幻想郷鬼子母神伝 予告編のオマケみたいな物です
見ていないと、よくわからない事が一杯なので
できたら見て下さい
簡単に言えば戦いが終わったお母さん達の飲み会です…
幻想郷にある、一つの飲み屋……
有名な飲み屋ではないが
そこには幻想郷で名前が知られている方々が集まっていた
紅魔館の門番である紅美鈴
永遠亭の薬師である八意永琳
マヨヒガに住む八雲紫と八雲藍
守谷神社の神である八坂神奈子
魔界神である神綺
冬の忘れ物と呼ばれる雪女レティ・ホワイト・ロック
そのような強者達がこのひっそりとした飲み屋に集まった理由は一つ
皆が席に座ると、その中から八雲紫が微笑を浮かべて告げる
「準備はいいかしら?」
その言葉を聞いて、その場に座った方々が笑顔で頷く
それを見据えた八雲紫が軽くなずいて片手を宙に伸ばす
「自分達の娘に…かんぱーい!」
その言葉に八雲紫以外の皆が手に持ったコップを宙に浮かせた
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」
ほんの数日前に起きた、幻想郷鬼子母神伝と呼ばれる激闘…
『自分の娘が一番可愛い!』
と言うのを知らしめるために、各組織のお母さん達が
己の限界を超える戦いを演じた事が全ての始まりだった
そして、闘いの中で
『自分が娘が可愛いというのは、相手も同じ事である』
と言う結論が出され戦いは終わりを迎えたのだ…
戦いを通して、お互いの事を知ったお母さん達は
お互いの健闘を称えるために飲もうという事になったため
この小さな飲み屋で飲むことが実現したのだ
そして、お互いがいろんな話をし始める
魔界神と薬師の話
「どうも…アリスちゃんが幻想郷でお世話になってまして…」
「あらあら?アリスさんにはこちらもお世話になってますよ」
魔界神が挨拶とすると、永遠亭の薬師も挨拶をかわす
そして、永遠亭もアリスにはお世話になっている話等を交わして
「…そういえば、あのばら撒いている薬ってマンドラゴラ使ってましたね」
神綺の何気ない一言に、永琳が驚きながらも頷く
「わかりますか?」
「はい!…これでも魔法使いとして、知識はありますから」
神綺がエヘンと胸を張る、そして一言
「…でも、効き目はあんまり無かったような…」
その言葉に永琳が少し困った顔をして頷く
「ええ…実を言うとあんまり良い質の物が手に入らなくって…
おかげで、新薬の実験もうまくいかないのよ…」
永琳がそのまま、神綺に愚痴をこぼす
そして、その話を聞き終えた神綺が……
「…あの…よければ送りましょうか?」
「えっ!?」
こうして、永琳は格安で良質の薬草を手に入れるルートを確保したのだ
守谷神社の神と隙間妖怪のお話
八雲紫と八坂神奈子がのんびりお酒を飲んでいた
「…やっぱり強いね…」
「あら?お酒のお話かしら?」
紫の言葉を聞いて、苦笑で返す神奈子
「いやいや…戦いだよ」
神奈子がそう告げると、お酒を紫にのコップに注ぐ
「…確実にお前さんの頭を打ち抜いたと思ったんだけどね…」
「あら?私は冷や汗を掻いていたわよ?」
二人が言っているのは試合の話
お互いが一回ずつ倒れ、次に必ず決着が着くところまで行き
神奈子が全力ではなった『八坂の一撃』が
完全に決まったと思われたのだが…
「まさかあそこで、隙間に落とされるなんてねぇ…」
神奈子が苦笑いを浮かべてあの時の事を思い出した
完全に決まったと思っていた次に瞬間
突然辺りが、別の空間になっていたのだ
そして、身動きが取れなくなった
気がついたら辺りは逃げ場の無い弾幕の嵐
「こっちも必死だったわ~…もし貴方の一撃が入っていたら」
紫もその時の事を思い出す
目の前の相手が居なくなった瞬間に
無意識に、身体が結界を張っていた
もし、あの時の判断が少しでも遅かったら
「…きっと倒れていたのは私だったでしょうね」
「…今回は私の負けだったけど」
神奈子が自分のコップにもお酒を注ぎ
それを一気に飲み干す
「娘を思う気持ちは…まだ負けないよ?」
その言葉を聞いて紫も手にしたお酒を一気に飲み干す
「あら?それなら私も負けるわけにはいかないわね」
お互いの顔を見合うと
二人とも、もう一杯お酒を飲み干した
隙間妖怪と九尾の式
藍が少し離れているところでお酒を飲んでいた
「……」
他の人とお酒を飲むのが嫌なわけではないが
もうそろそろ、誰かがやってくるのがわかったからだ
そして、お酒を飲み干すと
「……遅いですよ?紫様」
「あら?ばれちゃったかしら」
藍の後ろから紫が現れた
「それはまあ、私は紫様に育てられましたから」
藍の言葉を聞いて、紫は笑みを浮かべると隣に座り込む
「…懐かしいわね…」
紫の呟きに藍が無言で頷くと
紫のコップの中にお酒を注いだ
「ねぇ?藍…」
「…なんでしょうか?」
唐突に紫が藍の方を向いて問いかけてきた
「…私と戦った時に負けたじゃない?」
そこまで伝えると、手にしたお酒を一旦飲み干し
「……なんで負けたの?」
「…どういう事ですか?」
藍が首をかしげて紫の方を向く
「勝てるはずの勝負で…なんで負けたのかしら」
「ご冗談を…紫様に力で勝てるはずは…」
藍が笑って答えようとするのを、紫が止める
「…本当の事言って頂戴」
紫が優しく問いかける
その言葉に、藍が言葉を詰まらせる
「…試合の中で、貴方には橙を呼ぶ事も出来たはずよ」
「……」
藍と紫が闘った時
確かに紫の方が戦いを圧倒していたが
何箇所かは、藍が橙を呼んで
一撃で倒す事もできる場面があったはずだ
「……言いなさい」
何故、藍がその場面で攻撃をしなかったのか
紫はその事を説いているのだ
「…それは…主としての命令ですか?」
藍が口を開いて出した言葉はそれだった
式の主としての命令ならば、それは絶対である
これなら、紫は確実に藍から話を聞くことができる
「違うわ…」
だが、紫はその言葉に首を横に振った
「…貴方を育てた母親としてのお願いよ」
その言葉を聞いて、藍は遂に口を開いた
「…紫様には勝てませんね…分かりました言います」
藍はそう伝えると紫を真正面から見据えて答えた
「…できるはず無いじゃないですか…母親を全力で攻撃する事なんて…」
話を聞いて紫は、無言のまま藍を抱きしめた
藍もしばらく、そのまま抱きしめられたままになっていた
冬の忘れ物と門番のお話
美鈴とレティはとある話を肴にお酒を飲んでいた
「…夏のチルノちゃんの話なんですけどね…」
「えっ!?それ本当なの」
門番をしている美鈴の元に
チルノが来るのは至極当然のこと
レティのように、娘とまではいかないが
それなりに会っていた
レティは冬にしかチルノには会えない
だから、チルノの事を美鈴に聞いていたのだ
「…というわけで、妹様に喧嘩を仕掛けた時は大変でした」
「ごめんなさいね…家のチルノちゃんが…」
「いえいえ…おかげさまで妹様と今は元気に遊んでいますよ」
しばらく二人が話していると、不意にレティが美鈴に問いかけてきた
「…そういえば、闘った時に一番心に残っている場面って何かあるかしら?」
レティの言葉に美鈴がしばらく考え込むと
一つの場面が浮かんできた
「そうですね…やっぱりレティさんと闘っていた時のあの場面ですかね」
「…貴方も?」
二人が思い浮かべたのは
お互いが一回ずつダウンを奪っていて
お互いに後一撃大技を決めれば、どちらかが倒れるであろう場面で
「私が『紅い屋敷の門番』で攻撃した時に…」
「ええ…私が『豪腕一閃』を同時に放った時の事ね…」
お互いがギリギリまで力を溜めた一撃を同時に放ったのである
「気がついたら気絶していましたね」
「私も始めて体験したわ、ダブルノックアウトなんて」
お互いが放った一撃は、二人とも気絶するには十分な威力であった
「…それにしても本当に貴方って頑丈ね…
あの一撃受けて、気絶だけですむなんて…」
レティが言うのも最もであった
限界まで力を溜めたレティの一撃は
多分、このお母さん達の中でも一番の破壊力を持っていたであろう
「あははっ…慣れていますから」
何時もデーモンロードの体当たりを受け止めている
美鈴だったから気絶する程度で済んだのだ
「今度は、貴方の娘の話を聞かせてもらおうかしら?」
「そうですね…ではまず…」
レティと美鈴の娘自慢が再び始まった…
門番と魔界神のお話
「あの…神綺さん?」
「はい?なんでしょうか…」
神綺がお酒を飲んでいるときに
隣から美鈴が声をかけてきた
「つかぬ事聞きたいんですけど…」
「なんでしょうか?」
美鈴が小さな声で神綺に問いかけた
「……下着を穿き忘れてませんか?」
その言葉に神綺が笑いながら答える
「そんな事あるわけ無いじゃないですか~私、二回も断頭台使って…」
そこまで喋ると、突然神綺の言葉が止まる
「…あ、あれ…?」
神綺の顔が赤くなるのを見て、美鈴が何かを手渡す
「…あの…これ使ってください」
「…ありがとうございます…」
神綺が頭を下げるとお手洗いにむかってから…帰ってきた
「…もしかして…私…」
「いえ、多分最終日だけだと思いますよ」
神綺が顔を赤くしていると
美鈴が返した
「私と二回戦っているんですけど、始めに断頭台受けた時は大丈夫でした……」
「…えっと…最終日…」
額から汗を流して美鈴に話しかける神綺
「と言うか見えなかったんですよ、それでもしかして…と思いまして」
最終日の戦いは、美鈴とだけ闘ったため
どうやら、美鈴以外には分からなかったみたいだった
とりあえず、誰にも見られなかったみたいだが
「…危なかったですよ?」
「危なかったです…」
二人はしみじみと頷いて、お酒を酌み交わした
「あら?もうこんな時間…」
誰かが言った言葉で、おしゃべりを楽しんでいたお母さん達が時計を見る
「本当ですね…もうそろそろ帰らないと…」
まずは、紅魔館の母さんである美鈴が立ち上がった
「…明日からまた娘達を見てあげないと…」
次に、永遠亭のお母さんが立ち上がった
「橙の事が心配になってきた…」
九尾の狐お母さんも立ち上がる
「…そうね、今日は久しぶりに皆で眠りましょうか…藍」
その背後から隙間妖怪もいっしょに立ち上がる
「早苗と諏訪子にお土産でも買っていってあげないと…」
守谷神社のお母さんも席を立った
「今日はアリスちゃんの所に泊まる約束ですから…私もこれで」
魔界神がすっと立ち上がって会計の準備をする
「今日一日で…チルノちゃんと大妖精とまた別れないといけないからね…」
冬の忘れ物が、ほんのちょっと残った奇跡を
娘のために使うために起き上がる
「また開きましょうか?飲み会」
八雲紫の最後の言葉にこの場に来ていた皆が頷く
「そうですね…」
「たまには…こんな集まりもいいわね」
「ああ…娘の自慢ができるのはいいことだ」
「…そうだね、同じ苦労を持っている人もいるみたいだし…」
「そうですね…この飲み会があれば幻想郷に来やすいですし…」
「チルノちゃんと大妖精ちゃんの話を聞けるから、賛成だわ」
皆が賛成をしてから、一人一人が
自分の自慢の娘が待っている家に向かって帰っていった
門番は家に帰ると、自分の娘達をその胸に抱いて眠った
永遠亭の薬師は家に帰ると、自分を待っていて眠ってしまった
皆を布団をかけてから、自分もソファーの上で横になった
九尾の狐と隙間妖怪は家に帰り、布団を部屋に敷き詰めると
博麗の巫女を呼んできてから、四人で寝る事にした
守谷神社の神は、自分を待っていた巫女に毛布をかぶせて
起きていたもう一人の神と一緒に、寝ている巫女を優しく見つめることにした
魔界神は自分の娘の家に向かうと、明日の朝ご飯の準備をしてから
娘を抱きしめて眠った
冬の忘れ物は、一日だけの奇跡を感謝すると
チルノと大妖精を思いっきり抱きしめて眠る事にした
明日からはまた、普通のお母さんに戻ります…
幻想郷にあったそんな一日のオマケのお話…
ちょっと凝視したいんですけど…
『自分の娘が一番可愛い!』
この時点で笑って
『自分が娘が可愛いというのは、相手も同じ事である』
ここでさらに笑ったわ
なにはともあれ、お母さんたち戦いお疲れ様でした
ちなみに、レティ・ホワイトロックじゃありませんでしたっけ??