異変。
兆候もなく突然起こる。
今までいろんな異変があったが、今回は静かにひっそりと異変が始まっていた。
「あぁあ、疲れた・・・」
私、霧雨 魔理沙。
新しい魔法の研究をしていて、徹夜をしてしまった。
まぁ、いつものことでもある。
それから、どうしたっけ。
一眠りして、起きたら夕方だったような・・・
「ん、もうこんな時間か」
出かける用事も無いので、風呂に入りもう一度寝ることにした。
明日は何しようか、そんなことを考えつつ眠りに付く。
翌朝、いつもより早い時間に目を覚ます。
妙に体が重かったが、すぐに気にならなくなってしまった。
「アリスんとこで、お茶でももらうかなぁ」
いつもの服に着替え、帽子をかぶる。
箒にまたがり、一路飛ぶ。
「お~い、アリス~お茶飲みにきてやったぞ~」
いつもの、挨拶。
いつもなら、(飲みにこなくてもいいわよ)なんて、悪態つきながらも招いてくれるツンなアリスが来てくれるんだけど。
「どちらさまですか?」
なんて、ポカンとした顔でアリスが私を見る。
「どちらって、魔理沙様だぜ?」
「ま・・りさ?」
はて、といった感じで首をかしげるアリス。
「えっと、今忙しいので大した用事でなければ、お引取り下さい」
なんて、警戒心丸出しで玄関を閉められた。
「なんだよ・・・アリスのやつ」
煮え切らない感じで、仕方なくその場を後にする。
気分は乗らないが、仕方なく霊夢のところへ顔を出す。
文句を言われるだろうけど、お茶ぐらいは出してくれるだろう。
「お~い霊夢、来てやったぜ~」
掃除をしていた霊夢を見つけ、挨拶をする。
「あんた、誰?」
私を見るなり、そう答える。
「は?何いってんだ、霊夢、ほら魔理沙だよ」
「まりさ?さっき魔理沙なら紅魔館のほうへ飛んでったわよ?」
「え、あ?」
「だから、あんた誰?」
「あ、いや・・・忙しそうだしまた後にする」
ひとまずここは、逃げる。
空を飛びながらぼんやり飛ぶ。
他にも、思いつく人のところへ行っては見たが、決まって私のことを知らぬ存ぜぬの一点張り、さらに別に「魔理沙」が居るらしい。
「私が偽者ってことになってきてるなぁ」
ともかく、一度家に戻ろう。
疲労感も感じはじめ、家へと飛ぶ。
玄関を開けようとすると、中から話し声が聞こえた。
「それで、あんたは偽者を知らないのね」
「あぁ、知らないぜ?」
「あ、霊夢、私のところへもその偽者来たわよ」
「アリスのところへも?ふ~ん」
中から、霊夢とアリスの声はわかる。わかるけど・・・
もう一人は誰・・・?
恐る恐る、窓から覗くと私とそっくりなんてレベルじゃなくて、同じ私が居た。
一瞬心が凍った感じだ。
すると、魔理沙がこっちの方を見た。
「あ、誰かいるぜ!」
(まずい、わかんないけど、今とてもまずい!)
慌てて、木の陰に身を隠す。
ちょっとしてから、3人が中から出てきた。
「誰も居ないじゃない、魔理沙」
「ねぇ、霊夢とりあえず様子を見るってことでいいんじゃないかしら?」
「そうね、被害も出てないし、何かあったら教えなさいよ魔理沙」
「おぅ」
そんなやり取りをしてから、霊夢とアリスが帰っていった。
魔理沙は2人を見送るとこちらに顔を向ける。
隠れてはいるから、わからないとは思うが。
距離もあるし、大丈夫。
じっと、こっちを見る魔理沙。
すると、ニタァっと一つ笑うと家へと入っていった。
背筋がゾっとした。
「はっはっ・・・」
呼吸が荒くなる、あいつはまずい!そう本能が叫ぶ。
(どうする!どうする!)
胸に手を当て、落ち着けと自分に言う。
家には戻れない。
ひとまず、森の中へと進む。
(間違いなく、あいつが偽者で私の代わりになってる)
それは確かなこと。
(でも、なんで皆、一目で私が偽者だと判断したんだろう)
それが一番の謎である、手当たり次第の人に聞いてみたけど、誰もが私を偽者扱いになっていた。
(異変・・・だよな)
立ち止まり、異変ならどうするか、考える。
(一番頼りになる、霊夢にはもう会えない、たぶん会った瞬間封印される勢いだし)
同じ理由で、アリスも駄目。
(と、なると・・・自分でなんとかするしかないってことか)
とは、言うものの・・・相手が何かもわからない、あの感じからしてまともに戦っても勝てないだろう。
(パチュリー・・・なら、知ってるかも)
でも、パチュリーも私を偽者扱いしていた。
(普通に行っても、相手にされなかったしな)
そう、一応パチュリーにも会っては見た。
私が会う前に、あの魔理沙が会っていたらしく、私が行くなり敵意むき出しだったし。
「はぁ・・」
パチュリーかぁ・・・スキマもいまいち会えないし。
でも、どうやってあの図書館に入るかだが・・・
「この格好じゃまずいな」
いつもの、白黒のこの格好。
「変装すれば、意外と騙されるんじゃないかな」
ともかく、行動あるのみだ。
私が魔理沙と名乗るから問題が起こるんだ。
なら、魔理沙に似ている誰かに変装すれば・・・
そう思いつき、人里で適当に服を買う。
髪をトップで縛り、黒のラフなシャツ、黒のスカートに着替える。
「なんとかなることを願うか」
箒にまたがり、紅魔館へと向かう。
あくまで、魔理沙じゃない振る舞いをしなければならない。
門番に挨拶をし、パチュリーに用があることを伝えると、意外とすんなり中に通してくれた。
まぁ、私が魔理沙ではないということになってるから、当たり前といった感じもするが。
「おじゃまします」
図書館に入る。
いつものようにパチュリーが本を読んでいた。
私を見ると、どこか微笑みのようなものを見せると、座るよう促された。
淹れたての紅茶を出される、とてもいい香りだ。
「それで、私に何の用?」
いつもの態度と違い、本を閉じ優しい雰囲気だ。
「あ、えっと、知恵を借りたくて」
「あら、私に?」
「えぇ、自分そっくりな姿で本人に成り代わる妖怪とかそういうの、ご存知ないかと」
「変わった妖怪ね」
パチュリーは目を閉じ考えこむ、しばらくすると指を本棚のほうにかざす。
奥のほうから、一冊の本が飛んでくる。
音も無く、パチュリーの手元に下りるとひとりでに開き始めた。
「これかしら?」
目当てのページを見つけ、こちらに渡してくる。
「ドッペル・・・ゲンガー?」
「生きてる人の霊的な写し身」
「・・・」
「おそらく、それがあなたの言ってるものに近いんじゃないかしら」
「そうですね」
「言い伝えでは、死期が近い人のところへ現れるとかなんとか」
「え?」
「あくまで、噂、言い伝えなんてあやふやなものよ、あとその人に関係のある場所へ現れるそうよ」
「倒す方法とかは?」
「あんまり、はっきりしないわね、罵声を浴びせれば消えるとか・・・これも、言い伝えだけどね」
「わかりました、どうも」
礼をして、立ち上がると。
「あなた、魔理沙に似てるわね?」
その言葉にドキっとし、振り向かず言った。
「気のせいですよ」
足早に紅魔館を後にし、ひとまず自宅へと飛ぶ。
「関係する場所、となると・・・アリスか霊夢か自宅」
と、次にすることを考える。
「あ、待てよ・・・ってことは」
パチュリーの言葉を思い返すと・・・
死期が近い人のところへ現れる。
(じゃぁ・・・もうすぐ死ぬ?)
ふと、立ち止まり、死という言葉や意味が頭を駆け巡る。
(違う、死んでたまるかよ)
かぶりを振って、自宅へと急ぐ。
家の前に降りる。
ぐるっと一回りして、窓から覗いたりしたが中には誰も居ない。
ゆっくりと玄関を開けるが、やはり誰も居ない。
「はぁ」
一安心、ってところだろう。
(安心してどうする、私!しっかりしろ!)
これから、見つけて退治しなきゃいけないのに、何安心してるんだか。
「あ、着替え・・・」
やっぱり、この妙な服は落ち着かない。
「うん、やっぱりこれが私だよな!」
着替えを終え、鏡を見る。
霧雨 魔理沙である。
偽者は私じゃない、本物は私だぜ!
両手で頬をはたき、気合を入れる。
ひとまず、アリスのところへでも行ってみようか。
「お?」
ちょっと向こうに、アリスの背中が見えた。
(あ、居た!)
ドッペルも一緒に居た。
「アリスー!」
大声で叫ぶと、二人ともこちらを振り向く。
「あ、偽者!」
近寄ると、アリスが敵意剥き出しに私に視線を向ける。
それを無視し、もう一人の私に詰め寄る。
「お前、ドッペル・ゲンガーか?」
そう問うと、ひどく可笑しいとでもいうように、両手をお腹に当て大きく笑い始める。
「何を言い出すかと思えば、半分当たり半分外れ」
笑い終えて、そう話す頃には目つきが明らかに違っていた。
色の無いどんよりした感じ、引きずり込まれそうだった。
「確かに私はお前の魂を元に生まれた、ドッペルだよ、違うのはその辺のドッペルより強いってことさ」
「何が目的だ!」
「お前の魂がおいしくてなぁ、もっともっともっともっと!食べたいのさ!」
両手を頬に当て、舌なめずりをする私の分身。
「もう半分ぐらい食べたからなぁ、お前自身の存在も意味も名前も!私のものになってきてるんだよ~?」
首をひねり、さも可笑しそうに笑う。
アリスをチラっと見ると、話についていけず、きょとんとしていた。
「もう、遊ぶのも飽きてきたし、残りの魂を頂くとしましょうか?」
ゆっくりと歩いてくるドッペル、右手を私に向け笑みを浮かべたまま。
(う、動かない!震えがとまらない!)
「無駄無駄無駄、今あなたと私は魂で繋がっている、純粋に私のほうが魂の量が多いから、私が動くなと思えばあなたは動けないわ」
ドッペルの右手がゆっくりと私の頬を撫で、首筋に手を回す。
「さぁ、あなたの蜜のような魂を頂戴」
「ちょ、ちょっと魔理沙!何してるの!」
アリスが間に入ってくる。
「なぁに?あなた、邪魔するわけ?」
私の首を掴んだまま、ドッペルがアリスに顔を向ける。
「に、にげろ!アリス!」
大声を出したつもりだったけど、思ったより声が出なくてアリスに届いたかどうかわからなかった。
「あなたは黙ってなさい」
と、ドッペルが言うとそいつの周りから、重みのある黒い煙のようなものが私の首にまとわり付いてきた。
首を絞められ、声が出なくなるのと同時に、近くの木に叩きつけられる。
ドッペルは同じような黒い力をアリスに向ける。
「ねぇ、アリス?私は誰でしょう?」
イタズラっぽく笑うドッペル。
「魔理沙・・・じゃないわね」
「そうね、魂は本物の魔理沙そのものだけど」
ドッペルは一つ笑うと話を続ける。
「私はドッペル・ゲンガー、人の魂を元に生まれる妖怪ってところでいいわ」
「こんな邪気の妖怪ならすぐに気づくはずだけど・・・」
「物分り悪い子ね?私は魔理沙そのものの妖怪、本物らしく振舞っていれば絶対にばれないのだけれど」
チラっとドッペルが私に視線を向ける。
「ちゃっちゃと魂食べて、死なせてしまえば魔理沙も気づかなかったのにねぇ」
「え?」
と、アリスが私の方を見る。
「私と魔理沙は見えないパイプで繋がってる、本物が抵抗してるから直に食べないともう駄目だけど、あなたたちがのんびりしてる間に、本物の魔理沙から魂は8割ほど貰っちゃったわ」
アリスが人形を出し、戦闘態勢に入る。
「あら?いいの?私を攻撃するってことは、魔理沙の魂も傷つくよ?あなたの大好きな魔理沙が死んじゃうよ?」
「黙りなさい!」
「ふふ、強がっちゃって、可愛い子ね、魔理沙もあなたこと好きみたいよ?」
「え?」
「記憶も感情も癖も行動も全部全部!アリスの知らないことまで私には分かるのよ?」
そうだ、全部知られてた・・・私が、ドッペルに気づいたときから、アリスに近づいていた・・・
「おっと、それ以上近寄っちゃ駄目よアリス、出ないと勢いあまって首、千切っちゃうかも」
「が・・はっ!」
と、急に首が絞められる。
「そう、魔理沙の知識を共有してるのね、じゃぁ知らないことには対応できないってわけかしら?」
アリスは勝ったとでもいうような態度を見せる。
「最後の挑発ってところかしら?」
「さぁ、どうかしら!」
と、アリスは一気に私の元へ走る、それと同時に木の上にいた人形が私の首に巻きついていた黒い手を魔砲で吹き飛ばす、そのままの勢いでアリスは私の抱きかかえると、空へと飛んだ。
普段のアリスならあんな無茶はしないはずだ。
薄れる意識の中でドッペルが、どす黒い煙を回りに噴出しこちらをじっと見あげていた。
気がつくと、妙に古臭い天井が見えた、あの世ってこんな感じなんだろうかと考えてると、話し声が聞こえてくる。
(アリス・・・霊夢?)
聞きなれた声だ。
「あ、霊夢、目を覚ましたみたいよ」
「ほんと?」
ぼんやりした視界に霊夢の顔が見えた。
徐々に意識がはっきりし、なんとか体を起こす。
「魔理沙?でいいのよね」
「あぁ」
霊夢は申し訳なさそうに言う。
「アリスから色々と聞いたわ、いまいちしっくりこないけど」
感謝しなさいよ?と、霊夢はアリスの方を見る。
「そうか」
「魔理沙だと思ってたのが、違うものだったみたいね」
そう言われ、私が知ってることを2人に話した。
私の魂が目当てだということ。
「ドッペル・ゲンガーって、名前だそうだ」
話終えると、霊夢はひどく落ち込んでしまった。
「私も・・今の今まで全然気づかなかった、ごめんね」
「気にすんなって霊夢」
「ありがとう・・・、よっし!気合入れて異変解決よ!」
「私も手伝うわ、霊夢?戦力は多いほうがいいでしょ?」
「頼りにしてるわよ?アリス」
「あ、私も・・・」
行くと言おうとしたら、アリスに止められた。
「あなたはもう少し休んでて」
と、神社の境内から大きな爆音が響いた。
「あらら、あんた達、偽者の味方をするのね?」
これが、ドッペル・ゲンガー・・・
「そうね、これであんたが偽者だってこと、はっきりしたわ」
「あなたを魔理沙だと思ってた私も、バカだったってことはっきりした」
魔理沙の形はしているものの、黒い邪気があふれてる。
私は札を両手に持ち、相手の動きに合わせられるよう腰を落とす。
アリスも人形を出し、いつでもいけるように待機していた。
「あはは!あなた達何か忘れてない?」
ドッペルは大きく両手を広げ話だす。
「私の魂は霧雨 魔理沙のもの、私自身限りなく本物に近い魔理沙なのよ?そんな私をあなた達は攻撃できるのかしら?」
「くっ」
意気込んで戦うつもりでいたけど、確かにこいつの言う通り。
アリスを見ると、アリスも攻撃に踏み切れないでいる。
最悪の状況、魔理沙を人質にされてるのと同じじゃない。
一つ間を置くと、ドッペルは黒い手を4本回りに出現させた。
地面から生えてきているようにも見える。
話によれば、色んな形に変えれる感じらしい。
「こっちから行くよ!」
と、ドッペルが一気に踏み込んでくる、同時に手も襲い掛かってきた。
(動き自体は見切れないこともない、でもあのスピード!)
魔理沙に匹敵どころか、それ以上にも感じる速度だった。
「くっ!」
本体自体の攻撃は避けたけど、手の攻撃は防ぐしかなかった。
とっさに、札で防御を張るものの辛うじて防いだ程度だ。
アリスも牽制程度の攻撃しか、出来ていない。
(どうする・・・何か手は!)
高速で思考をまわす。
「あはは!博麗の巫女もこの程度?」
ドッペルの攻撃も止まない、どころか激しさを増す。
4本の手と本体から撃たれる弾幕。
かわしきれず、1本の手で吹っ飛ばされる。
「ぐぅ・・」
近くの木にぶつかり、呼吸が乱れる。
間髪入れず、新たに手がやってくる、反射的に横に転がり難を逃れた。
アリスの方も弾幕に押されていた。
(倒すんじゃなくて、封印なら)
そう思い、封印用の札を手に取る。
隙を伺おうと立ち上がると、アリスも何処かに飛ばされたのか姿が見えない。
「アリス!」
声を出してしまった、自分でもしまった!と、激しく後悔する。
同時に上から、2本の手で押さえ込まれる。
「声を出したら、隠れてる意味ないわね?」
首から下、太もも辺りまで黒いずっしりとした物に押さえ込まれている。
「封印しちゃったら、魂も戻ってこないわよ?霊夢?」
見抜かれてた。
「ゲームオーバー」
冷たく、暗い声。
「やらせない!」
と、アリスの声が聞こえると同時に、ドッペルが向かいの方へ吹っ飛んでいく。
どうやら、私の後ろの方にアリスが移動していたらしい。
「ほら、何やってるの!早く立って!」
アリスの手を借り、立ち上がる。
ドッペルはかなり吹っ飛んだらしく、境内の真ん中あたりにいた。
「く、今のはなかなか痛かったわね」
ゆっくり立ち上がるドッペル。
「もう、遊びは終わりにしましょう!」
ドッペルが叫ぶと、黒い霧が段々と広がり、風船が割れるように爆発し同時に弾幕が飛ぶ。
とっさに結界を張るものの、防ぎきれる自信はない。
ここまでか・・・と、弱音が首をもたげてくる。
「いい加減にしやがれ」
何故か、はっきりと声が聞こえる。
魔理沙の声だというのはすぐに分かったけど、姿が見えない。
探そうとしたとき、ドッペルが立っている場所で爆発が起きた。
同時に弾幕が止む。
徐々に煙が薄くなり姿が見えてくる。
「魔理沙!」
あのバカ、無理して動いて・・・真上から突っ込んだんだ。
ドッペルを押し倒し、跨るように押さえつけていた。
慌てて駆け寄る。
「来るな!霊夢!」
「ちょ、あんたまさか!」
よく見ると、魔理沙の八卦炉がドッペルの胸に当たっている。
「自分自身を殺すなんてこと、あなたに出来るのかしら?」
ドッペルも観念しているらしく、私の顔をじっと見てくる。
「友達が・・・死ぬとこ見るくらいなら、な」
「ふふ、フフフ!」
「何がおかしい?」
「自分の魂を消すのに、躊躇しないなんて何者?」
「普通の魔法使い」
そう言って、八卦炉の力を解放する。
霊夢とアリスの声が聞こえてきたけど、もう遅いぜ。
光が放たれ、爆発が起こる。
衝撃で体が飛ぶ。
少ししてから、霊夢の顔が視界に移った。
「バカ魔理沙!あんたなんてことしたの!」
「魔理沙!しっかりして!」
2人が私の体を起こす。
なんだか、すごく力が抜けていく。
「へへ・・・これで、万事解決、だぜ?」
「ばか・・ばかぁ」
霊夢が涙を流し、バカ呼ばわりしはじめる。
体の痛みも考えると血でも出てるのか。
「魔理沙、気をしっかり持って!」
アリスの手が光りだす、暖かい感じ・・・治療の魔法だろうか。
視界が段々ぼやけ始めた。
「魔理沙?こら!しっかりしろ!お願い!目を開けて!」
目を開けてられない、霊夢が私を揺すっているのがなんとなく分かる。
(疲れたぜ・・・)
「アリス!何やってんの!早くしなさい!」
目を閉じて反応がなくなってしまった魔理沙。
アリスも頑張ってくれている、でもイライラが止まない。
「やってるわよ!ほらしっかり傷口押さえて!」
言われて、出血している傷口を手で押さえる。
まだ、暖かい。
「魔理沙!目を開けろ!開けてよ・・・お願いだから・・・」
何処かで気づいてしまった、もう無理だと。
「アリス・・・助けてよ、ねぇアリス」
涙が止まらない。
「・・・・」
傷口は塞がったけど、アリスも術を止めてうなだれた。
きっと、泣いているんだろう。
なんで、こんなことに。
助けられなかった、大事な友達を・・・
笑みを浮かべたまま、まだ暖かい友達。
「アリス!何か方法はないの!」
分かっていても、止まらない感情。
アリスも首を横に振るだけだった。
「でも・・・」
と、アリスが言葉を発する。
「まだ、暖かいこの状態なら、魂さえあれば・・・なんとかなる・・・けど」
涙ながらに話す、そんなものは無い・・・魔理沙自身が消してしまった、残っていた魂も全部。
途方にくれていると、突如八卦炉が光始める。
とても、やさしく暖かい光。
「「あ」」
2人同時に声を出す、お互い分かった、これは魔理沙の魂。
きっと、魔理沙がドッペルに組み付いたときに八卦炉が魂を取り返していたんだ。
「すごいきれい・・・」
見入ってしまうほどの光。
「あ!アリス!」
思わずはっとして、アリスの肩を掴む。
「分かってるわよ!」
アリスも急ぎ、八卦炉を掴み目を閉じ集中する。
なにやら言葉を発すると、光だけが宙に浮いた。
人魂とはまた違う、丸い光。
アリスはそっとそれを両手で包みこむと、魔理沙の胸に押し当てる。
すぅっと吸い込まれるように体に入っていった光。
「これで、いいはずよ」
アリスがそういうけど、何も変化は無い。
「とりあえず、部屋に運びましょ」
私は軋む体に気合を入れて魔理沙を抱きかかえる。
なんとか、布団に寝かせた。
「はぁ・・・」
疲れがどっと押し寄せる。
「ほんとに、大丈夫なんでしょうね?アリス」
「ミスはしてないわよ、後は魔理沙次第」
「そっか・・・」
先ほどと見た目自体は何も変わらない、ただ奇跡を信じた。
-4日後-
「・・・」
(なんで、生きてるんだ)
ついさっき見たばかりなような気がする、同じ古臭い天井。
自分自身の魂を吹き飛ばしたのに、目を覚ますっていうのも妙な気分だ。
(体が、動かない?)
死後硬直とかいうのだろうか、まったくといっていいぐらい体が動かない。
仕方ないから、ただぼんやりと天井を見つめる、染みの数を数えてるうちに聞きなれた声が聞こえた。
「はぁ・・・いつまで経っても目を覚まさないじゃない」
霊夢の声だ、隣の部屋だろうか。
「ミスなんてしてないわ・・・なんて、あんた言ってたけど、もう4日よ4日!」
「してないわよ!するわけないじゃない!私が!霊夢じゃあるまいし!」
アリスの声も聞こえる。
「なぁに?私がガサツってこと?言ってくれるじゃない!表でな!」
「えぇ、ガサツよガサツ!すぐそうやって力ずくで解決しようとするじゃない!」
喧嘩してるのか・・・仲がいいのやら悪いのやら。
(はは・・・)
一人笑みを浮かべ、苦笑する。
「ほら、そんなに怒ってる暇があるなら魔理沙の様子でも見ようよ、ね?」
「むぅ・・・」
そんなやりとりの後、襖の開く音がする。
「ほら!変わんないじゃない!」
「あぁ・・・ほら、今目を覚ますんじゃない?」
声が出るだろうか、なんて心配しながらも思い切って口を開く。
「霊・・夢」
出た、よかったぜ。
「魔理沙!魔理沙!起きたの?生きてる?」
声を聞くなり物凄い勢いで飛び込んできて、肩を掴む霊夢。
「痛い・・・」
「あ、ごめんなさい」
「魔理沙」
「アリス、おはよう」
霊夢と違い、アリスはとても優しげな顔で呼んでくれる。
そっと、霊夢が抱き起こしてくれてなんとか上半身を起こす。
「ほんっとに、間違いなく魔理沙よね?」
「お前・・・私を誰だと思ってるんだよ」
「魔理沙、大丈夫?何処か痛いとこない?」
「あぁ、ちょっと体が重いけど大丈夫だよアリス」
ほっとしてるアリス。
霊夢は遠慮も無く、私の体をべたべたと触り始める。
「な、どこ触ってんだよバカ巫女」
「う・・うぅ、魔理沙、よかったほんっとによかった」
間違いなく私だというのを確認したのか、涙を浮かべ抱きついてきた。
「わ、こらいきなり」
「ちょ、霊夢!私の魔理沙に何してるのよ!」
と、アリスは霊夢を引っぺがそうとし始める。
「ちょ、ちょっと2人とも、待ってくれ、ほらドウドウ」
霊夢をなんとか引き剥がしたものの、涙と鼻水ですごい顔をしていた。
「あぁ、とりあえず鼻噛もうな」
「うん・・・」
「で、なんで私生きてんの?」
「それはね・・・」
アリスが懐から八卦炉を取り出す。
「あなたが、あの時これを突きつけてたじゃない?」
「うん」
「確かな証拠は無いけど、これがあなたを生かしておけるだけの魂を持ってたのよ」
綺麗で暖かい光だったと、アリスは言いながら八卦炉を手渡してくれた。
「それに残ってた魂をあなたに戻して、なんとかなったってわけ」
「へぇ、こいつが」
「あ、でも十分な量じゃなかったから、しばらくは無理しちゃ駄目よ?」
「分かってるって」
と、霊夢が鼻を噛んだのか綺麗な顔をして私の顔をじっと見つめる。
「だから、しばらくはウチでゆっくり体を休めなさい、いいわね?」
「分かった」
色々他にも聞きたいことはあったけど、今はこれだけでいいだろう。
霊夢とアリスがまた喧嘩らしいものを始めるし。
ドッペル・ゲンガー、死期の近いものに現れるってパチュリーが言ってたけど。
結局、近いってだけで死ぬって決まったわけでもなかったんだよなぁ。
「ほら、2人共いい加減にしろよ」
やれやれと思いながらも、命の大切さをしみじみと感じた。
(2人共、私のために頑張ってくれたんだな)
「霊夢、アリス」
「何?」
「今、それどころじゃないの」
お互いのほっぺを引っ張り合いながら、睨まれる。
「いやほら、こういうのは言っておかないとさ」
出来る限りの目一杯の魔理沙らしい笑顔を見せ・・・
ありがとう。
なんで霊夢とアリスは本物の魔理沙を偽物ってすぐ判断できたんですか? 見た目は全く同じなようだし、偽魔理沙が色々吹聴していたなら分かるけど、神社の会話を見る限り偽魔理沙はそんなことしてないみたいだし<「それで、あんたは偽者を知らないのね」「あぁ、知らないぜ?」
あとドッペルがいくらなんでも唐突過ぎるし、キャラ付けがそこらの漫画の三下以下並みに薄っぺらいのも気になります。いくら演出だって言ったって一晩寝てたら魂の5~8割方食べられちゃってるとかチート過ぎるでしょう。もう少し丁寧に伏線を敷くべきです
それに文章面では視点変更が稚拙というか雑というか……魔理沙一人称と霊夢一人称がこまめに入れ替わり過ぎて読みづらくてしょうがなかったです。とくに後半
これはBADENDなのか・・・!?
あと視点変更しすぎです。語り手は一人に絞るか神の視点で進行するか、もしも複数の視点が欲しいのであれば章を変えるなりして仕切り直した方がいいです。
変装した魔理沙はもっと描写して欲しかった……!
やっぱり表現とかに難がありますよね・・・
イメージは出来ているんですけど、うまく書けてないorz
もうちょっとリメイクの余地もありそうですね^^;