※ 文ちゃんの一人語りで進みます
面白ければ、ネタにしてもいい…
そんなふうに考えていた時期が私にもありました。
◆◆◆
なんでこんなことになったのでしょう。そもそも私は一体どこで選択肢を誤ったのでしょうか。皆目見当が付きません。
ねぇ魔理沙さん、差支えなければ教えていただいてもよろしいですか?
え? 始めからですか?
そんなこと言われたってわからないものはわからないのです。
ですので、今日一日の行動を振り返ることにしましょう。
◆◆◆
事の始まりはこうです。
私はネタを求めて幻想郷を飛び回っていたのですが、いまいち面白いと思えるものが無かったのがそもそもの発端です。
このままでは私の新聞に彩りがなくなってしまう。そう考えたらどうにも言いようのない不安感に襲われたのです。
このままではマズイ。そう考えた私は必死にネタの在り処を考えました。
そんな時、私が思いついたのが博麗神社でした。霊夢さんならば何かしら素敵なネタをお持ちでいらっしゃるに違いないと考えると、居てもたってもいられなくなり、私は神社に急行することにしました。
博麗神社に着いた私は、霊夢さんを探そうとしたのですが、私が探すまでもなく彼女は相も変わらず神社の縁側にいたのです。
探す手間が省けたと思ったのも束の間、私は衝撃を受けたのですよ。
なんと彼女はお昼寝中だったのです。
いつもは凛と澄ました表情が、寝ている時にはなんとまぁ可愛らしくなるもので、私はしばらく見入ってしまったのです。普段は油断のない人ですけど、そんな彼女の見せる年相応のあどけなさといったら、もう堪りませんでしたよ。
確かに珍しい光景だったのですが、残念なことにそれだけがネタになる訳がありませんので、私は霊夢さんを起こさないようにして傍に腰かけることにしたのです。
いや~、近くで見れば見るほど愛らしい寝顔でした。思わずむしゃぶりつきたくなりましたが、さすがに起きるだろうということを考慮して自重しました。それで、仕方なしに写真で我慢することにしたのです。
その写真のネガですか? 欲しければくれてやります… 探してみなさい。私のすべて(と言っても過言ではない)をそこに置いてきました。でも大海賊時代は迎えません。戦争は起きそうですが。
ともかく、あの可愛らしさを生で味わえた私は三国一の幸せ者です。皆さんにも分けてあげたいくらいです。でも無理ですね。あれはあの場に居合わせた私の特権なのですから。
とまぁこんな感じでしばらく霊夢さんを観察していたのですが、妙に顔をしかめていたのですよ。やっぱり枕や布団もなしに横になっているから寝苦しかったんでしょうね。ついにはうなされ始めちゃったのです。そこで、不憫に思った私はゆっくり霊夢さんの頭を持ち上げたのです。
もうおわかりですね? そうです、膝枕です。
起こさないように丁寧に持ち上げるのには難儀しましたよ。なんといっても勘の鋭いお方ですから、ちょっとしたことでも起きてしまうのではないかと内心ドキドキでした。
霊夢さんは結局起きることなく、私の為すがままだったので取り越し苦労だったのですが、なんかこの表現卑猥ですね。
私が、霊夢さんを、為すがまま……… じゅるり!
いえいえ! もちろんそんな意味ではないですよ? 今回は膝枕ですからね。
それに、ちゃんと健全なお付き合いをさせていただきますよ? そう… その後からでも時間はたっぷりありますから…
でもそれはまた別のお話です。ともかく、膝枕を成功させた私はさらに衝撃を受けました。
顔をしかめていた霊夢さんだったのですが、私の膝に頭を乗せたその瞬間、ふわっ…と何とも柔らかいお顔になったのですよ。
当然その顔も素晴らしいものですが、表情の変わるその瞬間といったらもう、私の文才のなさが悔やまれるほど筆舌に尽くしがたいものでした。
あぁ… どうして私はカメラしか持っていなかったのでしょうか…
しかし、悔やんでも仕方ないので、一連の動画を私の脳内HDDに永久保存しました。いつでも再生可能です。お墓まで持って行くことにします。
そんなわけで、私は普段お目にかかれない霊夢さんの意外な一面にKO寸前でした。ついでに言うと、鼻血寸前でした。
記者としてあってはならないのでしょうが、私はしばらくネタのことなど完璧に忘れて、この至福を存分に味わうことにしたのです。
いいのです。世の中には優先順位というものが存在し、下位は淘汰される運命なのです。それに、この状態の私を責められる人などいようはずもありません。むしろ、私の行為は賞賛されて然るべきなのです!
おっと、脱線しまくってますね。でも後悔はありません。
本題に戻ります。私が感動に打ちひしがれていると、霊夢さんがふと寝返りを打ったのです。その時にあの綺麗な黒髪がサラサラー…と私の太腿をくすぐるものですから、突然興味が湧きました。
どんな手触りなのかなー…なんて思ったのです。
そんなことを思ったからには行動あるのみでしょう! 私は意を決してその艶やかな髪に触れることにしたのです。
触れてみるとまぁ、なんと柔らかな髪でしょう。極上の絹糸もかくやと言わんばかりの気持ちよさ。思わず髪フェチに目覚めてしまうところでした。
思う存分霊夢さんの御髪を梳いていると、私の指がほんの少しだけ霊夢さんの頬に触れてしまったのです。
思えばそれで私のタガが外れたのでしょう。そのはずみとでも言うのでしょうか、私は猛烈に霊夢さんのその頬を蹂躙…いえ、撫でてみたい衝動に駆られまして、即実行しました。
断言します。あの時の私を止められる存在はこの世のどこにもいません。もう一度同じような機会があれば、必ず同じことをします。
一撫でしてみると、なんということでしょう。この世の匠が何億人集まったとしてもこれほどの手触りを生み出すことはできないと言っても過言ではない。まさしく神が生み出した奇跡としか言いようがありません。
そう思わせるような極上の感触に、生きてるって素晴らしいと思いました。
それでも霊夢さんは起きないです。よほどお疲れだったのでしょうね。これ幸い、と言わんばかりに行為を継続することにしました。今度は真剣に頬フェチに目覚めました。悔いはないです。
続けること小一時間、相変わらず柔らかな表情の霊夢さんにとうとう変化が起きました。少しくすぐったかった様で、身じろぎしたのです。ですが、不快には感じていなかったようで、起きることはなかったです。
この瞬間もまた私を激震させました。
本当にくすぐったかったのでしょうね、なんと霊夢さんが笑みをこぼしたのですよ。それも『ふふ…』なんていうお言葉付きで!
もうね、天使ですよ! そんな赤子のように純粋な笑顔を見せられてKOしない訳がないです!
もう我慢できません! 頂きます!! …と勢い勇んだ私を止めたのも霊夢さんのお言葉だったのです。
消え入りそうな声でしたが、私はしっかり耳にしました。『お母さん…』って…
そうですよね。まだ十そこらの少女ですもんね… 母親恋しい年頃のはずです。
その言葉に、私は急に自分が恥ずかしくなりました。私はこの娘に何をしようとしていたのか…と。
もう少しで取り返しのつかないことになるところでした。私を暴走させたのは霊夢さんです。でも、偶然とはいえ私を止めてくれたのも霊夢さんです。だからせめてもの謝罪と、感謝の気持ちを伝えることにしました。
『ここにいるわよ…』なんて、ちょっと厚かましかったでしょうか。でも、それを聞いた時の霊夢さんの安心した表情は、私の勘違いなんかじゃないと思います。
この世にこんな綺麗なものがあったのですね。私は何も考えずにカメラを取り出しました。そして、この綺麗なものを永遠にしたのです。
でも、ちゃんと撮れてるか不安です。だって、ピントは合ってるはずなのに、なぜか視界がぼやけちゃってましたから。
その時、私の心から溢れかえったものが霊夢さんの顔に落ちてしまったのです。それにはお疲れだった霊夢さんも起きてしまいました。
最初は状況を掴めていないようでしたが、私に膝枕されていることに気づくと飛び起きちゃいました。ちょっとショックです。
その後、何をしていたのかを追及されましたが、私は膝枕していたことしか教えてあげませんでした。きっとあれは霊夢さんの見られたくない部分のはずだから。
私の言葉にどことなく納得していない様子でしたが、追及しても無駄だということがわかったようで、ため息をついて私にお茶を勧めてきました。
こういう切り替えの早さはこの人の美点の一つですね。物事にあまりこだわらない、とも言えますけど。
ともかく霊夢さんのお茶というのは、ひっじょ~に魅力的な提案だったのですが、私の胸はもう一杯だったので、私はお誘いを丁重にお断りして、大急ぎで家まで飛びました。
帰る時の私の思いはたった一つ、『今日のことを皆さんに自慢しなくては!』でした。
家に着いた私はかつてない勢いで執筆を初めました。幻想郷最速は伊達ではありません。
あの至福の一時を私はそのまま文章にしました。そうして、かつてないスピードで仕上がった新聞は、かつてない面白さを誇ることとなったのです。
書き上げた私は、これまた驚異的な速度で皆さんに配り始めたのです。ちなみに、家に着いた時には日が沈みかけていましたが、日没までには配り終わりました。自分でもびっくりです。
意気揚々と自宅へ引き上げた私は、早速写真の現像に取りかかりました。そうして、いざやるぞ! という時になって、私の目の前に手紙がヒラヒラと舞い降りてきたのです。
こんな方法がとれるのは紫さんだけですね。あの人も霊夢さん大好きですから、早速感想をくれたのでしょう。どれどれ…
『 イマスグソトニデロ byゆかりん 』
…ずいぶん過激なファンレターですね。ここまで過激なのはご遠慮いただきたいのですが…
それにしても、外ですか。困りましたね~。
普段はちょっと西洋風の家の玄関の扉が、なぜか今は寺院の門の様でして、なおかつ決して開かれないように鎖でもって厳重に施錠、いえ封印されているように見えるのです。これでは外に出られません。
戸惑っていると、二通目のファンレターがヒラリ。今度はなんでしょう?
『 ハヤクシロ byまりさ 』
…門に至る地面が大きく裂けました。
所詮避けては通れぬ道か… 行くしかありませんね。
勇気を振り絞って一歩を踏み出すと、当然地面は裂けてなどおらず、いつもの私の家でした。でも、まだ門が残っています。
正直怖いです。でも、紫さんが相手では逃げられません。
文、行きます!!
重々しい門は思ったより軽く、すんなり開いたのです。
そんな中、ある言葉が私の脳裏をかすめました。
あぁ、これが… これこそがあの『護身完成』だったのですね…
◆◆◆
そして冒頭に至るというわけです。
私の眼前にはそうそうたる顔触れ、幻想郷の主力が一堂に会しています。全員霊夢さん好きで知られている方々ですね。そして、皆さん怒ってらっしゃいます。その矛先はなぜか私。
いまだに何が問題なのかわかりません。皆さんそんなに私の新聞が気に食わなかったのですか? はっ、もしかして私の新聞の人気に対する妬みですか!? だとしたら私は負けませんよ! ブン屋として、言論の自由を圧迫されるわけにはいきません! 今の私は殻付きハードボイルド(固ゆで卵)の如し、です!
嘘ですすいません本当は剥き出しの温泉卵です。どうか平にご容赦を…
え? 交換条件ですか? 新聞の内容の写真を渡したら勘弁してくれるんですか?
もしかして文章だけだったのが気に食わなかったのですか? もちろん狙ってやりましたから、大成功ですね!
嘘ですホントごめんなさい。うっかりしてたのです。許してください。
わかりました… しょうがないですが、記事に関する写真は焼き増しして皆さんに後日お届けします。
ですので、お怒りを収めて今日はどうかお帰りいただけますか? これだけの人数分だといささか時間がかかりますので…
今回は許すが、次はない? ありがとうございます! 必ず皆様にお届けしますので、それまでしばしお待ちくださいね!
………ふぅ、ようやくお帰りいただけましたか。今回ばかりは命の危険を感じましたよ。
それにしても、写真が皆さんの手に渡ってしまいますね… 高い代償を支払いましたが、約束しましたからね、仕方がないです。
約束通り、記事に関する写真だけを渡すことにしましょう。
え? 今回の記事はどこまで書いたのか、ですか?
それはですね~、実は膝枕したところまでしか書いていないのですよ。ですので、それ以降の写真は渡す義務も義理もありません。
なんで書かなかった、ですか?
ネタにしちゃいけないものだってある、ということです。
もうっ、野暮なこと聞いたらだめですよ!
了
文霊もありかな。
地霊殿の霊夢との絡みにドキがムネムネ
この組み合わせすきだわ~
いやほんと、文霊は素晴らしいと思います。ここ最近仲いいですしね。
文のキャラがぶれてないし、最高でした!
失敗した写真、普通は使い道がありませんが、彼女はずっと大切に残していることでしょう。
わかります、わかりますとも~~!!!
ゆかりん、レミリア、萃香、魔理沙あたりかなw
だが私の脳内ではアリスと幽香もこの場にいます。