はいどうも、皆さんおはようございますこんにちはこんばんは。幻想郷最速を自負しております、清く正しい射命丸です。
今回わたしは某厄神Hと某河童Nの関係について取材したいと思います。(プライバシー保護のため名前はすべてイニシャルにしております。)
取材に赴く前に、何故わたしがこの取材をしようと思ったのか、その理由を説明しましょう。
実は、この二人の関係は結構有名なのです。
わたしの後輩であり、厄神H,河童Nの両方と友人である白狼天狗Mもこう言っております。
「あの二人の関係?恋人同士でしょう。というかこの山で知らない人いるんですか?」
そうです。二人の噂は、妖怪の山でもかなり有名なのです。
では何故わざわざみんなが知っていることを取材する必要があるかって?簡単なことです。
噂は噂、真実かどうかは分からない。ならば誰かが真相を突き止めなければならないのです!
しかし、この噂の真実を報道した者が、まだ誰もいないのです。
報道しようとした人ならば大勢います。わたしの同僚たちも必死に取材しました。しかし、何故かみんな悲劇的結末を迎えたのです。
追跡飛行中突風にあおられカメラを落とし破損。
撮影しようとカメラを向けた瞬間突然の大雨でカメラが濡れてしまいおじゃんに。
突然関係のない弾幕ごっこに巻き込まれカメラが被弾した。などなど…
みんな大した怪我もなく命に別条はありませんが、新聞記者にとって命の次に大切なカメラが無残なことになってしまったのです。
ちなみに上記3つの例は全て、わたしの友人でありライバルである鴉天狗Hの実体験です。彼女、泣いてました…
「もうやだ!あの二人の取材はしたくない!」
そう言って泣きくずれる彼女を前に、わたしは誓いました。
志半ばで倒れていった友人たちのためにも、必ず取材を成功させてみせる!と…
では、前置きが長くなりましたが、これから取材に参りたいと思います。
応援よろしくお願いします!
妖怪の山上空を飛行していると、さっそくターゲットを発見しました。河童Nです。幸先がいいですね。
ではこれから追跡しま…
―びゅうう!
「あやや!?」
突風です!思わず声をあげてしまいました。しかしこんな風、乗り切って見せます。
―びゅうう!びゅううう!びゅおおおお!!
…思った以上の風でした。とても乗り切れそうにありません。操るのも難しそうです。
しかたないので、適当な木にとまることにします。河童Nを見失う事になりますが、友と同じ轍を踏むわけにはいきません。
―みしみしっ!
「あややや!?」
―ドタッ!
とまった木の枝が折れて、落っこちてしまいました。いたたた…しかしカメラは無事です!
これぐらいではへこたれません。友に誓ったのですから。
しばらくすると風がやんだので、再びターゲットを探します。
するとすぐに見つけました。今度は厄神Hです。
くるくる回りながら移動する彼女のあとをこっそりつけていると、河童Nの姿が見えてきました。
二人とも満面の笑みで手を振りあっています。微笑ましいですね。
しかし、これはチャンス。二人が恋人関係であるという証拠をつかむため、カメラを構えます。
…ザーザー!
突然の大雨です。しかし大丈夫、読んでました。友の経験が活きました。カメラが濡れる前に、自分の体で雨から守ります。
しかも今回は、突風のようにやむのを待つ必要はありません。切り札があるのです!
これ!天狗の団扇です!
「雨雲なんかこれでイチコロです!」
わたしはそう叫んで、天狗の団扇で雨雲を吹き飛ばしました。こんなことをしたら後で怒られるかもしれませんが関係ありません。わたしの帰りを待つ友人がいるのです。
「さて、再び取材をば…」
雨雲を吹き飛ばしたわたしは、再びカメラを構えます。
…ザーザーザー!!
再び大雨。かろうじてカメラは守りましたが。
何なんでしょうこれは?しかもさっきよりも雨の勢いが強い気がします。
「しつこいですね…」
もう一度雨雲を吹き飛ばします。今度こそ、とカメラを構えます。
…ザーザーザーザー!!!
ええ、何となく分かっていました。おかげでカメラは無事です。
きりがないのでもう雨雲を吹き飛ばすのは諦めます。しかたないので自然にやむのを待ちます。雨にぬれて風邪をひくかもしれませんがそんなこと言ってられません。こんな雨よりも、友人が流した雨のほうがずっと重いのです。
しばらくすると雨がやみました。空を見上げると、きれいな虹がかかっていました。
まるで、わたしの取材成功の前祝いのように思えました。
「―よしっ!」
そう意気込んで、取材を続けるため、わたしはまた飛び立ちました。
すると、またすぐにターゲットを見つけました。今度は二人一緒です。いつもここまでは調子がいい。
さっそく二人の追跡をしようとすると。
―ブオオ~~~!!
こ、この音は!?
「侵入者だ!」
「侵入者だ!」
「撃退しろ!」
侵入者がいることを知らせる警笛です!白狼天狗たちが出てきました。
「へへっ!妖怪の山の珍しいキノコを頂いてくぜ!」
気付けば近くに白黒魔法使いMがいます。あれ…近くに…?
「侵入者発見!」
「ここは通さないぞ!」
白狼天狗たちもやってきます。ということは…
「邪魔すると痛い目みるぜ~?」
「そんな脅しに乗るものか!」
「引き返してもらうぞ!」
「あやや~!?」
当然ここが弾幕ごっこの場となるわけで、魔法使いMや白狼天狗たちの弾幕が飛び交います。
しかし慌てることはありません。わたしは幻想郷最速、こんな弾幕ぐらい乗り切ってピチューン!
…こんな弾幕ぐらい乗りピチューン!
…こんな弾まピチューン!
調子が悪かったみたいです。あっという間に3ミスです。おかしいなあ…いつもはこんなことないのに…どうも今日は運も悪い。
もちろんその間に二人を見失いました。ちょっと泣けてきました…魔法使いMめ、今度会ったら覚えてろ。
しかしカメラは死守しました。わたしの涙がなんだ!友の涙に誓ったんだ!
日が傾いて、あたりは薄暗くなってきました。ですがこの河童印のカメラは暗くってもちゃんと撮影できるので大丈夫です。河童印はすごいですね。でも水には弱いのが難点。河童印なのに。
わたしは今、厄神Hの家の近くの茂みに隠れています。
考えたのです。下手に飛び回っていては何が起きるか分からない。じゃあ待ち伏せればいいじゃないか、と。
二人が深く愛し合う恋人同士なら、同棲、ないしはお泊りくらいするだろう。ということはどちらかの家に二人で入る。そのシーンを撮れば、とりあえずは取材成功でしょう。
ただのお友達なんて言い訳は通用しません。噂だけでも二人の関係は広まっているのですから、仲睦まじく同じ家に入る写真があれば、信憑性は大なのです。
ただ、どっちの家に泊まるかは分かりませんでしたが、厄神Hの家にやってきました。河童Nの家は河童の里にあるので、鴉天狗がこそこそしても逆に目立って隠れにくいですし。
しばらく待っていると、遠くの方から影がやってきます。
影の姿は……ひとつ…残念、ハズレです。
「ってあれ…?なんか影が大きすぎるような……あやや!?」
何と、厄神Hと河童Nが腕組みして寄り添っているではありませんか!?
考えるよりも先に体が動きました。無意識のうちにシャッターを押します。
ひとつになった影は厄神Hの家の玄関前で止まりました。なんかもぞもぞしています。
じっと目を凝らしてみると…
「あ、あれは!?」
隠れているのも忘れて、思わず声をあげてしまいました。
寄り添っていた二つの影が、今度は熱い抱擁。厄神Hが河童Nにもたれかかっているようにも見えます。
抱擁を続けた後、そのまま熱い口付けを…ああ!?そんなとこまで!?
「おお…何と大胆な…」
やや興奮気味にシャッターを押し続けます。幻想郷においてはフィルム一巻も結構貴重ですが、関係ありません。友の涙に報いる方がもっと大切です。そしてこの状況は個人的に興味あります!
厄神と河童の密会、逢瀬、逢引、秘め事…写真を撮りながらこの状況を形容すべき言葉を次々と思い浮かべます。ブン屋の性です。
ちなみに言っておきますがこれは盗撮なんかじゃありませんよ!彼女たちは玄関前、つまり家の外にいるのです!ベランダまではセーフです!
フィルム一巻分撮り終えました。さて、帰りましょう。ここまできて、カメラやフィルムが駄目になってはお話になりません。
わたしはそそくさと退散しました。
「ねえ、今だれかいたみたいだけど?」
「そうみたいね」
「じゃあひょっとして見られちゃったかも。ちょっと恥ずかしいな…」
「大丈夫よ。たとえ見られても、証拠なんて残らないから」
「どういうこと?」
「いえ、なんでもないわ。そんなことより家に入りましょ」
「うん、そうだね」
厄神Hと河童Nは寄り添ったまま家の中へ入っていった。
「ふっふっふ~ついにやりましたよ~♪」
うれしくてつい声に出てしまいます。
そう、わたしはやり遂げたのです。不肖射命丸文が、友の涙のためにもやり遂げたのです!
ここはわたしの家。カメラを手に、意気揚々と帰ってきました。凱旋です。
「さあさあ、さっそく現像を~」
もう夜は遅いですが、一刻も早く現像をしたくてたまりません。友の無念を晴らしたのです。
そんな想いで、わたしはカメラのカバーを開けました。
「あれ…フィルムが入ってない…」
そんなはずはありません!取材に出る前に確認した筈です!
ですが…入っていた筈のフィルムがありません…
わたしは頭が真っ白になりました…
「もう嫌です!あの二人の取材はしたくありません!」
噂の真相は厄の中…
しかし、本当に何者なんだ…(棒