ここは魔界と地獄を繋ぐ門の前。
そこに男と女の人影がいた。名を二人でシンギョクと言う。男は魔界の門の前に立ち、女は地獄の門の前に座っていた。
二つの門しかないこの場所は博麗神社の空間のズレた所にあるのだ。それ自身が既に誰も立ち入らせないようになっており、この場所にたどり着けたとしてもシンギョクに倒されるのがオチだ。
この二人は門の封印のためにつけられた人間または妖怪なのである。
そうして今日も誰も来ない、何も無い場所で門番を続けるのである。
「なあ、ここにいる理由はあるのか?」
女の方が声に出す。女の見た目は髪は長く、赤色でその頭から四本の角が生えている。服は羽織りを着ており、表面が青色に白で星みたいな模様が描かれている。裏は赤色だ。上の服は白で下は赤の袴に白の模様が着いている。何よりその赤の目を光らせて男に話しかけているのだ。
「さあな。理由があるからこそ、ここに俺達がいるんだろう。同じことを何回も言わせるな」
男は答える。男は陰陽師のような服を着ており、袴は青色。頭に被る烏帽子は袴と同じような青色なのだ。
髪は短く、黒色。そうして目は女と同じ赤なのである。
「なあ半身。お前は人間だったが、なぜシンギョクとなった?」
女は話しかけていく。
「お前が俺に助けを求めたんだろう? だから俺はそれに応えたのみ」
男は淡々と答える。
「私が聞きたいのはそれじゃない。なぜ、私を助けたのだ」
「お前がそれを言うか。お前が生きたいと言ったからだ。それならばお前と一つの存在として生まれ変わっても良いと思っただけのこと。それだけだ」
~*~*~
シンギョクとなる前の話。女は妖怪であった。男は陰陽師であった。
二人は対立するもの同士であった。
「くそ……」
女は人間を襲っていた。しかし、襲った相手は陰陽師であったのだ。襲いかかろうとした所で返り討ちにされてしまったのだ。
ここで倒されてしまっては運の尽き。だが、あの女の陰陽師は他の陰陽師とは違った。
女の近くの草むらがガサリ、となった。
「物の怪め! 討ち取ってくれるわ!」
追いかけて来た女の陰陽師はとてもしつこかったのだ。他の陰陽師は見失うと直ぐに追いかけなくなっていたのだ。
「くそっ……たれめ……」
女は意識が持たなかった。座っていたところから倒れ込み、バサリと音が響いた。
「いたぞ……物の怪なぞ、容赦せん! 滅せよ……! ぐわぁっ!?」
術を出そうとした所でその女の陰陽師は倒れた。
遠距離から違う男の陰陽師が女の陰陽師に雷を撃ったのだった。
男は無言で妖怪の女だけを担ぎ、歩いていった。
妖怪の女は目が覚めた。目が覚めると何故か誰かに担がれているではないか。
「やめろ、離せ!」
バタバタと男から逃げようとするが力は出ない。
「暴れるな。もう少しで洞窟に着く。黙っていろ」
男は女に対して動きを封じる術をかけた。
「何をする気だ! 術を解け!」
「だから黙っていろと言っただろう。他の陰陽師に見つかっていいのか」
女はそれを聞いて黙った。男はそれ以上何も言わずにザッザッと歩いていった。
これが人間の男と妖怪の女が初めてあった話だ。
***
そうして、男と女は二人で組んで害する妖怪は倒し、陰陽師も倒し。どちらともから疎まれた。
男は何も言わなかった。何かを言うのは女がしていたから。
そうやって過ごしているうちに二人の破滅がやってきた。二人を疎んだ妖怪と陰陽師たちが殺しに来たのだ。
二人は戦ったが結果は惨敗。殺されてしまったのだ。
そうして死ぬ前に女は言う。
「ああ、死にたくないな……お前とならもう少し居たいと思ったのに……」
「ごほっ、お前は生きたいか……」
男は血を吐きながら問う。
「私も長いこと生きた、が、お前とならまだ生きたい……」
「そう、か……なら俺はお前と生き返ってやろう……」
男はそう言うと女に、自分に術をかけた。
「これで、何かとなって……二人で生きていける、だろうよ……」
「ははっ……お前が、言うと違うな……」
そう言って二人は額を寄せ合うように息を引き取った。
殺した妖怪や陰陽師は滑稽なものを見た、と言っていたそうだ。
その後は妖怪と陰陽師の殺し合いとなったそうだ。
***
三途の川。二人は一緒にいた。
渡し守は何も言わずに二人を閻魔の前へ運んだ。
十王裁判。それに私達はかけられた。
出会うまでの一人一人の罪。出会ってからの罪。
下された判決は、魔界と地獄の門の門番になれ、との事だった。
罪を犯しているはずなのになぜその扱いなのか。不思議に思った女は男に聞く。
「なぜ私達は門番になるのだ?」
「俺がどうにかしたからだ。したことは教えんが、お前が一緒に生きたいと言ったからどうにかしたまで」
男は何をしたとかは言わなかった。女はそれを適当に受け入れることにした。男の考えていることは女には分からぬことだからだ。
そうして二人はシンギョクとして生まれ変わった。
***
博麗の巫女が魔界と地獄に突撃するということもあったがそれはもう解決したこと。その時は後処理に追われたりもしたが、二人の門番と言う仕事は変わらずに今もし続けている。
「あーあ、暇だ。半身よ何か無いか?」
「俺に聞くな。こうして立っていればいい事。暇なら寝てしまえばいい」
「そういうことではないぞ……なぜお前はそんなにも律儀と言うか」
「知らん。暇なら元に戻るか? その方が何も考えんで済むだろう?」
「そうするか……ほら」
女は手を差し出す。男は手を取る。そうすると二人はいなくなり、陰陽玉みたいなものへと変化した。
この陰陽玉が二人合わさった時のシンギョクとしての本来の姿。
何も考えずにただ、門番として、そこにあり続ける。
あるものは変わらずにあり続ける。
それが罪の贖罪であっても。
男と女はそこに、あり続ける。一つの存在として……
そこに男と女の人影がいた。名を二人でシンギョクと言う。男は魔界の門の前に立ち、女は地獄の門の前に座っていた。
二つの門しかないこの場所は博麗神社の空間のズレた所にあるのだ。それ自身が既に誰も立ち入らせないようになっており、この場所にたどり着けたとしてもシンギョクに倒されるのがオチだ。
この二人は門の封印のためにつけられた人間または妖怪なのである。
そうして今日も誰も来ない、何も無い場所で門番を続けるのである。
「なあ、ここにいる理由はあるのか?」
女の方が声に出す。女の見た目は髪は長く、赤色でその頭から四本の角が生えている。服は羽織りを着ており、表面が青色に白で星みたいな模様が描かれている。裏は赤色だ。上の服は白で下は赤の袴に白の模様が着いている。何よりその赤の目を光らせて男に話しかけているのだ。
「さあな。理由があるからこそ、ここに俺達がいるんだろう。同じことを何回も言わせるな」
男は答える。男は陰陽師のような服を着ており、袴は青色。頭に被る烏帽子は袴と同じような青色なのだ。
髪は短く、黒色。そうして目は女と同じ赤なのである。
「なあ半身。お前は人間だったが、なぜシンギョクとなった?」
女は話しかけていく。
「お前が俺に助けを求めたんだろう? だから俺はそれに応えたのみ」
男は淡々と答える。
「私が聞きたいのはそれじゃない。なぜ、私を助けたのだ」
「お前がそれを言うか。お前が生きたいと言ったからだ。それならばお前と一つの存在として生まれ変わっても良いと思っただけのこと。それだけだ」
~*~*~
シンギョクとなる前の話。女は妖怪であった。男は陰陽師であった。
二人は対立するもの同士であった。
「くそ……」
女は人間を襲っていた。しかし、襲った相手は陰陽師であったのだ。襲いかかろうとした所で返り討ちにされてしまったのだ。
ここで倒されてしまっては運の尽き。だが、あの女の陰陽師は他の陰陽師とは違った。
女の近くの草むらがガサリ、となった。
「物の怪め! 討ち取ってくれるわ!」
追いかけて来た女の陰陽師はとてもしつこかったのだ。他の陰陽師は見失うと直ぐに追いかけなくなっていたのだ。
「くそっ……たれめ……」
女は意識が持たなかった。座っていたところから倒れ込み、バサリと音が響いた。
「いたぞ……物の怪なぞ、容赦せん! 滅せよ……! ぐわぁっ!?」
術を出そうとした所でその女の陰陽師は倒れた。
遠距離から違う男の陰陽師が女の陰陽師に雷を撃ったのだった。
男は無言で妖怪の女だけを担ぎ、歩いていった。
妖怪の女は目が覚めた。目が覚めると何故か誰かに担がれているではないか。
「やめろ、離せ!」
バタバタと男から逃げようとするが力は出ない。
「暴れるな。もう少しで洞窟に着く。黙っていろ」
男は女に対して動きを封じる術をかけた。
「何をする気だ! 術を解け!」
「だから黙っていろと言っただろう。他の陰陽師に見つかっていいのか」
女はそれを聞いて黙った。男はそれ以上何も言わずにザッザッと歩いていった。
これが人間の男と妖怪の女が初めてあった話だ。
***
そうして、男と女は二人で組んで害する妖怪は倒し、陰陽師も倒し。どちらともから疎まれた。
男は何も言わなかった。何かを言うのは女がしていたから。
そうやって過ごしているうちに二人の破滅がやってきた。二人を疎んだ妖怪と陰陽師たちが殺しに来たのだ。
二人は戦ったが結果は惨敗。殺されてしまったのだ。
そうして死ぬ前に女は言う。
「ああ、死にたくないな……お前とならもう少し居たいと思ったのに……」
「ごほっ、お前は生きたいか……」
男は血を吐きながら問う。
「私も長いこと生きた、が、お前とならまだ生きたい……」
「そう、か……なら俺はお前と生き返ってやろう……」
男はそう言うと女に、自分に術をかけた。
「これで、何かとなって……二人で生きていける、だろうよ……」
「ははっ……お前が、言うと違うな……」
そう言って二人は額を寄せ合うように息を引き取った。
殺した妖怪や陰陽師は滑稽なものを見た、と言っていたそうだ。
その後は妖怪と陰陽師の殺し合いとなったそうだ。
***
三途の川。二人は一緒にいた。
渡し守は何も言わずに二人を閻魔の前へ運んだ。
十王裁判。それに私達はかけられた。
出会うまでの一人一人の罪。出会ってからの罪。
下された判決は、魔界と地獄の門の門番になれ、との事だった。
罪を犯しているはずなのになぜその扱いなのか。不思議に思った女は男に聞く。
「なぜ私達は門番になるのだ?」
「俺がどうにかしたからだ。したことは教えんが、お前が一緒に生きたいと言ったからどうにかしたまで」
男は何をしたとかは言わなかった。女はそれを適当に受け入れることにした。男の考えていることは女には分からぬことだからだ。
そうして二人はシンギョクとして生まれ変わった。
***
博麗の巫女が魔界と地獄に突撃するということもあったがそれはもう解決したこと。その時は後処理に追われたりもしたが、二人の門番と言う仕事は変わらずに今もし続けている。
「あーあ、暇だ。半身よ何か無いか?」
「俺に聞くな。こうして立っていればいい事。暇なら寝てしまえばいい」
「そういうことではないぞ……なぜお前はそんなにも律儀と言うか」
「知らん。暇なら元に戻るか? その方が何も考えんで済むだろう?」
「そうするか……ほら」
女は手を差し出す。男は手を取る。そうすると二人はいなくなり、陰陽玉みたいなものへと変化した。
この陰陽玉が二人合わさった時のシンギョクとしての本来の姿。
何も考えずにただ、門番として、そこにあり続ける。
あるものは変わらずにあり続ける。
それが罪の贖罪であっても。
男と女はそこに、あり続ける。一つの存在として……
こういう互いを信頼し合う関係っていいよね…
面白かったです。
でも、この作品は旧作があまり知られていないことを前提にしっかり説明されていて読みやすかったです。二人が一つに?なって何も考えずにいられるっていうのがいいですね。
もっと掘り下げた作品も見てみたいです。