「一体、どうしたものだろう」
夕暮れに包み込まれた街中で上白沢慧音は悩んでいた。
最初は近いうちにバレーボール大会が行われるということで日頃の運動不足解消も兼ねて妹紅とあと何人かを誘って参加するつもりだった。が、
「ごめん。慧音。輝夜のチームででるんだ」
あの妹紅が、宿敵の輝夜のチームに所属しているのだ。
私は驚いた。あれほど憎んでいた相手と何があればチームを組んで団体競技をしようというのだ。
「あの、ばかぐや。ある提案をしてきたんだ」
「ほう、それはどんなものなんだ?」
「私が次のバレーボール大会でMVPを取ったら、父親の件について謝罪しよう。という内容だ」
なるほど。確かにそれは面白い。妹紅にとってそれは悲願といってもいいものだ。達成した暁にはいくらあの月の姫とて、謝罪はしなければいけないだろうしそれを反故にするようなことが許されないのも重々承知だろう。
しかし、あのプライドの高い蓬莱山輝夜が謝罪というリスクを犯してまで妹紅をチームに入れるだろうか。
「罠じゃないのか?」
「そうかもしれない。でも、私の悲願をようやく達成できるチャンスなんだ。あの、ばかぐやを絶対土下座させてやる!」
その眼には並々ならぬ決意と闘志が宿っていた。
「そうか、なら・・・・私も手伝おう。一人よりも二人のほうがいいだろう」
「ありがとう。慧音。でも、これは私の問題なんだ。だから一人で蹴りをつけたいし、そうするべきだと思うんだ」
「妹紅・・・・」
友人としては手伝いたい。しかし、それは妹紅の望むところではない。ならば答えは一つ。
「そうか。頑張ってくれ。影ながら応援する」
「うん。ありがとう」
というわけで、慧音は悩んでいるのだ。
まあ、運動不足解消程度のつもりだったから別に参加しなくてもいいのだが慧音としては参加したい。他の知り合いと言えば人間がほとんどだ。まさか妖怪だらけの今度の大会に参加するとは思えない。
「どうしたものだろうか・・・・」
はあ、と思わず溜息をつく。
「なに、溜息ついてんのよ」
すると慧音の後ろから知った声が聞こえる。
「霊夢か」
楽園の素敵に貧乏な巫女が大量の買い物を両手に抱えて、立っていた。
「しかし、博麗神社はいつから巫女服ではなくメイド服を着るようになったんだ?」
ただしメイド服で。
「ああ、これは紅魔館の」
「なぜ、霊夢が紅魔館のメイド服を?」
霊夢はバレーボール大会でレミリアのチームに所属し、その見返りとして現在紅魔館に居候している旨を伝えた。
「なるほど、居候は許すがその分働けということか」
「そ。まあ、こっちの服も動き易いし。家事は嫌いじゃないからいいけどね」
三食食べられるし、と付け加えた。
慧音にとってまたとないチャンスが到来した。
「紅魔館に居候しなければ、霊夢がやっているような家事は引き受けなくていいのか?」
「さあ。私には分からないけど、多分いいんじゃない」
「そうか・・・・」
「それがどうかしたの?」
慧音は事情を話した。
「ふーん。で、レミリアのチームに入ってバレーボールをやりたいと」
「そうだ。すまないが、レミリアに頼んでもらえないだろうか」
「いいわよ。ただ、人数は揃ってるから入れてもらえるかどうかは分からないわよ」
「ああ、構わない。他に当てなどないんだ」
「そ。じゃあついてきて」
霊夢が空にふわりと浮き上がる。
「ああ」
慧音もそれに続く。
二人はこの時間帯でも幻想郷で最も紅い館へと飛び立った。
同じ頃永遠亭にて。
庭に作られたバレーボールコートで妹紅は蓬莱スパークスの練習に参加していた。
アリスが少しずれたパスを正確にトスする。
バシインッ
そして目にも止まらぬ速さでボールがコートに叩きつけられる。
「バレーはパワーだぜ!」
魔理沙が着地した後どうだという表情で妹紅を見る。
「アンタ、人間だよね?」
「魔法使いと言いたいところだが、種族は確かに人間だぜ」
それだけではない。
「サーブいきま~す」
優曇華がエンドラインから、バレーの中で一般的なフローターサーブを打つ。
ボールはネットを越えるまでは通常の軌道、緩やかな放物線を描いていた。
ポスンッ
「やるね。鈴仙ちゃん」
しかし、レシーブに入っていたてゐの前にまるで地面から引っ張られたかのように落ちた。
更に
「ほら、魔理沙。次は私が打つからトス上げなさいよ」
「分かったぜ」
アリスが魔理沙にパスを出す。それを魔理沙が、トスする。
アリスは流れるよなフォームでレフトから助走に入り、右腕を引く。
しかしボールはまだ少し高い所にある。
タイミングがずれた。妹紅はそう思った。
ところがアリスはそこから引いた右腕をそのまま前に出し左腕を引きなおした。
細い左腕が大きくしなりボールを捉える。
バシッ
魔理沙ほどの威力は無いがコートの隅に鋭いスパイクが突き刺さる。
「ふふん。パワーは私の方が上だな」
「トスがもう少し正確ならいいのが打てたんだけどね」
「うぐ。まあいいじゃねーか。本番トスすんのは私じゃなくててゐなんだから」
妹紅は耳を疑った。てゐだって。アリスのさっきのトスをしてもセッターにはなれないのか。
「どうかしら。もこたん」
永遠亭軍団の技術の高さに唖然としている妹紅に誰かが話しかける。まあ、この口調からして妹紅が思い当たるのは一人しかいないが。
「輝夜」
「蓬莱スパークスのレベルの高さに驚いた?」
「・・・・・」
なにかあるだろうと予想はしていたが、それを上回る結果が目に前にはあった。それはまさしくMVPをとる為にこの大会に参加する妹紅にとっては絶望すら与えるものだ。
「もうメンバー登録までしちゃったけど参加しなくてもいいのよ」
なるほど、確かにそれも選択肢としては有り得る。今素人同然の妹紅がここから大会まで練習を積んだとしてもたかが知れているだろう。今のメンバーに及ぶかは甚だ疑問だ。それに、セッター部門、センター部門、ライト部門、レフト部門、リベロ部門の5つの部門を永遠亭が独占するとは思えない。紅魔館、白玉楼、妖怪の山も参加するうえに、噂では天界、地霊殿、更に命蓮寺まで参加するらしい。その中でそれぞれのポジションで一番いいプレーをした者がMVPを取ることを考えるとどれほど困難な道のりになろうか。しかし
「するわよ。絶対MVPとって土下座させてやる」
それしきのことでは妹紅の闘志を消すには至らない。
「ふふふ。頼もしいわね。ま、活躍を期待するわ」
輝夜は、黒髪を揺らして屋敷の方へと歩いていった。
「絶対、取ってやる」
妹紅は拳を握り締めた。
「ふふふ。面白くなってきたわ」
「彼女のことですか?」
ご機嫌な輝夜に永琳が尋ねる。
「ええ。思った通りの反応でね。やっぱりもこたんは面白いわ」
「そうですか」
「どれくらいの潜在能力を持ってるかは分かんないけどあのやる気を見る限り結構強くなるんじゃないかしら」
「ほほう。それは楽しみですね」
永琳がボールを輝夜にパスする。
「ええ。ま、永琳には勝てないだろうけど」
輝夜は器用にオーバーハンドパスで返す。
「それはまだ分からないでしょう」
「器が違うわ」
「お褒め頂き光栄ですっ」
永琳が輝夜のトスしたボールを立った状態で打つ。
「おっとっとと・・・・」
少しバランスを崩しつつも輝夜はそれを丁寧にレシーブする。
「流石ですね。一応強めに打ったんですが」
「ま、レシーブは好きだからね」
「サーブもそうですよね」
永琳が柔らかくトスを上げる。
「そうよっと」
それを永琳と同様に打ち返す。
「ポジションはどうするつもりで?」
永琳がそのボールを苦も無くレシーブする。
「う~ん・・・・。確実なのはレフトが永琳と、もこたん。ライトが魔理沙ってことぐらいね」
「姫様は出ないつもりですか?」
「出るとしてもリベロかピンチサーバーね。スパイク嫌いだし」
「そうですかっと」
永琳が再びボールを打つ。
「はいっ」
難なくレシーブする。
「だから監督やるんだけどね。出なかったら暇だし」
「なるほど」
「ねえ。永琳は私は試合に出た方がいいと思う?」
永琳は少し間を置き
「戦力的に考えれば姫様が出た方がより高い確率で上位に食い込めるでしょうから出るべきだと思います。加えて適度な運動は身体に良いです。ただ、最終的には姫様のしたいようにするのがいいと思います」
と答えた。
「そう・・・・」
「そういえば・・・・紅魔館が参加を決めたようです」
永琳はトスを上げる。
バンッ
輝夜がボールを思いっきり打つ。
ボールは永琳の立っている所とは全く見当違いの方向へ飛んでいく。
「ふ~ん。あのスカーレットが・・・・」
ズザザザザッ
永琳はそのボールを頭から飛び込んでレシーブする。
「私達が起こした異変のときは随分やってくれただけでなく、こないだの宴会でも・・・・。そろそろ借りは返したいところね。構成メンバーは?」
レシーブした後素早く回転して永琳は立ち上がる。
「はい。紅魔館の主要な面々全員と神社の巫女、死神と思われます。あと、寺子屋の半獣が入るかどうか微妙な所だという情報が入ってきています」
「そう・・・・」
永琳の上げたボールが所在無さげに庭を転がっている。
「永琳」
「はい」
輝夜は永遠亭の裏側に視線を向ける。
そこには巨大な足場が組まれており、何かを削る音や何かを叩く音が聞こえてくる。
「室内練習場の造営につぎ込むイナバ達を増やして。再来週までに完成させたいわ」
「はい」
「それと、紅魔館の連中を練習試合に誘って。二週間後にやるって。大至急」
「は。では」
永琳は工事現場へと歩き出す。
(せっかくの弾幕ごっこや妹紅との殺し合い以外のまとまな運動の機会なのだから姫様には是非とも運動してもらわないと。練習試合は少し予想外だけど)
そんなことを思いながら。
翌日の昼下がり。食堂で寛ぐ紅魔館の面々+αに一通の手紙が届いた。
「練習試合のお誘い・・・・紅魔館様。」
パチュリーが手紙に目を通す。
「どこからよ?」
霊夢が言う。
「蓬莱スパークスより。永遠亭からね」
「チーム結成して次の日に挑戦状ですか~」
美鈴が暢気そうに言う。
「練習始めて少し経つくらいまでそういうのはこないと思ってたんだけどね」
「パチュリー様としてはどうするつもりで?」
咲夜が紅茶を注ぎながら尋ねる。
「試合を断って練習をしたいところね。二週間後っていっても全然練習時間は足りないだろうし。それじゃあ勝負にならないんじゃないかしら。挑戦状出してくるってことはそれなりに練習してるみたいだし」
パチュリーの言うとおりまだまともに練習してないようなチームが二週間で強くなるにしても限界がある。試合をするレベルにはいたらないだろう。
誰もが練習試合の誘いを断ると思ったそのとき
「いいじゃない。多少のハンデぐらい」
食堂の入り口からいつもならここにいないはずの自信に満ちた声が聞こえた。
「あら、レミィ。今日は早いのね」
「ええ。河童が今日コートを庭に完成させるから眠れなくて」
なるほど確かに眼の下に隈ができている。
「そんな遠足前の小学生じゃないんだから」
「う~。ま、それはいいとしてパチェ、あたしは試合したいわ。」
「あまりいい選択肢じゃないわよ」
「逃げるよりはマシよ。それにどんな強敵が相手でもみんなで力を合わせればきっと勝てるわ」
ビシッと言い切る。
この瞬間レミリアは輝いていた。
(ふ~ん。みんなで・・・・ね。レミィも館の主としての自覚が芽生えてきたのかしら。だとしたら・・・・)
「確かにそれは一理あるわ。ただ今回は勝てるか確率は低いわ」
「ふふん。だからこそよ。そんな状況でも最後に笑うのは私たち紅魔ビクトリーズよ!」
ババーンと効果音がつきそうな勢いで言う。
「ビクトリーズって何よ?」
「決まってるじゃない。この紅魔館のチーム名よ。いいでしょ?」
霊夢に対しレミリアは胸を張って答える。しかし
「安直過ぎじゃないかしら」
本人には予想外のバッシング。更に
「お嬢様。申し訳ありませんがそれはわたしも同感です」
「あたいもだね。センスが無い」
「入れてもらってつべこべ言うのはよくないかもしれないが。私もこれは・・・・」
「レミィ。もう少しなんか無いの?」
バッシングが来る。
「な・・・・でももう、その名前で登録用紙出しちゃったし」
「「「「「え~~~~~~~」」」」」
「い、いいでしょ。もう決まったことよ。このスカーレットの吸血鬼に間違いなんて無いわ」
先程の「みんなで」というフレーズが嘘のような振る舞いである。
(さっきのは嘘?でもレミィはそんな嘘つくような・・・・)
パチュリーはふとレミリアが後ろ手に持っている本を見やる。
「週刊少年ジャ・プ」
なるほど。道理で「みんなで」なわけだ。
それから時間が過ぎ夜になった。
「さあ。記念すべきビクトリーズの初練習。気合入れていくわよ~」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「な、何よ。盛り上がんなさいよ」
全員が気まずそうにレミリアを見る。
「わ、私だって物凄い恥ずかしいのよ!こんな面積の少ないものを履くなんて・・・・夜の帝王を何だと思ってんの!」
「「「「「・・・・・・」」」」」
レミリア・スカーレットは現在、河童達が必死で作った屋外コートのスポットライトに晒されている。
体操服にブルマ姿で
いくら吸血鬼とはいえ普段着で運動するのはいささかやりにくいだろう。ということで運動用の服と靴を咲夜が買いにいくことになった。
まずは人里に行ったのだが、靴は良さそうな物が手に入ったが運動着は既に売り切れとのことだった。
やむを得ず男店主が営む売る気があるのか無いのかわからない道具屋を訪れたところお目当てのものは無事見つけた。
しかし、ビクトリーズのメンバー分の運動着となると上は足りるのだが下はショートパンツだけでは足りず、仕方なくブルマを一着購入したのだ。
そして、メンバー全員で泣く子も黙るガチじゃんけんをしたところレミリアガ敗れ、ブルマを履くことになったのだ。
「申し訳ありませんお嬢様大変似合っ・・・いえなんでもありません」
「まあいいわ。河童に頼んだユニフォームと練習着ができるまでの辛抱だし。それに動き易い」
不満そうではあるが取り敢えずレミリアは落ち着く。
「じゃあ、時間も勿体無いしそろそろ始めない?」
普段着の監督パチュリーが言う。
「そうね。じゃあなにやればいいの?」
「ええと・・・・」
パチュリーは「サルでも分かるバレーボール入門 ボーダー出版」を取り出し読み上げる。
「まずは準備運動。テキトーに走ってみよう。体があったまってくるまで」
「分かったわ」
レミリアはそう言うと全速力で走り出す。
「お姉~様、私も~」
フランがそれを追う。
「私はこっちのほうがあったまるので~」
美鈴は太極拳の型を始め
「ふ~。面倒臭いわね」
霊夢はジョギングほどのペースで走り出す。
「あたいも、まあ、テキトーに」
「私も人間だからそこそこで」
「私も体力はちょっと・・・・」
「運動不足だから最初はゆっくりめがいいだろうな」
それに残りが続く。
「大丈夫かしら・・・・」
その後もボーダー出版の本に即して順調にメニューが進み、みんな(主にスカーレット姉妹)お待ちかねのスパイク練習の時間が来た。
「セッターにボールをパス、セッターがそれをトスしてスパイカーがそれを打つ。まずは基本のセンターオープンからやってみよう。センターオープンとはちょうど真ん中くらいから打つスパイクのこと」
「私が一番ね」
レミリアがボールを持って進み出る。
「いくわよ」
霊夢にボールをパスし、少しずれたそれを霊夢がトスする。
レミリアは右、左、右、左と足を踏み出して助走をつけ地面を蹴り両手を振り上げた。
バシンッ
振り下ろされた手によってボールは地面に叩きつけられる。
「お嬢様素晴らしいです。白くて細い太も・・・・いいえ。スパイクが」
「わたしだってー。負けないよ~」
フランは霊夢にパスを出し、助走を始める。
「どっかーん」
バシイイイイ一
コート内の芝生が一部抉れる。とんでもない威力だ。
「じゃ、次は私が」
いつもなら最後まで待っている美鈴が珍しく名乗り出る。
(よっぽど自信があるに違いない)
周りの誰もがそう思った。
美鈴が霊夢にパスを出し、それを霊夢がトスする。
ズバンッ
先程の二人に負けないほどの超高速のスパイクがアタックライン上に着弾する。
凄いぞ!かっこい~ぞ美鈴~!
「あのね美鈴・・・・」
「ほえ。どうかしましたかパチュリー様?」
「私の知る限り、スパイクは手で打つものよ」
スパイクをオーバーヘッドキックで打つなんて!
「そうなんですか?でもこっちのほうが強いですよ」
逆立ちで着地した状態で美鈴は答える。
「まあ、そうだけども・・・・」
「ならいいじゃないですか。ルール違反じゃないですし」
美鈴はそのまま腕を使って直立の状態に戻る。
「まあ、そう、なのかしら?」
釈然としない感じでパチュリーは言う。
「お~。やっぱり凄いですね~紅魔館」
文は紅魔館の庭の茂みに隠れてビクトリーズの練習を見ていた。
「神様の言うとおり入念に偵察するべきですね」
センターオープンの後はポジションごとにスパイクを打ってスパイク練習は終わった。途中で美鈴がレミリアのスパイクを被弾したり、フランのスパイクを被弾したりしていたが些細な出来事に過ぎない。
休憩の後レシーブ練習が始まる。
「じゃ、私が最初ね」
またしてもレミリアが先陣を切る。
「いくわよ~」
向こう側のコートから霊夢の緩やかなサーブが飛んでくる。
「楽勝ね」
レミリアは腰を低くしてボールの真正面に入る。余裕の表情だ。
ポスッ
タンタンタン・・・・
捉えたはずのボールはネット付近の本来セッターが居る所とは見当違いの方向へ飛んでいった。
「もう一回よ!さっきのは・・・・そう、たまたまよ」
レミリアは自分に言い聞かせるように言うと再び構える。
「いくわよ~」
霊夢が何の変哲も無いサーブを打つ。
ポスッ
タンタンタン・・・・
またしてもボールがあらぬ方向へ飛んでいく。
その場には非常に気まずい空気が流れ始める。
「レミィ、誰しも向き不向きというものがあるわ。だから仕方ないわ」
「ち、違うわ。最強の種族の吸血鬼である私がバレーボールごときに苦戦するはず無いわ」
「まあ、そうだとしても取り敢えず他の面子の力も見たいから一回出て」
「・・・・分かったわ」
レミリアはいつも以上に小さくなりながらコートから出る。
「じゃあ、次はわたしだねー」
フランがコートへと入る。
「いくわよー」
霊夢がサーブを打つ。
フランドールはボールの正面に入ると
「どっかーん」
腕をフルスイングした。
ドガパアアン
ボールは紅魔館にぶつかり破裂した。
「も・・・・もういいわ。次の人」
(フラン(フランドール様)にレシーブをさせてはいけない)
この場にいる全員がそう思ったのは言うまでもない。
その後にレシーブした人?のうち咲夜、慧音、小悪魔は安定していたが他はレミリアと似たり寄ったりだった。
(明日からは守備中心の練習かしらね)
パチュリーはそんなことを思いながら練習を見ていた。
その後も色々と問題を起こしながら紅魔ビクトリーズの初練習は死者辛うじて0名で終えた。
「いや~。いいものが見れましたね~。これは神様に即報告、でもって練習試合も要チェックですね~。あの姉妹のパワーは本当に凄い」
文はそう言って朝陽が昇りかけている空へと飛び立っつ。
夕暮れに包み込まれた街中で上白沢慧音は悩んでいた。
最初は近いうちにバレーボール大会が行われるということで日頃の運動不足解消も兼ねて妹紅とあと何人かを誘って参加するつもりだった。が、
「ごめん。慧音。輝夜のチームででるんだ」
あの妹紅が、宿敵の輝夜のチームに所属しているのだ。
私は驚いた。あれほど憎んでいた相手と何があればチームを組んで団体競技をしようというのだ。
「あの、ばかぐや。ある提案をしてきたんだ」
「ほう、それはどんなものなんだ?」
「私が次のバレーボール大会でMVPを取ったら、父親の件について謝罪しよう。という内容だ」
なるほど。確かにそれは面白い。妹紅にとってそれは悲願といってもいいものだ。達成した暁にはいくらあの月の姫とて、謝罪はしなければいけないだろうしそれを反故にするようなことが許されないのも重々承知だろう。
しかし、あのプライドの高い蓬莱山輝夜が謝罪というリスクを犯してまで妹紅をチームに入れるだろうか。
「罠じゃないのか?」
「そうかもしれない。でも、私の悲願をようやく達成できるチャンスなんだ。あの、ばかぐやを絶対土下座させてやる!」
その眼には並々ならぬ決意と闘志が宿っていた。
「そうか、なら・・・・私も手伝おう。一人よりも二人のほうがいいだろう」
「ありがとう。慧音。でも、これは私の問題なんだ。だから一人で蹴りをつけたいし、そうするべきだと思うんだ」
「妹紅・・・・」
友人としては手伝いたい。しかし、それは妹紅の望むところではない。ならば答えは一つ。
「そうか。頑張ってくれ。影ながら応援する」
「うん。ありがとう」
というわけで、慧音は悩んでいるのだ。
まあ、運動不足解消程度のつもりだったから別に参加しなくてもいいのだが慧音としては参加したい。他の知り合いと言えば人間がほとんどだ。まさか妖怪だらけの今度の大会に参加するとは思えない。
「どうしたものだろうか・・・・」
はあ、と思わず溜息をつく。
「なに、溜息ついてんのよ」
すると慧音の後ろから知った声が聞こえる。
「霊夢か」
楽園の素敵に貧乏な巫女が大量の買い物を両手に抱えて、立っていた。
「しかし、博麗神社はいつから巫女服ではなくメイド服を着るようになったんだ?」
ただしメイド服で。
「ああ、これは紅魔館の」
「なぜ、霊夢が紅魔館のメイド服を?」
霊夢はバレーボール大会でレミリアのチームに所属し、その見返りとして現在紅魔館に居候している旨を伝えた。
「なるほど、居候は許すがその分働けということか」
「そ。まあ、こっちの服も動き易いし。家事は嫌いじゃないからいいけどね」
三食食べられるし、と付け加えた。
慧音にとってまたとないチャンスが到来した。
「紅魔館に居候しなければ、霊夢がやっているような家事は引き受けなくていいのか?」
「さあ。私には分からないけど、多分いいんじゃない」
「そうか・・・・」
「それがどうかしたの?」
慧音は事情を話した。
「ふーん。で、レミリアのチームに入ってバレーボールをやりたいと」
「そうだ。すまないが、レミリアに頼んでもらえないだろうか」
「いいわよ。ただ、人数は揃ってるから入れてもらえるかどうかは分からないわよ」
「ああ、構わない。他に当てなどないんだ」
「そ。じゃあついてきて」
霊夢が空にふわりと浮き上がる。
「ああ」
慧音もそれに続く。
二人はこの時間帯でも幻想郷で最も紅い館へと飛び立った。
同じ頃永遠亭にて。
庭に作られたバレーボールコートで妹紅は蓬莱スパークスの練習に参加していた。
アリスが少しずれたパスを正確にトスする。
バシインッ
そして目にも止まらぬ速さでボールがコートに叩きつけられる。
「バレーはパワーだぜ!」
魔理沙が着地した後どうだという表情で妹紅を見る。
「アンタ、人間だよね?」
「魔法使いと言いたいところだが、種族は確かに人間だぜ」
それだけではない。
「サーブいきま~す」
優曇華がエンドラインから、バレーの中で一般的なフローターサーブを打つ。
ボールはネットを越えるまでは通常の軌道、緩やかな放物線を描いていた。
ポスンッ
「やるね。鈴仙ちゃん」
しかし、レシーブに入っていたてゐの前にまるで地面から引っ張られたかのように落ちた。
更に
「ほら、魔理沙。次は私が打つからトス上げなさいよ」
「分かったぜ」
アリスが魔理沙にパスを出す。それを魔理沙が、トスする。
アリスは流れるよなフォームでレフトから助走に入り、右腕を引く。
しかしボールはまだ少し高い所にある。
タイミングがずれた。妹紅はそう思った。
ところがアリスはそこから引いた右腕をそのまま前に出し左腕を引きなおした。
細い左腕が大きくしなりボールを捉える。
バシッ
魔理沙ほどの威力は無いがコートの隅に鋭いスパイクが突き刺さる。
「ふふん。パワーは私の方が上だな」
「トスがもう少し正確ならいいのが打てたんだけどね」
「うぐ。まあいいじゃねーか。本番トスすんのは私じゃなくててゐなんだから」
妹紅は耳を疑った。てゐだって。アリスのさっきのトスをしてもセッターにはなれないのか。
「どうかしら。もこたん」
永遠亭軍団の技術の高さに唖然としている妹紅に誰かが話しかける。まあ、この口調からして妹紅が思い当たるのは一人しかいないが。
「輝夜」
「蓬莱スパークスのレベルの高さに驚いた?」
「・・・・・」
なにかあるだろうと予想はしていたが、それを上回る結果が目に前にはあった。それはまさしくMVPをとる為にこの大会に参加する妹紅にとっては絶望すら与えるものだ。
「もうメンバー登録までしちゃったけど参加しなくてもいいのよ」
なるほど、確かにそれも選択肢としては有り得る。今素人同然の妹紅がここから大会まで練習を積んだとしてもたかが知れているだろう。今のメンバーに及ぶかは甚だ疑問だ。それに、セッター部門、センター部門、ライト部門、レフト部門、リベロ部門の5つの部門を永遠亭が独占するとは思えない。紅魔館、白玉楼、妖怪の山も参加するうえに、噂では天界、地霊殿、更に命蓮寺まで参加するらしい。その中でそれぞれのポジションで一番いいプレーをした者がMVPを取ることを考えるとどれほど困難な道のりになろうか。しかし
「するわよ。絶対MVPとって土下座させてやる」
それしきのことでは妹紅の闘志を消すには至らない。
「ふふふ。頼もしいわね。ま、活躍を期待するわ」
輝夜は、黒髪を揺らして屋敷の方へと歩いていった。
「絶対、取ってやる」
妹紅は拳を握り締めた。
「ふふふ。面白くなってきたわ」
「彼女のことですか?」
ご機嫌な輝夜に永琳が尋ねる。
「ええ。思った通りの反応でね。やっぱりもこたんは面白いわ」
「そうですか」
「どれくらいの潜在能力を持ってるかは分かんないけどあのやる気を見る限り結構強くなるんじゃないかしら」
「ほほう。それは楽しみですね」
永琳がボールを輝夜にパスする。
「ええ。ま、永琳には勝てないだろうけど」
輝夜は器用にオーバーハンドパスで返す。
「それはまだ分からないでしょう」
「器が違うわ」
「お褒め頂き光栄ですっ」
永琳が輝夜のトスしたボールを立った状態で打つ。
「おっとっとと・・・・」
少しバランスを崩しつつも輝夜はそれを丁寧にレシーブする。
「流石ですね。一応強めに打ったんですが」
「ま、レシーブは好きだからね」
「サーブもそうですよね」
永琳が柔らかくトスを上げる。
「そうよっと」
それを永琳と同様に打ち返す。
「ポジションはどうするつもりで?」
永琳がそのボールを苦も無くレシーブする。
「う~ん・・・・。確実なのはレフトが永琳と、もこたん。ライトが魔理沙ってことぐらいね」
「姫様は出ないつもりですか?」
「出るとしてもリベロかピンチサーバーね。スパイク嫌いだし」
「そうですかっと」
永琳が再びボールを打つ。
「はいっ」
難なくレシーブする。
「だから監督やるんだけどね。出なかったら暇だし」
「なるほど」
「ねえ。永琳は私は試合に出た方がいいと思う?」
永琳は少し間を置き
「戦力的に考えれば姫様が出た方がより高い確率で上位に食い込めるでしょうから出るべきだと思います。加えて適度な運動は身体に良いです。ただ、最終的には姫様のしたいようにするのがいいと思います」
と答えた。
「そう・・・・」
「そういえば・・・・紅魔館が参加を決めたようです」
永琳はトスを上げる。
バンッ
輝夜がボールを思いっきり打つ。
ボールは永琳の立っている所とは全く見当違いの方向へ飛んでいく。
「ふ~ん。あのスカーレットが・・・・」
ズザザザザッ
永琳はそのボールを頭から飛び込んでレシーブする。
「私達が起こした異変のときは随分やってくれただけでなく、こないだの宴会でも・・・・。そろそろ借りは返したいところね。構成メンバーは?」
レシーブした後素早く回転して永琳は立ち上がる。
「はい。紅魔館の主要な面々全員と神社の巫女、死神と思われます。あと、寺子屋の半獣が入るかどうか微妙な所だという情報が入ってきています」
「そう・・・・」
永琳の上げたボールが所在無さげに庭を転がっている。
「永琳」
「はい」
輝夜は永遠亭の裏側に視線を向ける。
そこには巨大な足場が組まれており、何かを削る音や何かを叩く音が聞こえてくる。
「室内練習場の造営につぎ込むイナバ達を増やして。再来週までに完成させたいわ」
「はい」
「それと、紅魔館の連中を練習試合に誘って。二週間後にやるって。大至急」
「は。では」
永琳は工事現場へと歩き出す。
(せっかくの弾幕ごっこや妹紅との殺し合い以外のまとまな運動の機会なのだから姫様には是非とも運動してもらわないと。練習試合は少し予想外だけど)
そんなことを思いながら。
翌日の昼下がり。食堂で寛ぐ紅魔館の面々+αに一通の手紙が届いた。
「練習試合のお誘い・・・・紅魔館様。」
パチュリーが手紙に目を通す。
「どこからよ?」
霊夢が言う。
「蓬莱スパークスより。永遠亭からね」
「チーム結成して次の日に挑戦状ですか~」
美鈴が暢気そうに言う。
「練習始めて少し経つくらいまでそういうのはこないと思ってたんだけどね」
「パチュリー様としてはどうするつもりで?」
咲夜が紅茶を注ぎながら尋ねる。
「試合を断って練習をしたいところね。二週間後っていっても全然練習時間は足りないだろうし。それじゃあ勝負にならないんじゃないかしら。挑戦状出してくるってことはそれなりに練習してるみたいだし」
パチュリーの言うとおりまだまともに練習してないようなチームが二週間で強くなるにしても限界がある。試合をするレベルにはいたらないだろう。
誰もが練習試合の誘いを断ると思ったそのとき
「いいじゃない。多少のハンデぐらい」
食堂の入り口からいつもならここにいないはずの自信に満ちた声が聞こえた。
「あら、レミィ。今日は早いのね」
「ええ。河童が今日コートを庭に完成させるから眠れなくて」
なるほど確かに眼の下に隈ができている。
「そんな遠足前の小学生じゃないんだから」
「う~。ま、それはいいとしてパチェ、あたしは試合したいわ。」
「あまりいい選択肢じゃないわよ」
「逃げるよりはマシよ。それにどんな強敵が相手でもみんなで力を合わせればきっと勝てるわ」
ビシッと言い切る。
この瞬間レミリアは輝いていた。
(ふ~ん。みんなで・・・・ね。レミィも館の主としての自覚が芽生えてきたのかしら。だとしたら・・・・)
「確かにそれは一理あるわ。ただ今回は勝てるか確率は低いわ」
「ふふん。だからこそよ。そんな状況でも最後に笑うのは私たち紅魔ビクトリーズよ!」
ババーンと効果音がつきそうな勢いで言う。
「ビクトリーズって何よ?」
「決まってるじゃない。この紅魔館のチーム名よ。いいでしょ?」
霊夢に対しレミリアは胸を張って答える。しかし
「安直過ぎじゃないかしら」
本人には予想外のバッシング。更に
「お嬢様。申し訳ありませんがそれはわたしも同感です」
「あたいもだね。センスが無い」
「入れてもらってつべこべ言うのはよくないかもしれないが。私もこれは・・・・」
「レミィ。もう少しなんか無いの?」
バッシングが来る。
「な・・・・でももう、その名前で登録用紙出しちゃったし」
「「「「「え~~~~~~~」」」」」
「い、いいでしょ。もう決まったことよ。このスカーレットの吸血鬼に間違いなんて無いわ」
先程の「みんなで」というフレーズが嘘のような振る舞いである。
(さっきのは嘘?でもレミィはそんな嘘つくような・・・・)
パチュリーはふとレミリアが後ろ手に持っている本を見やる。
「週刊少年ジャ・プ」
なるほど。道理で「みんなで」なわけだ。
それから時間が過ぎ夜になった。
「さあ。記念すべきビクトリーズの初練習。気合入れていくわよ~」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「な、何よ。盛り上がんなさいよ」
全員が気まずそうにレミリアを見る。
「わ、私だって物凄い恥ずかしいのよ!こんな面積の少ないものを履くなんて・・・・夜の帝王を何だと思ってんの!」
「「「「「・・・・・・」」」」」
レミリア・スカーレットは現在、河童達が必死で作った屋外コートのスポットライトに晒されている。
体操服にブルマ姿で
いくら吸血鬼とはいえ普段着で運動するのはいささかやりにくいだろう。ということで運動用の服と靴を咲夜が買いにいくことになった。
まずは人里に行ったのだが、靴は良さそうな物が手に入ったが運動着は既に売り切れとのことだった。
やむを得ず男店主が営む売る気があるのか無いのかわからない道具屋を訪れたところお目当てのものは無事見つけた。
しかし、ビクトリーズのメンバー分の運動着となると上は足りるのだが下はショートパンツだけでは足りず、仕方なくブルマを一着購入したのだ。
そして、メンバー全員で泣く子も黙るガチじゃんけんをしたところレミリアガ敗れ、ブルマを履くことになったのだ。
「申し訳ありませんお嬢様大変似合っ・・・いえなんでもありません」
「まあいいわ。河童に頼んだユニフォームと練習着ができるまでの辛抱だし。それに動き易い」
不満そうではあるが取り敢えずレミリアは落ち着く。
「じゃあ、時間も勿体無いしそろそろ始めない?」
普段着の監督パチュリーが言う。
「そうね。じゃあなにやればいいの?」
「ええと・・・・」
パチュリーは「サルでも分かるバレーボール入門 ボーダー出版」を取り出し読み上げる。
「まずは準備運動。テキトーに走ってみよう。体があったまってくるまで」
「分かったわ」
レミリアはそう言うと全速力で走り出す。
「お姉~様、私も~」
フランがそれを追う。
「私はこっちのほうがあったまるので~」
美鈴は太極拳の型を始め
「ふ~。面倒臭いわね」
霊夢はジョギングほどのペースで走り出す。
「あたいも、まあ、テキトーに」
「私も人間だからそこそこで」
「私も体力はちょっと・・・・」
「運動不足だから最初はゆっくりめがいいだろうな」
それに残りが続く。
「大丈夫かしら・・・・」
その後もボーダー出版の本に即して順調にメニューが進み、みんな(主にスカーレット姉妹)お待ちかねのスパイク練習の時間が来た。
「セッターにボールをパス、セッターがそれをトスしてスパイカーがそれを打つ。まずは基本のセンターオープンからやってみよう。センターオープンとはちょうど真ん中くらいから打つスパイクのこと」
「私が一番ね」
レミリアがボールを持って進み出る。
「いくわよ」
霊夢にボールをパスし、少しずれたそれを霊夢がトスする。
レミリアは右、左、右、左と足を踏み出して助走をつけ地面を蹴り両手を振り上げた。
バシンッ
振り下ろされた手によってボールは地面に叩きつけられる。
「お嬢様素晴らしいです。白くて細い太も・・・・いいえ。スパイクが」
「わたしだってー。負けないよ~」
フランは霊夢にパスを出し、助走を始める。
「どっかーん」
バシイイイイ一
コート内の芝生が一部抉れる。とんでもない威力だ。
「じゃ、次は私が」
いつもなら最後まで待っている美鈴が珍しく名乗り出る。
(よっぽど自信があるに違いない)
周りの誰もがそう思った。
美鈴が霊夢にパスを出し、それを霊夢がトスする。
ズバンッ
先程の二人に負けないほどの超高速のスパイクがアタックライン上に着弾する。
凄いぞ!かっこい~ぞ美鈴~!
「あのね美鈴・・・・」
「ほえ。どうかしましたかパチュリー様?」
「私の知る限り、スパイクは手で打つものよ」
スパイクをオーバーヘッドキックで打つなんて!
「そうなんですか?でもこっちのほうが強いですよ」
逆立ちで着地した状態で美鈴は答える。
「まあ、そうだけども・・・・」
「ならいいじゃないですか。ルール違反じゃないですし」
美鈴はそのまま腕を使って直立の状態に戻る。
「まあ、そう、なのかしら?」
釈然としない感じでパチュリーは言う。
「お~。やっぱり凄いですね~紅魔館」
文は紅魔館の庭の茂みに隠れてビクトリーズの練習を見ていた。
「神様の言うとおり入念に偵察するべきですね」
センターオープンの後はポジションごとにスパイクを打ってスパイク練習は終わった。途中で美鈴がレミリアのスパイクを被弾したり、フランのスパイクを被弾したりしていたが些細な出来事に過ぎない。
休憩の後レシーブ練習が始まる。
「じゃ、私が最初ね」
またしてもレミリアが先陣を切る。
「いくわよ~」
向こう側のコートから霊夢の緩やかなサーブが飛んでくる。
「楽勝ね」
レミリアは腰を低くしてボールの真正面に入る。余裕の表情だ。
ポスッ
タンタンタン・・・・
捉えたはずのボールはネット付近の本来セッターが居る所とは見当違いの方向へ飛んでいった。
「もう一回よ!さっきのは・・・・そう、たまたまよ」
レミリアは自分に言い聞かせるように言うと再び構える。
「いくわよ~」
霊夢が何の変哲も無いサーブを打つ。
ポスッ
タンタンタン・・・・
またしてもボールがあらぬ方向へ飛んでいく。
その場には非常に気まずい空気が流れ始める。
「レミィ、誰しも向き不向きというものがあるわ。だから仕方ないわ」
「ち、違うわ。最強の種族の吸血鬼である私がバレーボールごときに苦戦するはず無いわ」
「まあ、そうだとしても取り敢えず他の面子の力も見たいから一回出て」
「・・・・分かったわ」
レミリアはいつも以上に小さくなりながらコートから出る。
「じゃあ、次はわたしだねー」
フランがコートへと入る。
「いくわよー」
霊夢がサーブを打つ。
フランドールはボールの正面に入ると
「どっかーん」
腕をフルスイングした。
ドガパアアン
ボールは紅魔館にぶつかり破裂した。
「も・・・・もういいわ。次の人」
(フラン(フランドール様)にレシーブをさせてはいけない)
この場にいる全員がそう思ったのは言うまでもない。
その後にレシーブした人?のうち咲夜、慧音、小悪魔は安定していたが他はレミリアと似たり寄ったりだった。
(明日からは守備中心の練習かしらね)
パチュリーはそんなことを思いながら練習を見ていた。
その後も色々と問題を起こしながら紅魔ビクトリーズの初練習は死者辛うじて0名で終えた。
「いや~。いいものが見れましたね~。これは神様に即報告、でもって練習試合も要チェックですね~。あの姉妹のパワーは本当に凄い」
文はそう言って朝陽が昇りかけている空へと飛び立っつ。
回転レシーブした永琳が立ち上がる瞬間自分の髪の毛踏んで首がありえない方向に曲がったらやだなーとか思ってましたww
まだまだ他のチームが出てくるまでは長いなー。でも期待して待ってます!
今後の両勢力の扱いがどうなっていくのか楽しみにしてます。
そのオチは考えに有りませんでした。確かに永琳だとできちゃうんですよね。
更新は遅めですがご期待に沿えるよう尽力しますので今後もよろしくお願いします。
>9様
まだそうなるかは断定できませんが魔理沙と妹紅には頑張って貰う予定です。更新は遅めですが今後もよろしくお願いします。
お嬢様もそういうものが読みたいお年頃なのか。
次回作はついに試合ですね。どんな展開になるか楽しみにして待ってますよ。
ありがとうございます。試合ではどういう結果にするかはまだ迷ってますがご期待に沿えるよう努力します。