Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

妖夢サンタ警報

2008/12/23 20:45:30
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「ベリー苦しみます。」

コタツに足を突っ込みながら出涸らしの薄いお茶をすすっていると、

バキバキと障子が勢いよく蹴破られ、真っ赤な怪人が現れた。

「えっと、なにしてらっしゃるんですか、妖夢さん?」

言語処理を放棄して一斉にストライキを起こした脳みそが、

勝手に敬語をくっつけて言葉を吐き出した。

見ているほうが恥ずかしいくらい、露出の激しい赤い服を着込んだ魂魄 妖夢の後ろ、

神社の境内は、しんしんと雪が降り積もり、

切なさと感傷を感じさせる風景が広がっている。

目の前の真っ赤な怪人のせいで全て台無しだった。

「そういうわけで、『ぷれぜんと』だ。喰らえ。」

シュゴッ、という旋風音。

丁寧に包装された四角い箱が、イチロービームも真っ青の勢いで、

ゼロコンマ前まで私の眉間があった空間を通過する。

レースのリボンが可愛い四角い箱は、私の後ろの襖に中ほどまで体をめり込ませた。

直撃したらば、コタツの台は私のばら撒いたPアイテムで溢れかえっていたであろう。

「これはなんの真似? 説明しなさい。そして弁償しなさい。」

私の問いかけに妖夢は、なんだお前知らないのか、と小馬鹿にしたような視線で返した。

嗚呼、こんなにも誰かを殴りたい気持ちになったのは初めてです。

「今日は『苦しみます』の日だろう。」

そんな日があるとは、初耳だった。

クリスマスを勘違いしているのではないかと一瞬思ったが、

あまりにもクリスマスのイメージとかけ離れた妖夢の奇行に、その考えは否定する。

クリスマスはそんな、血で血を洗う闘争の名称ではなかったはずだ。

きっと私が無知なだけだろう。

「『苦しみます』ってなにかしら? 説明してくれる? そして弁償してくれる?」

やれやれ仕方がないな、と妖夢は肩をすくめた。

そして懇切丁寧に『苦しみます』についての説明を始めた。

「『苦しみます』とは毎年12月25日に行われる競技の名称だ。

 『三田 九朗's』という神出鬼没の赤い怪人に扮し、

 『ベリー苦しみます』の掛け声と共に、

 『ぷれぜんと』と呼ばれる包装された箱を叩きつけあう。

 より多くの参加者を戦闘不能にしたものが『苦しみます』の勝者となる。

 競技に参加するには、枕元に靴下をぶら下げればいい。簡単だろう?

 その競技の性質上、参加者は煙突などの警戒されにくい場所から家屋内に侵入し、

 力の弱い子供を狙うのが定石とされる。

 だが幼い子供を狙うのは武士道に反するからな。お前から狙わせてもらった。」

うわぁ、すごくクリスマスに似ている競技だなぁ。

まるで誰かが、何も知らない妖夢に捻じ曲がったクリスマスを吹き込んだみたい。

「で、それ誰から聞いたの?」

「幽々子様からだが? しかし幽々子様は博識だな。私は今日まで知らなかった。」

「幽々子は博識ね。私もそんなものは知らなかったわ。」

私は精一杯の皮肉を込めてそう言った。

ふふんそうだろう、と『三田 九朗's』スタイルの妖夢は自慢げに絶壁を逸らす。

ええい、皮肉も通じない!!

「ところで、妖夢は『クリスマス』ってご存知かしら?」

「・・・なんだそれは? 『苦しみます』に似ているな。」

ああそりゃあそうだろうよ!!

「説明してあげるわ。その代わり弁償して。」

「聞こう。」

こくり、と妖夢は頷く。

本当にちゃんと弁償してくれるんだろうな?

「『クリスマス』っていうのは毎年12月25日に行われるイベントの名前なの。

 『サンタクロース』っていう赤い服を来たおじいさんが、

 『メリークリスマス』っていう祝いの言葉とともに、

 『プレゼント』を町中の家に配って回るのね。

 枕元に靴下をぶら下げておくと、サンタクロースは家の煙突から入ってきて、

 誰も気付かないうちに、そっと靴下にプレゼントを入れて行くの。

 夢と希望に溢れた子供のもとにしか訪れないと言われているわね。

 わかった? 流血とかないから。そこ重要。」

妖夢は驚いて目をぱちくりさせている。

ご理解いただけただろうか。

「そっくりだな。まるで『苦しみます』を元にして作られたイベントみたいだ。」

「逆だよ逆!! 幽々子に騙されてんのッ!!」

思わずコタツの台を叩いてしまう。

ああ、お茶が零れた。これも新品の玉露缶で弁償させよう。

出涸らしだろって? お黙り。

「なん・・・だと・・・?」

妖夢は衝撃によろめいた。

わなわなと、震える己の両手に視線を落とす。

「幽々子様が私を騙すなんて・・・。

 そんな、そんなことがあるはずが・・・。」

その姿勢のまま、妖夢は思考をめぐらせるように硬直し、

「・・・あるな。おおいにありうる。」

けろっと復活して頷いた。

心当たりが山ほどあるらしい。

何度も幽々子に騙されていながらも、しかし疑いもせずに幽々子の言葉を信じてしまう。

今時珍しいほどのピュアなハートの持ち主だ。

だがそんなピュアハートはドブに捨てろ。

「じゃあ、ひょっとしてその、

 危ない趣味のお兄さんが見たら前傾姿勢で息荒くしちゃうような過激な格好も?」

「ああ、これは幽々子様に教えていただいた『三田 九朗's』の変装だ。

 『さんたくろうす』も似たような格好なんだろう?」

「サンタクロースは爺さんだっつってんだろ!!

 そんな格好した爺さんが煙突から入ってきたら、地球上から夢と希望が絶滅するわッ!!」

肩剥き出し、へそ剥き出し、腿剥き出し。(脇剥き出しはごく普通なのでノータッチ。)

どう考えたって幽々子の趣味だ。

何も知らない従者にこんな格好させるなんて。

ちくしょう幽々子め、いい趣味してやがる。今度一緒に飲み明かそう。

「じゃあ、なにもかも幽々子様のでっち上げだったと!?」

「そうね。服装の色以外はおおむね幽々子の作り話ね。それがわかったら弁償しろ。」

「おのれ、幽々子様め。一週間は団子の串を拝めないと知れ!!」

怒りに燃えた妖夢は、白玉楼中の団子を処分せんと身を乗り出す。

その妖夢に、私は問いかける。

「あ~、ところで妖夢。」

「ん、なんだ?」

怪訝な顔で振り返る妖夢。

私は背後の、襖にめり込んだ可愛い包装の箱を指さして、

「このプレゼント、貰ってもいいのかしら?」

「なんだ、そんなものが欲しいのか? 変わった奴だな。」

好きにすればいい、と妖夢は言い残して、風通しの良くなった縁側を出て行った。

私は襖にめり込んだプレゼントの箱を取り出す。

箱はずしりと重い。

期待を胸にそわそわしながら、私はレースのリボンを引っ張る。

ちょうちょ結びははらりと解けて、四角い木箱が姿を現した。

年甲斐もなく、頬が熱くなるのを感じる。

はやる気持ちを抑えながら、ぱかり、と蓋の上部を持ち上げると、





中には箱を限界まで重くするための鋼鉄の塊が入っていた。





 
プチ2発目。
つい突発的にやった。
皆様、妖夢サンタの襲撃にご注意くださいませ。
クリスマスには戸締りを『せずに』、お休みください。
なぜって?
鍵なんかかけてたらブチ破られますよ? もちろん弁償はしてくれません。
暇人KZ
http://www.geocities.jp/kz_yamakazu/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
やべぇ、爆弾でボカンというオチだと思ったら鋼鉄の塊www
2.名前が無い程度の能力削除
まじストイックwww
3.名前が無い程度の能力削除
ずしりと重いってレベルじゃねえぞ!
4.名前が無い程度の能力削除
>ちくしょう幽々子め、いい趣味してやがる。今度一緒に飲み明かそう
俺も混ぜてくれ。

霊夢、その鉄は金物屋に売るといいと思うよ。
5.名前を表示しない程度の能力削除
イチロービーム以上の速度で鋼鉄の塊なんて食らったら無事じゃ済まねえwww
6.名前が無い程度の能力削除
可愛い妖夢サンタが最高のプレゼント
7.名前が無い程度の能力削除
最後で腹筋がwwww
8.名前が無い程度の能力削除
これうぁwwww
9.名前が無い程度の能力削除
イチロービームよりも速い鋼鉄の塊なんか喰らったら残機いくらあっても一瞬で全部持ってかれる気がするwwww