海のように草木が眠り、月のように悪魔が笑う。
そんな時刻の夜の図書館に、来客が一つ。
「ちょっと頼みたいことがあってな」
その客は、箒をその辺に放り投げた。辺りに埃が舞う。
その埃と目の前の人間の視線とをうろつきつつ、周りに本が大量に積まれているテーブルに、図書館の主と向き合うように座った。
「あんたがまともに入ってくるのは珍しい」
小声でボソボソと毒を吐くのは、紅魔館の誇る魔女、パチュリー・ノーレッジ。
今会話している間も、本から目を話さない。
と言っても、別に客を拒絶しているわけでは無い、のであろう。現に、久々の来客の、面白そうな相談で、本をなぞる指が踊っている。
「今日はまともな用だからな、私はその辺はちゃんとするぞ?」
相手の様子を気にすることもなく、身を乗り出して話しだすのは、人間の魔法使い、霧雨魔理沙。
無意識な信頼と無邪気な声色で、その慣れ慣れしささえ好感へ繋げてしまう。
魔理沙とはそういう、無垢な人間だった。
「……用とやらを、話してみて」
人は頼られるといい気になる。
ましてや、無意識に誉められては、なおさら。
文にすると短いこの言葉が、どれほど珍しくも興奮に満ちているか、文章では言い表せないのが残念である。
しかし、その興奮は
「外の世界に行ってきたい」
チルノ「その必要はないね!」
パチュリー「誰だお前は!」
チルノ「野生の少女に味方する少女、チルノ!」
魔理沙「チ、チルノ、ちゃ……!」
紫「ヒューッ!」
面白くはあるけど、なんか納得行かない所が多い。
理想と現実との乖離に苦悩する魔理沙。
良いですねえ。面白いです。
ロマンとは、到達し得ない欠乏の充足を、自身が持たない手段に対する羨望によって成立するものなのかもしれないと思ったり。
でも、ラストがこれではあまりに救いがなさすぎるというか……。
どんどん底から発せられる怨嗟の声が聞きたいんだ。諦念の向こう側にある憎悪が読みたいんだ。
傍若無人で自己チューな若さ故の結果だけに救いなんか必要無い
この後魔理沙は外の世界でどのようにして過ごしたのか、気になります。
しかしもし幻想郷に帰れたなら、この魔理沙は間違いなく大魔法使いになるでしょうね。
自分の魔法を大切にするという意味で。
物語に漂ううす暗い雰囲気がとても良かったです。