Coolier - 新生・東方創想話

豆腐屋さんの配達

2011/02/14 20:29:00
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 東方求聞史紀のネタバレを含みます。

 まだ読んでない方も一応影響が無い程度の話ですが、嫌な方はブラウザバックして下さい。

 





























「へいらっしゃい、豆腐3丁だねぃ? 毎度あり~!!」

 

 俺は人里にある豆腐屋の親父だ。

 だが豆腐を売るのは人里の中だけじゃねぇ、最近は妖怪にも豆腐が売れるってぇんで里の外にも売りに歩く事がある。

 さすがに最初はおっかなかったが、妖怪ってのも話してみると気さくで明るい奴が多くて、今じゃすっかり慣れちまったよ。

 だがそんな俺でも嫌になるような依頼を受けちまったんだ……。

















―― 三日前 ――





「へいらっしゃい!」

「豆腐を300丁ほど届けて欲しいのですが」

「へ!? 300丁ですかぃ!?」



 いつも通り人里で豆腐を売っていた俺は突然そんな事言う客に出会っちまったんだ。

 だがそれぐらいならまだいい、問題はこっからなんだ。



「へい、で? 何処にお届けすればいいんですかぃ?」

「紅魔館という館をご存知でしょうか?」 



 そりゃあ人里に住んでりゃ誰だって聞いた事がある吸血鬼の住む館の名だぜ。

 曰く、恐ろしい吸血鬼の住む館。

 曰く、紅色の霧を出し幻想郷の人間に危害を加えた冷徹な悪魔がいる館。

 曰く、吸血鬼の他にも魔女やら時間を操るメイドやらカンフー少女やらが住む館。

 などなど、たくさんの噂が囁かれ恐れられている場所なんだからな。



 でもまてよ? そこに届けて欲しいって事ぁつまり……



「もしかしてあんた、あの館の……?」

「申し遅れました、私の名は十六夜咲夜、紅魔館のメイド長をしております、以後お見知りおきを」



 やっぱりだ! あの紅魔館のメイド長じゃねぇか! スカーレットの猟犬の二つ名を持つあの有名な!





「へ……へい、よろしくお願いいたしやす」



 殺される……逆らったら確実に殺される!! ここは大人しく従うしかねぇ!!



「で、引き受けてもらえるのでしょうか?」

「へい、分かりやした、お届けいたしやす」

「では三日後、紅魔館までお願いいたしますわ」













―― 現在 ―― 





「さて、ここが噂の湖か……ってぇっとあのぼんやり見える紅いのがそうか」



 紅魔館ってぇ場所は霧のかかる湖に囲まれた洋館だって話だしな、ほぼ間違いないだろう。

 はぁ……なんでこんな事になっちまったのかなぁ……。

 

「おい、あんた里の豆腐屋の親父じゃないか?」



 ん? あれぁもしかして……。



「食べ盛りの太公望じゃねぇか」

「そのあだ名はよしてくれよ親父さん、俺にはちゃんとした名前があんだから」

「はっはっは、悪ぃな……ってお前さんこんな所で何してんだぃ?」

「何って、俺の趣味は知ってんだろ? 釣りだよ釣り」



 まさか釣り好きだとは知ってたがこんな所にまで来るたぁ思わなかったぜ。

 

「で? 釣れたのか?」

「それがよぉ聞いてくれよ、なんと釣った魚がこう……ほれ」



 と、籠の中からそいつが取り出したのは……。



「見事な冷凍保存だなぁ、お前さんがやったのかぃ?」

「それが違ぇんだよ、釣った時にゃあもう凍ってたんでさぁ」

「へぇ? 妙な事があったもんだなぁ」

「まぁ新鮮なまま持って帰れるからありがてぇこった」



 っといけねぇ、用事があるんだった。



「なぁ、お前さん紅魔館へはどうやって行けばいいのか知らないか?」

「紅魔館? それならこの湖に沿って歩いてくと橋がある、そっから正門へ行けるよ」

「おぅ、ありがとよ」



 

  







 さて……橋、橋っと、お! あれか。



「ここを渡りゃあいいんだなっと」



 あぁ……やっぱ怖ぇなぁ……吸血鬼の館だもんなぁ……。

 ってか紅いにも程があんだろうよこの館……血に見えてくんじゃねぇかよ。

 

 着いちまったよ……はぁ、仕方ねぇ……男は度胸だ!

 さあ、吸血鬼でも魔女でも猟犬でもカンフーでもかかってこいや!



「あ、お待ちしておりました~、豆腐屋さんですよね? 遠路はるばるご苦労様です」

 

 ……あれ? 何だこの明るい姉ちゃん。



「実は急にお嬢様が「湯豆腐パァリィやるぞ~!」って言い出してですね~」



 ここ……紅魔館だよな? 吸血鬼の館だよな?



「この館ではお嬢様の命令は絶対なんで、湯豆腐パーティーを急遽やることになったんですよ~」

「あぁ、そいつぁご苦労さんです」



 朗らかな笑み、綺麗な声、美しい容姿……息子にこんな嫁がいたらなぁ……。



「あっ! すいません、今厨房へとご案内しますね」

「へぇ、ありがとうごぜぇやす」



 









 

 





「今日はどうもありがとうございました」

「いやいや、また注文して下せぇ」





 なんていうか……凄ぇ明るい場所だったな、吸血鬼の館なのに。

 あの姉ちゃんのおかげで最初のブルっちまった俺がどっか行っちまったみてぇだったなぁ。

 あんがとよ、門番の姉ちゃんよ。









―― 数日後 ――









阿求「この妖怪について何か知ってますか?」

親父「ん? こりゃあ紅魔館の姉ちゃんじゃねえか……って妖怪!?」

阿求「知ってるんですね、どんな方でしたか?」





親父「そうだなぁ……紅魔館は恐ろしいが、あの門番のおかげで親近感が湧いた、かな」
読みきってくれたら幸い。

少しでも楽しんでくれれば号泣もの。



親父さんの口調は一応は多摩弁を目指したものです。

間違ってたらすいません。



求聞史紀を読んでて、目撃情報の欄の色んな人の話があったら面白いかなぁと思って書いてみました。

なので東方キャラの話ってわけじゃないんですよね。



バレンタイン? そんなもん日本には無いです。
U.N.owen
http://
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コメント



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1.100奇声を発する程度の能力削除
らしくて良かったです
7.100アジサイ削除
こういった作品好きです。
最近の作品の中では特に。(最近の作品が悪いってわけじゃないですが)
バレンタイン?ハロウィンと同じく、日本では浸透してないんじゃないんですか?
17.80名前が無い程度の能力削除
いったい300丁の豆腐をどうやって運んだんだ親父…