時は、数百年前。
レミリア・スカーレットがまだ吸血鬼でなかった頃の物語……。
「お母様ー!」
とてとてと陽気に走ってくる少女はレミリア・スカーレット。まだ九歳である。
容姿は、髪は銀色、眼は赤色、顔は丸っぽくかわいらしい顔立ちをしている。
「なぁに?レミリア」
返事をしたレミリアの母の名は、マリア・スカーレット。
髪の色は、レミリアと正反対の金色である。
「今日もお父様起きてないの?」
「今日も疲れているのよ。フランと遊んでらっしゃい」
「はーい」
そうしてレミリアは自分の部屋へと戻って行った。
「あの子にいつ教えようかしらね……」
マリアは浮かない顔をしていた。
「で、何して遊ぶの?お姉さま!」
元気いっぱいに舌ったらずな口調で喋る幼女はフランドール・スカーレット。レミリアの妹である。今はまだ四歳。
容姿はマリアと同じの金色の髪、赤色の眼である。
「何して遊ぼうかしら……パズルでもやる?」
レミリアは聞く。
「えー!パズルはもう飽きたからいい!」
フランは不満そうにそう言った。
「そうだ!お姉さま!絵本読んで!」
甘えたような顔でフランがレミリアに詰め寄る。
「しょうがないわね……何読んでほしいの?」
レミリアはそう言いながら本棚の方へよる。
「あのね、前お母様が読んでくれたヴァンパイアの本がいいな!」
レミリアは本を探す。
ヴァンパイアがうつっている表紙の本を取り出して、フランの所へ行き、本を開いた。
「じゃあ読むわね」
フランがワクワクしながらレミリアが読むのを待つ。
そして、レミリアは読み始めた。
数分後……
「……なりました。めでたしめでたし、と」
読み終えたレミリアが本を閉じる。
フランは本の内容に興奮して、はしゃいでいた。
「すごいすごい!おもしろーい!ヴァンパイアって本当にいるのかな?どう思う?お姉さま?」
フランはレミリアに近寄り問う。
「フラン、近いわ。……そうね、にわかには信じられないけど、世界のどこかにはいるのかもしれないわね」
レミリアは近寄るフランを押しのけながら答える。
そして、こう言った。
「案外近くにいるのかもね」
何気なく言ったこの言葉が本当の事になろうとは誰が思っただろうか……
数日後の朝
珍しくレミリアの父親、紅魔卿が起きていた。
「あら、朝から起きてるなんて珍しいわね」
マリアが紅魔卿に問いかける。
それもそうだ。紅魔卿が朝から起きるなど、これまでに一度もなかったからだ。
「ああ、……嫌な予感がしてな……」
そう言いながら紅魔卿はドアノブに手をかけた。
「どこかいくの?」
「ああ、…夜には戻ってくる…後は頼んだぞ」
ローブをかぶって、紅魔卿は家をでた。
「「お母様!お母様!」」
レミリアとフランが同時に駆け寄りながら叫ぶ。
「なぁに?二人とも?」
「お父様が起きてたって本当?どこ行っちゃったの?」
レミリアが目を輝かせながら上目づかいでマリアに問う。
「どこ行っちゃったの?」
続いてフランもレミリアと同じ言葉を言う。
「はいはい。ちょっと落ち着いて……私にもわからないのよ。急にどっか行くって言って出てっちゃったから」
興奮するレミリアとフランをなだめながらマリアは言った。
「まあそのうち戻るでしょ。戻ったら久しぶりに遊んでもらいなさい」
マリアは明るくそう言うとレミリアとフランに遊んでくるように言った。
外見では明るくふるまっているマリアだが、内心では心配でならなかった。
「何もないといいけど……」
ボソッと言うと、何事もありませんように、と心の中で祈った。
夜の八時になっても紅魔卿は戻ってこなかった。
「まだお父様帰ってこないの?」
レミリアが心配そうに言う。
そのレミリアの心配そうな心を感じたのか、普段は明るいフランまでも心配そうな顔をしていた。
「きっと戻ってくるわよ!あの人のことだからふらふらしてるだけだって!」
マリアはレミリアとフランを不安にさせないためにも明るく言った。だが、心の不安を隠しきることができず、ますますレミリアとフランを不安にさせてしまった。
そのとき……
ガチャ
ドアが開く音がした。
「あ、お父様が帰ってきた!」
そう言ってレミリアがロビーの方へ行こうとする。
マリアはレミリアの前に手を出し、行くのを止めた。
「待って、何か様子がおかしいわ。私が行くからあなたたちは待ってなさい」
レミリアは不満そうな顔をしながらもいうことを聞いた。
「は~い……」
そうしてマリアはでていった。
部屋にはレミリアとフランが残された。
カチ コチ
静かなこの部屋に、大時計の針の動く音が鳴り響く。
十分ほどたってもマリアは戻ってこなかった。
「お母様遅いね……お姉さま」
フランがレミリアに問いかける。
「そうね……どうしちゃ……」
レミリアのセリフの途中にバタン、という音が聞こえて、マリアがあわてて入ってきた。
その姿は血まみれだった。
「お……お母様!?どうし……」
「レミリアはフランと一緒に静かにここにいなさい!」
レミリアが問おうとしたら、マリアが声を荒げながら言った。
それだけを言って、マリアはロビーに戻って行った。
「どうしたんだろう……フラン、行ってみる?」
「でも……ここにいろって……」
レミリアの心は何があったか見てみたい、という好奇心で満たされていた。
フランも同様で、一回はレミリアを止めようとしたが、好奇心には勝てなかったらしく、素直にレミリアについていった。
コツ コツ
廊下を歩く靴の音が響き渡る。
廊下の曲がり角に当たった。この曲がり角を曲がればロビーだ。
レミリアが曲がると、そこには怪我を負って血まみれになっている紅魔卿と、怪我の手当てをするマリアの姿があった。
「お父様!お父様ぁ!」
レミリアは血だらけの紅魔卿に駆け寄った。
「どうして来たの!待っていろって言ったでしょ!」
マリアがレミリアを叱る。
「だって……だってお母様の様子がおかしかったんだもん!気になって来たらこんなことになってるなんて……!」
レミリアは泣きながらマリアに訴える。
それを見たマリアは何も言えず、黙っていた。
そして、決心がついたようにこう言った。
「レミリア……よく聞いて。いままで黙っていたけどね……お父様は吸血鬼なの!」
レミリアは何を言われたのかわからず、面くらっていた。
ようやく理解したかのように喋りだした。
「それって……じゃあ……お母様も……?」
「いえ……私は人間よ……。つまりあなたとフランは吸血鬼と人間のハーフなのよ・・・」
レミリアは泣きながら紅魔卿に詰め寄る。
「どういうこと……?お父様……!」
紅魔卿は苦しげに話した。
「すまない……お前らにはまだ早いと思ったんだ……」
紅魔卿はレミリアの頭をなでる。そのあとフランの頭もなでた。
「聞いてくれ……ここは……」
紅魔卿が話そうとした時、バリーン、と窓が割れ、吸血鬼が入ってきた。
「あいつら……まだ……!」
紅魔卿はフラフラしながらも立ち上がり、構えた。
「マリア!レミリアとフランドールを守ってくれ!」
「はい!」
マリアはレミリアとフランドールを抱き抱え、部屋の隅によった。
レミリアとフランドールはあまりの出来事に気絶しているようだった。
無理もない。九歳と四歳なのに、こんなにいろいろな事が立て続けに起こったのだから。
紅魔卿は、苦しみながらも他の吸血鬼を牽制していた。
怪我をしているのに多対一で牽制できるのは、さすが夜の王といったところか。
紅魔卿がここまで怪我を負ったのは夕方の六時ぐらいからの話である。
嫌な予感を感じた紅魔卿は、そこらを探索していた。
だが、結局何も見つからなかったから、帰ろうとしていたところである。
他の吸血鬼が何千体もいるであろうほどの群で襲ってきたのだ。
吸血鬼というのは、他の強い吸血鬼を倒して、魔力の強化をするというルールがある。
紅魔卿は夜の王ともいわれた吸血鬼。下級の吸血鬼が狙ってくるのも珍しいことではなかったが、今回のように何千もの数でくるのは初めてだった。
不意をつかれた紅魔卿は撃退はできたのだが、深く傷を負ってしまったのである。
紅魔卿が取りこぼした一匹の吸血鬼がレミリアたちに向かってしまった。
間に合わない、紅魔卿はそう思った。
その時、マリアはレミリアとフランを守るように手を広げ、前に立ちふさがった。
「何をしているんだ!マリア、やめろー!」
マリアは吸血鬼の爪に貫かれた。
「この子たちは……大切な子供ですもの……命に代えても……」
そうしてマリアは息絶えた。
「マリアー!」
紅魔卿がマリアに気を取られた隙に、他の吸血鬼が紅魔卿を貫いた。
貫かれながらも、紅魔卿はマリアたちのもとへ向かっていく。
マリアを抱き抱えこう言った。
「すまない……マリア。私はあの子たちを守れそうにないようだ……。だが、奴らにやられるぐらいなら……!」
紅魔卿はレミリアを抱き抱えると、その首に噛みついた。
そこで紅魔卿は息絶えた。
吸血鬼たちが、紅魔卿を倒し、レミリアたちを始末しようと飛びかかった刹那、
――――――――世界が、紅く染まった――――――――――
飛びかかろうとしていたはずの吸血鬼は肉片へと変わり、床に転がっていた。
床はその血で紅く染まり、その真ん中に返り血で血まみれになった少女が立っていた。
他の吸血鬼たちは何が起こったのか理解できずにいた。だが深くは考えず、また突っ込んできた。
紅き少女は本能のままに動いた。
本能のままに爪で引き裂き、肉片へと変えていく。
気づいたときには何もかも血まみれで、少女とその妹だけが残った。
紅き少女は嘆いた。
「なんで……どうして私をこんな怪物にしてしまったの……?お父様ぁぁぁ!」
少女は泣いた。泣き続けた。
こうして人間の少女、レミリア・スカーレットは、紅き吸血鬼、レミリア・スカーレットへと変わったのであった。
「フラン、フランは!?」
レミリアは気絶しているフランドールに近づく。
ドクン
その時、フランドールの鼓動が大きく脈打った。
そう、フランドールは、吸血鬼に噛まれていたのだ。
フランドールが立ち上がる。
その瞳は狂気に満ちていた。
もともと吸血鬼の血が薄かったフランドールは、無理やり目覚めさせられて、力を制御できなかったのだ。そのせいでフランドールは
――――――――ナニモカモコワレタ――――――――
フランドールは狂ったようにそこらへんの物を壊していく。
その目に姉などうつってはいなかった。
「フラン!フランドール!やめなさい!」
レミリアは叫ぶ。
その声は届いたようで、フランドールはレミリアの方に向く。
レミリアはぞっとした。外見はフランドールなのに、何かが違うと感じたからだ。
「あら、お姉さま。いらっしゃったの?私ね、力が溢れてくるの。何もかも壊したいくらい」
そう言いながらフランドールは壁を砕く。
そこでレミリアは思った。このままフランドールを放っておくと危険だと。
「フラン。あなたが全てを壊すと言うのなら……私は全力であなたを止めるわよ」
レミリアはフランドールに対して構えをとる。
「そう……私の邪魔をするのなら、いくらお姉さまといえども許さない。殺シテアゲル……!」
フランドールも構える。
その数秒後、二人の吸血鬼の爪が交じりあった。
この日から、フランドールは力を封じられ、地下に幽閉された。
紅魔卿亡き今、夜の王はレミリアとなった。
この日を境に吸血鬼レミリア・スカーレットの運命の歯車は回り始めたのだ……。
そして時は数百年過ぎ、パチュリー・ノーレッジがレミリアの親友になるまでの話に至る……。
それから小説を書くときのお約束として、会話の文末にある「。」は入れない、「」で括らない地の文は行頭に一字空ける、三点リーダを使うときは二個一組で等、そういうのに気をつけるともっと読みやすくなると思います。
参考サイト
http://www.asahi-net.or.jp/~mi9t-mttn/
http://www.feel-stylia.com/rc/creative/
http://www.raitonoveru.jp/
すいません つけておきます