Coolier - 新生・東方創想話

門の前で、独り。

2010/02/14 05:12:39
最終更新
サイズ
3.04KB
ページ数
1
閲覧数
1286
評価数
4/18
POINT
880
Rate
9.53

分類タグ


 あの日、あなたは巫女と戦ったね。
 
 わたしだって負けたけど、しかたないじゃない、ブランクあったんだもの。

 あの日、あなたは魔法を求めて外に出て行ったね。

 必ず帰ってくる、なんて気のきいたことは言ってくれなかった。

 あなたが出ていった後のこと、ちゃんと考えてくれていたのかな?

 皆、あなたのことが大好きだったんだよ。

 わがままでどうしようもないけど、強くてときどき優しいあなたは館の、わたしたちの世界の中心。

 太陽だったあなたがいなくなってから、どうなったか教えてあげたいな。

 

 ねえ、知ってたかな。
 
 あなたが出ていった後からしばらくしたら、夢幻世界とのつながりが消えちゃった。
 
 最後に双子の悪魔と会った時、泣いてたんだよ。

 あの、幻月と夢月が!

 あなたが知っても、信じないよね。

 でも、あの時はきっと、嘘泣きなんかじゃなくて本当に泣いてたんだと思う。

 
 ねえ、あなたはこうなることを見越していたのかな。

 昔から頭は良かったし、きっとわかってたんだろうね。

 でも、ここまで早いとは思わなかったんじゃないかな。

 双子の悪魔と会えなくなってから、今度は幻想郷にも行けなくなったんだ。

 くるみちゃんとオレンジはほとんどいつも幻想郷側にいたから、閉じ込められずに済んだみたい。

 二人とも、元気にしているのかな。

 特にくるみちゃんは弱いくせにいたずら好きなんだもん。

 人間にいじめられてないかな。

 オレンジは大丈夫だろうね。

 あの子は芸達者だから。

 きっと今でも元気なら、バトンを振りまわしてるのかな。

 
 


 ねえ、あなたは、帰ってこないつもりだったのかな。




 「わたしを、一人ぼっちにするつもりだったの、かな?」 




 門の前で一人つぶやいた。
 
 相変わらず世界のはざまにあるこの空は、不可思議に彩られているのに、暗い。

 風も吹かないけれど、雨も降らない。

 逆刃の鎌は、相変わらず重くて、冷たい。

 長い間、ずっとこうして門の前で立っていた。

 一人で。

 「一人ぼっちになってからずっとこうしてたわけじゃないんだよ……」

 庭の手入れも、館の掃除も全部やった。

 ただ、すぐにやる意味を見失って、やめてしまった。

 花は枯れて、とうの昔に腐った根しか残っていない。

 生命力の強いものだけが、壁につるを伸ばして生きながらえている。

 「好きだって言ってたのに、ひまわり。忘れちゃったのかな。ほら、みんな泣いてるよ」

 館も荒れ果て、明かりだってつくことは二度とないのかもしれない。

 「ベッドがほこりだらけで全然眠れなくて……馬鹿みたいだよね、当たり前なのに」

 口元だけを無理にゆがめて、笑おうとしてみる。

 鏡はないけれど、きっとひどい顔になっているんだろう。

 やることがなくなってからは、ほぼずっとこうして門の前に立っていた。

 どうして、と聞かれたならば、それは。

 「帰ってこないかな。幽香」

 待っているから。

 

 「この前ね、久しぶりにお料理したんだけど、多分もうアレで最後だね。寿命なのかも」
 
 それは、わたし自身のものなのか、館のものなのか、どっちだっていいのだけれど。

 「本当、馬鹿みたい……。無駄になるのに決まってるのに」

 すでに何度目かわからないが、渡せないチョコレートを作った。

 どうして作るんだろう。

 出られないのに。
 
 会えないのに。

 帰ってこないのに。

 

 「ハッピーバレンタイン、幽香」

 ハッピーなのに、まるで呪いみたいだ。

 そう思いながら、わたしは目を閉じた。
バッドエンド……とも取れるし、ネバーギブアップとも取れる彼女は、ゲートキーパー。

創想話ではお初となります、リーオです。
プチから飛び出してきました。

皆さんもよいバレンタインを。
リーオ
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.530簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
いつか呪いが呪いじゃなくなる時が来る。
だからバッドエンドなんかじゃない。
10.90名前が無い程度の能力削除
一人ぼっちなエリーさんがかわいそう過ぎる…
ゆうかりんは即刻迎えに来るべき
12.100名前が無い程度の能力削除
これちょっとシャレにならんでしょ・・・ハッピーエンド書くべきそうするべき
13.80名前が無い程度の能力削除
おふぅ