※この作品は次の2作の設定をそのまま使っております。
作品集100「パチュリー様が友人のための苦しみを背負われました」
作品集101「私、咲夜は紅魔館のために何ができるでしょうか」
なのでそちらのほうから読んで頂けると内容が理解できると思います。
―◆―
「咲夜さんのって……とても綺麗ですね」
「あ……ダメ、そこは……くぅ…………!」
「ツボの刺激が辛そうね」
「あら、美鈴。私のじゃ不足かしら?」
「いえいえ、パチュリー様も……私なんかより可愛らしい。もっと撫でまわしても良いですか?」
「ええ……貴女に触られるととても興奮しちゃうわ……あぅ……くふぅ……!」
「そうよね。パチェの腹筋逞しくなったものね」
「お嬢様……線の見られないか弱いお身体ですね」
「うっさい黙れ」
ここは紅魔館。
緑の景色の中、周りから色彩的にも異彩を放つ紅い館――それこそが吸血鬼の住む館こと紅魔館である。
その誰にも近寄りがたいイメージを植え付けるような紅い館の主人がレミリア・スカーレット。その友人である、大図書館に住まう魔女であるパチュリー・ノーレッジ。吸血鬼の館のメイド長である十六夜咲夜。そして、この紅い館を守る門番長である紅美鈴が、紅魔館の一室で甘い午後のひと時を過ごしていた。
美鈴が咲夜を攻め立て、咲夜はその上質なるテクニックによって既に限界まで達しようとしている。パチュリーはそんな咲夜を羨ましそうに見つめていたが、とうとう我慢できなくなったようで自ら美鈴に触っていいと進言していた。大胆である。
そして、遠目でその甘いひと時を見つめるレミリアがその二人を見て興奮――しているわけではなく、冷気の能力を持っているかのような冷めた視線を送り続けていた。勿論突っ込みも忘れない。
「美鈴……もう少しお願い。まだ頑張れるから…………」
「咲夜さん、無理しちゃダメですよ? 咲夜さんを喜ばせたい一心で私頑張っているんですから」
「マッサージをね」
「美鈴……私、貴女が欲しいわ……優しくして」
「パチュリー様、勿論喜んで。私の全てを受け止めて下さいね」
「マッサージに気を流しこむのね」
「あ……くぅ……! あ、は、激しいわ……美鈴……あふぅ……くぅ……!」
「ああ、すみません。力加減が少し出来なかったみたいで……」
「い、良いのよ……貴女になら、私を壊してくれても構わないわ……」
「もう壊れてるって」
「お嬢様。もうお昼ですしそろそろ御就寝されては……」
「こんな声出しまくってるメイドと友人がいたら眠気も吹っ飛ぶわ」
――話は数日前からの感動的な話から始まっている。
内容については触れないでおくが、咲夜とパチュリーの二人はレミリアのために、自分達の犠牲も厭わずにその身体を差し出したのである。
パチュリーは数日の間息も絶え絶えに生死の境を彷徨う程の呪いをその身に宿し、咲夜はそのパチュリーの意思を次いでレミリアのために頑張ったが、結局はその身に同じような呪いを与えてしまったのである。
そんな二人に救いの手を差し伸べたのが、レミリアの妹であるフランドール・スカーレット。彼女は二人の様子を訪れると、その身に宿す呪いに口元を左右に釣り上げるようにして引きつかせていた。しかしその呪いに多分恐怖の思いを感じ取ったフランドールは、その解決策を見出すべく気を扱うことのできる門番長の美鈴に助けを請う事にしたのである。気とは主に、身体を流れる生命そのものと言っても過言ではなく、体内の気を操ることが出来るということはその身に宿した病や呪いへの対抗策となるのではないかとフランドールは考えたのである。
その話を美鈴に持ちかけると二人の元へとすぐに直行。その身にかかった呪いの辛さは軽減できるという美鈴の言葉を信じ、丁度この日は曇り空であるため代わりにフランドールが紅魔館の門番をしている。白黒魔法使いは油断していたのか、即効地面に伏してしまったらしいがそんなことは誰も知らない。
「追加、レミリア・スカーレット。二人は紅魔館の主人である私を指さして笑い転げました。パチェは普段動かないくせに地面を叩きながらのたうち回ったせいで全身筋肉痛。咲夜も普段から無理していたせいか元より全身筋肉痛。そして先ほども言った通り二人とも笑いすぎて腹筋が壊滅的なまでに成長したおかげで、現在では板チョコの様な腹筋の持ち主、正直きもい。その二人をマッサージしているのが美鈴、二人の腹筋見て不気味な笑顔を浮かべてるのが正直怖い。なので感動的な話とか嘘ばっかりでシリアスでもないのにシリアスみたいな分類がついた作品が過去にあります」
「お嬢様、お二人の頑張りを無駄にするような発言はお控えください」
「本当の話じゃない」
「雨が降る原因はなんでしたっけ? 温暖化の原理はコメント的に正しいみたいですけど、テストでは三角が限界でしょう」
「ごめんなさい」
「「ブフゥ!」」
「そこ、笑わない!」
過去を思い出したせいか、先ほどまで長い呪いから解放されかけていた二人は再度腹筋が不夜城レッド。そんな腹筋を見ながら恍惚な表情を浮かべて手を添えながら「ああ……お二人とも、何て可愛らしい……」と微かに赤く染まった笑顔で撫でまわすのが一名。
その三人とは違って一人だけ両手を頭に添えて現実から逃げている。この様な光景を作り出した原因が自分にあるせいか、自分に襲いかかる後悔の念が彼女を今も攻め立てている。
「あ、美鈴……だ、ダメ!」
「あは、咲夜さん……なんだか濡れてきましたね。いやらしい」
「く……ふぅ! あ、あん……いや……はふぅ…………」
「身体が温まって汗が出てきたんでしょ」
「め、美鈴……咲夜だけなんて酷いわ……」
「ふふっ、パチュリー様もこの割れ目が気持ちいいみたいですね……」
「――! ちょ、美鈴……そこはダメぇ! あ、あぁ……んぅ!」
「腹筋の割れ目触られて悶えるのね」
「お嬢様は……聞くだけ無駄みたいですね」
「私だけが純粋な幼女の体裁を守るわ」
しかし、さすがは美鈴である。筋肉の傷んでいるところを長い時間かけてゆっくりと揉み血行を良くするのは学習すれば出来る事ではあるが、彼女のように気と言う力を用いて血行を良くすることなど簡単に出来る事ではない。それこそ、彼女にしか出来ないマッサージ方法と言っても良いだろう。まさに言い得て妙である。
それを証明するかのように二人の身体は既に最初の様な硬さはほとんど失われ、数日前以上の柔らかさとなっている。
咲夜もパチュリーも、普段からそこまで身体に気を使うタイプでは無い。長い読書だけで過ごす魔女に、自分のことよりも館を優先するメイドのことである。きっと二人ともそれ相応と言える位の疲労が身体に蓄積されていたのであろう。
「め、美鈴……」
「咲夜さん。どうかしました?」
咲夜は仰向けになっている自分の横で板チョコのようになった自分の腹筋に気を流しこんでくれる美鈴を、精一杯の強さと、こうして尽くしてくれる感謝と、普段見せられない弱みをその目に宿して「これから、私『だけ』のためにマッサージをしてくれないかしら」と懇願したのである。
尊敬する上司にそのようなことを言われて子供のように無邪気に微笑む美鈴。その時分に向けられる純粋な求められる気持ちに答えたくて「はい」と言おうとしたその時、反対側にいたパチュリーがそんな咲夜に棘のある言葉を投げかけた。
「咲夜、貴女が美鈴にマッサージを頼むことに異論はないわ。貴女がこの館のために尽くす気持ちも分かる」
「パチュリー様、有難うございます。これからも美鈴と共に頑張りますわ」
「でも、私『だけ』のためって何かしら。所詮は吸血鬼の犬の分際で、この至福の時間を一人占めするなんて頂けないわね」
「犬……ですか?」
「犬ね。レミィに頭撫でられて『お嬢様、もっと私を撫でまわして』とか言ってるようがお似合いだわ」
「お嬢様はパチュリー様に差し上げますわ。この前のパチュリー様のお嬢様を想う心に、私心打たれました」
「どうでもいいわ、遊びだったし」
「ちょ、本人の横で酷いこと言わないで!」
咲夜もパチュリーも美鈴のマッサージのおかげで普段以上の調子を取り戻したのか、お互いに立ちあがって睨みあい始めた。
横では美鈴がおろおろとその光景を見つめ、レミリアはそんな二人の会話を聞きながら部屋の隅っこで地面に書かれた線を指で撫で始めた。見ていて痛ましい。
そんな後者二人の光景を見事に空気のように扱い、前者二名は額に青筋を浮かべながら後ろに黒いオーラを発していた。
「大体、部屋に引きこもって読書ばっかしてる魔女なのに……友達少ないお嬢様が友人でいてあげている事にまずは感謝しませんと」
「閻魔に人間に優しくなれと言われたみたいじゃない。こんな人間のいない館になんていないで、人里にでも出向いたらどうかしら?」
「そんなの、所詮は閻魔様の話ですわ。それよりもまずは動きませんか?」
「うちにはもっと引きこもってる友人がいるから、そっちをまずは注意してほしいわね」
「うー……」
「お嬢様……大丈夫ですか?」
「大体カリスマ溢れる紅魔館当主とかあり得ないじゃない。知能は子供、年齢はババァ。人気投票高いからって調子に乗っているんじゃないかしら」
「あら、私はお嬢様よりも上ですわよ。部屋籠ってるパチュリー様のほうが低いのをまずはどうにかしませんか?」
「うるさいわね。どうせカリスマに惚れて投票した人間なんてそこまでいないわよ。幼女だからでしょ」
「さすがにフォロー出来ませんね……おっと、ちょっとこの前の思い出し笑いが……」
「ああ、美鈴お腹痛くなってきた。マッサージしてくれないかしら」
「お嬢様の傷口を癒すのに必死です」
「大丈夫よ、カリスマに溢れてるんだから。自分で自分のことは解決できるはずだわ」
「美鈴、お嬢様を見くびってはいけないわ。私達の主人なんですから」
「そ、そうですか……」
「うーうー……」
先ほどまで無意識に罵詈雑言浴びせていた言葉とは打って変わって、レミリアに多分尊厳を込めた言葉を並べるメイドと魔女。
そんな二人の本心までは見抜けぬとも、レミリアは間抜けでは無い。というよりも先ほどまでの言葉に既に心身ともにずたずたとなってしまったせいか、最後のほうはもはや聞き流していたようである。
そのため自分から離れていく美鈴の姿がその視界に移った時、レミリアの眼には溢れんばかりの涙が浮かんでいた。しかし、そんなことには誰も気づかない。もはやレミリアには味方の一人もこの場にはいないのだから――。
「お姉様」
そんな姉を心配する、優しくて可愛い妹。前はその笑顔に心を追い詰められ、自分の気持ちが闇に閉ざされることになりかけたがそれも過去の話。今はそんな彼女が本当の意味で大好きになれそうだ――レミリアは一人そう心から思った。
満面の笑みを浮かべて手を差し出すフランドール。その手を取って立ち上がろうとするレミリア。それはとても美しい姉妹の形。
レミリアは決めた――フランに何があっても私が全力で盾になろう、そして二度と悲しい目に遭わないように剣になろう――その強い意志を心に刻んだ。はずだった。
「あ、めーりん!」
「妹様!? わざわざ門番有難うございました」
「妹様じゃないでしょ! フランって呼んで、めーりん!」
「あは、すみません。フランお嬢様」
「うん!」
美鈴の姿を見たフランは、姉を支えていた手を離し――姉は強い意志を心刻む前に頭を地面に強打した。
そして薄れゆく意識の中、レミリアは大きな決断をすることになったのである。
――家出してやる!
―◆―
「以上が家出の理由です、先生」
「…………」
「なので、生きるためにもっと勉強したいんです! お願いします、生徒にしてください!」
「……レミリア、住む場所は?」
「団子屋の裏の小さい箱の中」
「………………」
「せ、先生?」
「おーい、慧音ー。タケノコ届けに来たぞー……何で吸血鬼がいんの? ていうか慧音何で泣いてるの!?」
「ああ、妹紅……こういうことがあってこうなってこうしてここに来たらしい………」
「…………なあ、慧音」
「…………なんだ?」
「……せめて住む場所が安定するまで、私達の子供として迎えてあげよう!」
「ああ、そうだな!」
「ありがとう! 妹紅義父様、慧音義母様!」
――こうして、レミリアの第二の人生が始まった。
誤字報告する前に訂正されてたw
前回に続いて読んで頂いて有難うございます、光栄でございます。
誤字報告有難うございます、今回は結構注意が出来てなかったみたいですね……以後気をつけます。
どうぞ今後ともよろしくお願いします!
前回2作はシリアスだったのかwwww
もうけーね夫婦と一緒に暮らすのがみんなにとって幸せなんじゃないのか?
けーね夫婦って、なかなか子供ができない夫婦みたいな感じするしww
コメント修正しました。
話に絡ませなくてすむし、死にネタもできるし
私もお嬢様に永遠の忠誠を誓いましたが、所詮口だけの人間でした。
吹き出した瞬間にすべてが崩れさる恐怖。
呪いは恐ろしいです。
妹様崇拝してきますね
美鈴虐めと違ってなぜか許せる
誰も心配してないのにちょっと笑ったw
紅魔館追い出して正解だわ
当主もカリスマ溢れるフランちゃんに人望のある完璧超人の美鈴
咲夜さんにパチュリーもいる
やっぱレミリアは紅魔館に必要ないな
次はどんなレミリア苛めが見られるのか楽しみにしています
もこ父にけね母とレミ娘の話……なにそれ超読みてぇ
ちなみに自分は面白いと思った側です
フランちゃんカッコイイ!!!
レミリア嫌いな自分にとって最高の作品だ