前作までの設定を流用しています。
読む必要はありませんが、以下のことに注意してください。
・蓮子が妖怪。
・カプ構成:蓮(メリ=ゆか)れいむ
「霊夢ちゃ-ん、ひまー、たすけてー」
「うるさい、コタツ妖怪」
そこらにいるみなみなさま。ごきげんよう、博麗霊夢よ。
正月も終わり新年となってもう幾日。いかがお過ごしかしら。うん、寝てるわよね。
かく言う私は今日も人気のないこの境内を黙々とお掃除していますわ。うふふふふ。
…………え?お前そんなキャラじゃないだろうって?
「当然よ。だって私は宇佐見蓮k「だから黙レ」……なによう、だってヒマなんだもん」
「まずなんであんたがウチでごろしゃらしてんのか、説明してもらってもいいかしら?」
……今度こそ博麗霊夢よ。
今、博麗神社のコタツには妖怪困ったちゃんが出現しているわ。そのせいで少し狭い。
今年の夏出逢ったこの妖怪は、普段こそ外の世界に住んでいるらしいんだけど、
最近になってよく遊びに……訂正、よく問題を起こしに来るようになった。
そして多くの妖怪の例にもれず、ウチに転がり込むことが多いのだ。
あんた、紫の相棒ならあいつのところに行けばいーでしょーに。
まあ、今はその紫が冬眠の真っ最中で、八雲家には入れないんだけど。
「簡単なことじゃない、紫がいないからよ」
「そうよね……って、だからってウチに上がりこむな。自分の巣に帰ればいいでしょ」
「ケチくさいこといっちゃだめよー、霊夢ちゃん。
すべてを受けいれる幻想郷の神社なんだから、もっと懐を深ーく深ーく……」
「……深ーく深ーく、陰陽玉をめりこませてやろうかしら……」
「ふあぁん、ご無体な、お止め下さい巫女様ぁ……!」
「やかましい、へんな声だすな」
こいつと話していると、こんなアホなやり取りになることがよくある。
相手の発言に対してわたしが突っ込んでいるようにみえて、
その実、わたしが遊ばれているだけという、そんな会話。
紫とも、話題は違えどそんな会話になることがたまにあって、
そういうとき、こいつはやっぱり紫にごく親しい存在なんだ、と強く感じる。
「まったく……わたしが聞きたいのは、なんで紫もいない幻想郷にいるのかってこと。
外はそんなにヒマなのかしら?」
「あはは……そんなことないけどね」
――今は冬休み、ってヤツなのよ。
そう言ってコタツに突っ伏する蓮子。そして……
「霊夢ちゃんは……やっぱり、寂しい……?」
唐突に、そんな言葉を投げかけてきた。
「なっ……何が、よ」
「決ってるでしょう。紫がいなくて、寂しい?」
「…………っ!」
わたしが知るなかでは、いつになく真剣な声で聞いてくる蓮子。
いつもの能天気な声とは違う、『妖怪』宇佐見蓮子の声。
加えて、かすかに周囲の空気の流れが変わったような気さえさせる。
……まあ、コタツに突っ伏したままの時点で台無しなのだが。
「……あんたは、どうなのよ」
「ふえ?なにが?」
いい機会なので、たまには反撃してみることにした。
いつもこいつに喋らされてばかり、こいつ自身のことはあまり聞いた覚えがないから。
「あんたは、紫がいなくてどうなのよ」
「…………」
しばらくの沈黙。
顔を横に向けて突っ伏しているので表情をうかがい知ることは出来ないが、
多分、どう誤魔化そうか考えているんだろう。
やっぱり、いつも通り何も聞けずに終わるのかな……
「私はね」
「え……?」
「あら、えっ?、って何?」
「……答えてくれると思わなかったから」
「んー……じゃあ今回は特別」
「そう」
「うん、そう」
そう言う声の明るさが、楽しさが、やっぱり紫を連想させて、
一瞬、また自分の世界に入り込みそうになる。
でも今は、折角の機会を逃すわけにはいかないから、蓮子の声に耳を傾けよう。
「私はね……もう、寂しいかどうか、なんて分かんなくなっちゃった」
「…………」
「紫から聞いたかもしれないけど、
昔の私たちはもっと近づきこそすれ、離れるなんて考えもしなかったわ。
でも紫が冬眠するようになって、私が外に住むようになって、
だんだん離れていることに慣れてきちゃって……
……もう『紫がいなくて寂しい』っていう感情があるのかも曖昧になっちゃったのよ」
そう言って、溜め息ひとつ。
「……ここに来てるのは、霊夢ちゃんがいるからかしらね」
「へ……?」
「なんというか、あなたから紫を感じられる気がしてね。
それに……恋人がいなくて寂しがってる子を放っとけないわ、蓮子さんとしては」
……そっか、きっとこいつもおんなじなんだ、わたしと。
「……お互い様ね。あんただって十分寂しがってるじゃないの。相棒がいなくて」
「さあ、どうなのかしらねえ」
「証拠、挙げましょうか?」
「あれ、そんなものあるの?」
「ええ、例えば……
……あんた、紫が冬眠するまで『ヒマだ』なんて言ったことなかったじゃない?」
「…………!」
「まったく、春になったら覚悟しなさい、あのバカ。
冬の間ずっと寂しい想いさせとくなんて重罪だと思わない?しかも二人も」
「…………ふふ、あはははっ……あーあ、私の負けね。霊夢ちゃんの勝ち」
「うん。だからさ、罰としてお茶淹れてきて。もちろん二人分」
「あいあいさー」
わたしだって紫を返す気はさらさら無いけど、
こんな時ぐらい気持ちと時間を共有してもいいと思うのだ。
二十年も生きていない人間も、千年生きた妖怪も、
大事な人に会えなくて寂しいと思う気持ちは、同じだと思うから。
「チャイでいい?」
「普通に緑茶を淹れなさいよ……だいたい『チャイ』ってなんなのよ」
「インドって国のお茶よ。大量のお茶っ葉を煮詰めて……」
「もったいないからやめて……」
冬の博麗神社には、いまだ待ち人の来ない二人がいる。
片や、その千年の時を共にし、かつて愛し合った朋。
片や、その千年の末に辿り着いた赤い糸の向こう端。
二人で、紫色の春一番が吹くときを待っている。
そういえば蓮子の赤い糸の先は…
それと藍様可愛いwこのままずっと後書き要員でもいいのよ?w