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ある物は見た、霧の中に佇む巨大な物体を。
ある物は見た、両手を大きく広げた巨大な影を。
そして博麗霊夢は見た、今まさに神社に降臨した――。
「茶をよこすがいい!」
世紀末覇者を。
「なんでやねん」
霊夢の口から漏れ出るツッコミの声、
意思とは別にひるがえるその右手。
「というか、キモい……王道を通り越して覇道にでも目覚めたのかしら?」
筋骨隆々の世紀末覇者ではあったが、服装は明らかにどこぞの魔法使いである、
頭の上には三角帽子が乗っており、左手には箒が握られていた、
服のサイズだけは変わらずにピチピチのせいか、体格が服の上からでもよく分かる。
「(これは異変なの?)」
それは難しい判断であった、もしかしたら世紀末覇者に似た人が、
魔理沙のコスプレをしているだけなのかもしれない、あるいは魔理沙が
世紀末覇者になる成分を含んだキノコを食べただけなのかもしれない。
「とりあえず……はい、お茶」
「うむ」
「だいぶ肩がこりそうな体ねー……1、2、3、4」
というわけで霊夢が取った行動とは、肩叩きと。
「5、6」
「効かぬ……効かぬのだ……」
「7!」
テーレッテー。
― 極東非葬天即
公式が世紀末? ならば我らも世紀末 ―
「し、死ぬかと思ったぜ……」
「無事に元に戻れてよかったじゃない」
「……どこが無事なんだどこが」
まばゆい閃光の後、世紀末覇者はぶじ元の魔法使いの姿へと戻った、
多少全身が焼け焦げたり衣服がボロボロではあるのだが。
「それで結局何があったのよ?」
「ん……朝起きたらラオウだった、そんだけだ」
「異変かしら」
「さあな」
魔理沙から得た情報だけでは異変かどうかの判断は難しいようだ、
霊夢は一度頭を捻りながらも、一度お茶を啜って情報を整理する事にした。
「ナギッ」
「ぶふっ!!」
しかし、それを許さないのが世紀末である。
「けほけほっ……ト、トキ!?」
「待て、あのぱっつんぱっつんな服装は衣玖さんじゃないのか?」
「あ、本当だ」
トキが衣玖さんの格好をしている、あるいは衣玖さんがトキになっている、
その微妙な線のまま、彼、あるいは彼女は天をフィーバーポーズで指差した。
「お前達にも見えるはずだ……あの死兆星が!」
「くっ! トキなのか衣玖さんなのか微妙すぎるぜ!」
「というか今昼だから星なんて見えないんだけど」
「捕らえられまい――」
『消えたっ!?』
まるで流水のごとく軽やかに消え、一陣の風が二人の間を駆け抜けた。
「もしかして、今のはなにかの警告なのか?」
「仕事熱心ね」
「よし、んじゃ異変を解決しにいくか!」
「いってらっしゃーい」
「来ないのかよ!」
「うん、だってまだ大した事起きてないし」
のんびりと茶を啜る霊夢を見て魔理沙はため息をつく、
いつも異変解決に動き出すのは決まって大変な事になってから、
それを思い出してか、魔理沙は説得するそぶりすら見せずに飛び去った。
「(それに……見えるのよね)」
霊夢には見えていた、昼だというのに空に浮かぶ七つの星と、その傍らに佇む一つの星が。
―――――
「というわけで私は今アリスと紅魔館の前に来ているわけだが」
「やけに説明口調なのね」
「説明したくもなるぜ、この状況だとな」
「……確かにねぇ」
紅魔館の門前、魔理沙とアリスの前に立っている一人の門番、
その長髪と、武術の達人というのが一目で見て取れる身体、
二人の前に立っていたのは、まさしく南斗孤鷲拳の伝承者であった。
「服装は美鈴なんだな」
「あの……中身もです」
『KINGはそんなこと言わない!!』
「そんな勝手な!!」
目の前の門番は外見こそシンであるものの、中身は完全に美鈴であった、
魔理沙や衣玖さんのように内面まで変わっている様子は無い。
「あのー……これって元の姿に戻れるんでしょうか?」
「うわ、きもい」
「これはきもいわ」
「酷いです!」
痛烈な一言にショックを隠せない美鈴、彼女からすれば普通の行為ではあるが、
魔理沙達からすればシンが苦笑いを浮かべながら下手に出ているようにしか見えないのだ。
「とりあえずあれだ、戻す方法はある」
「本当ですか!!」
「退治されれば戻れる、私がそうだった」
「えっ、それはつまり……?」
「ちょっとやられてくれ」
「ですよねー!」
そして美鈴は二人がかり叩きのめされ、
無事では無きにしろ、元の姿に戻る、そのはずであった。
「南斗獄屠拳!!」
「ぐはっ!」
「魔理沙っ!」
だがシンの体に染み付いた南斗孤鷲拳伝承者としての記憶がそれを許さないのか、
倒されるどころか二人を圧倒する戦闘力を見せ付ける。
「あの、大丈夫ですか?」
「自分でやっといて何を言ってるのよ!」
「そ、そんな! だって体が勝手に!」
「この鬼! 悪魔! あんたなんか屋上から飛び降りて死んじゃえばいいのよ!!」
「さらばだー!!」
「本当にいったぁ!?」
一分後、屋上から身投げしたシンは美鈴の姿となって発見された。
「その顔は安らぎに満ちていたという」
「死んでませんから!! ちょっと気を失ってただけですから!」
「ちっ」
「何で舌打ちするんですか!」
「まあいいじゃないか、元に戻れたし」
「そうよ、結果オーライよ」
「それは……そうですけど……」
こうして紅魔館の異変は収まった、
あとは異変の元凶を突き止めるだけである。
「で、なんでシンになったんだ?」
「朝起きたらなってたんですよ、びっくりしました」
「私のように闘気のあふれるキノコを食べたとかはないのか?」
「ありませんよ! というかそんな物騒なもの食べないでください!」
魔理沙がラオウになった原因は自業自得でした。
「というか、異変の元凶ってあれじゃないんですか?」
「あれって?」
「ほら、あれですよ、霧の中の……」
美鈴に指差されて後ろを振り向くと、霧の中に佇む巨大な建築物が視界に入る、
「……どう見てもあれだよな」
「普通はすぐに気づきません?」
「よし、行くぞアリス! 美鈴! 異変の解決はすぐそこだ!」
「(誤魔化された!)」
―――――
それは、ただひたすらに巨大で、三角形な建築物だった、
本来の名を呼ぶのならば、ピラミッドという他は無かった。
「洩矢様……あなたの聖帝核融合炉はもうすぐ完成します!」
どこか遠くを見つめながら、うつほはそう呟いた。
「間違いなくこれが異変の元凶だな」
「でしょう?」
「む、何者だ!」
うつほは魔理沙一行に気づき、その前へと降り立った。
「あれ、サウザーになってないぞ」
「サウザーなら他にもっと適任がいるんじゃない?」
主に竹林に。
「今頃どうにかしにきたようだけど、少しばかり遅かったわね、
この聖帝核融合炉はもうすぐ完成を迎える!」
「なんだって!」
「あれをみなさい!」
そういってうつほが制御棒で指した先には、
大きな諏訪子帽を背負ってピラミッドの頂点近くまで登っている妖精の姿があった。
「あれはチルノちゃん!? なんて酷い事を!」
「ふん、酷いだって? チルノは自分からあれを背負って登っているのよ!」
「そんな! あんな苦行を自分からするなんて!」
「はぁはぁ……、これをもってピラミッドの頂上に立てばあたいが最強よね!!」
「騙されてるっ!!」
美鈴の思いも空しく、チルノは最後の一段を踏み越えてその頂上に立った。
「いまだ! 北斗剛掌波!」
「やったー! これであたいが最――」
『チルノォーーー!!』
うつほの制御棒から発射された闘気によってチルノは消し飛んだ、
彼女が背負っていた諏訪子帽だけがその場に残り、ピラミッドの頂点に君臨する。
「ふふはははははは! とうとう完成したわ! 聖帝核融合炉が!」
「よくも……よくもチルノちゃんを!」
「かかってくる気? いいわよ、三人まとめて相手してあげるわ!
うつほは一切臆することなく三人を睨みつける。
「くっ、私はまだ傷が癒えてない……アリス、美鈴の援護をしてやってくれ」
「…………」
「アリス?」
「…………」
魔理沙の問いかけにアリスは、まったく反応を示さない、
その顔の前で手を振るがぴくりとも動く気配が無い。
「フリーズでもしたのか?」
「魔理沙さん! アリスさんを連れて下がっていてください!」
「……一人で大丈夫なのか?」
「大丈夫です! 北斗の拳は全巻読破してますから!」
そう語った美鈴の背中は、どことなく逞しく映った。
「ふん、一人でいいの? 洩矢様から北斗の拳の力を賜った私は……最強よ!」
「あなたの技は所詮まがい物……この私が本物を見せてあげるわ!」
「まがい物かどうかその身で確かめてみるがいい! 北斗剛掌波!!」
「静水をもって激流を制す……北斗流弧陣!」
うつほから放たれる闘気の塊、しかし美鈴は両腕で円を描くと、
その闘気を上手く流れに乗せてうつほへと跳ね返す。
「いいっ!?」
「闘勁呼法!!」
「うわわ! 反則だよそんなの!!」
うつほは必死に身を翻してピラミッドの上へと避難する、
しかし美鈴の放った闘勁呼法がピラミッドに当たり、一部を破壊した。
「よくも聖帝核融合炉に傷を……!」
「北斗の拳の力を賜っただけでは、四千年の歴史を継いだ私には勝てないわよ?」
「そんな! そんなことがあるもんか! 南斗鶴翼迅斬!!」
「これで終わりよ! 北斗飛衛拳!!」
飛び掛るうつほを、美鈴の足が真っ直ぐに捕らえた、
くの時に折れ曲がったその身体は、そのままの勢いでピラミッドへと叩きつけられる。
「かはっ――!」
「……決着ね」
「ま、まだだ……まだ終わっていない!」
うつほは全身を貫く痛みを無理矢理に抑えつけて立ち上がる、
圧倒的な力量差があってもなお、戦う事をやめない。
「八咫烏に逃走は無いのだっ!!」
最後の力を振り絞ってうつほは羽ばたいた、
全身から溢れる闘気が鳳凰の姿となって美鈴に襲い掛かる。
「わかりました……せめて奥義で葬りましょう」
美鈴は襲いくる鳳凰を感じ取りながらも目を閉じ、
ゆっくりと、流れるような動きで両の手を打ち合わせた。
「北斗有情断迅拳!!」
―――――
「終わったな」
「ええ、終わったわね」
戦いの決着を魔理沙とアリスは見届けた、
長い長い北斗異変もこれで終わるのだ、そう安堵しながら……。
「……ん? なんか地面が揺れてないか?」
しかし異変はまだ終わっていなかった!
「見て魔理沙! ピラミッドが!」
「へ、変形していく!?」
地面を揺らしながらピラミッドはトランスフォームを遂げる、
やがて揺れが収まると、二人の前には巨大な人の姿をした物体が立っていた。
「な、なんなんだこれは……!」
「巨大な人形?」
大きく聳え立つそれは、もはやピラミッドの面影などどこにもありはしなかった。
「非想天則ぅー! 発進!!」
「念願の! 巨大ロボを手に入れたぞー!」
そして全ての異変の発端は、守矢の神社の神二人、
北斗異変も、核融合炉も全てはこの為にあったのだ。
「あの巫女に苦渋を舐めさせられ続けたこの屈辱を!」
「今こそ晴らすときが来たのだ!」
非想天則は一度両の手を上げてその存在を幻想郷中に知らしめたかと思うと、
すぐに右手を突き出してその手に核の力を溜め始める。
「こ、攻撃する気なのか!?」
「いけない! あの先には博麗神社が!」
二人はその企みに気づくが、もはや時すでに遅し。
「充電完了! 神の怒りを思い知りなさい!」
「ペタフレア砲! 発射ーっ!!」
直後、博麗神社は巨大な爆炎に包まれた、
嗚呼、霊夢の見た死兆星は本物だったのだ。
「ああ……終わったな」
「ええ……終わったわね」
「かしこみかしこみだな」
「かしこみかしこみね」
魔理沙とアリスは何かを悟ったような目で十字を切ると、
神社から立ち上るキノコ雲を一瞥し、その場を立ち去った。
「勝った……東方二柱伝、完!!」
「あ、あれ!? レーダーに反応! 神社から何か来るよ!?」
恐み恐みも白す 御巫女様 と宣る
「思っていたよりもしぶといみたいね、非想天則の力、思い知るがいい!」
「ペタフレア砲再充電! もう一発行くよー!!」
恐み恐みも白す 御巫女様 生ひ人逝き
「……どうしたの、早く打ちなさいよ!」
「あれ? 非想天則の右腕が無くなってるよ?」
恐み恐みも白す 御巫女様 負ひ一息
「何を馬鹿なことを言ってるの! 巫女が一瞬で壊したと……で、も――」
「……ああ……綺麗――」
恐申し給ひ 恐申し給ひ 恐恐 かかかかかかか――。
―――――
「平和が戻ったな……」
「そうね、紅茶が美味しいわ」
魔法の森の奥、ひっそりと佇むアリス邸で二人だけのお茶会、
一日限りの異変は博麗の巫女によって解決された、
二人はその事実だけを受け止めて、他は全て忘れる事にしたのだ。
「しかし……何か忘れてるような気がするんだよな」
「そうよね、私も何か忘れてるような……」
しかし、異変は本当に収束したのだろうか、
まだ彼女達が見過ごしている異変があるのではないのだろうか。
「えーと、ここまで出てるんだよな……西じゃなくて、北じゃなくて」
「なんだったかしら、鉢じゃなくて植でもなくて……」
「――覚悟は良いか?」
『はっ!』
彼女達の戦いは――終わらない。
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退かぬ!媚びぬ!省みぬ!
天則が意思あるなにかになっちゃうよっ!?
お前は世紀末で修行でもしてきたのか?
気がついたらコンボの〆にコレしか使ってない件
フゥハァデュクシナギッ ボウフウニミヲマカセボウフウニミヲカマセボウフウニミヲマカセ
ドウカフゥハァデュクシテンショーヒャクレツケンキィーンホクトウジョウダンジンケンデュクシギュイーンテーレッテーホクトウジョウハガンケンハアアアン
FATALK.O.
ハンニンマエノワザデハオレハタオセンゾ ウィーンイクゥ
事実だから困るww
作者さんヤリコミミセタワー
大丈夫、美鈴が某旦那を連れてくれば何とか…!
MUGENのAI戦ならフルボッコがありえるぞい
霊夢の発狂後光…
あ り が た や
テーレッテー テーレッテー テーレッテー
これはひどいwwww
最後鬼巫女かと思ったらzatsuzaかwww
歌詞だけだと分からんねw
後光を背負う巫女を静めるのに一体どれだけの100円が必要になるのか・・・
いよいよもって死ぬがよい。
そしてさようなら。