前書き的な何か。
・前回の話(作品集31『雨音をBGMに。』の後日談的なものになりますが、コレ単体でも読めるかと思います。
・百合濃度UP?気持ち的にはPG12。でもぬるいです。
・デレデ霊夢
以上、無理だと思った方は戻るボタンでも閉じるボタンでも押して逃げて!
それでは。
空は気まぐれに泣き笑う。
「洋食も中々・・・だけどやっぱ和食よね」
「完食した人間がなに文句言ってるのよ」
なんだかんだで夕食もごちそうになってしまった。
「いやいや、美味しかったわよ。本当よ?」
夕飯の少し――いや結構前から私、博麗霊夢はアリス・マーガトロイドと共に過ごしている。
雨の音を遠くに聴きながら彼女と久しぶりのお茶会を楽しんだ。
その最中、不意に机を照らした熱い日差し。厚く空を覆っていた雲は山の方へと向かっているようだ。
日差しの中、上海人形は嬉しそうに小躍りをし、アリスは嬉しそうにため息をついていた。
『やっと外に出れるわね』
少しだけ、勿体無いと思ってしまった。
『私、買い物にいきたいんだけど……どうする?』
『今?』
彼女は困ったように笑う。
『まだ備蓄はあるけど、やっぱり少し物足りないの』
だから今の内に、と彼女は人形たちを用意し始める。
『霊夢は、どうする?』
これは多分帰るか帰らないか聞いているのだろう。
私は――私は――
『結構買ったわね……』
『まぁ、ね……それより付き合ってくれてありがとう』
『いいのよ、お礼もしたかったしついでだし』
結局、彼女の買い物に付き合うことにした。
『二人とも、もてる?』
『シャン……ハー……イ』
『ホラーイ!!!』
蓬莱は余裕そうにもってフワフワ周りを飛んでいる。逆に上海は少し、いやかなり厳しそうだ。蓬莱がせっせと上海の持つ籠から荷物を取り出して自分の籠へと放り込んでいく。
アリスも買いすぎたと思っているのか、自分でも籠を持っていた。
『……うん。ついでだから荷物も一緒に持っていくわよ』
『え?いいわよ。人形たちもいるし――』
『だからついで、って言ってるでしょう。もしかしたら魔理沙も戻ってるかもしれないし、何より人形たちがかわいそうだわ』
そういえば今日は、本当は魔理沙に用事があったのを思い出した。結局は彼女とは会えなかったのだけど。
結局、嬉しそうに飛び回る人形たちを見て、彼女は小さくため息をついてから「お願いするわ」と声を出した。
人形たちを味方に付け、再び魔法の森の彼女の家へと訪れる。途中に寄った魔理沙の家にはやはり主はいなくて、そのまま荷物を持ってまたアリスの家へとお邪魔させてもらった。
そして今に至る。
「まぁたまにはこういう日があってもいいでしょう?」
「押し掛けられる方はたまったものじゃないわ」
「……いつも押しかけられてるのは私の方、今のアリスと同じ気持ちよ」
「あら?霊夢はこんなにも迷惑してたのかしら?」
「…………そんなに?」
うまい切り返しが出来ず言葉に詰まると小さく笑って冗談だという。
アリスは時々意地悪だ。
「あら?」
再び始まったお茶会の最中、アリスが何かに気付いて窓の外を見る。
「また降ってきたわね……」
「げっ」
一度晴れたから油断してしまった。しかも結構本降りになってきている。
「あー……少し雨宿りしていっても?」
「この雨の中放り出すわけにもいかないでしょ」
アリスは席を立つとまたお茶を出してくれた。
「ま、やむまではゆっくりしていきなさい」
彼女は優しい。極当たり前に、誰にでも同じように接してくれる。それが嬉しい反面、少し寂しかった。
「やまないわね」
「全くだわ。帰れないじゃない」
「誰か雨乞いでもしてるのかしら?」
「……あー……」
あの特徴的な帽子――もとい妖怪の山の神さまを思い浮かべる。
「どうする?」
「どうするも何も……」
傘を差しても濡れるのが目に見て取れるほどの降水量だ。ふと視界の端で何か動く……上海が先ほどから窓の外をしきりに気にしているが何かあるのだろうか?
「ん~……」
これはもう諦めて――
「泊まってく?」
そう、濡れるのを覚悟で帰――
「ぅええっ!?」
「なによ、嫌なの?」
雨に濡れて帰りたいなら止めはしないけど、と彼女は言う。というかなんで私は慌てた。
「いいの?」
「いいから言ってるんじゃない」
「でも着替え……下着とか」
「まぁ今回は……しかたないわね、貸してあげるわ。まだ使ってないのもあったと思うし…………で、どうするの?」
私の答えを煽るように、雨音が激しくなった。
++++++++++++++++++++++++
「じゃあ私はリビングのソファ使って寝るから、霊夢は私のベッド使ってね」
「え?」
「生憎と我が家には布団はないのよ。それに予備のベッドも今は使えない状態だし」
困ったように笑う。なんだかお姉さんみたいだ――じゃなくて!
「いいわよ、私がソファで寝るから」
これ以上気を使わせるのも正直言って居心地が悪い。
「いいのよ、貴方はお客様なんだし」
けれど彼女の答えはこんなのばかり。ってゆうか私はお客なのか。私は――
「友達じゃない」
あ、と思った時には言葉は口に出ていて、
「あ、う、だ、だから!」
一瞬呆然となった彼女の顔を見て慌てていい訳をする。
「友達なんだから、友達にそんなに迷惑はかけられないってことよ!ご飯も頂いたし!!!」
いい言い訳だと思う。私は少しホッとする。
「……でも……」
「何よ、まだ何か文句あるの?」
この会話だけではどっちが家の主人かわかったものじゃないな、と思いながらも主導権を握れたことを良しとする。
「……リビングには結構人形たちが置いてあるから……その……慣れてない貴方たちには怖いんじゃないかしら?」
「あ――」
そういえば、初めて夜に来たとき炎に揺らめく人形を見て一瞬驚いたことがあった。魔理沙も初めての時はびびったらしいが。
「あー……うー……」
一瞬で大丈夫と言えなかったのは、目に入ったのが妙にリアルな人形でまだ少しトラウマがあったからだ。
「くっ……」
けどこれ以上お世話になるわけには――こうやって寝床を渋ってる時点で迷惑かけてはいるんだけれども。
「……はぁ……じゃあ貴方そのベッドの奥使って」
「え?」
「狭いけど。一緒に寝ましょ」
「はぁ?ちょ、ま……」
「はいはい」
有無を言わさず押し込められ灯りを消される。
「ちょ、アリ――わ」
「はいはいおやすみ」
服越しにアリスの体温が伝わる。
「アリス」
「なによ」
「だ、大丈夫よ、向こうで寝るわ」
「もういいじゃない。これで」
「でも」
「一緒に寝るのが嫌なの?」
そんな質問、卑怯だ。
「……いやじゃ……ないけど……」
「じゃあはいおやすみ」
身動ぎするたびにベッドが小さく軋む。広くないスペースだから彼女と触れる。
「ぅぁ……」
やわらかい彼女の体、さっきから心臓がうるさい。黙れ、黙れ!そうだ、少し離れよう!
「霊夢」
「……なによ……」
どうにか普通に答えることが出来た。落ち着け、落ち着け……
「言い忘れてたけどそこ隙間がちょっとあるのよ。落ちないでね」
ぐっ、と引っ張られたと思ったら、彼女の腕の中。彼女の正面、目が合う。
「っ――!?!?!?」
落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着――
「……霊夢?大丈夫?」
「だ、大丈夫……です」
「本当に?顔赤いけど?」
語尾がおかしくなった。彼女が私のおでこを撫でる。頭がイカレタと思われたのか。
彼女の身体は温かいのに、意外と冷たい手や指が額に触れる。それがやけに安心して、気持ちがいい。
「あぁ……大丈夫、いつもと寝る場所が違うからちょっと……」
「そう……ふふ、意外と繊細なのね?」
「失礼なことを言うわね。これでも女の子なんだけど?」
「それはごめんなさい、ね……私ももうどのくらいぶりかしら。人と一緒に寝るのは」
暗闇に目が慣れてきた。今まで聞こえなかった雨音も同時に聞こえてくる。
「そういえば私も……いや、魔理沙とか萃香とか時々隣にいるわ」
彼女がくすくす笑う。きっとこの後羨ましいとか言うのだろう。
「それは羨ましいわね」
ほら。
「熱くて重いだけよ。この前はわき腹に萃香の角があって死ぬところだったわ」
「あー……それは……」
「起きた瞬間に魔理沙のミニ八卦炉があって微妙に発動しかかってた時なんかはもう――」
あの後魔理沙は下着姿のまま外に放り出した。カメラのシャッター音が聞こえてきたけど私には関係ない。
「魔理沙らしいわね」
「魔理沙らしいで片付けられる問題じゃないわ」
「そういえば朝起きたら遠くから爆音がして、向かってみたら寝ぼけた魔理沙が家の外から見えたわ」
つまり家に穴が開いていたってことか。
「……あいつが来る時は預かるべきかしら……」
「そうした方が賢明かもね」
笑いあう。先ほどの緊張感はどこへ行ったのか、彼女と一緒だとひどく落ち着く。
「さて……そろそろ寝ようかしら。明日も早いし」
「そうね……おやすみアリス」
「えぇ、おやすみ……霊夢」
最後にもう一度笑って、目を閉じる。睡魔は意外にもすぐにやってきた。
まだ、もう少しだけこの感触を、味わいたかったのだけれども。
++++++++++++++++++++++++
夜中、不意に目が覚めた。やはり慣れない枕のせいか、彼女が横に居るせいか――
「雨……止んでる……」
彼女の隣にいるのは人肌の温かさもあってか気持ちが良かった。いい夢も見ていた気がする。
「夢なんて久しぶりかも……」
はぁ、と大きく息をつく。少し喉が渇いている。
「ん……」
彼女が少し反応した。
起こしてしまったか、慌てて体を硬直させる。
けれどそれは杞憂だった。すぐに安らかな寝息が聞こえる。生憎と向こうに顔が向いていてこちらを見ていない。少し悔しくなって覗き込む。
瞬間、世界が明るくなる。
月明かりに照らされて彼女の顔が幻想的に映し出される。
(綺麗な……顔……)
好奇心から少し突いてみる。ふにふにと柔らかい。
(白い肌だし……お人形さんみたい――)
ぞく、と何かが背中を駆け巡る。それは不安。彼女は生きているのだろうか?胸に耳を当ててみる。
「……はっ……」
良かった、生きていた。当たり前の事なのに。
「あ……」
目線が首筋に移動する。綺麗な曲線に、白い肌。
ごくり、と唾を飲み込む。それと一緒に理性も飲み込んでしまったのだろうか、ゆっくりと近づく。ぎゅっと抱きつく。口をあける。彼女の首筋に――
「ぅん……」
「!!!」
起こした――!?
「…………」
小さな寝息が規則正しく彼女の肩を上下する。
一息ついて再び彼女の首筋を見つめる。不思議とやめようとは思わなかった。
「……首筋だとばれちゃうかしら」
鏡で見た時、人と体面した時、彼女は困るだろうか?
(私は別にいいけど……それはエゴよね)
だから服を少しずらす。右の首筋の裏。髪に隠れてくれる場所。
ちゅ、と音がなる。ならしたくはなかったけど。
「ん……」
アリスの声が聞こえた。けど気にしない。気にかけられない。
無我夢中で彼女を吸う、私の証を残す。
「はぁっ……」
時間は数秒だったかもしれない。けれど私にとっては長い時間を過ごしたような感覚が身体全体を支配していた。
(なんだか・・・疲れた・・・)
もう一度横になる。隙間に少し落ちかけた。
だからぎゅ、と服の裾を掴む。落ちそうだったから、と彼女――いいや自分に言い訳をして。
そして翌朝、朝の支度をしている彼女の肩を見て、夜の魔力の怖さを改めて思い知ったのである。
・前回の話(作品集31『雨音をBGMに。』の後日談的なものになりますが、コレ単体でも読めるかと思います。
・百合濃度UP?気持ち的にはPG12。でもぬるいです。
・デレデ霊夢
以上、無理だと思った方は戻るボタンでも閉じるボタンでも押して逃げて!
それでは。
空は気まぐれに泣き笑う。
「洋食も中々・・・だけどやっぱ和食よね」
「完食した人間がなに文句言ってるのよ」
なんだかんだで夕食もごちそうになってしまった。
「いやいや、美味しかったわよ。本当よ?」
夕飯の少し――いや結構前から私、博麗霊夢はアリス・マーガトロイドと共に過ごしている。
雨の音を遠くに聴きながら彼女と久しぶりのお茶会を楽しんだ。
その最中、不意に机を照らした熱い日差し。厚く空を覆っていた雲は山の方へと向かっているようだ。
日差しの中、上海人形は嬉しそうに小躍りをし、アリスは嬉しそうにため息をついていた。
『やっと外に出れるわね』
少しだけ、勿体無いと思ってしまった。
『私、買い物にいきたいんだけど……どうする?』
『今?』
彼女は困ったように笑う。
『まだ備蓄はあるけど、やっぱり少し物足りないの』
だから今の内に、と彼女は人形たちを用意し始める。
『霊夢は、どうする?』
これは多分帰るか帰らないか聞いているのだろう。
私は――私は――
『結構買ったわね……』
『まぁ、ね……それより付き合ってくれてありがとう』
『いいのよ、お礼もしたかったしついでだし』
結局、彼女の買い物に付き合うことにした。
『二人とも、もてる?』
『シャン……ハー……イ』
『ホラーイ!!!』
蓬莱は余裕そうにもってフワフワ周りを飛んでいる。逆に上海は少し、いやかなり厳しそうだ。蓬莱がせっせと上海の持つ籠から荷物を取り出して自分の籠へと放り込んでいく。
アリスも買いすぎたと思っているのか、自分でも籠を持っていた。
『……うん。ついでだから荷物も一緒に持っていくわよ』
『え?いいわよ。人形たちもいるし――』
『だからついで、って言ってるでしょう。もしかしたら魔理沙も戻ってるかもしれないし、何より人形たちがかわいそうだわ』
そういえば今日は、本当は魔理沙に用事があったのを思い出した。結局は彼女とは会えなかったのだけど。
結局、嬉しそうに飛び回る人形たちを見て、彼女は小さくため息をついてから「お願いするわ」と声を出した。
人形たちを味方に付け、再び魔法の森の彼女の家へと訪れる。途中に寄った魔理沙の家にはやはり主はいなくて、そのまま荷物を持ってまたアリスの家へとお邪魔させてもらった。
そして今に至る。
「まぁたまにはこういう日があってもいいでしょう?」
「押し掛けられる方はたまったものじゃないわ」
「……いつも押しかけられてるのは私の方、今のアリスと同じ気持ちよ」
「あら?霊夢はこんなにも迷惑してたのかしら?」
「…………そんなに?」
うまい切り返しが出来ず言葉に詰まると小さく笑って冗談だという。
アリスは時々意地悪だ。
「あら?」
再び始まったお茶会の最中、アリスが何かに気付いて窓の外を見る。
「また降ってきたわね……」
「げっ」
一度晴れたから油断してしまった。しかも結構本降りになってきている。
「あー……少し雨宿りしていっても?」
「この雨の中放り出すわけにもいかないでしょ」
アリスは席を立つとまたお茶を出してくれた。
「ま、やむまではゆっくりしていきなさい」
彼女は優しい。極当たり前に、誰にでも同じように接してくれる。それが嬉しい反面、少し寂しかった。
「やまないわね」
「全くだわ。帰れないじゃない」
「誰か雨乞いでもしてるのかしら?」
「……あー……」
あの特徴的な帽子――もとい妖怪の山の神さまを思い浮かべる。
「どうする?」
「どうするも何も……」
傘を差しても濡れるのが目に見て取れるほどの降水量だ。ふと視界の端で何か動く……上海が先ほどから窓の外をしきりに気にしているが何かあるのだろうか?
「ん~……」
これはもう諦めて――
「泊まってく?」
そう、濡れるのを覚悟で帰――
「ぅええっ!?」
「なによ、嫌なの?」
雨に濡れて帰りたいなら止めはしないけど、と彼女は言う。というかなんで私は慌てた。
「いいの?」
「いいから言ってるんじゃない」
「でも着替え……下着とか」
「まぁ今回は……しかたないわね、貸してあげるわ。まだ使ってないのもあったと思うし…………で、どうするの?」
私の答えを煽るように、雨音が激しくなった。
++++++++++++++++++++++++
「じゃあ私はリビングのソファ使って寝るから、霊夢は私のベッド使ってね」
「え?」
「生憎と我が家には布団はないのよ。それに予備のベッドも今は使えない状態だし」
困ったように笑う。なんだかお姉さんみたいだ――じゃなくて!
「いいわよ、私がソファで寝るから」
これ以上気を使わせるのも正直言って居心地が悪い。
「いいのよ、貴方はお客様なんだし」
けれど彼女の答えはこんなのばかり。ってゆうか私はお客なのか。私は――
「友達じゃない」
あ、と思った時には言葉は口に出ていて、
「あ、う、だ、だから!」
一瞬呆然となった彼女の顔を見て慌てていい訳をする。
「友達なんだから、友達にそんなに迷惑はかけられないってことよ!ご飯も頂いたし!!!」
いい言い訳だと思う。私は少しホッとする。
「……でも……」
「何よ、まだ何か文句あるの?」
この会話だけではどっちが家の主人かわかったものじゃないな、と思いながらも主導権を握れたことを良しとする。
「……リビングには結構人形たちが置いてあるから……その……慣れてない貴方たちには怖いんじゃないかしら?」
「あ――」
そういえば、初めて夜に来たとき炎に揺らめく人形を見て一瞬驚いたことがあった。魔理沙も初めての時はびびったらしいが。
「あー……うー……」
一瞬で大丈夫と言えなかったのは、目に入ったのが妙にリアルな人形でまだ少しトラウマがあったからだ。
「くっ……」
けどこれ以上お世話になるわけには――こうやって寝床を渋ってる時点で迷惑かけてはいるんだけれども。
「……はぁ……じゃあ貴方そのベッドの奥使って」
「え?」
「狭いけど。一緒に寝ましょ」
「はぁ?ちょ、ま……」
「はいはい」
有無を言わさず押し込められ灯りを消される。
「ちょ、アリ――わ」
「はいはいおやすみ」
服越しにアリスの体温が伝わる。
「アリス」
「なによ」
「だ、大丈夫よ、向こうで寝るわ」
「もういいじゃない。これで」
「でも」
「一緒に寝るのが嫌なの?」
そんな質問、卑怯だ。
「……いやじゃ……ないけど……」
「じゃあはいおやすみ」
身動ぎするたびにベッドが小さく軋む。広くないスペースだから彼女と触れる。
「ぅぁ……」
やわらかい彼女の体、さっきから心臓がうるさい。黙れ、黙れ!そうだ、少し離れよう!
「霊夢」
「……なによ……」
どうにか普通に答えることが出来た。落ち着け、落ち着け……
「言い忘れてたけどそこ隙間がちょっとあるのよ。落ちないでね」
ぐっ、と引っ張られたと思ったら、彼女の腕の中。彼女の正面、目が合う。
「っ――!?!?!?」
落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着――
「……霊夢?大丈夫?」
「だ、大丈夫……です」
「本当に?顔赤いけど?」
語尾がおかしくなった。彼女が私のおでこを撫でる。頭がイカレタと思われたのか。
彼女の身体は温かいのに、意外と冷たい手や指が額に触れる。それがやけに安心して、気持ちがいい。
「あぁ……大丈夫、いつもと寝る場所が違うからちょっと……」
「そう……ふふ、意外と繊細なのね?」
「失礼なことを言うわね。これでも女の子なんだけど?」
「それはごめんなさい、ね……私ももうどのくらいぶりかしら。人と一緒に寝るのは」
暗闇に目が慣れてきた。今まで聞こえなかった雨音も同時に聞こえてくる。
「そういえば私も……いや、魔理沙とか萃香とか時々隣にいるわ」
彼女がくすくす笑う。きっとこの後羨ましいとか言うのだろう。
「それは羨ましいわね」
ほら。
「熱くて重いだけよ。この前はわき腹に萃香の角があって死ぬところだったわ」
「あー……それは……」
「起きた瞬間に魔理沙のミニ八卦炉があって微妙に発動しかかってた時なんかはもう――」
あの後魔理沙は下着姿のまま外に放り出した。カメラのシャッター音が聞こえてきたけど私には関係ない。
「魔理沙らしいわね」
「魔理沙らしいで片付けられる問題じゃないわ」
「そういえば朝起きたら遠くから爆音がして、向かってみたら寝ぼけた魔理沙が家の外から見えたわ」
つまり家に穴が開いていたってことか。
「……あいつが来る時は預かるべきかしら……」
「そうした方が賢明かもね」
笑いあう。先ほどの緊張感はどこへ行ったのか、彼女と一緒だとひどく落ち着く。
「さて……そろそろ寝ようかしら。明日も早いし」
「そうね……おやすみアリス」
「えぇ、おやすみ……霊夢」
最後にもう一度笑って、目を閉じる。睡魔は意外にもすぐにやってきた。
まだ、もう少しだけこの感触を、味わいたかったのだけれども。
++++++++++++++++++++++++
夜中、不意に目が覚めた。やはり慣れない枕のせいか、彼女が横に居るせいか――
「雨……止んでる……」
彼女の隣にいるのは人肌の温かさもあってか気持ちが良かった。いい夢も見ていた気がする。
「夢なんて久しぶりかも……」
はぁ、と大きく息をつく。少し喉が渇いている。
「ん……」
彼女が少し反応した。
起こしてしまったか、慌てて体を硬直させる。
けれどそれは杞憂だった。すぐに安らかな寝息が聞こえる。生憎と向こうに顔が向いていてこちらを見ていない。少し悔しくなって覗き込む。
瞬間、世界が明るくなる。
月明かりに照らされて彼女の顔が幻想的に映し出される。
(綺麗な……顔……)
好奇心から少し突いてみる。ふにふにと柔らかい。
(白い肌だし……お人形さんみたい――)
ぞく、と何かが背中を駆け巡る。それは不安。彼女は生きているのだろうか?胸に耳を当ててみる。
「……はっ……」
良かった、生きていた。当たり前の事なのに。
「あ……」
目線が首筋に移動する。綺麗な曲線に、白い肌。
ごくり、と唾を飲み込む。それと一緒に理性も飲み込んでしまったのだろうか、ゆっくりと近づく。ぎゅっと抱きつく。口をあける。彼女の首筋に――
「ぅん……」
「!!!」
起こした――!?
「…………」
小さな寝息が規則正しく彼女の肩を上下する。
一息ついて再び彼女の首筋を見つめる。不思議とやめようとは思わなかった。
「……首筋だとばれちゃうかしら」
鏡で見た時、人と体面した時、彼女は困るだろうか?
(私は別にいいけど……それはエゴよね)
だから服を少しずらす。右の首筋の裏。髪に隠れてくれる場所。
ちゅ、と音がなる。ならしたくはなかったけど。
「ん……」
アリスの声が聞こえた。けど気にしない。気にかけられない。
無我夢中で彼女を吸う、私の証を残す。
「はぁっ……」
時間は数秒だったかもしれない。けれど私にとっては長い時間を過ごしたような感覚が身体全体を支配していた。
(なんだか・・・疲れた・・・)
もう一度横になる。隙間に少し落ちかけた。
だからぎゅ、と服の裾を掴む。落ちそうだったから、と彼女――いいや自分に言い訳をして。
そして翌朝、朝の支度をしている彼女の肩を見て、夜の魔力の怖さを改めて思い知ったのである。
しかしなんだろうこのその辺の昼ドラじゃあ霞む所か霧散しそうなドロドロねっちょり人間関係。
小悪魔さんが一番厄介そうです。
でもそこで献立考えるアリスがGJ。
いいぞ、もっとやれ。
この後繰り広げられるであろうアリス争奪戦に期待したいです。
デレデ霊夢と素直アリス、この組み合わせの甘さは異常。
アリス争奪戦にも期待
やはりアリスは世話焼き属性が…!
アリス争奪と小悪魔の画策、出来れば是非とも書いて欲しいです。
1>ありがとうございます!良かったデレデ霊夢に見えて……
小悪魔厄介そうです。そして気付いたらアリス×小悪魔に(ぇ
2>デレデ霊夢のパワーは侮れません。デレデレしすぎてこっちが赤面するわ!
3>小悪魔さんですからね。うまくいくか、失敗するか、どっちだろうなぁ(笑
4>期待してもらってもの凄く嬉しいです、ですが、ネ、ネタが……(ぁ
5>アリスはめんどくさそうにしてても頼られるのは好きなタイプと見てます。世話焼きは正義。
二人ともクールな部分があるのでその二人で甘く書いてみたかったり
6>糖分の過剰摂取はあまりよろしくない……が、私自信甘いものが好きなので何もいえませんw
甘い二人が増えればいいなぁー
7>アリスはみんなのお姉さん!クールに知的にお姉さん!(ちょ
でもツンデレアリスも好きだったりしますw
それにしてもワンシーンのみの小悪魔の人気にパルパルしちゃう。
ここから発信。もっと広がれレイアリの輪!!!!!