曇った空の下で、弾幕がきらめきまた一つの決闘が終わろうとしていた。
_人人人人_
> K・O! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄
「天界に上った猿は、与えられた役職に起こって反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」
「ぐぬぬ…私が猿だって言うわけ!? 紫!もう一勝負よ!」
私、比那名居天子は自分の起こした異変から一年後、幻想郷に挨拶回りをしていた。
一年も待ったのはタイミングがなかったからだ。
異変の後、すぐに怨霊が地下からたくさん湧き出てきたようで、どうも近づきたくなかったのだ。
怨霊はマイナスのオーラを出してて近づきたくない
。
……地震を起こした自分のせいで地下に何かあったのではないかと思って、気まずかった訳ではない。本当に。
とはいえ、冬も終わり怨霊も雪で封じ込まれたようで、早速異変中で会わなかった奴らに会いに行ったというわけだ。
具体的には山の上にすむ神様に桃を送ってみたり。
どうやら巷では、巨大な人影が見えるといって話題になっているらしい。
どうせ、だいだらぼっちやら何かのくだらない妖怪が脅かしてるだけだと思われる。
ぶっちゃけ興味ない。
そしてその帰り道にこのいけ好かないスキマ妖怪に遭ってしまった。
_人人人人_
> K・O! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄
「天界に上った猿は、与えられた役職に起こって反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」
「また猿って言った!もう一回!」
「またやるの?いつまでやるつもりよ、もう。」
「無論!勝てるまで!」
_人人人人_
> K・O! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄
「天界に上った猿は、与えられた役職に起こって反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」
「ゼェ、ゼェ……… 馬鹿の一つ覚えみたいに同じことばかり言うんじゃないわよ!」
「言いたくて言ってるわけじゃないわ。システム上の理由よ。」
「はぁ?何か言った? もう一回!」
「もう疲れたわー。 私忙しいのだけれど。」
「嫌なら勝負断ればいいじゃないの。 なんだかんだいって付き合ってくれてるし。」
「私は何でも受け入れる。それはそれはとても残酷な話ですわ。主にシステム上に理由で。」
「意味のわからないこと言わない! 次よ!」
_人人人人_
> K・O! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄
「天界に上った猿は、(ry
_人人人人_
> K・O! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄
「天(ry
_人人人人_
> K・O! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄
_人人人人_
> K・O! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄
………………。
「ハァッ、ハァッ。 ぐぬぬ……今日はここら辺で勘弁してあげるわ!次あったときは覚悟しておくことね!」
「お手本通りの捨て台詞ありがとう。有頂天になりすぎると孫悟空みたいになっちゃうわよ。」
「余計なお世話!」
クソッ、次は必ず勝ってやるんだから!
「……やっと帰ったか。
天界に上った孫悟空は結局天界の生活が合わなくて金丹を食べて暴れ回った結果、追放されてしまった。
しかし追放された後、三蔵法師の取経の旅を手伝うことで人間的に大きく成長して、仏の仲間になった。
悟空は追放を成長のきっかけとすることが出来たのよ。
今のあなたは自称の”斉天大聖”でしかないけれど、いつの日か”闘戦勝仏”に成長できるのかしらね。あゝ、本当に、見てて面白い。」
——————————————————————————————
それからも、鴉天狗の取材に付き合ったり、宗教戦争の見物に行ったりもした。
突然意思を持って動き始めた緋想の剣を押さえ込むのは大変だった。宝具が暴れるとかなり被害が出る。危うく、第二の緋色の雲が出来るところだ。
(腹いせにその異変の首謀者らしい天邪鬼を捕まえにいったが、よく分からないうちに逃げられてしまった。)
無論、たまにあのスキマに勝負を仕掛けたりもした。(結局勝てなかった。)
そして、129季の終わり頃。(天邪鬼を追っかけ回してから半年後だ)
久しぶりに衣玖が家を訪ねてきた。 いやな知らせをもって。
「総領娘様、伝令です。伝令。」
「あによ衣玖、最近は別に問題起こしてないわよ?」
「天界の上の方からです。しばらくの間地上に降りてはならぬ。と。」
「……は? どうしてそんないきなり?理由は何よ?」
「さぁ? 私はただの伝令役ですし、上の意向は知りません」
「そんなの私には関係ないわ。私は好きなときに好きな場所に遊びに行く。」
「そうは参りません。この命令は総領娘様だけではなく、私たち使いも遍く全て、です。事の重大さを分かってください。」
「衣玖たちも……? ……そうか。これは月の命令でしょう? そうじゃないとこんな大がかりなこと考えられないわ。」
月の世界と天界は場所こそ離れているが、根本は同じ世界だ。こちらの方がより地上(死)に近いというだけで天上(不死)の世界なのは変わらない。
天界が遠い昔地上から抜かれた要石であることと同様に、月もまた元々は地上にあった。
もっとも、地上以上の苦しみを受けるとも言われる天界のことを月の民は心底嫌っているそうだが。
私も月の民は嫌いなのでおあいこだ。
「……はぁ、分かったわ。従う。逆らうとひどい目に遭いそうだしね。」
「総領娘様が素直で何よりです。」
……まぁ何もしないとは言ってないけど。
とはいえ衣玖たちが使えない訳だから、自分で情報を集めるしかない。
地上を見下ろしたり、お偉いさんの話を盗み聞きしたりしてもたいした情報は入ってこなかった。
有力な情報といえば、何かに切羽詰まったらしい月の連中が幻想郷の侵略を考えているらしいと言うことくらい。
地上侵略なんて馬鹿らしい。 あいつらの底力は私がよく知っている。どうせ失敗するだろう。
……まぁ念のため、私の力を貸してやるとしようか。
あの竹林の薬師ならこれを知ればきっとなんとかしてくれるでしょう。
あとは……スキマにも伝えとこうかな、どうしようか。あいつ今どこで何やってるのか全然分かんないし。
地上に降りることはできないから、矢文か何かで良いかな。気づかなかったらそれまで、ということで。
楽しくなってきた!!
——————————————————————————————
月の幻想郷への侵略は失敗に終わったようだ。
緊急回避的な夢の世界への移住も、結局敵たちに利用されて人間を頼ってたみたいだし。
この前のタレコミが上に疑われているようで、しばらくは下手なことは出来ないな。
とはいえ、これで一応地上に行けるようになったわけだし、ほとぼりが冷めたら遊びに行こうか。
幻想郷が無事だったのは私のおかげだろうし、喜んで褒め称えることでしょう。楽しみね。
お土産は何が良いだろうか。 そういや、来年の催事用に金丹を作ってたっけ。あれが完成したら少しもらっていこう。
——————————————————————————————
……おかしい。私はただ金丹を盗むついでに少しつまみ食いしただけだ。それほど美味しくも無かったし。
どうして私がその程度で天界から謹慎処分を受けなければならない?絶対におかしい。
きっとこれはあのスキマ妖怪の陰謀だ。そうに違いない。早速恩を仇で返すなんて、人として恥ずかしくないのだろうか?
あいつは妖怪だが。
今度会ったら、私が直々にその性根たたき直してやる。待ってろよ八雲紫ぃ!!
……とはいえ、あいつ、どこにいるのだろうか?
どうやら知らない間に憑依異変なんてのも起こってるみたいだし。
とりあえず、この憑依異変を楽しみましょう。
あいつも出張ってるかもしれない。だったら完全憑依で暴れてればいつか会える。
ついでに異変も私が解決してやれば評価もうなぎ登りね!
まずはパートナーを見つけないとなぁ。 私と組むからにはある程度格の高いやつが良い。
お?あれは……早速いいのがいるわね。
「そこの小人!! 私のスレイブになりなさい!!」
「......へ?」
——————————————————————————————
「よーし、天界に帰るまでに地上を支配するかぁ!! 行くわよ針妙丸!」
「良いっすねぇ。さすが天人様。考えることのスケールが違いますねぇ。」
天子はすでにこの時、最初の目的を忘れていた…
——————————————————————————————
「ん?こいつはあのときのスキマ妖怪!!」
「あら?どうして貴女が地上に?」
「そう言えば地上にはこいつが残ってたな。こいつを倒さなければ地上は支配できない!!」
「なんでこんなタイミングに現れるのかしら。今の貴方には興味ないからさっさと去れ。」
「こいつは、反則技のオンパレードで有名な妖怪だ。気を抜くなよー。」
「あれ? そこの小人は……いつもの小人じゃないわね。」
「うへへー、よく判ったねぇ。そうさ、自分は夢の世界の針妙丸さ! ドサクサに紛れて強制的に取り憑いてやったよ。」
「なんだって? あんたは針妙丸じゃないの?」
「針妙丸は針妙丸だけど夢の世界の針妙丸だ。こっちの方が面白そうだったから、さっきの戦いの時に入れ替わってやったのさ。」
「へえー、そんなこと出来るんだ! まあ私としては強ければどっちでもいいや。」
「戦いの途中でスレイブを入れ替えただって? それは疫病神の能力と同じ……。なる程、そういうことか! 疫病神(あいつ)の能力の仕組みが見えた!」
「ぶつくさ言ってないで、さっさと戦うよ! 幻想郷の支配者は私がやる!」
恩を仇で返すような奴は支配者には向いてないよ!
——————————————————————————————
「よっし、勝ったぁ!これで私たちが最強の二人組よ!」
「ふふ、貴女たちのおかげでこの異変を解決できそうだわ。ありがとうね。あとは私たちに任せるといいわ」
「まぁ、私にかかれば当然ね!!今度会った時は一対一で倒してやるんだから!」」
「それはどうかしらね……ふふ。」
「紫、あの天人の扱いうまいわね。」
「とても単純だもの。あんなに扱いやすい奴もそういないわ。ふふふ。」
「そうね。……しかし、いつにもまして気持ち悪い笑顔してるわよ? そんなにいいことでもあった?」
「あらあら、酷いこというわね。でも、良いことはあったわよ。幻想郷の住民が一人増えそうなの」
「???」
「ほら、早速疫病神の対策を始めるわよ。」
「はいはい。」
——————————————————————————————
憑依異変が落ち着いて、紫の家。
「で、結局あの天人が天界を追いだされることになったのも紫様の差し金なんですか?」
「そうねぇ。半分正解で半分間違いって所かしら。」
「半分、とは?」
「私はただ天界に提案しただけ。まぁそういう方向に誘導したのもあるけど。」
「提案?」
「そこから先は自分で考えなさい。藍」
「はぁ……」
そう、私は提案しただけ。
異変を起こしてからの天子は明らかに地上に強く興味を持っていて、逆に天界には興味を失っていた。
しかし、それは天人である天子にとってかなり危険なことだった。
天人の五衰の一つ、”不楽本座” 自分のいるべき場所を楽しめず、離れたく感じること。
まだ天子は天人であることに誇りを持っていたし天界を離れたいとは思っていなかったはずだけれど、
実際、いつ五衰の兆候が出てもおかしくない状態だった。
だから、提案した。
いるべき場所を楽しめないなら、いるべき場所を”幻想郷”にすればいい。
その手段が、天界からの”謹慎”処分だ。
あくまで期限不定なのは、いずれ不良が”更生”するかもしれないと思っているからなのだろう。
とはいえ、天子をこちらによこすのは天人たちも大分渋っていた。だから、天界に危険なラインを示しておいたのだ。
それが、孫悟空の逸話。
あの数年前の天子との戦いの後、
「天子に孫悟空の天界追放の話を沢山してやった。これでもし天子が丹を盗み食いでもしたら、それは地上に行きたいという気持ちの表れだ。」
と天界に伝えておいた。
天界も、甘い人間が多いようだ。天子が五衰で死んでしまうのはどうしても避けたいらしい。
実際天子が金丹をつまみ食いしたと聞いたときは相当焦っていたようだ。いい気味だ。
とはいえ、予想外だったこともある。
天子は別に地上に行きたいとは考えずに盗み食いをしていた。ということだ。
あんなに何回も言ったのに、忘れてしまったのか……
まぁ天界が天子の気持ちに気づけばすぐに謹慎は解かれるだろう。
いつ気づくかはわからないが。
天子はもはや幻想郷の一員になりつつある。
あの子は本当に面白い。逃がしてなるものですか。
そうね……次の一手は……
「紫ぃ! 勝負よ!!」
来た来た
「出会い頭物騒ねぇ。まぁ、待ちなさい天子。あなた、天界を追い出されたんでしょ? 今どこに住んでるの?」
「どこって……いまは針妙丸のところに居候してるわ。いつまでも針妙丸にお世話になるわけにもいかないけど。」
「そう。じゃあ丁度いいわ。
これから謹慎が切れるまでうちの所に住まない?」
「……へっ?」
「ほら、オカルト異変の時にお世話になったしそのお礼ということで。うちの式の料理は美味しいわよ?」
つ か ま え た。
_人人人人_
> K・O! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄
「天界に上った猿は、与えられた役職に起こって反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」
「ぐぬぬ…私が猿だって言うわけ!? 紫!もう一勝負よ!」
私、比那名居天子は自分の起こした異変から一年後、幻想郷に挨拶回りをしていた。
一年も待ったのはタイミングがなかったからだ。
異変の後、すぐに怨霊が地下からたくさん湧き出てきたようで、どうも近づきたくなかったのだ。
怨霊はマイナスのオーラを出してて近づきたくない
。
……地震を起こした自分のせいで地下に何かあったのではないかと思って、気まずかった訳ではない。本当に。
とはいえ、冬も終わり怨霊も雪で封じ込まれたようで、早速異変中で会わなかった奴らに会いに行ったというわけだ。
具体的には山の上にすむ神様に桃を送ってみたり。
どうやら巷では、巨大な人影が見えるといって話題になっているらしい。
どうせ、だいだらぼっちやら何かのくだらない妖怪が脅かしてるだけだと思われる。
ぶっちゃけ興味ない。
そしてその帰り道にこのいけ好かないスキマ妖怪に遭ってしまった。
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> K・O! <
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「天界に上った猿は、与えられた役職に起こって反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」
「また猿って言った!もう一回!」
「またやるの?いつまでやるつもりよ、もう。」
「無論!勝てるまで!」
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> K・O! <
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「天界に上った猿は、与えられた役職に起こって反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」
「ゼェ、ゼェ……… 馬鹿の一つ覚えみたいに同じことばかり言うんじゃないわよ!」
「言いたくて言ってるわけじゃないわ。システム上の理由よ。」
「はぁ?何か言った? もう一回!」
「もう疲れたわー。 私忙しいのだけれど。」
「嫌なら勝負断ればいいじゃないの。 なんだかんだいって付き合ってくれてるし。」
「私は何でも受け入れる。それはそれはとても残酷な話ですわ。主にシステム上に理由で。」
「意味のわからないこと言わない! 次よ!」
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> K・O! <
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「天界に上った猿は、(ry
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> K・O! <
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> K・O! <
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………………。
「ハァッ、ハァッ。 ぐぬぬ……今日はここら辺で勘弁してあげるわ!次あったときは覚悟しておくことね!」
「お手本通りの捨て台詞ありがとう。有頂天になりすぎると孫悟空みたいになっちゃうわよ。」
「余計なお世話!」
クソッ、次は必ず勝ってやるんだから!
「……やっと帰ったか。
天界に上った孫悟空は結局天界の生活が合わなくて金丹を食べて暴れ回った結果、追放されてしまった。
しかし追放された後、三蔵法師の取経の旅を手伝うことで人間的に大きく成長して、仏の仲間になった。
悟空は追放を成長のきっかけとすることが出来たのよ。
今のあなたは自称の”斉天大聖”でしかないけれど、いつの日か”闘戦勝仏”に成長できるのかしらね。あゝ、本当に、見てて面白い。」
——————————————————————————————
それからも、鴉天狗の取材に付き合ったり、宗教戦争の見物に行ったりもした。
突然意思を持って動き始めた緋想の剣を押さえ込むのは大変だった。宝具が暴れるとかなり被害が出る。危うく、第二の緋色の雲が出来るところだ。
(腹いせにその異変の首謀者らしい天邪鬼を捕まえにいったが、よく分からないうちに逃げられてしまった。)
無論、たまにあのスキマに勝負を仕掛けたりもした。(結局勝てなかった。)
そして、129季の終わり頃。(天邪鬼を追っかけ回してから半年後だ)
久しぶりに衣玖が家を訪ねてきた。 いやな知らせをもって。
「総領娘様、伝令です。伝令。」
「あによ衣玖、最近は別に問題起こしてないわよ?」
「天界の上の方からです。しばらくの間地上に降りてはならぬ。と。」
「……は? どうしてそんないきなり?理由は何よ?」
「さぁ? 私はただの伝令役ですし、上の意向は知りません」
「そんなの私には関係ないわ。私は好きなときに好きな場所に遊びに行く。」
「そうは参りません。この命令は総領娘様だけではなく、私たち使いも遍く全て、です。事の重大さを分かってください。」
「衣玖たちも……? ……そうか。これは月の命令でしょう? そうじゃないとこんな大がかりなこと考えられないわ。」
月の世界と天界は場所こそ離れているが、根本は同じ世界だ。こちらの方がより地上(死)に近いというだけで天上(不死)の世界なのは変わらない。
天界が遠い昔地上から抜かれた要石であることと同様に、月もまた元々は地上にあった。
もっとも、地上以上の苦しみを受けるとも言われる天界のことを月の民は心底嫌っているそうだが。
私も月の民は嫌いなのでおあいこだ。
「……はぁ、分かったわ。従う。逆らうとひどい目に遭いそうだしね。」
「総領娘様が素直で何よりです。」
……まぁ何もしないとは言ってないけど。
とはいえ衣玖たちが使えない訳だから、自分で情報を集めるしかない。
地上を見下ろしたり、お偉いさんの話を盗み聞きしたりしてもたいした情報は入ってこなかった。
有力な情報といえば、何かに切羽詰まったらしい月の連中が幻想郷の侵略を考えているらしいと言うことくらい。
地上侵略なんて馬鹿らしい。 あいつらの底力は私がよく知っている。どうせ失敗するだろう。
……まぁ念のため、私の力を貸してやるとしようか。
あの竹林の薬師ならこれを知ればきっとなんとかしてくれるでしょう。
あとは……スキマにも伝えとこうかな、どうしようか。あいつ今どこで何やってるのか全然分かんないし。
地上に降りることはできないから、矢文か何かで良いかな。気づかなかったらそれまで、ということで。
楽しくなってきた!!
——————————————————————————————
月の幻想郷への侵略は失敗に終わったようだ。
緊急回避的な夢の世界への移住も、結局敵たちに利用されて人間を頼ってたみたいだし。
この前のタレコミが上に疑われているようで、しばらくは下手なことは出来ないな。
とはいえ、これで一応地上に行けるようになったわけだし、ほとぼりが冷めたら遊びに行こうか。
幻想郷が無事だったのは私のおかげだろうし、喜んで褒め称えることでしょう。楽しみね。
お土産は何が良いだろうか。 そういや、来年の催事用に金丹を作ってたっけ。あれが完成したら少しもらっていこう。
——————————————————————————————
……おかしい。私はただ金丹を盗むついでに少しつまみ食いしただけだ。それほど美味しくも無かったし。
どうして私がその程度で天界から謹慎処分を受けなければならない?絶対におかしい。
きっとこれはあのスキマ妖怪の陰謀だ。そうに違いない。早速恩を仇で返すなんて、人として恥ずかしくないのだろうか?
あいつは妖怪だが。
今度会ったら、私が直々にその性根たたき直してやる。待ってろよ八雲紫ぃ!!
……とはいえ、あいつ、どこにいるのだろうか?
どうやら知らない間に憑依異変なんてのも起こってるみたいだし。
とりあえず、この憑依異変を楽しみましょう。
あいつも出張ってるかもしれない。だったら完全憑依で暴れてればいつか会える。
ついでに異変も私が解決してやれば評価もうなぎ登りね!
まずはパートナーを見つけないとなぁ。 私と組むからにはある程度格の高いやつが良い。
お?あれは……早速いいのがいるわね。
「そこの小人!! 私のスレイブになりなさい!!」
「......へ?」
——————————————————————————————
「よーし、天界に帰るまでに地上を支配するかぁ!! 行くわよ針妙丸!」
「良いっすねぇ。さすが天人様。考えることのスケールが違いますねぇ。」
天子はすでにこの時、最初の目的を忘れていた…
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「ん?こいつはあのときのスキマ妖怪!!」
「あら?どうして貴女が地上に?」
「そう言えば地上にはこいつが残ってたな。こいつを倒さなければ地上は支配できない!!」
「なんでこんなタイミングに現れるのかしら。今の貴方には興味ないからさっさと去れ。」
「こいつは、反則技のオンパレードで有名な妖怪だ。気を抜くなよー。」
「あれ? そこの小人は……いつもの小人じゃないわね。」
「うへへー、よく判ったねぇ。そうさ、自分は夢の世界の針妙丸さ! ドサクサに紛れて強制的に取り憑いてやったよ。」
「なんだって? あんたは針妙丸じゃないの?」
「針妙丸は針妙丸だけど夢の世界の針妙丸だ。こっちの方が面白そうだったから、さっきの戦いの時に入れ替わってやったのさ。」
「へえー、そんなこと出来るんだ! まあ私としては強ければどっちでもいいや。」
「戦いの途中でスレイブを入れ替えただって? それは疫病神の能力と同じ……。なる程、そういうことか! 疫病神(あいつ)の能力の仕組みが見えた!」
「ぶつくさ言ってないで、さっさと戦うよ! 幻想郷の支配者は私がやる!」
恩を仇で返すような奴は支配者には向いてないよ!
——————————————————————————————
「よっし、勝ったぁ!これで私たちが最強の二人組よ!」
「ふふ、貴女たちのおかげでこの異変を解決できそうだわ。ありがとうね。あとは私たちに任せるといいわ」
「まぁ、私にかかれば当然ね!!今度会った時は一対一で倒してやるんだから!」」
「それはどうかしらね……ふふ。」
「紫、あの天人の扱いうまいわね。」
「とても単純だもの。あんなに扱いやすい奴もそういないわ。ふふふ。」
「そうね。……しかし、いつにもまして気持ち悪い笑顔してるわよ? そんなにいいことでもあった?」
「あらあら、酷いこというわね。でも、良いことはあったわよ。幻想郷の住民が一人増えそうなの」
「???」
「ほら、早速疫病神の対策を始めるわよ。」
「はいはい。」
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憑依異変が落ち着いて、紫の家。
「で、結局あの天人が天界を追いだされることになったのも紫様の差し金なんですか?」
「そうねぇ。半分正解で半分間違いって所かしら。」
「半分、とは?」
「私はただ天界に提案しただけ。まぁそういう方向に誘導したのもあるけど。」
「提案?」
「そこから先は自分で考えなさい。藍」
「はぁ……」
そう、私は提案しただけ。
異変を起こしてからの天子は明らかに地上に強く興味を持っていて、逆に天界には興味を失っていた。
しかし、それは天人である天子にとってかなり危険なことだった。
天人の五衰の一つ、”不楽本座” 自分のいるべき場所を楽しめず、離れたく感じること。
まだ天子は天人であることに誇りを持っていたし天界を離れたいとは思っていなかったはずだけれど、
実際、いつ五衰の兆候が出てもおかしくない状態だった。
だから、提案した。
いるべき場所を楽しめないなら、いるべき場所を”幻想郷”にすればいい。
その手段が、天界からの”謹慎”処分だ。
あくまで期限不定なのは、いずれ不良が”更生”するかもしれないと思っているからなのだろう。
とはいえ、天子をこちらによこすのは天人たちも大分渋っていた。だから、天界に危険なラインを示しておいたのだ。
それが、孫悟空の逸話。
あの数年前の天子との戦いの後、
「天子に孫悟空の天界追放の話を沢山してやった。これでもし天子が丹を盗み食いでもしたら、それは地上に行きたいという気持ちの表れだ。」
と天界に伝えておいた。
天界も、甘い人間が多いようだ。天子が五衰で死んでしまうのはどうしても避けたいらしい。
実際天子が金丹をつまみ食いしたと聞いたときは相当焦っていたようだ。いい気味だ。
とはいえ、予想外だったこともある。
天子は別に地上に行きたいとは考えずに盗み食いをしていた。ということだ。
あんなに何回も言ったのに、忘れてしまったのか……
まぁ天界が天子の気持ちに気づけばすぐに謹慎は解かれるだろう。
いつ気づくかはわからないが。
天子はもはや幻想郷の一員になりつつある。
あの子は本当に面白い。逃がしてなるものですか。
そうね……次の一手は……
「紫ぃ! 勝負よ!!」
来た来た
「出会い頭物騒ねぇ。まぁ、待ちなさい天子。あなた、天界を追い出されたんでしょ? 今どこに住んでるの?」
「どこって……いまは針妙丸のところに居候してるわ。いつまでも針妙丸にお世話になるわけにもいかないけど。」
「そう。じゃあ丁度いいわ。
これから謹慎が切れるまでうちの所に住まない?」
「……へっ?」
「ほら、オカルト異変の時にお世話になったしそのお礼ということで。うちの式の料理は美味しいわよ?」
つ か ま え た。
もっとじっくり読んでみたいなと思いました。