Coolier - 新生・東方創想話

東方if緋想天「蛇足の訪れ」

2010/03/30 13:28:08
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※※※

壊れていた。

何がと聞かれれば、私の家ではない。
幻想郷の境界に建っているという博麗神社が、だ。

「私の家も結構な壊れ具合だったけど…これはまた、見事なまでに崩れているな」
相変わらずの炎天下、迷いの竹林を出てからアテもなくうろついていた私の足は、いつの間にか博麗神社に向かっていた。
異変解決が巫女の仕事らしいので、何か知っているかもしれないという希望でとりあえず寄ってみた、のほうが近い。その結果がこれだ。倒壊だ。
しかし、ここ最近起きた噂さえも聞いていないのに、まるで地震に遭ってしまったような壊れ方だ。
地震よりも巫女が弾幕遊びでもして壊したというほうが真実味があるかもしれない。流石にそれが事実ではなさそうだが、あの月夜に現れて私を容赦なく倒した巫女や周りの妖怪たちならば可能性はゼロと言い切ることができなかった。私も大概に自分が化け物だと言われるような存在だとは自覚しているが、あいつらほどではないとも思っている。巫女や魔法使いや悪魔のメイドやら、同じ人間なのかと疑いたくなる。
「やっぱり巫女が壊したのかもしれない」
「誰が自分の神社を壊したって?」
「噂をすれば影」
「もとからいたわよ」
気がつかなかったが、壊れた神社の近くにあった木陰で涼んでいたらしい巫女が抗議の声を出してきた。
「それは地震のせいよ、まったく」
「地震?そんなものいつあった」
その言葉に、霊夢は信じられないとでも言うような顔で私を見る。あんな大地震に気付けなかったの?という感じだ。
しかしどう記憶を漁ってみても、私は地震なんて自然災害には被っていない。竹の被害なら遭ったんだけど。
「いろんな奴等が代わる代わる、まるで見せ物小屋のように見に来るし。終いには見物料を取るわよ、見物料」
壊れかけの賽銭箱を指差しながら、半ば本気の表情で霊夢がつぶやいた。
「私の処も突然竹に壊されたんだが、これ、異変なのか?」
「そろそろ動くわよ。もうさすがに家なしじゃ、この晴れ続きには耐えられないわー」
巫女が動く。それは神社だけが大地震に見舞われたことが異変だという意味になる。
即ち、私の家を壊れたのも異変が原因の可能性が高くなり、つまりは私の家を間接的にでも壊した犯人がいるということだ。
晴れ続き、の言葉に少し違和感を持ったが、その犯人探しには大いに賛成したい。
「なぁ巫女ってどうやって異変を起こした奴を探すんだ?」
それは少し参考にでもして私も自分でそいつをつき止めようと思って言ってみたのだが、あの問答無用巫女に対して浅はかすぎる言葉だった。
「どうって…とりあえず怪しい奴は倒す。倒して行けばいつか原因の主にあたるし」
霊夢はだるそうな顔つきで私を睨むと、分かりやすいほどに敵意を表してきた。
私は前触れもなく霊夢に初めて会った時の記憶を思い出した。うん、あの時もこの雰囲気だった。
この、容赦も遠慮も何もない、圧倒的に相手を倒すだけを目的にした雰囲気は…!!
「あんたみたいに、普段ここにはいない奴は特に怪しいのよ。手始めに倒されなさい!!」
「やっぱり薮蛇だった!」
巫女が札を取り出し、私に向かって投げ付けるのと、私が上空へ飛ぶのは同時だった。
私もすぐさま札を巫女に向かって投げ飛ばした。巫女の赤色の札が周りに散らばり、私の青の札がその隙間を埋め尽くす。互いに互いの札を避けながら、上へ下へと移動を繰り返す。
なかでも大きなアミュレットが、札を躱し続ける私を追って来た。
「ぅわっ!?」
挟みこむように襲いかかる二枚のそれを紙一重の差で避けた目の前に、勢いよく振られた巫女の幣が迫っていた。アミュレットを避けることに集中して霊夢に気がつかなかった私は避けきれず、それにまともに当たってしまう。衝撃に怯んだ僅かな隙も見逃されず、反撃も許さない容赦のない連撃が襲いかかった。
徒手に幣、針に陰陽玉も複数出すあたり、私が死んでも大丈夫だと思っているのだろう。まぁ確かにそうだけどさ。なんとなく、先程の理不尽と叫んだ鈴仙の気持ちが判った気がした。
判った気はしたけれど、それに甘んじる気はない。このまま霊夢の流れになるよりも、この手に握った一枚を消費したほうがマシだ。

スペルカード、不死「火の鳥-鳳翼天翔」!!

火の鳥を背後に顕わし、私を含めた一切のもの焼き付かせる。鳥と身体の不死の力をもってして再生する私と違い、周りはその炎にくるまれて炭へと変わってゆく。
死に、そして再び生まれた喜びから鳥は羽ばたき、それだけで飛び散る火の粉さえも弾幕の一つとして、辺りをたちまち紅蓮に染まる煉獄へと変える。
「ただでさえ暑いのに、これ以上熱くしてどうするのよ!!」
さすがに巫女というべきか、霊夢は火の鳥の直撃を反射で遠ざかることで避けていた。
「打ち水でもしてればいいだろ!!」
しかしそれだけでも、私が立ち直るのに必要な時間を充分に稼ぐことができた。スペルカードの効果がなくなる前にもう一度火の鳥を霊夢に向かわせ、それに追い討ちをかけるよう焔をばらまく。
「…ぃい加減に、しなさいっ!!」
勝てた、そう思えたのに巫女は瞬時に二重結界を展開させて、空間を歪ませることで火の鳥と札を防ぎきっていた。
それに加えて暑いのがよほど気に食わなかったのか、結界で熱を吸収した力をそのまま巨大な陰陽玉に取り込ませて投げ付けてきた。
陰陽玉は弾くには少し痛そうなので避けてから、相手のペースにならないよう牽制のための弾幕を放つ。
ここまできたら私を封じようとする二重結界の弾幕と、私の結界をこじあけようとする札と炎が入り乱れ、もはや二人の根較べになっている。
そんななか、ピキッという微かな崩壊の音を聞いた私は最後の畳み掛けに出た。片手の炎を両手に広げ、加えて両足にも炎をくべて、連打連撃を繰り返す。
途切れ途切れに聞こえていた結界の壊れる音は次第に連続したものとなり、終に硝子を砕いたような音となって結界の崩壊を知らせた。
二人の間には何の境もなくなり、届かなかった炎と札が塞き止められていた勢いを取り戻すような速さで霊夢へ躍りかかる。
諦めた巫女のくたびれた顔が一瞬だけ見えて、その次の瞬間には炎と札の連鎖反応で生じた爆発が私の視界を覆っていた。

×××

「もうしばらく動く気力がないわ…冷酒が飲みたい…」
私が使った炎の残照によりさらに暑くなった境内で、猫のように冷えた場所を探し出した霊夢が溜め息を吐いた。
「で、本当に何の手掛かりもないの?」
弾幕遊びをしている間は感じなかった猛暑に再び心身を焦がされながら、私は霊夢に質問した。残念ながら私には霊夢ほどに鋭い勘を持っているわけではない。むしろ過去を振り返る限り、私の勘はあまり当てにできない。
「だからいつも行く先々の敵を倒してけば、往々にして黒幕に辿り着くものなのよ」
「そんな辻斬りみたいなことしたくない。せめて行く方向だけでもいいから」
「んー…あ、そういえば咲夜が山の上で友人ができたとか言ってたかなぁ。なんでも地震を操るとか…そいつなら何か知ってるかも」
幻想郷にある山は、一つしかない。
あの不死の煙が立ち上ぼり、木花開耶の姉である石長姫が住まう妖怪の山。
…うん、まだ山登りはしていなかったからちょうど良い機会なのかもしれない。
「はあ、しばらく焼き鳥は食べたくないわ」
「なんだ美味しいのに」

2nd stage clear!
連続投稿です。忘れないうちにとりあえず。

次は山登りの前に山の麓に行かなければ
schlafen
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コメント



0.170簡易評価
5.90名前が無い程度の能力削除
「いい加減にしなさいっ!!」って……霊夢、お前がいい加減しろと声を大にして言いたい!
因縁つけたのお前だろうが~~~~w
8.70ずわいがに削除
やっぱ掛け合いが凄い「ぽい」んですよねぇ