冬だった。
どうしようもなく冬だった。
どれぐらい冬かといえば、黒幕ことレティ・ホワイトロックが爆乳になるぐらいに冬だった。
去年の暖冬はロリッ娘だったのは言うまでもないが、こんな寒い日は布団と愛を確かめ合うに限る。
情熱的に布団が絡み合ってくるほど、体の芯まで火照っていく。
別にやましい意味はないのだけど、時にはアダルティな表現を使いたい年頃ではある。
今日もいつも通り、平和な一日を過ごすつもりだったし、そうなるに違いないと信じてもいた。
たのしいふゆのひ、おしまい。
布団を被り、そのまま優雅な二度寝にふけこもうとすると、足音が近づいてきた。
どうせ咲夜だ、いつまでも寝てるなって小言を言うつもりなんだろう。
「起きなさってくださいませおぜうさま、あなたがベッドで這い蹲ってる時間はこれっぽっちもないんですから」
咲夜は有無も言わせずに布団を引っぺがしてきて、問答無用で私ごと折り畳みにかかってきた。
芋虫のような状態から慌てて布団から這い出して、見事ベッドの下へと落下。
したたかに薄い尻を打ち、薄い胸は当然揺れなかった。
「何をするのよ咲夜! 大体お嬢様じゃなくておぜうさまって何!? いつからあなたはそんな口を訊けるようになったのかしら」
「今日からですよ、おぜうさま」
「はぁ!?」
「これを見てください」
そういって手渡されたのは、一枚の便箋だった。
『カリスマ度大暴落のお知らせ』
そう、大きく書かれている。
「なに、これ……」
「カリスマをですね、数値化し、日々変動させることになったのはご存知でしょうか」
「それは、まぁ……」
丁度半月前のことである。
我こそが幻想郷一のカリスマの持ち主だと疑わぬ者同士が一同に連ねてカリスマ会議を開いた。
参加者は八雲紫、西行寺幽々子、蓬莱山輝夜、そして、我らがレミリア・スカーレット。
三人が熱い議論を交わしている私は、意見を求められてもダンマリを決め込んでいた。
ただ単に眼を開けていたまま寝ていただけなんだけど、その態度はカリスマっぽいと手放しで褒められていたはずなのに。
ちなみにその会議で決まった内容とは、先ほど言ったようにカリスマを数値化し、日々変動させていくというもの。
元の数値から剥離すればするほど扱いが変わっていく仕組みなのだが、ここまで変わってしまうとは夢にも思っていなかった。
「他の勢力は八雲紫は微減、西行寺幽々子は微増、蓬莱山輝夜はストップ高の模様ですわ、おぜうさま」
「蓬莱山輝夜が!?」
自宅警備員兼盆栽監視員と、飼っている兎たちからも侮蔑の目線を受けていたはずの蓬莱山輝夜がストップ高。
「ちなみにおぜうさまがストップ安」
「理解できないわ……」
カリスマが減ってしまったから、咲夜の態度が豹変してしまったということは想像に難くはない、それはわかる。
しかし、どうしてストップ安まで下がってしまったのか。
その理由が、皆目見当がつかなかった。
「詳細はその便箋に載っていましたが……。食事でべったり口の周りを汚す、マイナス10ポイント。妹様との口喧嘩に負ける、マイナス5ポイント。
美鈴の昼食を横取りした意地汚さでマイナス10ポイント。モケーレ・ムベンベ疑惑でマイナス1500ポイントですわ」
「ぎゃおー!!」
「追加でマイナス1500ポイントです」
「一体誰よ! そんなに事細かく私のことを報告している不届きものは!」
「私ですけど」
「咲夜なの!?」
まさか腹心の部下である咲夜が、敵と内通しているとは思わなかった。
頭を鈍器で殴られたような衝撃に襲われ、そのままガクっと膝を落とす。
「落ち込まないでくださいおぜうさま、そんなへたレミリアも私は好きですわ」
「蔑称で呼ばないで。ねえお願い咲夜、いつもの咲夜に戻ってちょうだい」
「いいえおぜうさま、あなたが主としての自覚を取り戻すことが大事です。咲夜はおぜうさまのために心を鬼にしているんですよ」
「咲夜……!」
「従者に安易に縋る。ダメ君主の兆候ですね、マイナス30ポイントです」
「ちっくしょう!」
敵なのか味方なのかさっぱりわからない、というかほぼ確実に咲夜は敵だ。
咲夜は淡々とメモ帳に書き連ねていく、プラスになるようなことはないのかプラスは。
イライラを地団太を踏むことで表現しようかと思ったら、それをすればまた咲夜はマイナスポイントを加算するはず。
もうこの従者の前では、迂闊な真似はできなかった。
まずは落ち着こう、何事もそこから始まる。
「何か、飲み物が飲みたいわ、紅茶を淹れて頂戴」
「畏まりました、すぐにでも」
そういって、咲夜は慇懃無礼にお辞儀をかましてくれた。
頭が微妙に横に曲がっている辺りがかぶき者の証、いつかクビにしてやろうかしら。
苛立ちつつ、寝巻きから普段のドレスへと着替える。
窓から見えるのは降り積もった雪と、それに自らの姿を映らせる真ん丸のお月様。
こんなときでもなければ、黒幕のおっぱいのように真ん丸なおっぱいが私の心を癒してくれるはずなのに。
「はぁ、おっぱい……」
「プラス500ポイントですわ、おぜうさま」
「咲夜!?」
「はい、咲夜ですわ」
先ほどまで何の飾り気もなかった丸テーブルの上には、花柄のテーブルクロスとスコーンを入れたバスケット、口から湯気を立てるポットがセットされていた。
なんという早業、時を止められる瀟洒なメイドの手にかかれば、これぐらいのことは朝飯前。
ビッグ3の経営破綻に国家予算を投入するぐらいに造作もないことだった。
「窓辺から月を眺めつつおっぱいについて考える、実に哲学的ですわ」
「……はぁ」
月を見ておっぱいを連想して、ポロっと口に出す自分も自分だけど、それを哲学的な問題にする咲夜もどうかと思う。
咲夜が監視している限り、まともな方法でカリスマを上げるのは非常に難しい問題と言えるだろう。
「ねえ咲夜、一体どういう基準でカリスマを判断しているの?」
「幼女が意味もなくおっぱいという単語を発するわけがありません。つまりは深い思慮の末に発せられたのだろうと私は考えました。
何せ、物憂げな目をしながら外を眺めているのですから、きっとおっぱいという言葉にも、深い意味が込められていたに違いありませんわ」
なるほど、咲夜は超ド級の天然キャラだったようだ。
適当にそれらしい単語を並べれば、簡単にカリスマは上がっていくかもしれない。
「シェイクスピア曰く――」
「おおおぜうさま、なぜあなたはおぜうさま。
シェイクスピアの名前を持ち出せばカリスマが上がると考えている辺り、短絡的思考が手に取れますわ。
銀の銃弾をしこたま撃ち込む代わりに、マイナス50ポイントを進呈して差し上げましょう。」
早まった。付け焼刃の知識が通用するほど甘くはない。
しかも咲夜の判断基準は曖昧にしてインフレが激しい。
先ほどは運良く500ポイントをもぎ取ることができたが、モケーレ・ムベンベ関係ではマイナス1500ポイントがあっさりつけられる。
「ねえ咲夜、ポイントの基準はあなたの裁量で決まるのかしら」
疑問点は早めに潰しておくに限る。
「その通りですわ、ポイントは私の主観で決められていきます。
蓬莱山輝夜のカリスマポイントがストップ高になっているのも、八意永琳の親心にほかなりません。
もちろん、虚偽の報告は通用しません。有志である鴉天狗が報告の裏を取るように動いていますからね。
永遠亭の躍進の影には、並々ならぬ努力があったのは間違いありませんわ」
「ふむ……ところで、どうして咲夜は私の味方をしてくれないのかしら」
「そのほうが面白いからですわ」
「……まぁそこは百歩譲るけれど、如何にして蓬莱山輝夜がカリスマを上げたのかが知りたいわ」
「ええ、では読ませて頂きます。連歌会の主催を務め、しっかりと取り仕切り100ポイント。
華道茶道の講師を人間の里で務め、100ポイント。上白沢慧音に招かれた寺子屋で民謡を謡って聞かせ、100ポイント。
永遠亭の軍事演習で鈴仙優曇華院イナバを打ち破り、100ポイント。」
普通どころか、ものすごくしっかりと仕事をしていたことに、文字通り開いた口が塞がらない。
蓬莱山輝夜は、単なる盆栽監視員だと今の今まで信じていたのに。
「時代は刻々と変化していっているのですよおぜうさま、まるでそれは、塩漬けにしていたお肉が毎晩美鈴のつまみ食いで減っていくように。
お肉に関しては美鈴を蹴り飛ばせばいいですが、蓬莱山輝夜は今はただの才媛で、面白みの欠片もありません……。
もはや、幻想郷の面白君主最後の砦は、おぜうさまだけなのです」
所謂働い輝夜ですね――咲夜の言葉は最後まで耳に入ることはなかった。
頭がぐわんぐわんと揺れ、まともに立っていることができずに、床に両手をついた。
「うわーい、おぜうさまのハイハイだー」
咲夜が不穏な言葉を呟いていたが、耳には入らなかった。
「どうしましたおぜうさま、カリスマがなくなって死ぬ妖怪はいませんよ。吸血鬼以外は。」
「吸血鬼だって死なないわよ……」
「じゃあ大丈夫そうですね、それでは私は仕事があるのでこれで」
「待ちなさい咲夜!」
このまま引き下がるのはプライドが許さなかった。
「ライバルに水を開けられて引き下がっていては、この紅魔館全体の沽券にも関わってくるわ。
永遠亭の姫は見事に意識改革を成功させた。かたや紅魔館は500歳児が仕切る名ばかりの幼稚園。
咲夜、あなたは紅魔園で働きたいと思うかしら?」
「お茶かお茶漬け作ってそうですね、その名前」
「そうよ、麦藁帽子を被って農業に精を出す吸血鬼がこの世に居てたまるもんですか」
麦藁帽子を被って開墾に精を出す大妖怪なら一人知っている。
最近は見合いの話ばかりが舞い込んできて、断る文句を考えるのに忙しいらしいが、そんなことは知ったこっちゃない。
レミリアは、珠のような汗を浮かべ、首に白いタオルを巻いたいい笑顔の女性をメモリーから消去した。
彼女に纏わる事件で、根菜を幻想郷の主食にしようと目論見、キャッサバがそこら中に差し込まれた根菜異変という忌々しい事件もあったが、それも今は昔だ。
『芋の香りは私の香水!』と勇んだ神様が、タロイモの無臭に倒れたときは幻想郷中が涙したが、後に異変は神様の自作自演と発覚。
稲田姫と名乗るエージェントが、旦那の剣を持ち出して探しているという噂もあるが、今では誰も気にしていなかった。――BGM : 稲田姫さまに殺されるから
「咲夜、恥を忍んでお願いするわ……私のカリスマを、上げてちょうだい」
「かしこまりも」
「適当でしょあなた」
「ええ、よく見抜きましたね」
◆
「紫さまー、起きてくださいよー」
「もうちょっとだけー、寝させてー」
「カリスマポイント下げますよー、いいんですかー」
「好きにしてぇー」
だらけ続ける紫、しかし藍は、なかなかカリスマの査定を下げることができずにいた。
普段はだらけているが、紫の本気の姿はそれこそ、大気が揺らぐほどに溢れるカリスマ。
そんじょそこらの妖怪が比肩できるそれではないのだ。
そこに惚れこみ式を務めているのだが、今の姿にカリスマが見受けられないのも事実。
「蜜柑食べたいよぉー。らーん、剥いて口まで持ってきてー」
「そんなことに式を使わないでください……はい、あーん」
「あーん」
布団から顔だけしか出していない紫は、蜜柑をこれ以上ないほど美味しそうに咀嚼した。
藍はそっと、マイナス3ポイントとメモ帳にペンを走らせるのだった。
白玉楼――和の冴え渡る建物は、今日も静謐な佇まいでいて、住人もいつになく静かであった。
普段ならば縁側では、おやつを横に置いた幽々子がぶらぶらと足を揺らしており、お茶を飲んでいるのが日常。
妖夢はその給仕をしているか、長い廊下の雑巾がけに追われているか。
しかしその生活は、先日のカリスマ会議より一変した。
幽々子は、今までの乱れていた生活を恥じ、生活に張りを取り戻すことを決意した。
妖忌が去ってからはロクに使われることもなくなっていた武道場で、二人は相対していた。
剣術指南役は既に名ばかりになっていた妖夢が、こうして幽々子に剣を教える日がこようとは思いもしなかった。
きっかけはどうあれ、こうしてやる気を出してくれたことが妖夢は嬉しかった。
「それでは、行かせていただきます」
「いつでもいいわよ」
そういって竹刀を青眼に構える幽々子に、妖夢はまず、正面から打ちかかる。
力任せに打ち込むだけでは、地力で勝る幽々子を押し切ることはできない。
妖夢には曲りなりにも剣術指南役としての役目と、師である祖父から叩き込まれた技がある。
その二つを存分に活用していけば、剣術を嗜む程度のお嬢様ぐらいは、簡単に打ち負かすことができた。
もちろんただ打ち負かすだけでは練習にはならないので、指導をしながら剣を交えていく。
いつまで続くかはわからなかったが、自堕落な生活を続けるよりはよっぽど良い。
妖夢はメモ帳に、プラス5ポイントと書き込んだ。
途中報告がなされた時点でカリスマポイントの総計はそれぞれ。
永遠亭が+1200ポイント。
白玉楼が+250ポイント。
八雲家が-30ポイント。
紅魔館が-4500ポイント。
はじめは0から始まったポイントが、紅魔館のみ乱高下を繰り返す。
永遠亭はいわずもがな、それぞれが来る株主総会に向けてカリスマポイントを上げることに躍起になっていた。
カリスマポイントが低ければすなわち、その勢力はロクでもないものと認定されることに他ならない。
曖昧なうちに決まったものなので言及はなされていなかったが、一位の勢力が最下位になんらかのペナルティを加えることは想像に難くない。
運命を決める定例会議は、丁度半月後。
絶望的な差をひっくり返さなければ、レミリアが他の勢力の前でどじょうすくいをすることもない話とは言えない。
いやそれどころか、カリスマが下がっていけばいくほどに、身内からの扱いも酷くなっていくのだ。
レミリアは近頃の不可解な出来事の理由をようやく突き止めることができた。
妖精メイドたちは、挨拶もせずにヒソヒソ話をするばかりで、咲夜はこのように舐めきった態度を取ってきた。
パチュリーはお茶に誘っても図書館に篭ったっきりで、美鈴に至っては雪達磨を自分の代わりに立たせている。
妹のフランドールでさえ、食事のときには目を合わせてもくれない。
思えば、あまりにも露骨すぎる、手のひらの返され方だった。
逆に蓬莱山輝夜は、兎たちや永琳が優しくしてくれることが嬉しくてたまらなかった。
すれ違うたびに舌打ちされた日々、針のムシロだった昨日にサヨウナラ。
はじめてよかった、カリスマポイント。
まさに天国と地獄。
◆
「それではおぜうさま、カリスマを上げるための特訓を始めたいと思います」
「わかったわ、何でも言ってちょうだい」
真ん丸のおっぱいが照らす紅魔館の庭で、体操着(6-2)を着用し胸を張る。
この戦闘服は香霖堂で大量に仕入れられたものを買い叩いたもので、動き易さから紅魔館メイド隊の戦闘服としても採用されている。
好戦的な赤色を基調に、太股を大きく露出させるデザインは動きやすいと私も気に入っている。
しかしこれを挨拶回りに来た東風谷早苗に薦めたところ、色よい返事は帰ってこなかった。
年頃の娘には露出が厳しいのだろうという私の慧眼には、紅魔館一同も感心したものである。
しかしまぁ、ブルマを着用しているレミリアの姿からは、カリスマではなく犯罪の匂いが漂う。
咲夜はあえて何も言わず、手に持っているカリスマ向上トレーニングメニュー表を眺めた。
レミリアのカリスマポイントは現時点では絶望的な数値を叩き出している。
採点しているのは咲夜なのだから、主を窮地に追い込んだのも紛れもなく十六夜咲夜その人である。
「姑息な永遠亭め……!」
華麗で瀟洒な責任転嫁だった。
「おぜうさま、打倒永遠亭を胸にがんばっていきましょう!」
「ええ、任せておきなさい!」
ぐっと拳を突き上げる二人。
主に咲夜の陰謀で、一度は切れかかった主従の絆が結びなおされた瞬間だった。
人それを、自業自得と言う。
「それでは、僭越ながら十六夜咲夜考案のカリスマ体操を……」
「カリスマ体操?」
「大地からガイアエネルギーを吸収し、それを自らの体内に留めることでカリスマを上げるのですわ」
「なるほど……」
もちろんこれは咲夜の嘘八百である。
結びなおされた主従の絆を全力で引きちぎり、主に面白行動を取らせることだけを考え疾走する咲夜。
ここまでくるといっそ清々しく、また、生き方に一点の曇りも見えなかった。
「それではまず、大きく息を吸います。私の動きを真似てくださいね」
「わかったわ、咲夜だけが頼りなんだから」
「永琳、あれは一体何をしてるの?」
輝夜は、草陰に隠れながら二人を指差した。
永琳はその二人を睨みながら、ずっと渋い顔をしている。
「大地のエネルギーが……ものすごい勢いで流れ込んでいるわ」
だんだんレミリアの体が輝き始めた。
ガイアエネルギーすげえ。
「紅魔館はこんな秘密兵器を隠し持っていたのね」
月にもコスモエネルギーを吸収するコスモ体操があるが、それは月でも秘伝とされ知る者は少ない。
月の賢者が数百年かけて完成させたコスモ体操を、カリスマ体操は独自の形に発展させている。
実際のところ体操の内容は、咲夜が昨夜、三分で考えたものだったのだが、レミリアはぐんぐんガイアの力を取り込んでいる。
適当ってすごいなぁ。
ちなみにカリスマ体操とは、まず腰に手を当て、物理法則を無視した速度で前後に動かすことから始まる。
この時発生するソニックブームで建造物が破壊されることもあるが、細かいことは気にしない。
次に、目にも留まらぬ速度で屈伸運動をすることで、地面に大穴を開ける。
それに留まらず、美鈴の震脚にも勝るとも劣らない衝撃を断続的に発生させることで、荘厳華麗な庭は崩壊の一途を辿る。
「すごい! すごいわ咲夜! どんどん力が漲ってくるの!」
「それはよかったですね、おぜうさま。カリスマもどんどん上がっていってますわ」
「具体的には?!」
「マイナス4499ってとこですかね、現在は」
「順調ね! この分なら永遠亭を抜くことも不可能ではないわ!」
「今のペースなら、百年もあればぶっちぎりですよ」
体操に夢中になっているレミリアは、咲夜の出す数字のおかしさにまったく気づいていなかった。
ツッコミのないボケ役ほど虚しいものもない。
「すごいわ永琳、全身が発光してるのに、あの従者は気にも留めはしないなんて」
「見くびっていましたね。何が目的なのか私にも掴ませないなんて」
驚嘆の息を漏らす輝夜と、ギリっとハンカチを噛み締める永琳。
たとえ古明地さとりだろうと、今の咲夜の心を読むことなど不可能だろう。
咲夜はそう多くのことを望んではいなかった。
当初の趣旨から激しく逸脱していようとも、信じた道を貫く。
それが銀のメイド道。
完全で瀟洒なメイドの心は、既に明鏡止水の境地にまで達している。
迷うことなく、揺らぐことなく、主人をどこに出しても恥ずかしくない面白妖怪へと育て上げる。
そう遠くない明るい未来のために、咲夜は決して手を抜こうとはしなかった。
まったく方向性の違うがんばりを、永琳は誤解してしまった。
「輝夜……いいえ、姫! 我々も負けてはいられません、コスモ体操の解禁も考えなければいけないようです」
「でも永琳、地球じゃ十分なコスモを取り入れることはできないんじゃ……」
「ええ、でもただ指を咥えていられるほど、私も楽天家ではないのです」
一体あの従者は、発光しだした主に何ポイントを付けたのだろう。
少なく見積もったとしても、300ポイントは優に超えることは容易に想像できた。
後光が差すどころか、自らが光を放つなど、そんじょそこらのカリスマでは成し得ない技だ。
だからといって、リグルが偉いわけでもなんでもない。
永琳はぐっと、ハンカチを噛み締めた。
「こうしてはいられないわ、永遠亭へ戻りましょう!」
「はーい」
いそいそと帰り支度をする二人。
門番の雪達磨が、飛び去っていく二人を見守っていた。
「それでは次のカリスマアップ法です」
「どんと来い超常現象」
紅魔館の外壁は、カリスマ体操の影響で半壊しており、外からは大風に吹かれたスカートの如し。
パンチラどころかパンモロのまったくエロスの欠片もない有様になっていた。
覗きは限られた場所しか見えないから美しいのであり、幼女は触れないから愛しい。
いつでも幼女に触れられる環境にいる咲夜が、幼女に対する興味を麻痺してしまったのも当然。
今では大きなおっぱいが大好きです。咲夜は笑顔で天狗に答えていた。
「カリスマは乳に溜まるもの。おぜうさまのバストアップを冷静に理知的に考えてみました」
「却下」
「なんでですか?」
咲夜は、なぜ却下されるのかが本気でわからないという表情をしていた。
「バランスが悪いでしょうに、もしも私が巨乳だったら気持ち悪いだけだわ」
「差異が商品価値を生み出すことがなぜわからないんです!」
草木も眠る闇夜に、咲夜の激昂した声が響き渡った。
眠っていた鳥が、ガアガアと悲鳴をあげて飛び立っていく。
「いいですかおぜうさま。おっぱいは殿方の気持ちを安心させる素晴らしいものなのですよ」
「は、はぁ……」
「つまりおっぱいは心を癒し、道を指し示す使徒なのです」
「どう飛躍したの?」
咲夜はやれやれといいたげに手を広げる。
いちいち説明をしなくては理解できない愚者はこれだから。
そんな咲夜の心が、月光に透かせば見えそうだった。
「じゃあいいですよ。おぜうさまのおっぱいは小さいままで」
「あ、はい」
査定をするからには、レミリアも咲夜に対して強く出ることができなかった。
立場の違いが人間関係を大きく変えることなどざらにある話。
今の二人の力関係は、平時のほぼ真逆になっている。
レミリアは、咲夜の顔色をいちいち伺っていた。
「私がおぜうさまに強く言わないのはあれですよ、ピカピカ輝いているからですよ」
「そうよねぇ。なんでか体操したら輝いちゃって」
「レミーラって唱えてください」
「レミーリャ」
「違います」
否定しながらも時間を止め、密かにカリスマポイントを200加点する。
「けどどうしましょうか。おっぱいが大きくならないんじゃ、おぜうさまはずっとそのままですよ」
「おっぱい大きくするしか方策がないの?」
「はい」
「体操と育乳しかカリスマを上げる方法がないなんて、咲夜はいつも何考えてるのよ」
「おっぱいとか……そのへんですかね?」
「なんでそこで、他に何か? って顔をするのよ!」
意外と咲夜は使えない、レミリアはそのことにようやく気づいた。
単に、信じたくなかっただけとも言う。
しかし今のレミリアは、藁にも縋る思いを通り越して鰻でもいいから掴んでおきたいところ。
「本当に……育乳しかないの?」
「ないですね。例えばあれですよ、おぜうさま」
「はぁ」
「幻想郷絶対破壊ミサイルが飛んでくるとして、片手で受け止めたらそりゃカリスマはストップ高ですよ。
最後自爆もしたらなおさらかっこいいでしょうね。でも現実はそうじゃないんですよ。
日常に起こり得るサブミッションを極めているだけじゃ、この差は埋まりません。
だったらもう、劇的に自分を変えるしかないわけです。本当のレミリア、デビューです」
「その差を作ったのは咲夜じゃない!」
「それがおぜうさまの弱さです!」
咲夜の出した大声に、思わずへたり込んでしまうレミリア。
もう数年来の付き合いになるが、咲夜がこのように感情を剥きだしにするのは初めてのことだった。
怯えの混じった表情をするレミリアに、咲夜は慈愛に満ちた微笑みで手を差し伸べた。
「いいんですよ、私はおぜうさまの失言を許しますから」
「咲夜……!」
子犬の瞳で、レミリアは生えていない尻尾を振った。
かつて、異変の元凶として立ちはだかったときに溢れ出していたカリスマは、いまでは器に一摘も残っていなかった。
「じゃあ巨乳になりましょう」
「それはやだ」
「おぜうさま!?」
「驚くな」
言ってもわからぬ馬鹿ばかり……!
まるでこのおぜうさまは、私の能力を嫌って迫害した人間たちのようだ。
いくら能力が有益なものだと主張しても、気に入らないとつまはじきにする。
咲夜は大袈裟にポーズを決めつつ崩れ落ちた。
レミリアはそれを、冷や汗を垂らしながら眺める。
咲夜は心に一念を抱いた。
闘争である。
自らの意見を通さねばならぬ時、人は剣を持ち、メイドは幼女の体を抱きかかえる。
「おぜうさま! 私の気持ちもわかってください!」
「おわっぷっ! 苦しっ!」
「咲夜は決しておぜうさまが憎いわけではないのです。むしろ大好きです。
咲夜は恋愛に関しては未熟な感情しか持ち合わせていないので、好きな娘はむしろ虐めたくなるのです
別に私の性的嗜好を理解せよというわけではないのですが」
「顔が近い! 顔が近いって! 息鼻にかかってるから!」
「いいえ近くありません! 私とおぜうさまの心の距離は、まるで北風と太陽の如しですわ!」
「私が旅人だったら傍迷惑なだけじゃないの! 咲夜は一人二役してなさいよ!」
「ああわかりましたよ、ならば咲夜はおぜうさまの服を脱がしにかかりますわ。
右手はナイフで左手は素手、はたしてどっちが脱がすのに適役でしょうか」
「真顔でそれを言うな!」
「十六夜咲夜、御免仕る」
「ごめんで済んだら八雲紫はいらないのよー!」
レミリアの体操服(6-2)が服としての役目を終えようとしているその時。
永遠亭では、緊急会議が行われていた。
大広間にはペットの兎達が集められ、それぞれ何があったのかと憶測を立てていた。
ついに紅魔館などの勢力との戦いが始まろうとしているなどと言うてゐ。
最近の輝夜さまは実は永琳の作った偽者で、本物は月に帰ったというカミングアウトがなされると囁くてゐ。
ウドンゲは実は月の出身ではなく、そこらへんの橋の下から拾ってきたと深刻そうに語るてゐ。
てゐの語る内容は、口を開くごとに千変万化していた。
どうすんだよこの兎。
黙って聞いていたウドンゲの堪忍袋の尾が未来永劫切り裂かれようとした瞬間。
襖を開けて、主人である二人が入ってきた。
いつになく、深刻な表情をしている。
夜の明けない異変の時ですら、二人は余裕の表情を決して崩そうとはしなかったというのに。
これにはいよいよ、てゐですら軽口を慎んだ。
ましてや一般の兎たちも口を開くようなこともあるまい。
重苦しい静寂が、大広間に浸透していく。
「今日、私たちは紅魔館へと偵察をしてきました。八雲家や冥界へ偵察することは叶わなかったのですが、中間報告の結果は恐れるに足らず。
圧倒的に差をつけている私たちが、よもやぶっち切りの最下位をひた走る紅魔館に負ける要素などない。そう確信していたのですが……」
永琳の言葉が詰まった。
隣に居る輝夜の表情も、いまいち晴れない。
全員が固唾を飲んで、次がれる言葉を待った。
「紅魔館の主であるレミリア・スカーレットが、体操服姿で全身から発光していたの」
「!!?」
押し黙っていた兎たちが騒ぎ始めた。
その内容を簡単に要約すればこうだ。
だから、どうした。
しかし師匠と崇める永琳の言葉を、ウドンゲはどうしても疑うことができなかった。
「ねぇウドンゲ、なんでそんなしかめっツラをしてるのさ」
「ううん、何がどうしてわざわざ会議を開くのかなって。師匠のことだから、深い意図があるんだと思うけど」
「ふぅん……買い被りすぎじゃない? 天才だからって、常に正しい選択をするとは限らないんだし」
「でも師匠に限っては」
「思い込みは危険だよ? まぁ、面白いことになれば私はそれでいいんだけどさ」
「そうかなぁ」
「そうだよ、どーせ私らには直接関係のないことでしょ」
ううむ、と顎に手を当てて考える仕草をするウドンゲ。
生真面目なのがウドンゲの良いところだけど、何かあるとすぐに師匠師匠。
親離れできていないのかねー、とてゐは若干冷ややかな目線でそれを眺める。
「というわけで! 姫のカリスマアップのためにあなたたちにも協力をしてもらいます!」
もはや半数以上の兎が話を耳を折り畳み、もう半数は小声で雑談をしていた。
輝夜の素行は改善されてきたとはいえ、結局根っこの部分ではこんなものである。
◆
レミリア・スカーレットが最後に泣いたのはいつのときだったろうか。
少なくとも、最後に泣いたのは幻想郷に来るずっと以前のことだったはずである。
両親を亡くしてからはずっと、レミリアが紅魔館を引っ張ってきた。
初めの内は上手くいかないことだらけで、両親の子飼いだった部下も一人また一人と暇を出した。
レミリアはそれを、自分が弱く求心力がないのだと考え、自分よりも力の強い妹を地下室に封じて見せた。
フランドール・スカーレットの素行は、たしかに常識では計れないところが数多くあったが、閉じ込められるほど素行は悪くもなかったのだ。
ただ、姉としての威厳を保つために、求心力を保つための道具として、妹を犠牲にした。
その晩は、部屋でこっそりと泣いたような記憶がある。
その次に泣いたのは、すっかり部下の居なくなった館を一人で歩き回っていたときだった覚えがある。
妹は文句の一つも言わなかったけれど、レミリアは自分の不甲斐なさに涙した。
多くの眷属を従え、夜の王として君臨した両親と、最愛の妹を裏切ってまで繋ぎとめようとしたレミリア。
ボロボロの身なりで館に転がり込んできた美鈴と出会うまでは、レミリアはずっと独りだった。
美鈴と出会って、パチュリーと出会って、それから咲夜と出会って。
妖精メイドたちは数に入れないとして、レミリアの持ち物は小さな両腕に抱えられる程度に小さいものだった。
最後に泣いたのは、いつのことだったろうか。
珍しく取り乱した咲夜と、火がついたように泣き出すレミリア。
その声を聞いた美鈴が、パチュリーが、フランドールが、それぞれ館から飛び出してきた。
各々がレミリアに駆け寄ってどうしたのかと聞いても、わんわんと泣き喚くばかりで一向に要領を得ない。
見誤った。
思えば、お嬢様がカリスマに固執するのかをまるで知らないでいたくせに。
傍から見ればとてつもなく下らないものに見えるかもしれないが、面白がって踏みにじっていいわけがなかったのに。
大切に思っているはずの主人はいま、見た目相応の少女のまま、声をあげて泣いている。
恥じても状況は変わらない、それでも恥じざるをえなかった。
瀟洒なメイドだと自認していたくせに、主の心の隙間に気づけなかったことを。
どんなにむちゃくちゃな要求をしても、お嬢様は最後には受け入れた。
どんなに見苦しかろうと、カリスマという言葉のためにプライドを投げ捨ててまで。
「何があったの? レミィ、大丈夫?」
「よしよしお嬢様、泣かないでくださいよ」
「お姉さま? どこかが痛むの? 大丈夫?」
三人が、ボロボロ涙を流し続けるお嬢様の傍へと座り込み、顔を覗きこむ。
私だけが、その場を動けないでいた。
『お嬢様からカリスマが無くなったら、私もパチュリーさまも美鈴も妹様も、みーんなどこかへ行ってしまうかもしれませんね』
深く考えずに放った言葉の枝は見る見る形を変え、お嬢様の心の奥深くまで突き刺さった。
「みん、な、私がダメだから、いなく、なっちゃうの」
先ほどからお嬢様は、何度もその言葉を繰り返している。
私の知っているレミリア・スカーレットは、とんでもなく尊大で、無茶苦茶ワガママで、仔猫の好奇心を百倍強めたような厄介な妖怪だった。
いつも余裕たっぷりで、へーきのへーざで無茶苦茶なことを要求してくる小さな女王様。
それがカリスマという言葉をちらつかせるだけで、立場が逆転した。
あのレミリア・スカーレットは咳き込みながら、呂律の回らない舌で謝罪の言葉を繰り返していた。
大体、意味不明なぐらいにワガママで人の言うことを聞かないお嬢さまが、素直に耳を傾けてくれることから奇妙な話。
それだけ、カリスマという言葉はお嬢様にとって大切なものだったのに。
なぜ、私はそんな簡単なことにすら気づけなかったんだ。
「ごめ、んなさい、だから、どこかに、行ったりしないで!」
振り絞るような、お嬢様の声。
パチュリー様の眼の中では、憤怒の炎が燃え盛っていた。
思わず眼を逸らすと、ぐいっと胸元を掴まれた。
「答えなさい咲夜。あなたは一体レミィに何をしたの?」
「……とてつもなく、非道い過ちを犯しました」
「内容は聞かないわ、今すぐ謝りなさい、今すぐに!」
言い切ってから、パチュリー様はゴホゴホと咳き込んだ。
けれど、眼の炎は爛々と燃え盛っていて、怒りのほどが誰でも察することができた。
「大丈夫ですよ、こんな私ですけど、他に行く場所もありませんから」
美鈴が胸元にお嬢様を招き入れて、母親のように抱きしめていた。
美鈴は、私を責めるような眼はしていなかった。
ただお嬢様の背中を撫でて、呼吸が落ち着くように労わっている。
本来は、私がそうすべきはずだったのに。
「お姉さま大丈夫? お姉さまは悪くないよ、たぶん」
状況を上手く理解していない妹様が、無邪気に笑っていた。
姉の表情が曇っているのを、彼女なりに気遣っているのだろう。
じゃあ、私はどうすればいいのだろう。
目頭が熱くなってきた。
泣いてはいけない。
お嬢様の心を抉ったのは、ほかでもない私なのだ。
ナイフを持った犯人が、涙を流して同情を誘うなんて呆れて笑えもしない。
泣いて罪を軽くしようとする愚か者にまで、私は身を貶めたくなかった。
「すみませんでしたお嬢様、私が軽率でした。主人に数々の狼藉を働いたこの身で傍仕えを続けさせてくれというのも酷でしょう。
お嬢様、どうぞご命令なさってください。荷物をまとめて、紅魔館から出て行けと。
もう二度と、貴女様の前に姿を現さないことを、約束致しますから」
「やだぁ……」
「……」
「咲夜は、どこにも、行っちゃやだ、ずっと、私の隣にいなきゃダメなの、美鈴もパチェもフランもみんな、ずっと一緒じゃなきゃ嫌なの」
そういってまた、美鈴の胸に顔を埋めるお嬢様。
「えーと、もしかして、これって私たちも悪い?」
パチュリー様が、ポリポリ頬を掻く。
自覚がなかったようだが、この機とばかりに乗っかっていたのは紛れも無い事実。
美鈴も妹様も、一緒になって甚振っていたため、顔を見合わせて冷や汗を垂らしていた。
「ご、ごめんなさいお嬢様、つい流されてしまって」
「レ、レミィ、痛いところはないかしら、おーよしよし」
「お姉さま? おやつのプディングあげるから許して、ね? ね?」
必死で弁解をする三人。
お嬢様は、元から紅い目を真っ赤に腫らして、それぞれにこくんと小さく頷いた。
紅い瞳がゆらゆら泳いでから、私の目線と重なる。
「いいよ。咲夜もみんなも許してあげる。懐が大きいのも、カリスマの証なんでしょ?」
クスッと、小悪魔みたいな表情でお嬢様が微笑んだ。
散々弄りまわしてきた私たちの心には、優しい言葉が何よりも突き刺さる。
手遅れだろうけど、私はメモ帳に書かれていること全てに斜線を引いた。
◆
半月後開かれたカリスマ定例会議には、どの勢力も不参加を表明した。
元々が突発的に開かれた会議であり、一ヶ月も熱が持たなかったというのが大きな原因。
まず、やる気のなかった八雲家は、途中でカリスマポイントをメモすることを八雲藍が放棄した。
曰く、「紫さまは一気に稼ぐタイプなので、一ヶ月の短い期間では計れない」とのこと。
次に、西行寺家。
「幽々子さまが珍しくやる気を出しているので、そのやる気を変なところで殺ぎたくはない」とのこと。
食っちゃ寝生活だった亡霊も、張りのある生活に目覚め始めたらしい。
いつまで続くのはわからないが、嬉しそうな半霊の顔が印象的だった。
それから紅魔館。
中間報告がものすごいことになっていたので気になって訪ねてみると、メイドが寒い中門の前に突っ立っていた。
何かあったのかと尋ねると、嬉しそうに「ちょっと罰を受けているんですよ」って。
まさかあのメイドに限って、何か粗相をしでかすとは思えなかったけれど、何よりも罰を受けているのにあの笑顔は不気味だった。
でも、本人たちがいいならそれはそれでいいんじゃないかな。
ああ、一番酷かったのは永遠亭。
この前行ってみたら、主も従者も兎まで、全員揃って気持ちの悪い動きをしていた。
それに全員が揃って、「命を大事に! 命を大事に!」なんて叫んでるもんだから、気味の悪さに拍車がかかっていて。
全員が変な熱病にでもかかったんじゃないかって疑いたいぐらい。
永遠亭からの帰り道、竹林で藤原妹紅に会ったけど、彼女はなんだか面白くない表情をしていた。
やっぱり喧嘩相手があんな具合じゃ、面白くないんだろうね。
そんなこんなで、鴉天狗である私が今回のカリスマ騒動を仕切っていたんだけど、最後はこうしてうやむやになっちゃった。
まぁこういう緩いところが、幻想郷の魅力っちゃ魅力なんですけどね。
さてま、今日もネタ探しにでかけますか。
何か面白いことでもありませんかね。
文は大きく伸びをして、メモ帳片手に飛び立った。
今日も幻想郷は、のんびりと廻っているようだ。
だけど、誰のかわからない一人称と三人称がごっちゃになってて、メリハリに欠けるように感じた。
ヤマオチの起伏もいつもに比べて乏しく見える。なので今回はこの点数。
まぁ何が言いたいのかというと、レミリア可愛いよレミリア。
咲夜の(かなり勝手で出鱈目な)評価でカリスマが低下したとされただけで態度の悪くなる紅魔館も、ギスギスした永遠亭も、最後までギャグとしての姿勢を貫くからこそネタとして消化されるのであって、これでは「嫌な奴らだなぁ」という苦味を感じさせられてしまいます。
つーか、周りの連中はレミリア虐めに参加してたようなもんじゃねーか。何そのマッチポンプ。
あ、なるほどー。
パッチェさんやめーりんの態度が、「そう言われてみると、最近パチェをお茶に誘っても断られてばっかりな気が……」みたいに、れみりゃ様の思い込みで、
で、咲夜さんの内心の流れが、「カリスマなんてものに一喜一憂しちゃって。ちょっとからかっちゃえ」⇒「え、そんな理由で必死になってたの? ごめんなさい、お嬢様」みたいな感じでないと、ラストのシーンが不自然になっちゃうってことですね。
うーん、注意して読んでみると確かにー。
でも、カリスマ体操ネタは楽しかったです。
なので、トータルこの点数で。
一つの纏めて作品にしたように感じました。
咲夜はその傾向が顕著で、ストイックさと天然さをよく混ぜてこねられたるような。ストイックに主イジリをするとこうなるな、と思いながら読んでました。
勝手ながら紅魔郷のころのカリスマフルなお嬢さまレミリアも読みたい所でしたが、
>クスっと
で俺はもう満足だぜ!!おぜう様最高!!
それまでの読み心地の悪さ全部が、その微笑みの為の壮大なまえふりなんでしたね!
でもやっぱり俺としては同じ悲劇だとかどんづまりでも、
下地には愛がきちんと敷いてあってほしいと思うのです。
この作品では最後に愛が再認識できたのが、俺にとっての救いだったのでした。
イジリには溢れる愛がないとね!イジメになっちゃう!
ところで永遠亭には魔法陣渦巻の風習が見受けられる…?
そしてキャッサバに懐かしさを感じてしまうのは何故でしょう?
ただ、面白くないわけではありませんが咲夜さんたちの扱いにとても嫌悪感を抱きました。
結果的にお嬢様たちがまた元の鞘に戻ったのにはホッとしましたけど。
氏の書く話は面白いものもあるので
この話は非常に残念でした。
次回は期待したいです。
姫さまも愛されててとっても嬉しゅうござんす。
個人的にはこの作品(修正後しか見てないのもありますが)大好き。
おもしろいと感じてしまった以上文句は言えないってとこすね
ちゃんとパチェたちも自覚していたし
俺は胸糞悪さはあんまり感じなかったけども
咲夜が幼女趣味の変態で描かれるのが多いなか巨乳趣味の咲夜があえてレミリアを巨乳にしようとするのを見たのは初めてだ
そ の 発 想 は な か っ た
やはりそれでも決壊するまで弄るのは気持ちの良いモノではないです。
東方のそれぞれのグループに共通しているのは
普段や遠巻きでは見えない、だがそれでも真に近しい者だけが知りうる途方も無い輝きや愛情や威厳
そしてそれを知り得るからこそ、どれだけ砕け・おバカな事しても揺るがない信頼で結ばれた絆じゃないかな、と。
相手を思い過ぎて崩れる危険という事態はあるかもしれませんが
いかにギャグ方面といえど咲夜が根幹にも等しい部分を失念するというのはやはり違和感ありました
お嬢様の御心に100点を、やり過ぎた紅魔の4名分それぞれ減点ということでこの点数を。
個人的にはオチはもっと吹っ飛んでいてもよかったように思えます。
素直におもしろかったですよ
ただ、咲夜さん壊れすぎた?
それもいいと思ったけどね
確かに多少やり過ぎにも感じますが、泣き出してからのお嬢様と周りの人物の感情が、
ガツンと心に殴りかかってきて強く響いてきました。
電気羊さんの作品の中でこの作品が一番好きかも……
個人的には最後までギャグのまま突っ走って欲しかったけど、
こういう終わり方も悪くはないかな
そしてお嬢様の可愛さに悶絶。
破産してもいいからカリスマを買ってあげたい衝動に駆られました。
何をおいてもお嬢様可愛いです。
基本的な文章の上手さと小ネタで加点してこのあたりに。
どこを変えたのか知りようはありませんが、読んだのが修正後で良かったと思います。