私は小悪魔である。
名前はまだない。
っと。気が済んだところで本題に入らせていただきます。
まずは私の今おかれている状況の説明から。
私は紅魔館内の図書館の司書をやっております。
つまり、私はこの図書館、ひいてはその主であるパチュリー様に仕えているのです。
実は私はそのパチュリー様が好きなのですが……あ、もちろん恋愛感情です。
まあ、性別がどうのとか、そういう問題は今はおいておきましょう。
それはともかく、パチュリー様には、最近変化が訪れたのです。
……いえ、正しく言うなら、紅魔館全体に変化が訪れ、その中にパチュリー様の変化もあった、と言う感じですね。
たとえば、この紅魔館の主レミリアお嬢様は、異変を解決するために館に乗り込んできた霊夢さんを気に入り、
今まであまり外に出なかったのが昼夜問わず神社に突撃するようになったし、
その妹のフランドール様も、同じく異変のときに館に乗り込んできた魔理沙さんが、
フラン様が暴れだしたときに遊び相手になり、その後魔理沙さんのおかげでフラン様は理性を得て、地下から出てこれるようになりました。
そして、パチュリー様はというと……最近元気がありません。
というのも、パチュリー様には泥棒兼お客様が尋ねてくるようになったのです。
その『泥棒兼お客様』、魔理沙さんはとても明るい性格で、パチュリー様にも気さくに話しかけています。
一言で言うなら、素敵な方なんです。
あ、もちろん私にとってはパチュリー様のほうが素敵なのですが……それはともかく。
パチュリー様は、魔理沙さんが来る以前、いつも唐突なボケで私を振り回していました。
しかし、今は元気を失くしてしまって、そのようなことがありません。
原因ははっきりとは分かりませんが、もしかしたらそれは恋患いかもしれないと思うのです。
……おそらく、魔理沙さんへの。
私は、自分で言うのもなんですが結構内気でおとなしい性格で、パチュリー様にすらろくに話しかけられません。
一度話しかけられれば割と饒舌なほうではあるのですが、なかなかそこに至れません。
しかも、パチュリー様は本を読んでいる最中に邪魔が入るのがお嫌いで、
咲夜さんや美鈴さんだけでなく、パチュリー様の友人であるレミリア様が来たときでさえ少し嫌な顔をします。
でも、私のときは嫌な顔すらしてくれません。それどころか、目を逸らされることもあります。
しかも、それ以外のときでもちょっと避けられているような気もするのです。
それでも、普通のときに話しかければ公私問わずちゃんと話をしてくれるので、そこまでは嫌われてはいないようです。
……それが、せめてもの救いです。
だけど、パチュリー様は魔理沙さんともなんだかんだ言っても親しくお話をしています。
それに魔理沙さんはパチュリー様や私も知らないような館の外の話を知っています。
これでは、私が負けるのは火を見るより明らかです。
今までも決していい状況ではなかったように思いますが、このままでは最後の希望も潰えてしまいます。
そこで私は、作戦というほどのものではないですが、ちょっとした計画を立てました。
いつも図書館に引きこもっているパチュリー様を外に連れ出すのです。
私はたまにパチュリー様や咲夜さんのお使いに出たりするので、魔理沙さんほどではありませんが屋敷の外の世界について知っています。
幸い魔理沙さんはまだパチュリー様を連れ出してはいないので、パチュリー様に外の世界を見せて、少しでも好感度アップを図ろうというわけです。
さらに、外に出て気晴らしになって、少しでもパチュリー様が元気を出してくれれば……とも思っています。
そしてもう一つ別に考えがあるのですが、それはまた後ほど。
……でも、上手くいくんでしょうか。
あっさり断られてしまうかもしれません。そうなったら、すっぱり諦めましょう。
そう心に決めて、パチュリー様のもとへ。
自分でもパチュリー様へ向けて歩く動作がとてもぎくしゃくしているのが分かります。
そして、ものすごく緊張しながら、散歩に出かけてみませんか、と声をかけてみます。
「いいわよ。ちょっと待ってて、準備してくるから」
……案ずるより産むが易しとはこのことです。意外にも、あっさりとOKしてくれました。
セリフの前にためらいや迷いを示す三点リーダ×2すら付きませんでした。
とりあえず、私はあらかじめ準備は済ませてあるので、後はパチュリー様を待つばかりです。
あ。
しまった、肝心の行き先を決めていなかった。
考えてみるものの、焦っている頭ではなかなか考えが纏まりません。
「外に出るなんて何年振りかしら……それで?どこに行くの?」
どうしても考えが纏まらなかったので、素直にその旨を伝えました。
……せっかくOKしてくれたのに、何やってるんだろう私……
「そう、じゃあ霧の湖のあたりにでも行ってみましょうか」
しかし、パチュリー様がきちんと行き先を提案してくれました。
ちなみに霧の湖とは、紅魔館の前にある湖のことです。
紅魔館の存在が明るみに出た最近では、紅魔湖と呼ばれることも多い、と魔理沙さんが言ってました。
というわけで、霧の湖へ向けて出発することにしました。
★★★
私たちは門番の美鈴さんに挨拶をして、紅魔館の門を出ました。
そして、すぐそこの霧の湖を目指します。
パチュリー様はあまり無理ができないということで、湖の周りをぐるっと回るだけのコースにしました。
これなら一時間ほどしかかかりません。
もっとも、これは普通の人の場合なので、パチュリー様ならもう少し時間がかかるかもしれませんが。
そして、そうこうしているうちに霧の湖に差し掛かりました。
「相変わらず霧で辺りがよく見えないわね、まあ涼しいからいいのだけれど」
そうなのです。ここはその名の通り霧が深く、視界が悪いのです。
しかしこの辺りは来慣れてるし、最近知り合った友達もいるので大丈夫です。
なので自信を持ってパチュリー様を案内できます。
……まあ、湖の周りをぐるっとまわるだけなので、紅魔館の位置さえ見失わなければ問題はないのですが。
あ、でも、ちゃんと知ってないと分からない場所もありました。
まあそれは後ほど。
そして私たちはお話をしたりしながら、しばらく歩き続けました。
パチュリー様は、私の見た感じが間違っていなければ、楽しんでくれているようです。
三十分ほどが過ぎたでしょうか、私たちはあるところへ差し掛かりました。
「あ、パチュリー様、ここが魔理沙さんの家のある魔法の森ですよ」
そうです。私が先ほど話題に出した『ちゃんと知っていないと分からない場所』とはここ、魔法の森のことです。
なぜ私がパチュリー様をここに案内したか。
それは、パチュリー様が今のところ魔理沙さんをどのように思っているかが知りたいからです。
「なるほどね、じゃああいつに取られた本もあそこにあるのね」
おおむね予想通りのリアクションです。仮に魔理沙さんのことを既に好きになっていたとしても、
パチュリー様の性格からして、素直に「行きたい」とは言わないはずです。
なので、
「今、取り返しに行きますか?」
こう聞いて、パチュリー様の出方を伺ってみます。
「行きたい」と思っているなら、この「取り返す」という口実を利用して、魔理沙さんの家へ行こうとするはずです。
ですが。
「冗談じゃないわ。今日外に出たのは散歩をするためであって、あいつの顔を見るためじゃないわ」
意外な反応です。顔を真っ赤にしてこういったならともかく、真顔で、それも少々怒りながら言ったのです。
これはどう解釈したらいいのでしょう?
「行きたかったら、一人で行けばいいでしょ」
パチュリー様は冷たく言い放ち、後は何も言わず歩き出してしまいました。
★★★
それから暫く経ちました。でも、もう何分経ったかなど覚えていません。
というのも、あれからパチュリー様との間に会話が一切なかったのです。
その理由を考えているうちに、だいぶ時間が過ぎてしまいました。
怒り始めたタイミングから考えると、おそらくさっきの発言が原因でしょうが……
パチュリー様がどうして怒っているのか、それが私には判りません。
少なくとも、魔理沙さんが嫌いだったから、という理由ではないと思いますが……
理由を探ろうにも、不器用な私には上手く探る術が見つかりません。
……こうなったら……
「あっ、あの!パチュリー様!」
私が声をかけると、パチュリー様は振り向いてくれました。
そこから一気に、頭で考えていたセリフを吐き出します。
「……えっと、多分、私のさっきの発言が原因で怒っていらっしゃるんでしょうけど……
ごめんなさい、私……あまり頭がよくないから……あなたが何で怒っているのか分からないんです!
だ、だから……どうして、そんなに怒ってらっしゃるのか、教えてください!」
開き直って、単刀直入に聞いてみました。
もう、当たって砕けろです。なんかもう私、涙目です。本格的に終わりました。
ひとしきりセリフを叫び終えると、暫くパチュリー様はきょとんとした目でこちらを見ていました。
そして私の頭が辞世の句を考え始めたころ、
「……ふふっ……あはははっ!」
笑い始めました。
「もう、何よそれ……」
パチュリー様はお腹を抱えて、目に涙を浮かべるほどに笑っていました。
「……謝らないといけないのは、私のほうだわ。勝手に思い込んで、へそ曲げて……
多分、あなたに他意はなかったでしょうに……」
今度は、私のほうがきょとんとしてしまいました。
まったく話が見えません。
「えっと……結局、どうして怒っていたんですか?」
「だって、私と散歩しているのに、あいつの家に行こうとするんだもの」
……えーっと。また解釈のしづらい返答ですね……
一体、どういう事なのでしょう?
「……もしかして、魔理沙さんのこと嫌いでしたか?」
「嫌いってほどじゃないけど……まあ憎いわね。本も、あなたも持っていくんだから」
「……はい?」
私がその言葉を飲み込むのには時間がかかりました。
ようやく飲み込んでも、次は消化することができません。
そうしている間にも、パチュリー様は哀しそうな目でこちらを見ています。
「気づいていないと思ったの?あなた、魔理沙が来て私と話しているとき、ずっとこっちを見ているでしょう?」
「えっ!?」
確かに、パチュリー様が言うことは間違ってはいないのです。
私は魔理沙さんが来てパチュリー様と話しているとき、いつも二人を見ていました。
それはもちろん、どのようにしたらパチュリー様の気を引けるのか研究し、
同時に魔理沙さんがパチュリー様に何かしてしまわないか見張る、という目的です。
……だけど、それがそんな風に取られるとは夢にも思いませんでした。
「違いますよ!あれはそういうことじゃ……」
「隠さなくってもいいのよ、恥ずかしいことじゃないから……
……でも、ごめんなさいね、あなたはそういうつもりじゃなかったみたいだけど……
てっきりさっきのは私をダシに魔理沙に会いに行こうとしたんだと思っちゃって……」
「もちろん、それは違いますが!」
「大丈夫、私はちゃんとあなたを応援してあげるから……」
「違うんです!そうじゃないんです!」
「何が違うって言うのよ!」
「わ、私は……あなたが好きなんです!」
……咲夜さんもいないのに時が止まりました。
ところで話は変わりますが、この霧の湖には結構妖精がいたりします。姿を隠していることも多いです。
ここにいるという私の友達も妖精です。ついでに、その友達の氷精もよくここにいます。
私は、そんなところで大声で叫んでしまったわけです。
……練炭と七輪って、香霖堂に売ってたっけ?
「……ふふっ」
などと考えていると、再びパチュリー様が笑いました。
……しかし、今度のそれは、嬉しそうな微笑みでした。
「なんだ、心配して損したわ。てっきり失恋しちゃったかなと思ったけど……」
……はっ……さっきから驚くことばっかりでなんだか思考が停止しまくってます。
今、パチュリー様はなんと言った?
『失恋』?
パチュリー様は私が魔理沙さんに恋をしていると思っていた。
そして、それで『失恋』ってことは……
「そっ、それはこっちのセリフですよ!
てっきり私、パチュリー様に嫌われてしまったものかと……」
「な……何でそうなるのよ!」
「だ、だって、パチュリー様の読書中に私が近寄ったら、目を逸らすじゃないですか!」
「そりゃ、す、好きな人が近くにいたら……なんか、照れくさくならない?」
「じゃ、じゃあ、微妙に私を避けていたのも……」
「照れくさかったから……と、あなたが魔理沙を想っていると思っていたから、ね」
……私の体から急速に力が抜けていくのが分かります。
今までの心配は、気苦労は一体なんだったのでしょう。最初からパチュリー様は私を想ってくれていたのに。
気がつくと私は膝が地面につき、手も地面についていました。いわゆる失意体前屈というやつです。
「どうしたの、小悪魔?」
「いえ……なんだかもう、色々回りくどいことしてあなたの気持ちを探ろうとしていたのが馬鹿馬鹿しくなってしまいまして……
今回外に連れ出したのも、あなたの気持ちを探るためでもあったんです」
「なるほど、そういうことだったのね……」
「でも、こんなことなら素直に気持ちを口で伝えればよかったですね……」
私がそういうと、パチュリー様は再び微笑んで……いや、むしろにやりとして、そして私との距離を詰め、
……ありのまま、今起こったことを話します。
『口で伝える、とか言っていたら
別の意味で口で伝えられた。』
……何を言ってるか分かりにくいと思いますが、察してください。
「な、な……」
「これでよし、ね……」
何がよしなのか分かりませんが、とりあえず。
「口でって、そういう意味じゃありません!言葉でです!」
「あら、いやだったかしら?」
「い……いやです!ちゃんと言葉にして、伝えてくれないと……不安で……」
自分でも恥ずかしくなるような言葉を、無理矢理吐き出すように言うと、
パチュリー様は再び先ほど見せたようなにやりとした表情を見せました。
……非常にいやな予感がしましたが、そのときにはすでに遅く、
「小悪魔ァ―――――!!愛してるわァ―――――!!」
叫ばれました。幻想郷の中心で愛を叫んだパチュです。いやどこが幻想郷の中心か知りませんが。
さっきからなんだかすごいテンションです。もうPATCHOURYYYYY!!!!とでも叫びだしかねない勢いで。
喘息、大丈夫なんでしょうか……
「……げほっ!げほげほっ!!」
……ものすごい勢いで咳き込み始めました。
やっぱり大丈夫じゃなかったようです。
「ちょ、パチュRI……げふん、パチュリー様!?大丈夫ですか!?」
「え、ええ……なんとか……」
『大丈夫じゃない』って思ったけど、やはりどうしてもとっさにはこの言葉が出てきてしまいます。
あと、名前を呼び間違えましたが気にしない。気にしたら負けな気がします。
「ごめんなさい、少しばかりはしゃぎすぎたみたいね……」
「(……少し?)……あんまり無理しないでください!喘息もちなのに……」
「やっぱり……嬉しすぎたからね……」
「ちょっ、死に際みたいな目でこっち見ないでくださいよ!気をしっかり持ってください!」
「……もし、無事に紅魔館に帰れたら、結婚しましょうね、小悪魔……」
「死亡フラグですそれ!しかもどっちが死ぬパターンもありえますよそれ!いやもちろん結婚は嬉しいですけど!」
「……がくっ」
「パ、パチュリー様ぁー!」
こぁもこころおののきつ
あえぐぱちゅをいだきしめ
からくもやかたにつきしが
ぱちゅはすでに ……寝ていました。
★★★
そんなわけで、喘息でぶっ倒れたパチュリー様を紅魔館まで運んで、今看ているところです。
先ほどまでの異常なハイテンションが嘘のように静かに眠っています。
……でも、パチュリー様が元気になってくれてよかった。
魔理沙さんが来てからいままで、あんなふうに突っ込みを入れる機会もほとんどありませんでした。
「……ん……」
「あ、目が覚めましたか?」
「あ……そうか、私、あいつにやられて……」
「どいつですか……」
「アラケスは強い……まだ勝てない……」
「いつから幻想郷で死食が起こるようになったんですか。ほら、そろそろちゃんと起きてください」
「……むきゅ~」
そういって目をこするパチュリー様。
非常に可愛らしいです。
「……ところで、さっきの出来事……夢じゃないわよね?」
パチュリー様は、ちょっとだけ不安そうな顔で私に尋ねました。
……すこしだけ、悪魔としての意地悪な本能がうずきましたが、それを難なく押さえて、
「ええ、もちろんです。私は、あなたが大好きですよ」
やっぱり、ちゃんと『好き』と言うのはまだ恥ずかしいです。でも、それ以上に幸せです。
さっき買おうと思った練炭と七輪は、普通に秋刀魚を焼くのにでも使おうと思います。
「……PAAAAATCHOURRRRRRRREEEEEEYYYYYAAAA!!!!」
……ついに叫びました。本格的にパチュRIO様です。
「私は人間をやめるぞこぁァァ!」
いやあなた魔女ですって。
やっぱり、まだパチュリー様は異様なハイテンションです。
で、喘息は……
「……げほげほっ……」
……やっぱり大丈夫じゃなかったようです。
「ほら、喘息持ちの体で無理しないでください」
「ん……そうね……」
と、返事を返すや否や、三度目の『にやり』。
次は何かと思ったら、ベッドに引き込まれました。
「……だきまくら」
「ちょっ、パチュリー様!?」
パチュリー様が私を強く抱きしめました。
それも、病弱なパチュリー様とは思えないほど、力強く、しっかりと。
「……渡さない」
「え?」
「あなたを、あの白黒なんかに渡さないから」
パチュリー様は、小さな声で、しかししっかりとした声で言いました。
……もしかすると、あんな軽い調子で言っていたけれど、本当はとても不安に思っていてくれたのではないでしょうか……
「……それは、こっちのセリフですよ。あなたを魔理沙さんに渡すようなことなんて、万に一つもありませんから」
そう言葉を返して、少し目に涙をためているパチュリー様をこちらからも強く抱きしめます。
「……泣き出すまえに、ぎゅっと抱きしめて……でしたっけ?」
「残念、もうすでに泣いちゃったわ……嬉しくて、ね」
「じゃ、泣き止むように、ですね」
どちらにしても、私はパチュリー様を抱きしめます。
やがて、二人ともが眠りに落ちました。
★★★
目が覚めて、すぐに先ほどの出来事を思い出しました。
やっぱり、恥ずかしいです。
でも、幸せ。
……しかし、よく見ると隣に居たはずのパチュリー様が居ません。
まさか夢だったんじゃないか、と辺りを見回すと、すぐにパチュリー様の姿を見つけることができました。
パチュリー様も私に気づき、振り向いてこういいました。
「あら、おはよう、あなた」
…………私の頭は、もう何度目か分からない思考停止を迎えていました。
あなた?これは一体どういう意味だ?
普通はもちろん会話の相手を指す言葉だけど、今のような固有名詞との置き換えの場合、特別な意味となる言葉です。
まさか。
「……えっと、どういう意味ですか?」
「だって、紅魔館に無事に帰れたら、結婚しましょうって言ったじゃない」
やっぱり。
確かにパチュリー様は言いました。
そして私も嬉しいと言いました。
だけど、まさか本気とは。
「パチュリー様、気が早いですよ!結婚式は準備すらできていないというのに……」
しかし、パチュリー様はまたにやりとしました。
「……何言ってるの?」
気がつくと、さっきまで普段の服装だったパチュリー様は、白いドレスを身に纏っていました。
「今が、その真っ最中でしょう?」
紅魔館の寝室だった場所も、美しいステンドグラスがまぶしく輝く教会へと変化しています。
「ほら、ちゃんと前を向いて」
パチュリー様に言われるがままに前を向くと、そこには神父らしき男が立っていました。
『汝、病める時も健やかなる時も……』
よく見ると、私もタキシードに身を包んでいました。
『……では、誓いのキスを……』
私は夢でも見ているのでしょうか。あまりのことに、頭が混乱しています。
「……なーんて、冗談よ」
と、パチュリー様が言うと、
神父もステンドグラスも消えうせ、そこに見えるのは先ほどと変わらぬ紅魔館の一室。
どうやら実際は夢ではなく幻だったようです。
「ふふ、どう?びっくりした?」
正直言って、びっくりしたのと、少し悔しいです。
悪戯は小悪魔の本分なのに、パチュリー様とは言え悪魔でない者の悪戯に引っかかってしまったのですから。
……でも、やっぱりそれ以上に、
「……いえ、残念です。これが、夢だなんて」
そう答えを返すと、パチュリー様は悪戯っぽい笑みを返しました。
いつも、私が振り回されて疲弊しているときに見せるような笑みです。
「どうやら、大成功だったようね」
……やっぱり、この人にはかないません。
だけど、せめて一矢報いてみたいです。
「……あ、せっかくだから誓いのキスまでぐらいはしとけばよかったわね……」
そして、この言葉を聴いてすぐにその手段は浮かびました。
「……何を勘違いしているんですか?」
悪魔らしい、悪戯な笑みを作ってパチュリー様に詰め寄ります。
突然そんなことをするものだから、当然パチュリー様は驚きました。
けれど、そんなことは気にせずにセリフを続けます。
「……私達の結婚式は、まだ終了してませんよ?」
そして、私はパチュリー様にキスをし、そのままベッドに押し倒しました。
…………まあ、その後はずっとパチュリー様のターンだったのですが。
終
いや~楽しいもの読んだ、パチュ×こあ・・・いい作品だ
できたら結婚式のシーンの魔理沙とかアリスとかも書いてほしかったけど
途中で展開が読めたけど、それでもニヤニヤせずにはいられなかったです!
小悪魔可愛いよ小悪魔
いい小悪魔とパチュリーでした
うーーーーーーぱちゅりーーーーー☆☆☆☆☆
そしてネタがいっぱい。
『魔王』とか
甘いよ!腹筋痛いよ!
この2人は夫婦関係がよく合いますね。後日談とかあったら是非読みたいです。
まさかの横道展開に吹いた。
あと、こあくまがカワイイイ(ry
お父さん!お父さん!
脱出不可能よッ!
ごっつあんです!!