「ちょっと、そこの人間! 今、栗きんとんのこと見てたでしょ」
「そうよ、静葉ねえさんのいうとうりなんだから」
「え~と、私のセリフはなんだっけな、いえ滅相もございません」
「鍵山さん、もっと感情込めてよ」
「え? 静葉さんそんなこといわれても」
「まあ、静葉ねえさん。もう一回チャンスをあげてもいいんじゃない?」
「仕方ない、もう一回だけだからね。鍵山さんにはたくさんサツマイモあげてるんだからしっかりしてよ」
「はい、分かってますよ」
「……ちょっと、そこの人間! 今、焼き芋のこと見てたでしょ」
「そうよ、静葉ねえさんのいうとおりなんだから」
「いいえ、滅相もございません」
「違う、今のところは、いえ滅相もございません」
「そんな、多少のことじゃないですか。静葉さんだって、少しセリフが違っていました」
「鍵山さん。静葉ねえさんはいいの。こういう神だから」
「どういう神ですかそれ」
「私は、秋の神様だからついつい感情が紅葉しちゃうんだから仕方ないでしょ」
「ほら、静葉ねえさんのいうことは間違っていない」
「もしかして、高揚と紅葉をかけたんですか?」
「そうよ」
「本当にこれで、今年の秋に信仰してくれる人が増えと思いますか?」
「静葉ねえさん。増えるよね?」
「ええ、増える。これなら、信者倍増は間違いなしに違いない」
「ほら、静葉ねえさまがそう言っているのだから間違いない」
「そうですか。増えるといいですね」
「じゃあ、続き始めるよ」
「はい、静葉ねえさん」
「ちょっと、そこの人間! さっきから、マツタケを探してるでしょ」
「そうよ、静葉ねえさんのいうとうりなんだから」
「……? ぜんぜん違う」
「いいから、アドリブで続けて鍵山さん。今、静葉ねえさんがのっているところなんだから」
「いえ、マツタケなんて高価なもの探していません」
「いいえ、その目はマツタケを探していた目でしょ」
「え? 目ですか?」
「そうよ、静葉ねえさんのいうとおりなんだから」
「……ごめんさい。神様。マツタケ探していました」
「どうして、嘘をついたんだ。静葉ねえさんは神なんだ」
「すみません。すみません」
「謝って済むと思っているのか?」
「まあまあ、穣子そのへんでやめてあげなよ」
「静葉ねえさんがそういうならしかたない。救われたな」
「あ、ありがとうございます」
「……ただし。これから、私達二人のことを信仰する事」
「はい、わかりました」
「うん、だったらそこを調べなさい」
「はい、あ、これはマツタケ」
「私と静葉ねえさんからの贈り物だ」
「ははあ、ありがとうございました」
「……よし、これなら今年の秋には信仰倍増間違いなしだね。静葉ねえさん」
「そうね、穣子。はっはっは」
「……練習終わりみたいですね。私は帰ります」
「そうだね。秋に信仰が集まったら、穣子と一緒におすそ分けにいくよ」
「分かりました。健闘を祈っています」
秋姉妹……ああ、こりゃもう秋も終いかもわからんね
シメの台詞のブッたぎり感も星新一っぽくてなんとなく無常を感じる
なんだか謎の面白さがあったように感じました。
まず、秋姉妹は農業の成果そのもの、雛は失敗や不幸に対する人の心配や恐怖や備え つまり自然が関わることの業として常に畏れないとならず、また予想を裏切りこちらの予定を省み無い
しかし、それでもひたすら人は畏れるしかない
そして、ある程度恵が手に入ってもそれまでの予想が悉く裏切られたのだから、自らの破滅を覚悟しなくてはならない
つまり、農業の過酷さを書いたものではないかと