Coolier - 新生・東方創想話

『らん 文 ごめんなさい』

2008/12/09 00:15:44
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「あははっ――はっ、たかだかキツネがいきがりますねぇ」
「はははっ――はんっ、カラスふぜいがほざくな!」



 ……なんだい、こりゃぁ。



 先日に行われた人間との騒動の後始末に一旦区切りをつけて、さぁ盛大に飲むぞと意気揚々に山の宴会場へとやってきた私を迎
えたのは、けんけんかーかーと喚く狐と鴉の喧騒だった。お、上手いかもしれない。……そうでもないか。
 ともかく、二匹を覆う険悪さは遅れてやってきた私でさえ、一目で容易にわかる程だ。
 なんでこんなになるまで放っておいたんだ……。

 今にも取っ組み合いを始めそうな二匹を前に呆然としていると、耳慣れた笑い声が聞こえてきた。



「にゃはは、おつかれさーん、勇儀ぃ」



 声の主は裏切り者、伊吹萃香。私よりも仕事が早く終わった彼女は、一足先に此処に着いていた。

「あぁ、どうも。なぁ、萃香よ、何がどうなってるんだい?」
「狐とてん……鴉が喧嘩してる。けんけんかーかーで喧嘩って、にゃは、にゃははははっけほっ」
「……わざわざ言い直すほど面白いもんでもないだろ。ちっ、すっかりできあがっちまってるねぇ」

 只管けたたましい笑い声をあげながら、ばんばんと私の肩を叩く萃香。
 今の彼女から建設的な話を聞くのは難しいだろうか。難しいんだろな。経験上難しいよなぁ……。
 叩く力を気付かれぬよう操り、小鬼にじゃれつかせる程度にしながら、私はもう一度舌を打った。

 酒の席において、自分以外が素面でない状況ほど面白くないものもない。

 周りを見渡しても、盃をあおるモノ、つまみを貪り喰うモノ、そして四つん這いで地につ――「吐く態勢に入るな馬鹿ものぉ!」

 一睨みし、胃の逆流を『力』で抑えつけ、出かかっていた内容物を無理やり押し戻す。
 粗相をしようとする馬鹿者にはこれ位の責め苦が丁度よい。
 泣きながら両の手を上に向けているが、この場にいるのは全て妖怪なのだ、どうと言う事はあるまい。

「あーいかわらずえっげつないねぇ。だぁら、勇儀の前じゃ潰れられないんだ」
「あんたの潰れてる所なんて私だってとんとお目にかかってないけどね。頼むから潰れんな」
「そんなに私を介抱するのが嫌かね。大変かね。仲間だって言うのにこの人でなし! って、人じゃないかにゃははははははっ!」

 絶好調の萃香。毎度の事なのだが、そろそろこの気勢が鬱陶しくなってきた。

 彼女を介抱するのは嫌ではないが大変だ。
 密と疎を繰り元あるモノを変化させる事が出来る彼女は、ある程度の酩酊状態になると自分の体を弄り出す。
 それはつまり、体は大人で頭脳は子どもで大変に悩ましくあり御馳走さ……いやいや。



「この……おとこなのこぉ!」
「な!? わ、私は女だぁ!」
「わんやんあぐだー!?」



 萃香とじゃれていると、知らぬ間に二匹の火蓋が切って落とされてしまった。おとこなのこってなんだ。



「ふん、お前だってなんだその似合わないかっこ。ぶかぶか過ぎて見る影もない!」
「て、天魔様がくれた服に何て事を! 許さないっ!」
「ゆーじぃん!?」



 仕返しとばかりに言葉で言い返すも、鴉の余りまくった袖攻撃を喰らう狐。

 鴉は頭を抑え蹲り、狐は頬を摩りながら涙目になる。私は額に手を当て唸った――「あぁ、もぅ!」

「……酒の席ではよくある事じゃないかい?」
「喧嘩は上等、結構だがね。何分、している奴らが奴らだ。加減をしらんだろう?」
「加減しなくても問題ないと思うがな。隙間妖怪の式とは言え、頭領天狗の愛弟子とは言え、此処じゃ一番弱い部類だ」

 そりゃそうだろうさ、あのナリで強いと言われても鼻で笑う。……あぁ、萃香も背格好的には変わらんか。



 二本の尻尾を逆立たせる狐に。
 ばたばたと袖を振って威嚇する鴉に。
 私は再度、低い唸り声をあげて声を零した――「ガキの喧嘩は嫌いなんだよ。そのまま仲違しちまう事が多いから」



「ばかばかばーかっ!」
「うるさいうるさいうるさーい!」



 口での攻防は、流石に鴉の方が上か。……種族どうこうと言うよりは二匹の性格かな。

 改めて二匹の情勢を確認する。
 単純な単語の連打に怯む狐。いや、お前は頭がいい筈だ。
 牙を剥き出しての威嚇に怯える鴉。なに、お前の八重歯にだって心は揺さぶられる。

 両拳を握り、負けるな頑張れと二匹に胸中で声援を送――「じゃねぇ!」

 危ない、この私をして取り込まれる所だった。
 二匹の争いを止めなくてはいけないが、この場は一旦戦線離脱。
 彼女達から放たれる、四方からの愛らしさが拡大されて破裂する。
 何を言っているかわからない? 考えるな、訳するんだ。

「――さって、どうするかねぇ……」

 二匹と一体から少し離れ、腕を組んで考える。
 手は先程以来出していないとは言え、いがみ合いを続ける彼女達は依然として一触即発。
 いいそもっとやれと萃香は手を叩いてはしゃいでいたが、二匹に視線を叩きこまれて肩を落としている。駄目な大人だ。

 そう言えば、と辺りを見回す。二匹の保護者は何処いった?
 隙間妖怪たる紫にしろ、頭領天狗の天魔にしろ、互いの配下を放っておく筈がないと思うのだけど。
 むしろ、過保護気味と聞いている奴らがこの場を見逃す手はないんだが……――と、いた。



 無数の隙間を周囲に展開させる紫と、私でさえ正視できない鬼気迫りすぎている天魔が。



 ……待て。ちょっと待て。落ち着け、あんたら。
 子狐と雛鴉のじゃれ合いならともかく、ヒトリ一種族の紫と天狗を束ねる天魔が激突すれば、この山はおろか一面が焦土になっ
てしまうじゃないか。
 と言うか、子どもの喧嘩に大人がでばるな。過保護にも程がある。

 部下でもある天魔の方が話をつけやすいのだが、抑えるのが簡単なのもまた、奴の方だ。
 ならば、距離的にも近い紫を先に宥めるべきか。
 なんで私が……畜生、だから素面は嫌なんだ。

 私は能力を発動させている紫を刺激しないよう、両手を広げ近づいた。

「なぁ、八雲の。落ちつけよ。式が馬鹿にされて怒る気持ちもわからんでもないが、喧嘩は止めるからさ」

 声をかけられ、紫は初めて私の接近に気付いたように、ゆるりと此方に視線を向けてきた。
 相変わらず掴み所のない奴だ。けれど、当然のように抜け目もない。
 彼女自身の目は私のそれとかちあっているが、隙間の中の瞳は全て二匹に向けられている。



「……止める、ですって?」



 驚いた事に、声は震えていた。
 紫のそういう類の響きに覚えはない。よほど冷静さを失っているのか。
 元から白い彼女の顔は更に白くなっていて、赤い衣装との対比で空恐ろしい姿になっている。

 ……赤い? あれ、こいつ、どうかと思う自分色の服ばっかりじゃなかったっけ。……えーと、血?

「冗談じゃないわ! 藍の泣き顔なんてそう見れるもんじゃないのよ! なによ、幾ら払えばいいの!?」
「なんでそうなる、この親馬鹿! 単なる馬鹿! その隙間の目ってただ視覚を増やしてるだけ!?」
「それ以外に何があるって言うの! お酒、貴女の目的はお酒ね! バレルで用意してやるわ!」
「開き直るなこの馬鹿者! 何を言っているかわからんが、えぇい、放せ、止めてくれるわ!」
「いやぁヤめて! もっと見たいの、愛でていたいの! だって辛抱たまらんじゃない!」
「放せ、触れるな、――このへんったいぃ!」
「びすけっとぉ!?」

 頭突き一発、黙らせる。圧縮してろ。



 紫は暫く回復しないだろう、となれば残る天魔を抑えなくては。
 一瞬、もう単に殴って黙らせてもいいんじゃないかぁとちらり考える。
 けれど、奴とて伊達に頭領と言う立場に着いてはいない、正面から素直に殴っても易々とは当たらないだろう。

 ならば後ろからいくか――そう考え、苦笑する。鬼の私が何を馬鹿な。

 ふわりと浮かびあがり、大きな木に腰掛けている天魔の元へと向かう。
 奴も紫と同じく、私の接近に気付いていないように思える。
 近付く度に、疑念は確信されていった。



「『――日、夜中の宴会場にて、雛鴉と子狐のじゃれ合い、いや、じゃれ愛が繰り広げられている。文可愛いよ文。二匹は最初の
頃、仲睦まじく自己紹介などを行っていたが、どちらも突然に怒りだし』――」



 鬼気迫る表情をしつつ、嬉々とした思いを声に変え、木々に記事を彫りこんでいる天魔。
 さすが天狗、木簡などと小さい事は云わない。山全体が手帳だなっ。
 ……一遍地獄に落ちてきやがれ。

「『いや、真実を伝えなくてはいけない。子狐も可愛らしい。それは一目瞭然なのだ。アブラゲもって近づきたい。けれど、ここ
は文。断然文。文の可愛さを押す。あぁぁ、文可愛いよ文、わざとぶかぶかの服を渡してよかったわ文、はぁぁぁぁんっ』」

 感極まり身悶えする師匠馬鹿、いや、極まった馬鹿の肩を叩く。
 至極煩わしそうに向けられる視線を笑顔でお出迎え。
 コメカミに浮かぶ青筋は不可抗力だ。

「『目の上のたんこぶ、いや、こぶなどと可愛いものか、勇儀様が肩を叩いた。笑顔だ、頗る笑顔だ、あぁだが文可愛いよ文』」
「せめて繕え、この馬鹿者……あと、お前は、あぁ、という感嘆の、後ろには、それしか、つけれん、のか」
「『不自然な区切りは力を貯めている為、恐ろしい筋力が今私に襲いかかろうとしている、あぁ文可愛』」
「――わかってんなら逃げろよこんの引きこもりぃ!」
「おーがぁ!?」

 久しぶりに渾身の一撃を見舞った。恐らく奴は都辺りまで飛んでいくだろう。暫く帰ってくんな。



 うむ、心ならずも汗をかいた。良いとは言い難いが。それでも、冷えた酒はこの火照った体をいい具合に――。



「あ、あんたなんか、もうほんとにだいっきらい!」
「わ、私だってお前なんかきらいだ! だいだいだーいきらいだっ!」
「ひどい! 三回も『だい』ってつけたぁ! なによ、私だって、ちょーきらいなんだから!」

「――ふんっだっっ!」



 ……あぁそうね。そうだよね。馬鹿者どもを黙らせても、なぁんも解決してないよね。

 頬を膨らませて罵り合い、互いにそっぽを向く二匹。
 幼子の言い合いだ、無論、それ程の本心でもないだろう。
 明日になって顔を合わせれば、どちらからともなく笑顔で挨拶を交わせるようになる。

 顔を合わせる事があれば、彼女達が人間の幼子であれば、だ。

 今喧嘩している鴉と狐は、下手をすればもう一生会わない可能性もある。
 折角、『仲睦まじく』自己紹介をし合ったと言うのに。
 それは少々、粋じゃない。

 この宴会だって先の人間との騒動――彼らからすれば鬼追いの儀式――に一区切りついたので催されたモノだ。
 その騒動にて一役買ったから八雲も招かれているが、普段の宴会であればそうはいかない。
 我々鬼が作り上げた『社会』は……時々、ほんの少し息苦しくなる。

 ……考えが飛躍しすぎた。或いは、目の前の現実から逃れようとしているのか。



 そう、要は、二匹の諍いを納めればよいのだ。そうすれば私も旨い酒が飲める。いい具合に酔える。



 ――ぱんっと左手に右拳を突き立て気合いを入れてから、私は二匹の間に降り立った。

「なぁ、鴉に狐。お前達は何故、喧嘩しているんだい?」

 背を向け会っている為、二匹からは私が見えない。
 その所為もあってか、彼女達はぴくりと一度肩を動かしたが、それ以降は何の反応も見せないように努めていた。
 幼子特有の意固地であり我慢比べ。ちらちらと動く頭と髪が此方を窺おうとしているのが丸わかりで可愛らしい。

 笑みを零した後、とっつき易いと踏んだ鴉に声を向けた。

「鴉よ。私に教えてくれないかな?」

 ちらりと振り向いた彼女と目が合う――と、すぐに首を戻しやがった。可笑しい、先ほどと違い、自然な笑みであった筈だが。

「知らないヒトとお話しちゃダメだって、天魔様が言ってた」

 言いつけを守る素直なお子さんで。……教えとけよ、天魔。

 じゃあとばかりに狐に話を振る。

「狐よ。何をむくれている。そんなに大層な事をされたのかい?」

 声に彼女はぴくりと震える。ふむ、この反応は――。

「されたんじゃない。言われたんだ」

 こいつぁまた利発なお子さんだ。……口八丁仕込むなよ、紫。



 ――二匹から返ってきた反応に、私は自身の不覚を悟り、低く笑った。



「言われたって何よ! あんたの方が先に言ったんじゃない! 天魔様が引きこもりだって!」
「なんだと、お前がその前に言っただろう!? 紫様が変態だって!」

 言い争いを再び始める二匹。どうしよう、どちらも間違ってない。

「前って何時よ、何秒何分何時間地球が何回回ったとき!?」
「九百秒前十五分前四分の一時間前、え、えと、うと!」
「ほら、わからないんじゃない!」

 ……え、地球って回るの?

「大体、天魔様は『じたくけーびいん』なのよ! そう言ってたもん!」
「くぅ、だったら、紫様だって『しゅくじょ』なんだぞ! 寝物語で言ってた!」

 紫は更に丸めて地中に沈めよう。
 天魔は帰ってきたら太宰府辺りまで飛ばしてやろう。
 はっはっは、解っていると思うが、比喩じゃぁない。大真面目だ。

「むぅぅ、嫌い、嫌い、嫌い、藍なんてだいっきらい!」
「よ、四回も言ったな! 私だって文なんてあるてぃめっと嫌いだ!」



「うぅぅ、ふぇぇぇぇぇんっ、きらいきらいきらきらいきらいっ」



 まるで『きらい』の大売り出しだ。
 うむ上手い事言った、と自分の手を打つ。
 そう、意固地で続けられる言い争いなぞ、売り払ってなくせばいいのだ。

 私の馬鹿者め。何故気付かなんだ。
 声を向けられただけで、罪悪感に肩を震わせるほど、二匹は互いに『悪い』と感じている。
 そう、そもそも、本当に『きらい』ならば、端から保護者の元に戻ればよかったのだ。

 だから、つまり、彼女達は叫びながら嘆きながら、互いに仲直りのきっかけを探している。



 思考中にも左右から浴びせられる『きらい』の弾幕。

 ふふ、なんなら私が全て買い取ってやろう、向ける先は、勿論、馬鹿フタリだ。



「――で、どうすんのさ、是。勇儀姐さん?」



 こいつに向けてもいいかもしれない。それとも、そういう意思も薄くされてしまうだろうか。……ん?

「……お前なら、幼子程度の意思を『疎』にする事も出来たんじゃないのか?」

 半眼を向け小声で尋ねると、萃香は肩を竦めて同じく小さく返してきた。

「さぁ、やった事ないからわかんない。大体、その手の意思をどうこうするのって、粋かい?」

 む、と考え、即刻首を振る。

「粋じゃないねぇ。……ふむ、けれど、どうしたもんかね」
「仲直りしたけりゃ互いに謝りゃいんだよ。簡単簡単」
「ふん、わかっていたのか。だが、それが出来たら苦労はしないだろうさ。面と向って謝罪なんて、……ふむ」
「こちとらお子様なんでね。……まぁ、確かに拗れちゃってるもんねぇ。難しいかなって、どうしたん?」
「そうだ、面と向かわなけりゃいいんだ。萃香、ちょいと『力』を使ってくれ」



 お、どういう事だい?――首を傾げる萃香に、私は笑いながら囁いた。










「……思い出した。確かに、そんな事もありましたっけ」

 顔にこれ程はないとばかりの渋面を張りつかせ、隙間の式・八雲藍が言う。

 漸くか、と小さく笑ってやると、まだ先があった渋面を浮かべて見せる。

 ――ひゅんと鋭い風が、酒で少し火照った頬を凪いだ。

「なになに、何の話ですかー?」

 出所は、博麗の巫女と紫と萃香と宴会の追加食材を買い出しに行っていた、鴉天狗の射命丸文。

「お前だけか? 紫様達はどうした?」
「なんでも香霖堂に用があるようで。私は面倒だから抜け出し……げ、勇儀様……」
「はは、せめて繕いな。そんなに鬼と一緒が厭かい?」
「いえいえ滅相もない。前門の萃香様、後門の勇儀様ならば、勇儀様を取ろうと思った次第で」
「それ、どっちにしろ禍の例えだと思うんだが……」

 藍の突っ込みに、黙って黙ってと動作で示す文。

「ほほぅ、私がわからないとでも思ったか?」
「あやややや、まさかまさか。あ、で、何の話をされていたんでしょう。私、とっても気になりますわ」
「一難去ってまた一難……」
「言ってくれるねぇ、藍。私の話は一難かね?」
「……そうですね。人間で言うならば、遠い親戚に『お前は何歳まで寝小便していたよ』と言われる感覚に近いかと」



 違いない、と私は笑い、首を傾げる文に掻い摘んで話してやった。



「ち、ちょっと待ってください! 私にはそんな覚えなぞ何処にも」
「全く覚えがないと? まぁ、私の事も覚えていなかったしな。けれど、事実なら構わんが、もし欠片でも覚えているなら……」
「あぁぁぁぁ、性質が悪い、このヒトも性質が悪い! ねぇ、藍さん!」

 全くだ、と額に手を当て、藍は頭を横に振る。

「ふふ、そう言うな。それと、余り大声を出してくれるなよ。二匹が起きてしまう」
「……此方に移ってくれるなら起きてほしい位なんですがね」
「なるほど。彼女達二匹が同じように喧嘩して、昔話を思い出したんですか」

 私の両膝で眠る小猫と幼狼の二匹を覗き込みながら、子狐と雛鴉だった二匹は思い思いの言葉を零す。

「その通りだ。――尤も、お前達と違う所が二つあるがね」
「ほう、それは私も知りませんでした。違いとはなんですか?」
「一つ。お前達と違い、長所を褒め合っていたら喧嘩しだした。好かれているじゃないか」
「……いや、まぁ、その、やっはは、どうしたもんですかね。や、で、もう一つは何でしょう、ささお早く」
「くく、酒とその表情に免じて許してやろう。――是らが、一つだ。この子達は、どうやらお前達よりも賢いようだね」

 言いつつ、二枚の半紙を半信半疑の藍と文に向けてやる。

『椛、ご免なさい』。
『橙さん、御免なさい』。

「……差異が分かりかねます。確かに、橙はアルティメット可愛い子なんで異論はありませんが」
「……えーと、何がどう、私達よりも賢いんです? いえまぁ、椛さんは超エリートなんで構わないんですが」
「ははっ、全く……馬鹿はあいつらに似たのかね。――思い出せ、子狐、雛鴉。お前達は、萃香に用意させた木簡にどう書いた?」

 旨い酒を飲みながら、いい具合に酔った……いや、酔っている私は、二匹に至極上機嫌な笑みを向けた。

 ――二匹は、互いに顔を見合わせ、……ぽんっと自らの手を叩く。



「『らん』」



「『文』」





「『ごめんなさい』!」











                      <了>
十三度目まして。

あ、ありのままに起こった事を話すぜ! 俺は確か椛と文のお話を(ry。
それと、メインはおフタリで、姐さんは添えるだけ……だった筈なのに(ry。

藍様とあやや、このフタリは色々と似ていると思ったのがお話の原点です。
保護者がいたり。従者(っぽいの)がいたり。何時からいるのかわからなかったり。
文花帖の藍様の頁を眺めてもひっくり返しても透かしても、「初めまして」の言葉が見当たらなかったので、妄想してみました。

悪友と言う表現が似合うおフタリになるきっかけのお話、と思って頂けると。

あと。天魔様ごめんなさい(ゆかりんは?)(もう謝っても許して貰ないと思うの……)

以上

08/12/10 誤字修正。煉獄様、37様、ご報告ありがとうございます。
       前者はタイプミスですが、後者はまんま言葉のミスですね。字の意味考えろよ、俺……。
道標
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コメント



0.2550簡易評価
9.80名前が無い程度の能力削除
いいぞベイベー!
きらいの応酬をするだけなのはただの幼子だ!
内心悪いと思っていても止められないのはよく訓練された幼子だ!
ホント、子供の口喧嘩は地獄だぜ!フゥハハー
19.80煉獄削除
まだ幼い頃の藍と文の喧嘩が可愛らしい。
しかし紫様と天魔の過保護というかなんというか。
愛し方が凄いですねぇ。

誤字の報告
>棟梁天狗の天魔にしろ~
頭領ですよね?誤字してましたよ。
25.90名前が無い程度の能力削除
乱文ごめんなさいっていみかとおもったぜ
32.90四兄弟長男削除
>25
をいをいそりゃねーよwwwむしろ俺はタイトルになんかホラーチックなものを感じたぜ・・・・・・サイレントヒルとかのやりすぎか?それともサイレン?

しっかしガキの喧嘩はホントシャレになんないな。チャンと仲直りをさせることのできる性格にはやく成りたいぜ・・・
35.100謳魚削除
勇儀姐さんは萃香の嫁!(これだけは言っとかないと)
藍しゃまと文ちゃんがツンツンしてからひたすらデレる御話かと思いましたよ。
あと天魔様は駄目っ娘と把握。
37.100名前が無い程度の能力削除
>俄然文。
これはわざとか?わざとだよな?
突然文。とか意味わからんよな?
断然だよな?

最近幼女藍がお気に入り。テラモエス
42.100名前が無い程度の能力削除
うはっ
最高ですww
46.100名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤww
49.100名前が無い程度の能力削除
紫様藍様をくれ・・・・
61.100sas削除
イイ!