「ふぁにゅ……ん」
ベットの上で大きく伸びをする
窓から見える景色は暗い、ごつごつした岩肌の天井、そして橋
「きっと地上は今日も良い天気なんでしょうね、妬ましい」
ルーチンワークと化している朝食代わりの軽い嫉妬を腹に溜め、起き上がる
いつも通りの気持ちのいい朝だった
身支度を整えて外に出るが、やる事など無いに等しい
一日中、渡る者もいない橋の上でただ過ごすだけ
橋の向こうには地上まで繋がった長い長い縦穴があるのだが、たまにスキマから迷い込んだモノが居ても上の方にある蜘蛛の巣にかかってここに来る頃には骨になっている
まぁ普通の人間なら、奇跡的に蜘蛛の巣をくぐり抜けてきたとしても落下の衝撃でゲームオーバーなのだが
そんな訳で、この橋を渡る者は居ない
ここが閉じられてからどれくらい経ったのか……もう忘れてしまった
「ねぇパルスィ、たまには一緒に遊ぼうよ」
ふいに、糸を垂らして降りてきたヤマメがそう言ってきた
遅れてキスメも降ってくる
「残念だけれど、私には仕事があるの」
「ぶー。いっつもそう言うけど仕事なんてしてないじゃん!」
「ここに居る事が私の仕事なのよ」
釈然としないが納得できなくもない、そんな表情を浮かべるヤマメにキスメが言う
「お酒買ってきて橋の上で宴会しようよ、そしたらパルスィだって参加するでしょ?」
「お願いだからやめて」
すかさず制止した
こいつらに宴会なんて開かれた日には、そして宴会と聞いて勇儀も来ようものなら、2,3日は続くに決まってる
そんなノリについていける程、今の私は元気じゃない
__昔の私なら
ふいにそんな事を思ってしまった
人間の嫉妬を煽り、貪り、活き活きとしていたあの頃の私なら、と
……己のほんの微かな嫉妬を喰らう、まるで霞を喰らって生きる仙人のような存在になってしまった自分と比べてしまった
「……とにかく、迷惑だからやめてちょうだい」
そう言って二人を突き放し自宅の方へと歩き出す
「仕事がないのは確かね、今日はもう休むわ」
ひらひらと手を軽く振り、背中を向けて歩きだした……その時だった
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
耳が痛くなるほどの地鳴りが響きわたり、大地が揺れる!
そこかしこに亀裂が入り、そこから熱湯が噴き上がっていく!
「何よこれ……」
「なんだろ……勇儀が大暴れしたとか?」
「相手は誰よ?アイツが本気で喧嘩できるほどの相手なんて居ないでしょ!?」
ゴゴゴゴゴ……
地鳴りはゆっくりと収束していき……
「……一体何だったのy」
収まったかと思った次の瞬間、橋の向こう、縦穴の直下から巨大な間欠泉が噴き上がり天に昇っていった
その勢いは凄まじく、ヤマメの巣は吹き飛ばされ、袂にかかった橋も当然の様に吹き飛んだのであった
「……」
どれくらい続いただろう
数十分か、数時間か……もしかしたら数分だったのかもしれないが
間欠泉の勢いは静まり、辺りに残ったのは水嵩を増して成長した川と、縦穴から吹き込む空気の流れ
「いやー凄かったね!!」
テンションの上がったヤマメがはしゃいでいるのを他所に、パルスィは放心していた
「……私の橋が」
「橋なら私が最高のを建て直してあげるさ!それよりもさ!ほら!」
縦穴の先、自分の巣のあった方向を指さして
「さっきので地上につながる穴があいたかも!きっとなにか面白い事があるよ!」
小躍りしそうな上機嫌で言ってくる
「……そうね」
暗い穴の先を見つめながらそう言った
「とにかく私、行ってみるから!」
キスメを連れて飛び出したヤマメは、糸を貼りながら一気に縦穴を駆け上がっていった
「まったく……でも、そうね」
これで、地上側から何かしらのアクションは起こるだろう
ヤマメのいう様に、面白い事が起きるかもれない
__そうか、自分は退屈していたのだ
変化のない毎日を繰り返し、渡る者のない橋を見守り続ける日々が、終わる
それは、想像するだけでとても幸せで、幸せで
「……とっても、嫉ましいわ」
堪え切れず、笑みがこぼれたのだった
ベットの上で大きく伸びをする
窓から見える景色は暗い、ごつごつした岩肌の天井、そして橋
「きっと地上は今日も良い天気なんでしょうね、妬ましい」
ルーチンワークと化している朝食代わりの軽い嫉妬を腹に溜め、起き上がる
いつも通りの気持ちのいい朝だった
身支度を整えて外に出るが、やる事など無いに等しい
一日中、渡る者もいない橋の上でただ過ごすだけ
橋の向こうには地上まで繋がった長い長い縦穴があるのだが、たまにスキマから迷い込んだモノが居ても上の方にある蜘蛛の巣にかかってここに来る頃には骨になっている
まぁ普通の人間なら、奇跡的に蜘蛛の巣をくぐり抜けてきたとしても落下の衝撃でゲームオーバーなのだが
そんな訳で、この橋を渡る者は居ない
ここが閉じられてからどれくらい経ったのか……もう忘れてしまった
「ねぇパルスィ、たまには一緒に遊ぼうよ」
ふいに、糸を垂らして降りてきたヤマメがそう言ってきた
遅れてキスメも降ってくる
「残念だけれど、私には仕事があるの」
「ぶー。いっつもそう言うけど仕事なんてしてないじゃん!」
「ここに居る事が私の仕事なのよ」
釈然としないが納得できなくもない、そんな表情を浮かべるヤマメにキスメが言う
「お酒買ってきて橋の上で宴会しようよ、そしたらパルスィだって参加するでしょ?」
「お願いだからやめて」
すかさず制止した
こいつらに宴会なんて開かれた日には、そして宴会と聞いて勇儀も来ようものなら、2,3日は続くに決まってる
そんなノリについていける程、今の私は元気じゃない
__昔の私なら
ふいにそんな事を思ってしまった
人間の嫉妬を煽り、貪り、活き活きとしていたあの頃の私なら、と
……己のほんの微かな嫉妬を喰らう、まるで霞を喰らって生きる仙人のような存在になってしまった自分と比べてしまった
「……とにかく、迷惑だからやめてちょうだい」
そう言って二人を突き放し自宅の方へと歩き出す
「仕事がないのは確かね、今日はもう休むわ」
ひらひらと手を軽く振り、背中を向けて歩きだした……その時だった
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
耳が痛くなるほどの地鳴りが響きわたり、大地が揺れる!
そこかしこに亀裂が入り、そこから熱湯が噴き上がっていく!
「何よこれ……」
「なんだろ……勇儀が大暴れしたとか?」
「相手は誰よ?アイツが本気で喧嘩できるほどの相手なんて居ないでしょ!?」
ゴゴゴゴゴ……
地鳴りはゆっくりと収束していき……
「……一体何だったのy」
収まったかと思った次の瞬間、橋の向こう、縦穴の直下から巨大な間欠泉が噴き上がり天に昇っていった
その勢いは凄まじく、ヤマメの巣は吹き飛ばされ、袂にかかった橋も当然の様に吹き飛んだのであった
「……」
どれくらい続いただろう
数十分か、数時間か……もしかしたら数分だったのかもしれないが
間欠泉の勢いは静まり、辺りに残ったのは水嵩を増して成長した川と、縦穴から吹き込む空気の流れ
「いやー凄かったね!!」
テンションの上がったヤマメがはしゃいでいるのを他所に、パルスィは放心していた
「……私の橋が」
「橋なら私が最高のを建て直してあげるさ!それよりもさ!ほら!」
縦穴の先、自分の巣のあった方向を指さして
「さっきので地上につながる穴があいたかも!きっとなにか面白い事があるよ!」
小躍りしそうな上機嫌で言ってくる
「……そうね」
暗い穴の先を見つめながらそう言った
「とにかく私、行ってみるから!」
キスメを連れて飛び出したヤマメは、糸を貼りながら一気に縦穴を駆け上がっていった
「まったく……でも、そうね」
これで、地上側から何かしらのアクションは起こるだろう
ヤマメのいう様に、面白い事が起きるかもれない
__そうか、自分は退屈していたのだ
変化のない毎日を繰り返し、渡る者のない橋を見守り続ける日々が、終わる
それは、想像するだけでとても幸せで、幸せで
「……とっても、嫉ましいわ」
堪え切れず、笑みがこぼれたのだった
もうちょっと起承転結をはっきりした方が良いかと。
面白かったです