ待って!」
「ハァアアアアアアアア!!」
パチュリーの言葉は届かないままそのオーラを解き放ったかと思えば、いつの間にかレミリアの姿が変わっていた。美鈴並のスタイルに加え大きくなった悪魔の羽、長く伸びた爪、身体に纏った紅いオーラ、鋭い眼光はそのままに。カリスマ性大爆発のスタイルである。
「こんな感じでどうだろう。一つの参考にま・・・。」
「きゃああああああ!!」
何故か小悪魔に叫ばれてしまう。そんなに怖かっただろうか。そんな勘違いをパチュリーは指摘する。
「レミィ、自分自身をよく見てみなさい。」
何が変なんだろう。羽は大きくなったし、身体も大きくしたし、オーラまで纏ったし・・・身体が大きく?あ、もしかして。
やっとこ気がついたらしい。服が合わずに破けてスッパ状態なのだ。
「ごめん咲夜、着替えを取ってきて頂戴。」
「無理よ。咲夜を見てごらんなさい。」
パチュリーの見ると、横で体操座りになって《の》の字を指で書きながら、
「お嬢様が・・・私よりも・・・大きく・・・ぐすっ」
と咲夜がすすり泣く始末。いろんな意味で相当ショックなのだろう。
「分かった分かったよ。元に戻るから。」
「待ってレミ・・・。」
パチュリーの言葉を遮る様に変身を解除する。元の姿になったレミリアが咲夜の肩を叩く。
「ほら、元に戻ったから。早く着替えを持ってきて頂戴。」
「お、お嬢様・・・分かりまし・・・!?」
元に戻った主人の姿を見て従者さん、ジェット噴射する鼻血で図書館の中で見事に宙に舞った。こうなることを分かっていたパチュリーは頭を抱える。
「だから待ってって言ったのに・・・。」
「あ、いや・・・ごめん。」
頭を掻いて簡単に謝ると、空中から落ちてくる咲夜をキャッチ。お見事~。よく出来ました、よく出来ました。
「この子、ちょっと部屋まで連れて行くわ。」
「着替えてからにしてよ。」
「分かってる。」
図書館を出る前に、レミリアは小悪魔の方を向いて、
「分かったわね小悪魔。先ず貴女は姿から求めていくのよ。」
「は、はい・・・。」
レミリアのアドバイスを受け、戸惑いながらも返事はする。
(せ、成果出るのかな・・・私・・・。)
不安が更に2乗した小悪魔は外見をどうするか模索するため東奔西走した。
「全くレミィったら・・・本、私が取りに行かないといけなくなっちゃったじゃない・・・。」
ぶつくさ文句を言うパチュリーは、《どうやったら先を読める考え方が出来るのか。著作:上白沢慧音》を借りてレミリアに読ませることにした。そして自分は《誰かに言うことを聞かせる正しいcaved。著作:上白沢慧音》を借りて読むことにした。
* * *
あれから一週間経った。その朝に私は小悪魔に起こされた、気がした。
「おはようございます、パチュリー様。」
「あ、おはようこぁ。悪いわね、起こしてもら・・・!?」
おかしい。寝ぼけているのかしら。こぁがそこにはいないの。あるのはこぁの声と・・・悪魔?
「珍しいですね。昨日は遅くまで研究なさって・・・。」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
我ながら生涯これまでにない叫びをあげたと思う。怖い。恐い。何なのよこれは!
「ぱ、パチュリー様落ち着いてください!」
「落ち着けるわけないでしょ!誰よアンタ!一体誰な・・・うっ!けほっ、けほっ」
「ほら、喘息が!」
背中をさすってくれようとしたのだろう。でも兎に角怖くて恐くて私はその手を弾いた。
「触らないで!だ、誰よ!誰なのよ!」
「いや、小悪魔です!私です!小悪魔です!!」
「嘘よ!こぁがそんな恐ろしい姿なはずかあるもんですか!!」
「本当なんです!小悪魔なんですってば!」
その時、私の部屋に誰か駆けつけてくれたみたいだった。
「パチェ、どうし・・・!?」
「パチュリー様、大丈・・・!?」
レミィと咲夜ね。でもどうして声が途切れて・・・
「「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
ちょっとちょっと、あのお二人さんまで声上げちゃったわよ!?本当に現実!?夢よ!これは夢なのよ!!早く醒めて!!
「あ、おはようございます。」
「「誰だお前ええええええええええ!?」」
「だから小悪魔ですって!」
「「んなわけあるかぁああああああ!!」」
「本当なんです!信じてください!!」
そうは言っても信じ難いだろう。頭に馬鹿みたいに長い角を生やしてドクロのネックレスして腕にはデビルアームのサポーター、足にはチェーンが巻かれている、更に何故か胸のあたりにサラシが巻かれているデビル仁が小悪魔なわけがある!?ありえないわよ!!
でも、そのデビル仁は自分のことを小悪魔と言っている。怖いけど、確かめてみないと・・・。
「こ、こぁなら答えられる筈よ・・・。一週間前に持ってきた本を10冊挙げてみなさい・・・。」
「は、はい!えっと、《香魔料図鑑》、《火炎術応用魔本》、《簡易持久力増強術》、《黒薔薇育成法》、《地下水脈召還術》、
《電紅折榎》、《森螺板掌》、《封燐火残》、《泥棒を予防するための本》、《ロリコン抹殺エンジンロータリー》です。」
「・・・全て合っているわ。じゃあ、本当に小悪魔なの?」
「はい!私は、間違いなく貴女の司書、小悪魔です!!」
私もレミィも咲夜も唖然としながら、全身から力が抜けていくのを感じた。一安心して、みんな崩れていく。
「よかった・・・もう・・・。」
「咲夜・・・私、ちょっと動けそうにないかも・・・。」
「な、情けないですが、私もですわ・・・。」
「それにしてもなんで皆さんそんなに驚かれるんですか?私はいつものままですよ?」
「「「はい?」」」
小悪魔以外全員が一瞬某ドラマで特命係の丁寧な言葉遣いをするお堅い人になった。何を訳の分からないことを言っているのだろう。
「こぁ、貴女鏡を見ても分からないの?」
「え?私、何も変わってないですよ?」
「どういうことなの・・・。何かしてないの?」
「したにはしたんですよ。パチュリー様を驚かそうと思って姿をデビ仁にしようと思って変身をしたつもりだったんです。デビ仁ならちょっとだけで騒ぎにならないだろうと思って。でも失敗したんです。それでこのままパチュリー様を起こしに来て、それで・・・。」
「・・・ちょっと、その変身するために使った魔法を教えてくれる?」
「えっと、この魔法式を使ったんですけれど・・・。」
「どれどれ・・・。」
小悪魔にしては随分と複雑な式だった。それも、基本から応用の魔法をきちんと勉強していないと出来ない魔法式だったことに私は驚きつつも嬉しかった。小悪魔、必死だったものね。解読してみると、どうしてそうなったのかが分かった。
「ちょっと書き間違えているわね。その所為で擬態術から幻術に変化したみたい。そして、イメージしたものを更に強化したかったのね、誇大の式まである。これじゃあ上手く働かないわ。」
「こぁ~・・・。」
やっぱりダメか・・・、そんな思いが小悪魔の肩を落とさせる。
「でも、努力したことは認めるわ。こんな複雑な式、なかなか組めないものなのよ。もうちょっと勉強すればきちんとした擬態術が出来るわ。よく頑張ったわね。」
「え・・・?」
小悪魔が顔を上げる。レミィも咲夜も優しく拍手して、
「もうちょっとなんでしょ?頑張りなさいよ。」
「この精神を美鈴には見習ってもらいたいくらい。ちょっと爪の垢もらっていいかしら。」
と小悪魔を褒め称えた。
「う、嬉しいです・・・!私でも、こんな私でも認められるんですね・・・!!」
「当たり前よ。努力は決して裏切ったりしないわ。貴女は頑張ったんだから、もっと自分を誇りなさい。」
「う、うう・・・パチュリー様ぁ・・・。」
私はそっと小悪魔を抱き寄せた。この一週間を労う意味で、そして、その成果をしっかりと見せることが出来たことに、泣きじゃくる小悪魔の頭を優しく撫でた。
* * *
今日一日はこの幻術が解けないそうです。だから図書館から一歩たりとも出られなくなってしまいました。まぁいつもいるから特に問題はないんですが。私自身が変化を感じられないというのは、なんとも奇妙な感じがして仕方がありません。あれ、あそこにいるのはもしかして魔理沙さんでしょうか。あ!また本を盗んでる!今日こそきちんと注意しなきゃ!
「こら~!魔理沙さんまた盗んで~!!」
「違うぜ小悪魔!私は一生借り・・・」
何故か魔理沙さんがこちらを見た瞬間、凍りついたかのように身体が固まって顔が真っ青になってしまいました。どうして・・・って、そうでした。私は今とても凶悪なデビ仁でしたっけ。このまま捕まえましょう。
「えいっ!」
「のわっ!」
魔理沙さんの上に四つんばい状態になりました。ちょっとお灸を据えてみましょう。丁寧な言い方はきっと逆効果でしょう。ここはちょっと怖く・・・。
「貴様、今何をしていた・・・?」
「え、いや、本を借りに・・・。」
「じゃあそこにあるサンタさんが持っていそうな巨大な袋はなんだ・・・?何冊か入っているみたいだが・・・?」
「いや確かにこれは私の袋ですが決して盗んではいないんですよちょっと読んですぐ返すから黙って借りてもいいかなって思っちゃったり
しちゃったりしてそこらへんはご理解頂きたいと激しく思う今日この頃であります!!」
「そうか・・・分かった・・・。」
「よかった。それじゃあちょっとそこをどいてもらえるか?」
「やはり許せん・・・。覚悟しろ・・・!」
「ぴぎゃあああああああああ!!」
こぁ~・・・。何もしていないのに魔理沙さん気絶しちゃった。凄いなぁこの幻術。とりあえず袋と手元にある本を戻して魔理沙さんをパチュリー様の元まで
連れて行きますか。
・・・その様子を見ていたのでしょうか。魔理沙さんを連れてきたときにパチュリー様が、
「この魔法式、私が貰うわ。誰かが使ったらまずいからね。代わりにこの魔法式の途中までを書いたこれをあげる。」
と言ってその魔法式が書かれた紙を貰いました。魔理沙さん対策に使うのでしょうか。
とにかくこの魔法式を元に、立派な悪魔に変身できる術を頑張ってみたいと思います。後は悪魔らしさをひたすら勉強しながら、デビ仁を拳神にしなきゃ!
そんな電化製品の中で一際活用されたのがゲーム機というものだった。物にもよるが、電源とメモリにソフトと呼ばれるものをそのゲーム機にセットすることで遊ぶことが出来るのだ。これは、紅魔館のある人物に大変な影響を与えた。
「今はこれだけあれば十分。ありがとう小悪魔。休んでいいわ。」
「分かりました。では、休憩に入らせてもらいますね。」
動かない大図書館こと私、パチュリー・ノーレッジが許可を出すと、司書である小悪魔はこの図書館にある自分の部屋へと消えていった。
最近はこんな傾向が多い。いままでだったら、「既にパチュリー様が読んだ本があるならそれを読ませてください。」と私の傍にいつもいるはずなのに。電化製品が利用されるようになって随分と変わったようだ。そういえば、あの子携帯型ゲーム機に夢中になっているところを見たという話を咲夜が言っていた。無理もない。私もそのゲームに夢中になったことがあった。幻想郷にあるゲーム機並びにソフトは全て把握している。長時間ではないが、それで遊ぶことを毎日の楽しみにしているらしい。休憩時間をそっちに割いていると考えていいだろう。一体何をしているのやら。脳トレでもやっているのかしら。真面目なあの子なら、きっとそれをやっているに違いない。特に心配することもないだろう、と結論付けたその時だった。
「パチュリー様、私は未熟者ですか?」
突然小悪魔が現れて話しかけて来た。
「どうしたの、急に。」
「いえ、ちょっとそんな気がしたので・・・。」
「何があったの。言ってみなさい。」
「このゲームをしていたのですが・・・。」
小悪魔はPSPを取り出してパチュリーに見せた。どれどれ、脳トレなら確か脳年齢とかが表示されてたわよね。それがあまりに酷かったから未熟者とでも思ったのかしら。あれ、脳トレじゃ・・・ない?
「このキャラなんですけれど・・・。」
で、デビル仁じゃないの!じゃあこれって・・・ああ、やっぱり。TEKKEN DARKRESURRECTIONね。モロ格闘ゲームですね分かります。最初から全キャラが出ているから特定のキャラは隠しているようににとりが改造したのよ。それで最後の隠しキャラがこのデビ仁。随分とやり込んだ見たいね。デビ仁以外全員拳神になってる。いやそれ以前にどうしてこの娘はこの格ゲーに夢中なのよ。
「質問に質問で返すのはよくないことは分かっているけど質問させて頂戴。」
「はい。なんでしょうか。」
「先ずこれをどこで手に入れたの?」
「河城にとり様から頂きました。なんでも私に近い存在が最後にいますよって言われて・・・」
「恐らくこのデビ仁のことね。もしかして、デビ仁を見て自分が未熟者だって思ったの?」
「見ただけじゃありません。技が凄いんです。まるで悪魔のようで・・・。」
「いや悪魔だから。デビルだからね小悪魔。で、どの技がそれっぽかったの?」
「雷紅波、雷紅昇波、雷紅斬波、涅槃、涅槃送り、絶無です。」
(ぜ、全部ビーム技・・・。)
「他には?」
「デビルツイスター、ヘブンズドア、六道鬼丸、等活閃空、叫喚閃空ですかね。」
どうしてこうもマニアックな技ばっかり選んでくるのか。とりあえず聞くだけ聞くことにしたパチュリーは、
「そう・・・その技を見て、何で未熟者なんて思ったわけ?」
「私、小悪魔だけど一応は悪魔なんですから、少しは悪魔に近づきたいんです。私だってあんな風になりたいです!立派な悪魔になりたいんです!」
「立派な悪魔、ねぇ・・・。」
何か意味が違う気がする。ここは小悪魔が間違った道に走らないようにきちんと言い聞かせないと。そう決心した私は小悪魔を説得し始めた。
「こぁ、私は貴女には立派な悪魔になってほしいとは思っていたわ。でもね、別にこんな難しい技が使えるな悪魔にならなくてもいいと思うのよ。今は私の司書で、きちんと仕事も出来ているんだから。」
「そ、そうですか?でも・・・。」
「大丈夫、何も気にしなくていいのよ。もっと別の、貴女が思う立派な悪魔を目指したらいいんじゃないかしら。」
「わ、分かりました。じゃあ私、もっと立派な悪魔の像を考えて、それを目指します!」
どうやら分かってくれたみたい。理解ある司書でよかった。この世の中には盗むことを《一生借りるだけ》とかいうどっか頭のおかしい魔法使いもいるから。そうだ、いい機会だから。
「こぁ、折角目標が出来たから、少し休暇をあげる。」
「ふぇ?き、休暇ですか?」
「貴女はいつも私についていてくれる。少し休みも必要よ。少しその像を探してきてごらんなさい。」
「いいんですか?」
「いいって言っているんだから、ありがとうございますって言えばいいの。」
「は、はい!ありがとうございます!」
「じゃあ明日から一週間。しっかりね。」
「分かりました!」
張り切った様子で小悪魔は自分の部屋へ戻っていった。どうやらどうすればいいかは分かっているみたい。これなら安心ね。しばらく司書の代わりは、咲夜にまかせようかしら。さて、私もちょっとはそれらしいことをしてみましょうか。
* * *
「最近は小悪魔も部屋を出たり戻っていったりで忙しそうにしているわね。」
「そうですねぇ。私としては、早めに仕事に復帰してもらいたいものですが。負担が増えるばかりで少しばかりつらいんですよ?」
「実際そうでもないくせに。」
「意外と大真面目だったりしますわ。」
咲夜と冗談交じりに会話をしていても、それが見えないかのように小悪魔は本を漁って、勉強をしているらしい。やっぱりああやって真面目に取り組む姿を見ると、とても微笑ましい。そして気持ちがいい。
「よ、パチェ。どうなんだい、司書の方は?」
「あらら、本物が来たわね。いらっしゃい。」
「なによ、本物って。私は二つ名で悪魔の二文字はあるが、吸血鬼だからね。」
「はいはいそうでした。それで、用件は?」
「だから司書の方はどうなんだって。」
「分からないわよ。あの子の自由にやっているし、覗き見は趣味じゃないもの。」
「そうか。ならちょっくら見てくるか。」
レミリアは机に向かっている小悪魔に近づいてその様子を見てみた。机の上にはノートが10冊ほど重なっている。一つ手にとって見ると、1ページ1ページみっちりと文字やら構図やらで埋まっていた。
「・・・熱心じゃないか。」
「ひゃあ!れ、レミリアお嬢様じゃないですか。びっくりさせないで下さいよ~。」
「悪い悪い、嫌がらせをしに来たんじゃないんだ。どんなことをしているのかな~って気になったからさ。」
「え、あ、あの、今はまだこれといって進歩はないんですけど・・・。」
「ノートを見る限りでは、悪魔について調べているみたいだね。」
「は、はい。あ、お嬢様、折角なのでお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「ん?私の分かる範疇でなら答えてあげるよ。」
「ありがとうございます。では。お嬢様から見て私は立派な悪魔に見えますか?」
「・・・そうだねぇ、ちょっと弱弱しいイメージがあるね。ほら、ただでさえ姿が小さい私より悪魔の羽が小さいのはちょっとね。」
「あぅ・・・。」
落ち込んだ小悪魔を見て慌ててアドバイスする。
「だ、だからってダメだって言うわけじゃない。外見、つまり姿から入っていくっていうのもいいかもしれない。」
「姿・・・ですか。」
「うん。いや、口で言うよりは見たほうが早い。百聞は一見に如かず、だ。」
レミリアは自分の力を集中し始めた。そうすると、床がだんだん揺れ始めた。まるで小さな地震を起こしながら身体全体にに紅いオーラが漲ってくる。
「ちょ、レミィ待って!」
「ハァアアアアアアアア!!」
パチュリーの言葉は届かないままそのオーラを解き放ったかと思えば、いつの間にかレミリアの姿が変わっていた。美鈴並のスタイルに加え大きくなった悪魔の羽、長く伸びた爪、身体に纏った紅いオーラ、鋭い眼光はそのままに。カリスマ性大爆発のスタイルである。
「こんな感じでどうだろう。一つの参考にま・・・。」
「きゃああああああ!!」
何故か小悪魔に叫ばれてしまう。そんなに怖かっただろうか。そんな勘違いをパチュリーは指摘する。
「レミィ、自分自身をよく見てみなさい。」
何が変なんだろう。羽は大きくなったし、身体も大きくしたし、オーラまで纏ったし・・・身体が大きく?あ、もしかして。
やっとこ気がついたらしい。服が合わずに破けてスッパ状態なのだ。
「ごめん咲夜、着替えを取ってきて頂戴。」
「無理よ。咲夜を見てごらんなさい。」
パチュリーの見ると、横で体操座りになって《の》の字を指で書きながら、
「お嬢様が・・・私よりも・・・大きく・・・ぐすっ」
と咲夜がすすり泣く始末。いろんな意味で相当ショックなのだろう。
「分かった分かったよ。元に戻るから。」
「待ってレミ・・・。」
パチュリーの言葉を遮る様に変身を解除する。元の姿になったレミリアが咲夜の肩を叩く。
「ほら、元に戻ったから。早く着替えを持ってきて頂戴。」
「お、お嬢様・・・分かりまし・・・!?」
元に戻った主人の姿を見て従者さん、ジェット噴射する鼻血で図書館の中で見事に宙に舞った。こうなることを分かっていたパチュリーは頭を抱える。
「だから待ってって言ったのに・・・。」
「あ、いや・・・ごめん。」
頭を掻いて簡単に謝ると、空中から落ちてくる咲夜をキャッチ。お見事~。よく出来ました、よく出来ました。
「この子、ちょっと部屋まで連れて行くわ。」
「着替えてからにしてよ。」
「分かってる。」
図書館を出る前に、レミリアは小悪魔の方を向いて、
「分かったわね小悪魔。先ず貴女は姿から求めていくのよ。」
「は、はい・・・。」
レミリアのアドバイスを受け、戸惑いながらも返事はする。
(せ、成果出るのかな・・・私・・・。)
不安が更に2乗した小悪魔は外見をどうするか模索するため東奔西走した。
「全くレミィったら・・・本、私が取りに行かないといけなくなっちゃったじゃない・・・。」
ぶつくさ文句を言うパチュリーは、《どうやったら先を読める考え方が出来るのか。著作:上白沢慧音》を借りてレミリアに読ませることにした。そして自分は《誰かに言うことを聞かせる正しいcaved。著作:上白沢慧音》を借りて読むことにした。
* * *
あれから一週間経った。その朝に私は小悪魔に起こされた、気がした。
「おはようございます、パチュリー様。」
「あ、おはようこぁ。悪いわね、起こしてもら・・・!?」
おかしい。寝ぼけているのかしら。こぁがそこにはいないの。あるのはこぁの声と・・・悪魔?
「珍しいですね。昨日は遅くまで研究なさって・・・。」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
我ながら生涯これまでにない叫びをあげたと思う。怖い。恐い。何なのよこれは!
「ぱ、パチュリー様落ち着いてください!」
「落ち着けるわけないでしょ!誰よアンタ!一体誰な・・・うっ!けほっ、けほっ」
「ほら、喘息が!」
背中をさすってくれようとしたのだろう。でも兎に角怖くて恐くて私はその手を弾いた。
「触らないで!だ、誰よ!誰なのよ!」
「いや、小悪魔です!私です!小悪魔です!!」
「嘘よ!こぁがそんな恐ろしい姿なはずかあるもんですか!!」
「本当なんです!小悪魔なんですってば!」
その時、私の部屋に誰か駆けつけてくれたみたいだった。
「パチェ、どうし・・・!?」
「パチュリー様、大丈・・・!?」
レミィと咲夜ね。でもどうして声が途切れて・・・
「「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
ちょっとちょっと、あのお二人さんまで声上げちゃったわよ!?本当に現実!?夢よ!これは夢なのよ!!早く醒めて!!
「あ、おはようございます。」
「「誰だお前ええええええええええ!?」」
「だから小悪魔ですって!」
「「んなわけあるかぁああああああ!!」」
「本当なんです!信じてください!!」
そうは言っても信じ難いだろう。頭に馬鹿みたいに長い角を生やしてドクロのネックレスして腕にはデビルアームのサポーター、足にはチェーンが巻かれている、更に何故か胸のあたりにサラシが巻かれているデビル仁が小悪魔なわけがある!?ありえないわよ!!
でも、そのデビル仁は自分のことを小悪魔と言っている。怖いけど、確かめてみないと・・・。
「こ、こぁなら答えられる筈よ・・・。一週間前に持ってきた本を10冊挙げてみなさい・・・。」
「は、はい!えっと、《香魔料図鑑》、《火炎術応用魔本》、《簡易持久力増強術》、《黒薔薇育成法》、《地下水脈召還術》、
《電紅折榎》、《森螺板掌》、《封燐火残》、《泥棒を予防するための本》、《ロリコン抹殺エンジンロータリー》です。」
「・・・全て合っているわ。じゃあ、本当に小悪魔なの?」
「はい!私は、間違いなく貴女の司書、小悪魔です!!」
私もレミィも咲夜も唖然としながら、全身から力が抜けていくのを感じた。一安心して、みんな崩れていく。
「よかった・・・もう・・・。」
「咲夜・・・私、ちょっと動けそうにないかも・・・。」
「な、情けないですが、私もですわ・・・。」
「それにしてもなんで皆さんそんなに驚かれるんですか?私はいつものままですよ?」
「「「はい?」」」
小悪魔以外全員が一瞬某ドラマで特命係の丁寧な言葉遣いをするお堅い人になった。何を訳の分からないことを言っているのだろう。
「こぁ、貴女鏡を見ても分からないの?」
「え?私、何も変わってないですよ?」
「どういうことなの・・・。何かしてないの?」
「したにはしたんですよ。パチュリー様を驚かそうと思って姿をデビ仁にしようと思って変身をしたつもりだったんです。デビ仁ならちょっとだけで騒ぎにならないだろうと思って。でも失敗したんです。それでこのままパチュリー様を起こしに来て、それで・・・。」
「・・・ちょっと、その変身するために使った魔法を教えてくれる?」
「えっと、この魔法式を使ったんですけれど・・・。」
「どれどれ・・・。」
小悪魔にしては随分と複雑な式だった。それも、基本から応用の魔法をきちんと勉強していないと出来ない魔法式だったことに私は驚きつつも嬉しかった。小悪魔、必死だったものね。解読してみると、どうしてそうなったのかが分かった。
「ちょっと書き間違えているわね。その所為で擬態術から幻術に変化したみたい。そして、イメージしたものを更に強化したかったのね、誇大の式まである。これじゃあ上手く働かないわ。」
「こぁ~・・・。」
やっぱりダメか・・・、そんな思いが小悪魔の肩を落とさせる。
「でも、努力したことは認めるわ。こんな複雑な式、なかなか組めないものなのよ。もうちょっと勉強すればきちんとした擬態術が出来るわ。よく頑張ったわね。」
「え・・・?」
小悪魔が顔を上げる。レミィも咲夜も優しく拍手して、
「もうちょっとなんでしょ?頑張りなさいよ。」
「この精神を美鈴には見習ってもらいたいくらい。ちょっと爪の垢もらっていいかしら。」
と小悪魔を褒め称えた。
「う、嬉しいです・・・!私でも、こんな私でも認められるんですね・・・!!」
「当たり前よ。努力は決して裏切ったりしないわ。貴女は頑張ったんだから、もっと自分を誇りなさい。」
「う、うう・・・パチュリー様ぁ・・・。」
私はそっと小悪魔を抱き寄せた。この一週間を労う意味で、そして、その成果をしっかりと見せることが出来たことに、泣きじゃくる小悪魔の頭を優しく撫でた。
* * *
今日一日はこの幻術が解けないそうです。だから図書館から一歩たりとも出られなくなってしまいました。まぁいつもいるから特に問題はないんですが。私自身が変化を感じられないというのは、なんとも奇妙な感じがして仕方がありません。あれ、あそこにいるのはもしかして魔理沙さんでしょうか。あ!また本を盗んでる!今日こそきちんと注意しなきゃ!
「こら~!魔理沙さんまた盗んで~!!」
「違うぜ小悪魔!私は一生借り・・・」
何故か魔理沙さんがこちらを見た瞬間、凍りついたかのように身体が固まって顔が真っ青になってしまいました。どうして・・・って、そうでした。私は今とても凶悪なデビ仁でしたっけ。このまま捕まえましょう。
「えいっ!」
「のわっ!」
魔理沙さんの上に四つんばい状態になりました。ちょっとお灸を据えてみましょう。丁寧な言い方はきっと逆効果でしょう。ここはちょっと怖く・・・。
「貴様、今何をしていた・・・?」
「え、いや、本を借りに・・・。」
「じゃあそこにあるサンタさんが持っていそうな巨大な袋はなんだ・・・?何冊か入っているみたいだが・・・?」
「いや確かにこれは私の袋ですが決して盗んではいないんですよちょっと読んですぐ返すから黙って借りてもいいかなって思っちゃったり
しちゃったりしてそこらへんはご理解頂きたいと激しく思う今日この頃であります!!」
「そうか・・・分かった・・・。」
「よかった。それじゃあちょっとそこをどいてもらえるか?」
「やはり許せん・・・。覚悟しろ・・・!」
「ぴぎゃあああああああああ!!」
こぁ~・・・。何もしていないのに魔理沙さん気絶しちゃった。凄いなぁこの幻術。とりあえず袋と手元にある本を戻して魔理沙さんをパチュリー様の元まで
連れて行きますか。
・・・その様子を見ていたのでしょうか。魔理沙さんを連れてきたときにパチュリー様が、
「この魔法式、私が貰うわ。誰かが使ったらまずいからね。代わりにこの魔法式の途中までを書いたこれをあげる。」
と言ってその魔法式が書かれた紙を貰いました。魔理沙さん対策に使うのでしょうか。
とにかくこの魔法式を元に、立派な悪魔に変身できる術を頑張ってみたいと思います。後は悪魔らしさをひたすら勉強しながら、デビ仁を拳神にしなきゃ!
本題に入るまでに文章も設定も無駄か多すぎる。