「あいかわらず器用なことをやるわよね」
そう言われてアリス・マーガトロイドは読んでいた本から顔をあげた。目の前には紅茶を片手にパチュリー・ノーレッジがアリスのことを見ている。豪華な装飾が施されたテーブルのうえには派手な装丁の本が何冊か積みあげられ、その隣でアリスの人形がアリスの空いたカップに紅茶をそそいでいる。紅茶からは湯気がたちのぼり、すぐに見えなくなる。アリスの人形は紅茶にミルクを入れる。紅茶の液面に白い渦が描かれていく。紅茶がいれ終わるとアリスは右手でコップの持って、ほんの少し口をつける。そのとき、別の人形が本を持ってアリスのもとへやってくる。抱えた本を積みあげられた本のいちばんうえに奥とまた図書館の奥へと飛んでいった。
「何体も人形を操りながら、集中して本なんて読めるのかしら?」
「慣れればけっこう簡単なもんよ。それに命令を緩くすれば、彼女らを制御する魔力も少なくて済むし。パチェはちょっと神経質すぎるのよ」
アリスは金色の髪の毛をかきあげたあとに言った。パチュリーは視線をいちどアリスからそらしたあとに、それを手元のカップに移し、ほんの少し考えて、
「あなたに神経質と言われるとは思ってもいなかったわ」とため息をついたあとに「あと、私のことをパチェって呼ばないでくれない。そう呼んでいいのはレミィだけなの」と言ったあと、脇によせていた本を開いて読み始める。
頁をめくるときの紙のこすれる音と食器がたてる音だけがヴワル魔法図書館に響く。ときおり暗闇のなかでゆらっと何かが揺れ、少し遅れて本を抱えたアリスの人形が暗闇から顔をのぞかせる。アリスの人形は自分の体よりも大きな本を抱えて、ふらふらとアリスのもとへ飛んでいく。本を置くとアリスの人形はまるで汗でもかいたかのように右手でその額を拭う。アリスの人形はアリスを見あげる。アリスはその視線に気づき、本から目をはなすと、左手でアリスの人形の頭をなでる。アリスの人形は嬉しそうに頭を差し出している。それを見たパチュリーは「茶番よね」と辛辣に言う。
「自分で操っているのにそうでないかのように振る舞わせている。それって茶番じゃないの?」
「彼女たちが喜んでいるのは彼女たちの意思よ。私が操っているんじゃない。言ったでしょ、私は必要以上に人形に命令していない。放任主義なのよ」
「そんなのでいざというときに大丈夫なの?」
せせら笑いながらパチュリーは椅子に深くかけ直すと、本に視線を戻した。アリスは怪訝な表情を浮かべながら、パチュリーの一挙一動を観察していたけれど、何もわからず、紅茶に口をつけ、空になったカップにふたたび紅茶をそそごうとする人形に「もういいわ」と小声で言ったあと、無言で本を読み続けるパチュリーに対してアリスは、
「今日はやけにつっかかってくるじゃない? あなたらしくないわね、パチェ」
と言った。パチュリーはちらりと視線だけをアリスに向けたあと、それを戻して「別に」と言った。
アリスはとりつく島のなさにため息をつく。そのときヴワル魔法図書館の扉が開き、十六夜咲夜が中に入ってきた。「お食事の用意ができました」とふたりに告げると、アリスは読んでいた本にしおりを挟み、立ち上がる。咲夜は何も言わなかったが、アリスは本に視線を向けたままのパチュリーに対して「夕食、食べないの?」と訊いた。
「そんな人間じみたことなんて、なんでしなければいけないの? あなたはいつまで人間だったころの記憶にすがっているのかしら?」
パチュリーの言葉にさすがのアリスも機嫌を損ねた表情を浮かべて、それ以上何も言わずに咲夜と図書館から出ていった。
ひとりになった図書館でパチュリーはため息をひとつついて、どうしてあんなことを言ってしまったのだろうかと考えていると、図書館の奥から霧雨魔理沙がとつぜん現れる。しかし、パチュリーはそれに慣れてしまったのか、ほとんど動じることなく、彼女を一瞥しただけであった。魔理沙が挨拶しても、パチュリーは「何か用かしら?」と言うだけだった。
「アリスはこっちにきてないか?」
「アリスならいま夕食を食べに行ったわよ。ちょっとしたらまた戻ってくるんじゃない?」
魔理沙はさきほどまでアリスの座っていた椅子に座ると、「ちょっと待たせてもらうぜ」と言った。パチュリーは「勝手にすれば」と言うと、さきほどまで読んでいた本に目を落とすものの、目の前にいる魔理沙のことが気になり、何度か魔理沙のことを見ているうちに読んでいる本の内容がまったく頭のなかに入ってこなくて、パチュリーは自分がアリスになぜつらくあたってしまったのか、アリスがなぜ人間のころの習慣をやめようとしないのかもわかったような気がした。
「魔理沙」
魔理沙は「うん?」っと言ってパチュリーのほうを見る。ふたりの視線が一瞬、あったあと、パチュリーは魔理沙から視線を外すと、少し考え事をして、何かを言おうと口をぱくぱくとさせたけれど、言葉が出てこなくて、魔理沙は「何か言ったか?」と聞き返すと、パチュリーはびくっと体を震わせて、「ううん、何でもないの」と言う。
「変なやつだぜ」
魔理沙はそう言うとアリスが読んでいた本を広げる。パチュリーはその姿を黙って見ているだけしかできなかった。
そう言われてアリス・マーガトロイドは読んでいた本から顔をあげた。目の前には紅茶を片手にパチュリー・ノーレッジがアリスのことを見ている。豪華な装飾が施されたテーブルのうえには派手な装丁の本が何冊か積みあげられ、その隣でアリスの人形がアリスの空いたカップに紅茶をそそいでいる。紅茶からは湯気がたちのぼり、すぐに見えなくなる。アリスの人形は紅茶にミルクを入れる。紅茶の液面に白い渦が描かれていく。紅茶がいれ終わるとアリスは右手でコップの持って、ほんの少し口をつける。そのとき、別の人形が本を持ってアリスのもとへやってくる。抱えた本を積みあげられた本のいちばんうえに奥とまた図書館の奥へと飛んでいった。
「何体も人形を操りながら、集中して本なんて読めるのかしら?」
「慣れればけっこう簡単なもんよ。それに命令を緩くすれば、彼女らを制御する魔力も少なくて済むし。パチェはちょっと神経質すぎるのよ」
アリスは金色の髪の毛をかきあげたあとに言った。パチュリーは視線をいちどアリスからそらしたあとに、それを手元のカップに移し、ほんの少し考えて、
「あなたに神経質と言われるとは思ってもいなかったわ」とため息をついたあとに「あと、私のことをパチェって呼ばないでくれない。そう呼んでいいのはレミィだけなの」と言ったあと、脇によせていた本を開いて読み始める。
頁をめくるときの紙のこすれる音と食器がたてる音だけがヴワル魔法図書館に響く。ときおり暗闇のなかでゆらっと何かが揺れ、少し遅れて本を抱えたアリスの人形が暗闇から顔をのぞかせる。アリスの人形は自分の体よりも大きな本を抱えて、ふらふらとアリスのもとへ飛んでいく。本を置くとアリスの人形はまるで汗でもかいたかのように右手でその額を拭う。アリスの人形はアリスを見あげる。アリスはその視線に気づき、本から目をはなすと、左手でアリスの人形の頭をなでる。アリスの人形は嬉しそうに頭を差し出している。それを見たパチュリーは「茶番よね」と辛辣に言う。
「自分で操っているのにそうでないかのように振る舞わせている。それって茶番じゃないの?」
「彼女たちが喜んでいるのは彼女たちの意思よ。私が操っているんじゃない。言ったでしょ、私は必要以上に人形に命令していない。放任主義なのよ」
「そんなのでいざというときに大丈夫なの?」
せせら笑いながらパチュリーは椅子に深くかけ直すと、本に視線を戻した。アリスは怪訝な表情を浮かべながら、パチュリーの一挙一動を観察していたけれど、何もわからず、紅茶に口をつけ、空になったカップにふたたび紅茶をそそごうとする人形に「もういいわ」と小声で言ったあと、無言で本を読み続けるパチュリーに対してアリスは、
「今日はやけにつっかかってくるじゃない? あなたらしくないわね、パチェ」
と言った。パチュリーはちらりと視線だけをアリスに向けたあと、それを戻して「別に」と言った。
アリスはとりつく島のなさにため息をつく。そのときヴワル魔法図書館の扉が開き、十六夜咲夜が中に入ってきた。「お食事の用意ができました」とふたりに告げると、アリスは読んでいた本にしおりを挟み、立ち上がる。咲夜は何も言わなかったが、アリスは本に視線を向けたままのパチュリーに対して「夕食、食べないの?」と訊いた。
「そんな人間じみたことなんて、なんでしなければいけないの? あなたはいつまで人間だったころの記憶にすがっているのかしら?」
パチュリーの言葉にさすがのアリスも機嫌を損ねた表情を浮かべて、それ以上何も言わずに咲夜と図書館から出ていった。
ひとりになった図書館でパチュリーはため息をひとつついて、どうしてあんなことを言ってしまったのだろうかと考えていると、図書館の奥から霧雨魔理沙がとつぜん現れる。しかし、パチュリーはそれに慣れてしまったのか、ほとんど動じることなく、彼女を一瞥しただけであった。魔理沙が挨拶しても、パチュリーは「何か用かしら?」と言うだけだった。
「アリスはこっちにきてないか?」
「アリスならいま夕食を食べに行ったわよ。ちょっとしたらまた戻ってくるんじゃない?」
魔理沙はさきほどまでアリスの座っていた椅子に座ると、「ちょっと待たせてもらうぜ」と言った。パチュリーは「勝手にすれば」と言うと、さきほどまで読んでいた本に目を落とすものの、目の前にいる魔理沙のことが気になり、何度か魔理沙のことを見ているうちに読んでいる本の内容がまったく頭のなかに入ってこなくて、パチュリーは自分がアリスになぜつらくあたってしまったのか、アリスがなぜ人間のころの習慣をやめようとしないのかもわかったような気がした。
「魔理沙」
魔理沙は「うん?」っと言ってパチュリーのほうを見る。ふたりの視線が一瞬、あったあと、パチュリーは魔理沙から視線を外すと、少し考え事をして、何かを言おうと口をぱくぱくとさせたけれど、言葉が出てこなくて、魔理沙は「何か言ったか?」と聞き返すと、パチュリーはびくっと体を震わせて、「ううん、何でもないの」と言う。
「変なやつだぜ」
魔理沙はそう言うとアリスが読んでいた本を広げる。パチュリーはその姿を黙って見ているだけしかできなかった。
アリスを思うパチュリーはそれが気に食わないから辛くあたった、ってことでいいのかな
心情描写が足りなさすぎです。三人称で説明的すぎる。
読みづらかったです。地の文、もうちょっと改行を。ぱっと見でブラウザ閉じかけました。
百合にするなら、一人称のが書きやすいし読まれやすいと思いますよ
分類にキャラ名入れるときはスペース入れて個別にしたほうが良いかと