「私にとっての妖夢は1×1のようなものなのよ」
「どういう意味ですか?」
「そうねぇ、妖夢は少し頭を柔らかくする為にも自分で考えてみなさい。夜になったら教えてあげる」
「はぁ……」
「あ、答えが分かるまで今日は仕事お休みしなさい」
「え、それは……」
「いいから! 分かるまで禁止!」
「……分かりました」
朝に言われた言葉が頭の中で反復する。
幽々子様の言うことはいまいち理解できない。
おそらくは、1×1と私の共通点を見出せというなぞかけ的なことだろうが、頭の堅い私には全く分からない。
1×1、かけても意味が無いもの。やりがいのない数式。私は存在が意味無いのだろうか。
仕事も禁止されているため、自分の部屋で悩み中。
既に時刻は夕刻を示していた。
朝から多いに悩んでいる私。せめてヒントくらい欲しかったかも。
「珍しいわね妖夢」
「うわっ! 紫様ですか」
隙間から突然現れた紫様。何度か見たからか、昔よりかは驚かなくなっていた
。
「どうしたのですか? 幽々子様なら自室にいらっしゃるかと思いますが」
「今日の用は幽々子じゃなくて、妖夢」
「わ、私ですか?」
「そ、妖夢が悩んでる様子があまりにも滑稽で……じゃなかった、珍しくてね。気になったのよ」
今滑稽って言いましたよね。それにいつから覗いていたのか激しく気になったが、あえて訊かない。だって私、女の子だもん。
「で、一体何を悩んでいたの?」
「それは――」
頭も良く、幽々子様と長い付き合いの紫様なら理解できるかもしれない。そう思い、朝の出来事を話してみた。
「ふぅん……幽々子も素直じゃないわね」
「分かったのですか?」
「もちろんよ。親友だもの、ね」
「では――」
「教えてあげない」
「まだ何も言ってません」
意地悪な笑みを浮かべている紫様。
「どちらにしろ夜に教えてくれるのでしょう?」
「それはそうですが……」
「なら良いじゃない」
でもこれでは何のために相談したのか分からない。
「私は帰るわ。そうね、一つだけ言うならば」
紫様が隙間に入る直前、こちらを振り向き
「あなたは幽々子に大切にされてるわよ」
そう言って、小さな笑みを浮かべ、紫様は帰って行かれた。
結局、私には紫様が言った意味も幽々子様のことも分からないまま夜になった。
「すみません幽々子様。私には分かりませんでした」
「ええ、妖夢には無理かなぁって予想してたわ」
それはそれで切ない。期待して欲しかったです。みょん。
「妖夢、来なさい」
「はい」
幽々子様の側に歩み寄る。すると突然――
「ひゃっ!?」
抱き締められた。幽々子様の息が耳にあたりくすぐったい。
「私にとって妖夢はね、かけがえのないもの」
「え?」
「それが答えよ」
幽々子様は私の頬に触れ、真正面から向き直り、言った。
自分の頬が赤く染まるのが分かる。
そして嬉しかった。半人前の、未熟な私をこんなにも大切に思ってくれている。
正直少し不安だった。
今までの私が幽々子様に何をできたか。私は必要無いんじゃないか、と悩んでた日もあった。
でも今の言葉で、紫様の言っていたことも理解できて、ただそれだけで、胸がいっぱいになった。満たされていた。
「私が言いたかったことはそれだけよ。だから無理しないでね妖夢」
「ありがとうございます……本当に、嬉しいです」
無理しないで、と言われて私は気付く。
多分最近疲れ気味だった私を見抜いて、強制的に今日休ませたのだろう。
あぁ、本当に私は幸せな従者だ。
貴女に仕えることを誇りに思います。
「妖夢、いつもありがとう。これからもよろしく頼むわね」
「はいっ!」
―後日―
「幽々子にしては微妙な完成度のなぞかけだったわね」
「あら、紫」
「幽々子ならもっと上手いのを作れたでしょう?」
「なら、完璧なのを一つ。紫の性格とかけまして、妖夢の胸と解く」
「その心は?」
「つかみどころがない」
「流石ねぇ、幽々子」
ってことかな。
流石に読めませんでした^^
はい。正解ですw
そう言ってもらえると嬉しいです。
読んで下さりありがとうございます。
その言葉をバネに今後頑張れます!ありがとうございます!
>>4様
納得して下さり有り難いです。本当に読んで下さり嬉しいです。
有り難いお言葉!
>>7様
ちょwその発想は無かったです
なるほど、そして酷いw