※10月31日(作品集33)の設定を少しだけ引き継いでいますが、単品でも問題なく読ます。
※いつも通りです。
リビングに魔女が座っていた。
アリスはとりあえず、人形を頭に投げつけた。
「むきゅう!!」
魔女はアリスのほうを振り返る。
「なにすんのよ!」
「こっちの台詞よ」
アリスはとても冷たい視線で言い返す。
それもそのはず。なぜならこの場所にいるはずのない人物がリビングに座っており、あまつさえ紅茶を飲み、菓子袋を開けた跡まであったのだから。
図々しいにも程がある。
追い返そう。アリスは決意した。
「痛い苦しいむきゅう!」
アリスはパチュリーの後ろに回り、首根っこを掴み、ズルズルと玄関まで連れて行く。
「ひどい、ひどいわアリス」
「泣きまねはいい加減飽きた」
「待って、今日は貴方に用があって」
「用?」
用ってなんだ。この間のハロウィンみたいなことなら願い下げだ。
「メリークリスマス!!」
パアン。
クラッカーの音が部屋の中に響き渡った。
クラッカーの中にある火薬やら装飾やらが、アリスの顔に直撃した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「で?」
「これがやりたかっただけ」
アリスは再び、パチュリーの首根っこをつかむ。
「待って待って待って!」
「待ったはなしよ」
「悪かった、悪かったわよこの間のハロウィンの事は!」
「全くね。あのあと本当に酷かったんだから」
「え!?ひどいってまさか」
「言わなくていい」
「(そこまでよ!)な(そこまでよ!)で(そこまでよ!)的な(そこまでよ!)みたいなことをされちゃったの!?」
「言わんでいいと言っているだろうが!」
「もしかしてさらに囲まれて(そこまでよ!)で(そこまでよ!)な(そこまでよ!)」
「いい加減にしないと本当に首絞めるわよ」
「図星ね、図星なのね!?本当に(そこまでよ!)を」
「違うわよ!」
「はっもしかして(そこまでよ!)を私に対して仕掛ける為にここに!?」
「お前が来たんだろうが!しかもお茶まで飲んで!お菓子まで開けて!他人の家の冷蔵庫を開けちゃいけないって教わらなかったの!?」
「うん」
よし、追い出そう。
「待って待って待って!」
「知るか」
「本当に用事があって!」
「問答無用」
「ひどくない?アリス」
「お前の言動の方がひどいわ」
「興奮した?」
「・・・・・・・」
とりあえず、首を絞めておきました。
「むきゅう」
「あら、本当に伸びちゃったみたい」
パチュリーはぐったりしていた。顔色が非常に悪いが、アリスは気にも留めなかった。
「こいつはとりあえず玄関において置いて・・・・・・やめとくか。本当に風邪ひくだろうし。でも紅魔館まで返すには寒い中飛んで行かなきゃいけないわね。こいつ持って」
あれ?
とするとコイツが目覚めるまで結局家に置いておくってこと?
「・・・・・・」
アリスは深いことを考えるのをやめた。とりあえずここは邪魔なので、リビングあたりに置いておくことにした。
「ふう。一仕事が済んだし、人形作りでも再開するか」
「シャンハーイ」
くるりと工房に向かおうとしたその時、アリスに声がかかる。
上海人形だ。
「どうしたの?上海」
「シャンハーイ」
上海人形はなにやら手紙のようなものを持っている。
「なにこれ」
「シャンハーイ」
手紙を受け取る。表紙にはメリークリスマスと書いてある。裏には、dear Aliceと書かれていた。
「私宛?誰が」
とそこで気が付いた。この筆跡、どこかで見覚えがある。
『ごちそうさま』
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
いやいやだってないだろ!
なんでこいつが!なんでこいつが私にこんなカードを!?
ありえない、ありえないから。
「上海、これどこで」
「シャンハーイ」
上海人形はパチュリーの服を掴む。
アリスはにわかに信じられなかったが、上海が言うのなら間違いはないだろう。
考えろ、考えるんだアリス。
まだ中に何が書いてあるかはわからない。
それに今コイツが完璧に気絶しているという保障はない。もしかしたら私の行動を薄目で見ていて、心の底で笑っているに違いない。いや、絶対そうだ。そうに決まっている。
開ける以前にこれはコイツのものだ。人のものを勝手に盗るなんてどこかの白黒と同じである。ここは懐に返しておくべきなのだろう。
別に内容が気になっている訳ではない。決して無い。
「シャンハーイ?」
「とりあえず、戻しておきなさい」
アリスは上海人形に手紙を渡す。上海はそーっと手紙をパチュリーの懐にしまおうとする。
「むきゅう!」
最悪のタイミングで奴が起きた。
「ああ、くすぐったかった」
くすぐったくてもむきゅうという鳴き声なのかお前は。もっと他にないのか。
それはいいとして、問題はこの状況である。上海人形は例の手紙を持っている。
「あらそれ」
運悪く気付かれてしまった。
「シャンハーイ」
「・・・・・・」
気まずい。
非常に気まずいのですがこの状況。
何が気まずいかって、一度視線を手紙に落としてから、再び無表情で私の方を見ている事である。
言っておくが、私はなにもしていない。上海がたまたま落ちていたものを拾っただけだ。
「見た?」
「見てないわ」
「あらそう」
パチュリーは何事もなかったかのように手紙を懐にしまう。ちょっとホッとした。
「見た?」
「みみみみ見てないわよ!」
かと思いきや不意打ちを食らった。どもってしまった。情けない。
「えっち」
パチュリーは顔を赤らめる。
とっても乙女な仕草である。
「見てないって言っているでしょ!」
「嘘ね。だって全部見てたし。アリスったらいけない子ね」
「嘘っ」
「嘘だけど」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「やっぱりアリスったらいけない子ね」
その言い方はやめてもらいたい。百合の園とかそんなノリを連想してしまう。
「はしたないわよ、アリス」
アリスはとりあえず蹴っておいた。色々と誤魔化すためでもある。
「むきゅう!」
パチュリーは再び腹を抱えている。
「いいからそこでおとなしくしていなさい」
「ひどいわ。動けないようにして後で色々な部位を煽るつもりなのね」
パチュリーは何かを言っているが、アリスは聞いていない振りをした。真に受けたら最後である。
「それでさ」
とりあえず、話題を変えることにする。
「なによ。うう・・・・・・」
「あんたいつ帰るの」
「この寒い中帰れって言うの?」
「・・・・・・」
パチュリーは涙目でこちらを見上げる。
問答無用で追い返そうとしたアリスの心がちょっとだけ揺らぐ。
考えろ、考えるんだ。こいつが今ここで居座りでもしたら、自分の脳内の血管がもたない。ここは追い返すべきだ。いくら外が寒いとはいえ、こいつが病弱そうにみえなくても病気を持っているとはいえ、私には関係のないことだ。
「勝手にすれば」
だけど次に出た言葉は頭で考えていることとはまったく逆方向の言葉だった。甘すぎるなんてことは、頭ではちゃんとわかっている。これで今年通算16回目のお泊りを許したことになる。ああ、情けない。
「じゃあするわね」
少し沈みかけているアリスの脇で、パチュリーは椅子から立ち上がる。一体何をする気だと思ったら、最短距離で冷蔵庫の側へ行き、冷蔵庫を開け、中にあった牛乳パックをパックごと口につけて飲み始めた。
「やっぱりアリスの家の冷蔵庫は最高ねむきゅっ!?」
アリスは飲み終わったのを見計らって、すぐさま奴の息の根を止めた。
「なにすんのよ!」
「こっちの台詞だわ!」
前言撤回。止まってなかった。実に残念である。
「やっぱり追い出す。決めた」
「ちょ、ちょっと落ち着いてアリス。野外プレイだなんてそんな」
「ちげーよ!」
アリスはパチュリーにつかみかかる。パチュリーはおたおたしている。
「いい?人の家に来たからにはルールってモンがあるのよ。わかる?それを守れない悪い子にはね」
「おしおきという名のプレイを私に強要するつもりね!やっぱりアリスってば」
「いい加減にしないと本当に放り投げるわよ」
アリスはドスの効いた声でパチュリーを圧倒する。さすがのパチュリーもコレには堪えたようだ。
「ごめんなさい」
泣きそうな声で謝られる。ちょっと心が揺らぐアリスだったが、なんとかクールな表情を保った。
「わかればいいのよ、わかれば」
「ごめん」
パチュリーはその場にひざを抱えて座り込む。とっても落ち込んでいるみたいだった。
「・・・・・・」
「い、今から夕飯作るから」
「・・・・・・」
「そんなに縮こまらないでよ。やりにくいでしょ」
「・・・・・・」
「お腹がすいたならそう言えってことを言いたかったのよ。別に悪気があった訳じゃ」
アリスは次第にしどろもどろになる。
こういう場面には本当に弱いアリスだった。
「別に、お腹が空いていたわけじゃない」
「え?じゃあ喉が渇いていたとか?」
パチュリーは首を横に振る。
「牛乳飲みたかったの?」
パチュリーは再び首を横に振る。
「じゃあ、一体」
「冷蔵庫漁りたかったの」
アリスの脳内の血管が、一本切れた。
「追い出す」
「じょ、冗談よアリス!」
「ぜってー追い出す!」
「やめて、やめてよ、こんな寒い中」
「知るか。魔法あんだろ」
「私はマッチ売りの少女じゃないもの!」
「知りません。全ては自己責任です」
「待って待って!本当にこの寒い中は無理!雪だって降っているし」
「ちょうどいいわね」
「もうやらないからあんなこと!」
「信用ならん」
「本当!絶対!」
「そう言って今まで守ってきたことあったかしら」
「う、お、お願いよアリス、お願いだから!本貸すから!」
「・・・・・・」
この後、以上のような攻防が18時間程度行われた。
魔女の家は、聖なる夜も平和だった。
おわり
なんだかんだでお泊まりを許しちゃうアリスは実はMかな
実にいいテンポ!
これは……私もパチュアリを書くしかない! え、はい、ウザい? すみません駄文なんて書きませんから許して下さい。
パッチュさんは回を重ねる毎にどんどこ潜在的なMになって行ってる気がしてとても嬉しいですです。
次回作以降はあの三人娘が期待以上に引っ掻き回す展開が待ち受けているのですね、分かります。
アリスも良い感じにSに開発されてきましたね(違
このままいけばパッチュさんの思い描く(そこまでよ!)や(そこまでよ)が現実となる日も近いのでh(魔符「アーティフルサクリファイス」)
アリスも否定しないということは…あの三名から(そこまでよ!
耐えられなくなったら(そこまでよ!)で(そこまでよ!)的な展開が繰り広げられr(そこまでよ!
やはりからかわれるアリスは好いなぁ……。
>1 ツンドラです。ぜってえ書かねえとか思いつつもついこの二人を書いてしまう作者もツンドラです。
>2 よっしゃ!いいこと聞いた!いいこと聞いた!いつまででも待っています!
>3 そうなんです。どーも私が書くとアリパチェ寄りになるということにやっと最近気が付きました(絶対色々まちがっとる)
>4 最近アリスがSで困ります
>5 そ こ ま で よ !
>6 ただし先輩は奥手なのでなかなか次のステップに踏み込めないという事実。むきゅー
パチェ好きの私に対してこれはもうSA☆TSU☆GA☆Iを狙っているとしか思えない。
一挙一動の効果音、英語で言うところのSE?が「むきゅー」関係だったり、
どっかでは確かリリカだっけ、「あきらめな!」とか看板持ってそうな自主規制のせりふが
「そこまでよ!」だったり!しかも連発!
アリスがんばれ、そしてあんまりパチェをいじめな・・・
(一時間逡巡)
ほどほどに。