Coolier - 新生・東方創想話

夜雀ラーメン

2009/06/18 17:32:22
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 既に太陽は沈み、月が明るく、そして妖しく輝いている。私は店の明かりを点けると、何時もの札にもう一つ、新しい札を取り付けた。
 八目、泥鰌、鰻と一緒に並んで取り付けられたのは・・・・・・
「らーめん?」
早速ただ飯を集りに来たルーミアが言った。ただ飯ってもホントは有料商品なんだけど・・・・・・
「食べれば分かるって」
そう言って、私は店の棚から細い麺の塊を取り出し、ぐつぐつと煮立っている鍋に放り込んだ。
茹でている間に肉やネギをまな板に載せ、素早く切断していく。煮立った鍋がビールのように泡を吹き出した頃に、私はざると少し大きめの皿を出した。出汁の効いたお湯を少しだけ皿に入れ、後は捨てる。そして皿の中に数種類のスパイスを入れ、ざるの中の麺と具材を放り込む。
「完成! これが私の特性、八目ラーメンだよ!」
私は既にスタンバイしているルーミアの前にラーメンを置いた。ルーミアは待ってましたと麺をすすった。飲み込むと、ルーミアは深く息を吸った
「うっ、旨い!」
「でしょ!」
旨くて当たり前だ。だてに今まで料理人をやって来た訳ではない。味には自信がある。
「でも…」
ルーミアは既に空っぽになった皿を眺めて呟いた。まさか味に落ち度が……
「八目ラーメンってもヤツメウナギ入ってないよね」
「そっちかーい! それで味のほうは?」
「うん、美味しかったよ」
ふぅ、とりあえず一安心。てっきり味に問題があるのかと思った。でも確かに名前は変えた方がいいな、商品偽装とか色々あるし。
「名前かぁ」
「なまえねぇ」
二人して屋台の中で頭をくっつけて考え事。傍から見たらさぞ入りにくい雰囲気だろう。
まぁそれはこの際置いておこう。名前名前……作ったのは私・・・ミスティア・・・夜雀・・・夜雀!
「夜雀ラーメンなんてどう?」
「うん、すごくいいと思うよ」
「よし! 夜雀ラーメンで決まりだね」
私は筆を取り出すと、ラーメンの字の横に夜雀と書き込んだ。これからこの店の名物はヤツメウナギとラーメンだ。

「ふーん、ラーメンねぇ」
「うわぁ! でか蝙蝠!」
小さな羽音と共に、大きな蝙蝠が空から舞い降りてきた。よく見ると、私ほどではないがなかなか可愛い姿をしている。
「でか蝙蝠とは失礼ね、私にはレミリア・スカーレットという立派な名前があるのに。まぁそれはともかくそのラーメンを一杯貰えるかしら」
レミリアはそう言うと、ルーミアの隣の席に座て雑談を始めた。
「あれ? 咲夜はどうしたの?」
「散歩は静かな方が楽しいのよ。咲夜はうるさいから置いて来たわ」
「ふーん」
どうやら二人は知り合いらしい。二人が雑談している間に私はさっきと同じ手順でラーメンを作り、レミリアの前に置いた。
「これがラーメンねぇ……、見た目はそばにも似てるけど」
レミリアはズズッと音を立ててラーメンをすすった。
「こっ、これは・・・・・・」
――ごくん・・・・・・
「美味しいわ! なんでこんな美味しい物に気づかなかったのかしら」
レミリアは、次々に麺を口へ運んでいく。見ているこちらが嬉しくなる食べっぷりだ。
「よし! 決めたわ、これお勘定ね」
あっという間にラーメンを平らげたレミリアは、食台に若干少ないお金を置くとさっさと飛び立っていった。
「また赤字・・・・・・」
ちらりとルーミアの方を向くと、輝いた目で見詰ている。――これだけの動作で何が言いたいのかが分かる私が悲しく思える。
それでも一応私は尋ねてみる。
「・・・・・・御代りいる?」
「うん!」
ルーミアはさらに輝いた目で大きくうなずいた。



 


 ジリリリリリリ、拾い物の目覚まし時計が大きく鳴り響いた。もう朝か、私は大きく背伸びをすると、起き上がった。
毛布を片付け、ふと食台見ると、手紙が一通置いてある.
「ラーメン王決定戦招待状?」
私は手紙を手にとって題名を読み上げた。差出人はやっぱり紅魔館。レミリアはこれを書く為に急いでいたのか。
封筒を開けると可愛いデザインの招待状とルール説明の紙が入っている。
 ほうほう、参加メンバーは二人、具材は無制限、作るのは審査員3人分。日時は三日後か・・・・・・。
私は腕を組んで考え事を始めた。決定戦というのならきっと多くの強敵が来ている筈、その場合決め手は貴重な具材となる。
そして貴重であるがゆえに危険な場所であったり、一人では困難な場所にあることも。うーん・・・・・・
「何してんの? ミスチー」
「あぁ、ルーミアか・・・・・・」
 何故か朝早くからルーミアがやって来た。明るいうちに見るのは久しぶりだ。
「で、何してんの?」
ルーミアが招待状とルール説明書を見比べている。そういえばルーミアは漢字が読めないんだっけ・・・・・・
仕方が無い、説明してやろう
「つまりね、今度紅魔館でラーメン王者決定戦ってのをやるのよ。それで私のほかに相棒を一人つけたいなって事を考えてたの」
私は出来るだけわかり易いように説明した。ルーミアは相槌を打つように頷くと言った。
「なら私がやるよ」
「・・・・・・つまみ食いは無いよ」
「うん、今までの付けが無くなると思えばお安い御用だよ」
 いや、ちと待て。誰も付けを無くすとは言ってないぞ。まぁそれでも優勝して有名になれば商売繁盛、付けの分も入るか。
「よし、ルーミアを臨時アルバイトとして任命します」
そう言って、私は店に本日休業の札を掛けた。

 ラーメン。ラーメンに入れる具材として適切なものは,まずはどんなラーメンにするのかによる。
「どうしようか・・・・・・」
また二人して考え事。でも今回は前回よりも少し難しい。でもこれを決めないと進まない。
私達が考え事をしていると、小さな足音が近づいてきた。微かな獣のにおいを感じる、この気配は、
「珍しいな、お前らが考え事とは」
やっぱりハクタクだ。そういえばこの近くに人間の村があったっけ。私の事はお構いなくハクタクはルーミアと会話を始めた。
案外ルーミアの交友関係は広いみたいだ。といってもその半分は捕食圏内だと思うけど・・・・・・
「ふーん、ラーメンかぁ」
「そうそう、私は人肉を使ったものがいいと思うんだけど、アブッ!・・・・・・」
言った瞬間ルーミアは拳骨を食らった。効果は抜群だ、ルーミアは泡を吹いて倒れた。
「それでお前はどうしたいんだ?」
ハクタクは私の方へ向き直って言った。そうだなぁ、やっぱりあれかな。
「やっぱり豪華な食材を使ったものが良いかな」
豪華なものは人の目に留まりやすい。それで点数も上がるはずだ。
「豪華なものってどんなもの?」
「それは勿論高級な食材でしょ」
そうかとハクタクは腕を組んだ。
「それじゃあ例え優勝しても商売は繁盛しないな」
「えっ?」
「だってそうだろ? 高級なもんならこの辺の人間も妖怪も、勿論そこの陰妖も買えない。なら安っぽくてもみんなが食えるものが良いだろ」
そう言ってハクタクはニコリと笑った。そうだ、私としたことが大切な事を忘れていた。商い人として大切な事、それはどんな者でも喜べる物を売る事。それが出来ない者は商いをする資格は無い。豪華な外見なんてどうでもいい。人間でも妖怪でも笑顔で食べられるラーメン、それが夜雀ラーメンだ。 私は自分の頬をパチンと叩いた。
「決めたよ、誰でも笑顔で食べられるラーメン。それが究極のラーメン、夜雀ラーメンだよ」
「よく言った。明後日に期待してるぞ」
「うん、分かった!」


高くないけど美味しいラーメンかぁ、私達はハクタクが帰った後も考え事を続けていた。達といってもルーミアはまだのびている。
まぁとりあえずそのままにしておこう。
具材はいつもと同じものを使うとして出汁は……、私はふとゴミ箱に目をやった。ゴミ箱の口から魚の骨がはみ出ている。
「そうだ! これだ」
魚だから多少臭みがあると思うけど、出汁としてとるならそれ位がいい。それに残り物だから無料。これなら安くて美味しいラーメンが作れる。
私はヤツメウナギの骨をゴミ箱から出して、軽く炙った。ジュワっと音を立てて香ばしい香りが広がる。これならいける・・・・・・!



 ~三日後~

 とうとう来た、ラーメン王決定戦。私はルーミアと一緒に会場控え室に入った。もう既にスタンバイは完了している。
緊張の所為かさっきから私の足はガクガク言っている。私は左手に人と書いて飲み込んだ。するとその時、控え室のドアが開いた。
開くと同時に高らかにアナウンスが鳴り響く。
「今回の参加者はぁ、白玉楼、妖夢&幽々子チームぅ、紅魔館、美鈴&パチュリーチームぅ、そして屋台夜雀、ミスティア&ルーミアチームぅ! 全てのチームはスタートの合図が出てから調理を始めてください、よーい」

パァン! 空に向かい銃声が鳴り響く。周りは一斉に調理を開始した。私も素早く必要な道具をかき集める。二つの鍋を火にかけ、片方ヤツメウナギの骨を入れる。出汁を作っている間に、麺の作成を始める。私は小麦粉を伸ばすと、水を数回たらす。
水を吸った小麦粉は粘土のようになる。私はそれをルーミアに任せて、次に具材を準備はじめた。まずはメンマ。
シナチクを取り出し、食べやすい大きさに切る。次に肉。厚すぎず、薄すぎずの微妙なところを切る。これが結構難しい。
切った具材を皿にうつし、邪魔にならない所へ置いておく、その時――
「終わりました!」
その時、何の前触れも無く声が上がった。見ると門番の紅 美鈴の前に完成したラーメン三つが台に並んでいる。王者決定戦だからハイレベルな戦いは予想していたけどここまでだとは思わなかった。心なしか他のチームも完成間近かに見える。
「あっ、幽々子様また撮みましたね、また最初から作り直しじゃないですかぁ」
・・・・・・ビリは脱出したみたい。それでも狙うは優勝だ、私は作業を再開した。ルーミアが切ってくれた麺を、煮立っている鍋に入れる。
麺を作る間に出汁の火を弱めておく。丁度その頃、茹でた麺が泡を吹き始めた。麺が完全に出来上がる前に水を切り、三つのお皿に同じ量を盛る。
次は出汁。私は出汁をお皿に入れようと手をかけた。その時、突然腕に激痛が走る。
「あちっ」
沸騰したお湯が飛んで、私の手に着いた。その拍子に傾いた鍋が落ちた。出汁は使える分残っているが私の手は真っ赤になってしまった。
握ろうとすると案の定激痛が走る。とてもじゃないが煮卵なんて出来ない。
「大丈夫!? ミスチー」
ルーミアが駆け寄ってくる。
「うん、でも卵は出来そうに無いや・・・・・・」
「そうなのか、なら卵なしにしようよ」
「もうダメだよ、こんなんじゃ優勝なんて出来ない」
そうだ、卵はこのラーメンで出汁の次に大切な物だそれが無くちゃぁこれは成立しない。
「大丈夫だよ、なら私が作るから」
「えっ? でも」
確かルーミアは料理なんて出来なかったはずだ。切るだけならまだしも時間や温度の調整が難しい煮卵なんて無理だ。
ルーミアは、まだ少し出汁が残っている鍋を拾い上げ、皿に移し始めた。
「それに卵なんて無くても大丈夫だよ、だってミスチーのラーメンすごく美味しいもん」
そう言って、卵を三つ取り出し、残った出汁の中に入れ火にかける。七分三十秒、これが煮卵が一番美味しい時間。私は心の中で時間を数えた。
二十八、二十九、三十、
「ルーミアっ」
私の声と同時にルーミアは火を止めた。ルーミアは卵を一つ一つ丁寧に剥き始めた。見た感じではきちんと形になっている。でも中身は分からない
それでもうまく行っている、そんな気がした。ルーミアは最後にネギとのりを乗せると、手を上げて大きな声で言った
「終わりました」
こんにちは、のろげんげです。今度もミスチーの屋台ネタです。個人的に屋台ネタは好きですね。
それはともかく最後はどのチームが優勝したんでしょうね、まぁそれは読み手の方々のご想像にお任せします。
後、今回も誤字脱字、変な文章など滅茶苦茶な部分があると思うので、ご指摘お願いします。
ノロゲンゲ
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コメント



0.410簡易評価
5.70名前が無い程度の能力削除
続きを待ってますw
9.50名前が無い程度の能力削除
うーん・・・続きが読みたいです。
11.60名前が無い程度の能力削除
せめて最後まで!大会の最後まで!欲を言えば大会が終わって後まで!
書いてほしかった
のでちょっと減点
12.70名前が無い程度の能力削除
続きが楽しみです
みすちーたちもそうですが幽々子様たちやパチュリー様たちの様子も気になりますし