Coolier - 新生・東方創想話

失なはれる物語。 零・壱

2010/09/20 15:45:43
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私が月に囚われているように
彼女は月に縛られていた

月によって、私たちは否応にも、変化を与えられた

変化を 望み 憂い 呪う

だからこそ、似たような私たちだからこそ、

二人は、お互いに“おわりのないえいえん”を求めていた


……そんなもの、何処にも存在しないというのに







零. はじまりのおわり。


昨日守ってたナニカをね 明日は壊してしまうけど 
昨日交わした約束もね 明日は破ってしまうけど
RADWIMPS[セツナレンサ]より



始まるのは失われる物語、予定調和の物語。そのなかで、私は読み手でも、ましてや語り手でもない。
私は…ただの登場人物だ。物語のなかで、役に踊るしかない存在。だから今から語るものは、本に挟まっている広告程度のものだと思ってくれて構わない。既に役が決まった中身が、作者に対して愚痴を垂れているようなものだから。
そう、これは何の意味もない吐露でさえもない、私の昔話で現在の話。憤りも悔しさも悲しみも混ざることで無になった話。
昔、私のことを取材した烏天狗がいたんだ。可笑しいものだ、私は人間の里に住み人間に味方する存在だというのに妖怪の妖怪による妖怪のための新聞を作る彼女は私を取材したのだ。最後までそのことが気になって、取材を終えて帰り支度の最中だった烏天狗、射命丸文に私は問いかけた。
「――貴方は妖怪なのにこんな人間の事を記事にするのかしら」
私の問いかけに、文は閉じかけた文花帳をもう一度開きながら呆れたように答えを返した。
「――今回は基本的に貴方の事を記事にしただけに過ぎないのです」
人間は襲う対象でしかありませんから、そう彼女は付け足すと私の反応を窺うように丸い瞳をこちらに向けた。漆黒の瞳、誰もが直視したくないはずの真実を貫き提示するため忌まわれる烏天狗の瞳だ。まるで自分の嫌なところを映す鏡のようなその瞳に、私は思わず目を逸らしながら彼女への認識を再確認した。
どんなに礼儀正しく接していようと、彼女はどこまでも妖怪であり、妖怪の行きつく先はどうしようもなく“人を襲うモノ”なのだ。その認識が、不気味な泡のような疑問を浮かばせる。

私を取材したのは何故?    私はどちらなの人か在らざるモノか?

だが、その言葉はついに射命丸文へ投げかけられることはなかった。代わりに当たり障りのない返事が私の口から漏れ、文はつまらなさそうに文花帳を閉じる。自由に操る風を巻き起こし、自身も旋風のようにして飛び去ってしまった。
無責任な、新聞記者だ。
私の内に不気味な泡沫を生んだだけで、それを弾く事無く去っていくなんて。だが文句を言うに遅く、それ以降、常に私のそばに寄り添うことになる。忘れ去るときもあれば、常に思考の端にちらついて不眠症を起こす時もあった。
…ああ、それだけ。それだけの話なんだ。
長年教師という立場でいさせてもらったが、近頃になって漸く自分は口下手だということに気がついた。いつも丁寧な口調なのはそれがばれることを恐れたためなんだろうと自己分析もできる。私はこの消えることがない泡沫に寄り添われ生きてきた。それを知ってほしかっただけだ。今から始まる物語の読み手に……書き手でも登場人物でもなく読み手にだけなら、知ってほしかったんだ。
私はこの泡に消えてほしいと常に願っていたが、これが消えるため心の外側へ浮かび上がったとき、中に含まれていた答えが弾けたとき何が起こるか全く予想ができない恐怖もあった。泡は泡のまま、仲に答えを詰めたまま、ただ浮かび続けていたほうが全てにとって幸せではないだろうかと考えることもしばしばあった。
そのままでよかった。そのままを望んでいた。
歴史を司る自分だからこそ、「そのまま」が存在しないということは充分に知っていた。それでも、望まずにはいられなかった。


そんな、物語のおわりのはじまり。
ただ、それだけ





壱. 宴のおわり。



明日を呪う人間不信者は 明日を夢見る人間信者に
 もう昨日を探していた僕はいない いない
RADWIMPS-[有心論]より



「宴は永遠に…か。ここは何時でも壮絶な宴会しかないよな」
藤原妹紅は目の前に広がる光景を見つめ、思わず呟いた。
季節は秋、生命溢れる夏と、生命途絶える冬の境界。
見上げれば太陽と異なり、冷たい光を帯びた静かな月、
見下ろせば役目を終えて散り積もった褐色の木の葉、
再び目線を上げれば、妹紅の青みがかった銀色の髪を乾いた風が何処か虚しさを伝えるように撫でていった。
今の季節には寂しさが含まれている。暫く立ち止り、風を全身で受けた妹紅は小さく息をついた。
寂しいのは、一年の終わりが訪れる前だからか、人々の最も活発な時期を終えて収穫という大詰めに入る、ある意味一年の区切りともいえる季節だからか。
情緒に疎い妹紅にはどちらなのか判別つかないが、少なくとも何かの終わりが秋の風に含まれていることは判る。
普段ならば、身体で感じるその寂しさに流されるまま一人酒を飲んでいた妹紅だが、今回だけは飲む場所も人数も異なった。
幻想郷、その最果てに建つ博麗神社は秋の寂しさを吹き飛ばすような温かく、騒がしい光に満ちている。境界線となる鳥居の前で妹紅は立ち止っていて、この表現だと少し生易しいかもしれないと思いなおした。
実際の現状を描写すると、
仄かな灯であるはずの石行燈は青白く騒がしい鬼火を纏い、
妖気に中てられた木々が踊るように燐光を放ち、
無数の星々が空を覆っているというのに、複数の人妖が持ち前の弾幕で空にさらなる彩りを加えていた。
星の光が霞むほどの輝きを放つ光弾、異なる色がぶつかる度に派手に弾け、周囲に細かな星屑の雨を降らす。
空を駆け抜ける存在によって、流星とも花火ともつかない幻想の風景が作られる。重力に逆らわない輩は輩で、互いに酒を酌み交わし思い思いに騒ぎ立てたり物を壊していた。
 こいつらは何かしていなくては飲めないのかと疑問に思うが今更そのようなことを考えても何かが変わるわけではない。
 認識がどうあれ、これが博麗神社の宴会なのは変わりない。
自前の一升瓶と肴を持ち直し、妹紅はどこか飲めそうな河岸、もしくは静かな場所はないかと歩きだした。出逢うのは妖怪、幽霊、亡霊、鬼、天狗、妖精、付喪神、魑魅魍魎。死神と不老不死であるはずの天人が飲み合っているのだから無礼講このうえない。
だが、どうにも妹紅が飲めそうな場所はなかった。何処に行きつくこともなく、ふらふらと妹紅は石畳に舗装された通路を彷徨った。
別に知り合いが少ないわけではない、断じてない。ただ知り合いがいても、広く浅い関係の自分から踏み込むことができない。譬えるならば妹紅は物語の読み手だ。書き手、ましてや物語の登場人物ではない。共感することも、夢の中で話すことはできたとしても、その世界には共存できない。
 それもまた、この身が背負う責任の一つなのだろう。

「うおぉっ、頭上注目だぜ!?」

自己嫌悪にも似た思考へ沈んだ途端、注意喚起の叫び声と共に真昼が落ちてきたようなまばゆい輝きが降り注いだ。
脳が言葉の意味を理解するよりも先に身体が危険を感じ取って動いていた。必要最低限の危険地帯から離れるために、数歩のバックステップを踏む。
ちらりと視界の端に捉えたのは逃げ遅れた妖精や下級の妖怪たち。風圧に吹き飛ばされ、光が直撃し、派手な被弾音を奏でていた。
そんな僅かな時間に起きた行動の差など気にもかけず、先程の声の主は光を撒き散らし、土埃にまみれて着地する。夜空を見上げれば、かなり高い位置に彼女の遊び相手が宙を飛びながら安否を気遣っているのが見えた。地面に落ちた彼女は人間のはずだが…この人間に関しては宙を飛ぶ少女の心配も無用というものだろう。
生きていても、おそらく死んだときでさえ彼女は生き生きとしていそうだ。加えて彼女は並大抵のことでは死なない悪運を持っている……もしくはそんな運命の星の加護を受けている。
「ふむ、ちゃんと避難した奴を褒めるべきか、私を信頼してか一歩も動かなかった奴を褒めるべきか悩みどころだぜ」
着地を間違えれば死が待っていたというのに、白黒の魔法使いである霧雨魔理沙は声色一つ変えないまま、土埃を払って立ちあがる。一応は空へ視線を移して自分の無事を相手に伝えると、まるで何事もなかったかのように、妹紅に近づいてきた。
「別にお前を信頼していたんじゃなくて、こいつらはただ逃げ遅れただけだろう……」
煙に燻りながら気絶する妖精たちを横眼で見やり、妹紅は魔法使いにつっこんだ。自分の意見が否定された魔理沙は、不服そうに頬を膨らませたが、すぐにそれを萎ませて満面の笑みを浮かべた。彼女ほど、百面相が似合う人間もいるまい。
「ま、私の褒め言葉なんてもったいなくてあまり人に聞かせるものじゃないからな、今夜はお預けということにしておくぜ」
「相変わらず、何処から湧いてくるのか不思議な自信だな」
「んあ?そういえば妹紅と神社は珍しい組み合わせだな」
彼女は人の話を聞かずに自分のペースで喋ることも特徴的だ。会ったばかりは神経を逆なでされたように感じていたが、今はこれが彼女のニュートラルなのだと割り切ったので、ある程度楽になっている。今回も話題を戻すのが面倒臭かったので、そのまま彼女の話に乗ることにした。
「私も此処に来るつもりはなかったんだが、看病していた慧音に追い出されたんだ」
「なんぞ、そりゃ?」
一言で彼女が理解するとは妹紅も考えていなかったので、そこから少しだけ補足を付け足す。我ながら親切な行為だと思うが、ただ単に自分の身の上の虚しさを誰かに話したかっただけなのかもしれない。
「最近の慧音の調子が悪くてな、看病というか身の周りの世話を手伝っていたんだ。そうしたら、今日はお前も休めだとかで家を追い出された」
「ふーん」
「予想はしていたがおざなりな返事だ」
「他人事だからなぁ。いつもならかまってくれている友人がいなくて一人さびしく飲みに来た、程度のことしか理解できんな」
「大体のことを理解しているというんだ、それは」
遠回しな嫌がらせだろうかと疑うが、彼女は何を考えているかは分からないものの、そこまで複雑な行動はしない。言葉は基本的に彼女自身を顕わしている。
「うん?そういえば慧音の能力って歴史を操作したりするものだろう。自分の風邪なんて、ちょちょいと治せないのか?」
ふと思いついたように呟かれた魔理沙の疑問は、ただ慧音の能力を知っているものならば抱いて当然のものだった。
だが、慧音の友人を自負し、彼女から能力の欠点も聞いている妹紅にとっては訂正を加えるべき疑問だ。
「あの生真面目な慧音が自分のために能力をほいほいと使うわけがないだろ。それに、あいつの普段の能力では一時的な隠蔽はできても、完全になかったことにはできないんだ」
上白沢慧音の人間である状態の能力は歴史を食べる――隠す程度の能力だ。あくまで一時的に他者から食べた歴史を見えなくするだけであって、実際にその歴史を消しているわけではない。
「そういうものなのか、面倒くさい能力だな。便利なもんだと思っていたが、そういうわけでもなさそうだ」
「満月のとき、白沢になることで隠した歴史を完全に消すことができるらしいけどな。それは消すという表現よりも創り変えた、という表現のほうが正しいだろう」
感知しようとすれば、森羅万象に宿る歴史を知ることになる白沢の能力は、とてもではないが自分には身に余る能力だ。それは魔理沙も同じことを考えていたらしく、あいつでなけりゃ勤まらない能力だな、と呟くのが聞こえた。
「ま、お前の事情はわかったぜ。結局のところ、一人さびしく飲める場所を見つからずにうろうろしていたわけだ」
「期待はしていなかったが、やはりオブラートなしの発言だな」
「正直者だからな。そして正直者な魔理沙さんは寂しがっている妹紅さんに救いの手を差し伸べてやるわけだ」
今から救いの手を差し伸べるようには思えない、彼女の面白がった視線が妹紅を捉える。どうしようもないほどに嫌な予感がしたところで、問答無用に腕を掴まれた。
  「ほら、こっちだついてこい!」
 力強い、まるで流星のような力で魔理沙は妹紅の事をぐいぐいと引っ張った。突然のことで抵抗する暇もなく、妹紅はされるがままに足を運ぶ。ついさっきまでいた場所は、雑踏に紛れたため、すぐに何処にあるか判らなくなってしまった。
 「お、おい、ちょっと待てっ!何処へ連れていくつもりだっ」
魔理沙の勢いについ流されていたが、慌てて妹紅は自分の意志を取り戻して抗議する。さきほどから目的地も教えられずに人や妖怪をひたすら避け続けていたので、さすがに目的が気になりだした。だが、魔理沙はそんな妹紅の言葉に対して、「よく聞こえんが、あと少しだ。来ればわかる」と笑ったまま腕を放さない。他の相手ならまだしも、この猪突猛進な魔法使いにそのようなことを言われると不安を覚えざるを得ない。
この魔理沙の力は【人間】の力だ。
この神社に住む巫女、霊夢も一応は人間だが、アレは人間というよりも【法律】と表記した方がしっくりとくる。
どちらも恐ろしい力だ。法律は混濁した色を強制的に一色へ変えてしまう唯一無比の強制力を持つ。壱を零へ、またその逆も可能にする、生存の必要条件となるルールが霊夢だ。
対して人間の力は、進む力、想いを燃焼させて進み続けることができる力だ。時間を失い、この幻想郷に流れ着くまで時代の傍観者であった妹紅は知っている。
想いが途切れない限り、たとえ想う人が死んでしまったとしても受け継ぐ者がいる限り、その力が途絶えることはない無限に等しい力なのだ。しかも、その力の強さは想う人によって無限大にも成り得るため、強制的な法律よりも強くなることがある。
そして魔理沙は、その力が具現化した存在ではないかと考えてしまうほど、強い想いを持っている。
対照的な力の権化である二人が腐れ縁というのは、また世界は奇縁によって成り立っているものだと再認識させられる。
もし妹紅が持つとしたなら、果たしてどちらの力だろう?
変化を拒まれた妹紅に、そんな力を得ることは決してないが。
だが、そんな考えに耽っているわけにもいかず、再度魔理沙に止まるよう呼びかけようとした丁度良いタイミングで、目の前の彼女は立ち止ってその向こう側を指差した。
「ほら、半獣の代わりで来たのなら、あいつの相手はお前がするべきだろう」
 魔理沙の指差した先、神社の中でも静かな時間が流れている一角へ視線を向けると、一人の少女が静かな笑みを湛えてこちらを見つめていた。
 綺麗に整えられたおかっぱに、可愛らしい椿の髪飾りをつけている少女…彼女が記憶をすべて受け継いでいるのなら、妹紅よりも永い月日を過ごしているはずの稗田阿求がそこにいた。
 「おひさしぶりです、藤原さま」
 「ああ、そういえば阿求と会うのは随分と久しいな……身体の具合は大丈夫かい?」
 「ええおかげさまで、今日の宴会に参加できる程度には」
 あまり無茶はできませんが、と付け足しながら阿求は首を僅かに傾けて微笑んだ。その顔から、僅かに蓄積された疲労の色を窺うことができて、妹紅は思わず言葉に詰まってしまう。
 既に阿求が生を受けてから、阿礼乙女としては十分すぎる時間が過ぎていた。このところは稗田の屋敷から一歩も出ずに日々を過ごしているのだと、慧音から伝えられた覚えもある。
輪廻転生を繰り返し幻想郷に留まる“阿礼”の魂は、ある意味では不老不死だ、が。
阿礼乙女である“阿求”には、確実に寿命が存在している。
 ちらりと魔理沙を見やると、何時の間に奪ったのか妹紅が持っていた肴を手にして阿求の方へ行くようにと身振りで示した。
 仕方ない、これ以上の静かな河岸も見つけられそうになかった妹紅は、魔理沙に奪われなかった一升瓶を阿求の傍に置いて席を共にすることにした。当たり前というような顔で魔理沙も同席しているが、もはやつっこむ気力もない。
 「――そうですか、あの慧音さまが」
 とりあえずの事情を軽く説明すると、阿求は此処から離れた里で休む慧音を心配してか、俯いて眉を下げてしまった。
 「ま、あいつのことだから次の寺子屋までには回復しているさ」
「そうそう、あの半獣が反面教師なのは授業のつまらなさぐらいなものだぜ」
そんな表情が苦手な二人、つまりは妹紅と魔理沙は慌てて慧音のフォローを付け足した。阿求は二人の言葉に小さな花が咲いたような微笑みを浮かべる。その様子に、妹紅と魔理沙は同時に心中で安堵のため息をついた。
 「まぁ、私の近況で報告すべきことはこのぐらいだ。稗田の、そちらはどうだ?最近忙しいと聞いたんだが」
 これ以上、今はここに居ない慧音のことを心配する話でいても仕方がないし、彼女も望まない。持ってきていた酒を振舞いながら話を阿求へ変えた妹紅の意志を感じ、阿求もすんなりと新しい話題に移行する。
 「そうですね、ここのところ紅魔館の魔法使いが持つ蔵書を閲覧させていただいています」
 先程と変わらない笑みで告げられた言葉に、魔理沙が驚きの表情を浮かべた。心の中を勝手に翻訳するとしたら、『聞いてなかったぜ、私も混ぜてくれよ羨ましい!!』みたいなものだろうか。嫉妬の橋姫も吃驚な幼児のモノほしそうな顔付きになった魔理沙を見た阿求が苦笑いしながら事情を説明していく。
「魔導書などは私には読めないので、主に歴史に関する書籍と、個人的に興味があるので外の世界の本が中心ですね。幻想郷縁起は既に書き終えてしまいましたが、少しでも後世に確かな情報を残しておきたいので、前々から頼んでいたのです」
「あいつの図書は無限に近いぜ?よかったら私が手伝ってやろうか」
 どう考えても自分も蔵書に目的がある魔理沙の提言に、阿求は笑いながらやんわりと断りをいれた。
「許可いただけたのは、彼女の図書館の整理も意味合いに含めているのですよ。そのため彼女の使い魔である小悪魔さんに手伝ってもらっているので人では十分に足りています」
 今日はその骨休めですね、と阿求は付け足していたが、本音はすぐにでも作業に戻りたいのだろう。横でしきりに羨ましがっている魔理沙や自身も歴史を司る慧音を見ていれば、知的好奇心が旺盛な存在は衣食住よりも知識の探求を好む傾向があることは否応にも判ってくる。
 「無理はするなよ、それで体を壊したのなら元も子もない」
 お願いだから慧音みたくなるな、と心で付け足した。自分を顧みないものは、永遠たる妹紅自身で充分だ。
 阿求は有限のなかでも、さらに短い時間しか生きることができないのだ。人生の速度など個人で異なるのだから、こちらが決めつけるものではないということは判っている。阿求の人生はもしかしたら妹紅よりも永いものかもしれない。だが、妹紅の視点でしか見ることができない自分の1300年の人生からは、漸く得た平穏で暢気なこの生活を失いたくなかった。
しかしまた、これが永遠ではないことも自覚している。これまでにもあった幸せが、全て終わってゆくのを妹紅は見届けている。
でも、ぎりぎりの一線、皆が幸せのまま天寿を全うすることができるまで、此処の住民には生きていてほしかった。そう思えるほどに、妹紅はこの幻想郷に愛着を持ち始めていたのだ。
最近はとみに平穏だ。表立った異変、里や自分の家に近い竹林に目立った異変は起きていない。
「それはそうと、最近は異変が少なくなってつまらないぜ」
妹紅の独り言に近い思考と、ほとんど変わりがない言葉を魔理沙がつぶやいた。世間に疎い妹紅さえも感じているのだ、異変には我先に関わろうとする彼女は気づいていて当然のことだろう。
「平和すぎて怖い…というより、異変がないということは平和である証拠と、この幻想郷に限っては言い難いですからね」
阿求も最近の状況に気づいていたらしく、再び顔を曇らせて、魔理沙へ言葉を返していた。
妖怪と人間が共存関係にあるなか、妖怪による異変が発生しない。それは均等であった天秤が、傾くこと同義だ。
「巫女は何か言っていないのか?」
「あいつは……あいつは、どこまでも受動的なんだ。決して自分から動こうとはしない。だから期待しても無駄だぜ、動いたとしても“実は異変が起きていて、でもそれももう終ってしまう”ことが判るだけだ」
妹紅の言葉に答えた魔理沙の言葉の端には悔しそうな感情が見え隠れしていた。異変は、あくまで巫女が解決するもので魔理沙が異変に関わることができるのはさわりでしかないのだろう。
「あいつに頼るのはとても癪だ、私一人で“異変がない異変”を調査してみるつもりさ」
悔しさに塗れていても、持ち前の人間としての、前を見据える強さを秘めた瞳で魔理沙は決意したように夜空を見上げた。
その強い意志にまぶしさを感じて、妹紅はこの話題すべてを魔理沙に任せることにした。もとより自分の大切な存在である者に影響を及ぼさない限り、異変に関わろうという意思はない。それに今は体調不良が続く慧音のほうが心配だった。
まだ、郷よりも里に関わることしか妹紅にできることはない。
魔理沙は決意表明を終えた途端に酒を飲むことへ再び集中し始めた。ころころと変わる彼女の感情に思わず苦笑しながら、妹紅もそれに追随する。飲み比べと変化した席を阿求が静かに笑いながら眺めている。
宴は永遠に、
まだその始まりにすぎない今、
夜は永い。


夜空高くに下張月が輝いている。


***


泣く子も眠る、丑三つ刻。そして夜空も隠す背丈の竹に囲まれた、迷いの竹林。
藤原妹紅にとって、夜は此処からが始まりだった。
結局、昨晩行われた宴は最後まで魔理沙たちと飲み明かし、夜明けとなって終わるころまで付き合う羽目となった。昼夜逆転の生活である妖怪たちにとっては支障のないことだが、基本生活が昼にある人間たちは二日酔いや寝不足に悩まされる結果だ。
自分の時間の感覚はもとより他者よりも鈍いため、朝だろうが昼だろうが、ましてや夜だろうがあまり関係ない。だが、最近は慧音の看病もしていることもあって、彼女へ余計な心配をかけないためにも規則正しい生活を送っていた。
つまりは、他の人間と同じく二日酔いと寝不足に苛む状態だ。
不老不死。死なず老いずなだけであって、体の構造は人間と同じなのだ、眠くもなるし酔えば頭も痛くなる。ただ、傷などを折っても、回復は言葉通りに身体が最善の状態へ“復元”する事象なので、人間が傷を負った身体を“治療”するよりも普段の状態へ戻る速度が少しばかり速い程度だ。

そう、少しばかり……鈍痛も1日経って漸く治まる程度、

少しばかり――次の夜に、殺し合いができる程度の速さだ。

「酔いを醒ますには丁度いい相手だな」
音もなく竹林の影に紛れていた存在が、昇り始めた月によって表情を照らされる。
長く透き通る髪、同じようにほっそりとのびた手足。
外の世界の人間たちならば、この世のものとは思えないとでも評価しただろうか。事実、この世界から外れた土地から来た存在なので間違いではないのだが。
「鈴仙・優曇華院・イナバ……姫様のお戯れの露払いをさせていただきます」
「自分が露の間違いだろ」
狂気に満ちて赤く染まった瞳をこちらに向けるだけで、月の兎は反応を示さない。まだ十年単位での付き合いでしかないが、彼女にとって呆れ果てるのに十分な年月だったらしい。
 ただひたすら事務的に、単調作業を行う様に、鈴仙は親指と人差し指だけを立てた“拳銃”の形を作る。
 狂気に満ちた瞳から、月の住人が地上に対して持つ感情の根底である侮蔑の感情を読み取れた。
 気持ちが悪い、月の瞳だ。自ら地上に堕ちていながらも、自分が地上よりも上にいることを疑わない瞳。遥か昔の記憶にある、平安と呼ばれたころに生きていた貴族たちが持つのと同じ瞳だ。

空気が撓む。

一瞬、気を逸らしただけで目の前の兎は跳ねるようにこちらへ距離をつめてきた。紅い瞳は妖しく揺れて彼女との間合いを錯覚で紛らわそうと試みている。おそらく現実では至近距離で、だが妹紅の視界ではまだ射程範囲外の距離で、鈴仙は構えていた拳銃の引き金を私に向かって躊躇いもなく引いた。
紅い狂気の塊が弾丸として放たれる、空気を歪ませ引き裂きながら妹紅の喉元へ喰いつこうと放たれる。
だが、それは自分を倒すためにはあまりにも弱すぎる。妹紅は炎を自身の腕に灯すと、いとも簡単に狂気を打ち砕いた。
砕けた弾丸の欠片が四方へ飛び散り、新たな狂気の波紋を創りだす。欠片に反射して八方をふさぐように狂気の波が妹紅を囲んだ。破壊されることを前提とした第一撃からの新たな弾幕、紅の乱反射の檻は妹紅を覆い、行動を制限する。
紅以外の色を見つけられない視界でありながら、妹紅は自分と鈴仙の立ち位置を把握する。狂気の向こう側では妖力が集められ、妹紅が檻から出たと同時に攻撃をする気なのだと、いともわかりやすく伝えていた。
鈴仙の行動はわかりきっていたが、それでも檻から脱出する。檻に囲われたままでも、何も進展はない。それに、自分を閉じ込めるものを見ると、どうしても遥か昔の記憶を思い出してしまう。あの記憶を思い出してなお拘束を甘んじるほど、妹紅の心は広くない。
閉じ込める籠を、加護を、今までは全て焼き払ってきた。そしておそらく、意図しようがなかろうが、これからもそうだろう。
今の状況は単純だからまだ良い。単に狂気を反射させる欠片を反射できないまでに粉々に砕けばいいことだ。そして、破壊を目的とした行動、ようは力任せな行動に関しては、残念ながら自信がある。
 静かに、必要最低限で紅の狂気を完全に砕くと自身も紅に染め上げた。 
月に魅入られた狂気の紅と、月に縛られた狂気の紅焔が絡み、双方の弾を打ち消し合いながら頭上の月へ向かって昇ってゆく。
作り手たちが言葉を交わさないためか、それを補うように弾幕がぶつかる度に音と共に弾け飛んだ。
弾同士がぶつかって、綺麗な余韻を残し、兎の弾が竹に中れば不自然に折れ曲がった竹がたゆわんたゆわん、とこれまた不自然な音を創りだし、妹紅の炎は周りの空気から酸素を奪いながらその喜びを表すかのように轟々と叫んでいる。
 わかりきったことだが、そこに協和音など一つたりともない。
 それが、全てを狂わす月の兎にせいなのか、自然から最もかけ離れた存在の一つと言って過言ではない妹紅のせいか、それはわからない。わかりたくもなかった。
理解することをある程度放棄するようになったのはいつからだろう。妹紅は夜だというのに赤で染められた景色を駆けながら考えた。例えば不老不死の原理など、とうに理解することは諦めている。受け入れるべきものは自分が不老不死である現実だけで、そういう風に次々に受け入れるべきものだけを選んでその他を諦めていたら、“理解”がとても珍しい行為へと変化していった。
そうか、受け入れることと理解は異なることだったけ。
今更、しかもそれに似つかうとは言い難い状況で妹紅は簡単でありながら自分が放棄していた“理解”に気がついた。
知ることは一歩何処かへ進むことと同義だ。何処へ進むかまでは分からないけれど、また妹紅は一歩進んだ錯覚に囚われた。時間を止められた存在でありながら一歩進む感覚を得る自分を不思議に思う、そんな僅かな隙を逃すほど、弾幕遊びを続けていた鈴仙に余裕はなかったようだ。
「幻爆『近眼花火<マインドスターマイン>』」
スペルカード宣言、自分が自分であるための存在表明。
月の兎が飛び跳ねる。紅い弾と共に、飛び跳ねる。
幻視であるはずの弾が四方八方に向かって、物理的な破壊をあたりに撒き散らしながら弾けていった。それはまるで名の通り花火のような美しさで、思わず眩惑させられる。そんなものに見蕩れていたら自分が弾ける対象になってしまうというのに。終わりは美しいものに似ているから、見間違えてしまうのかもしれない。決して美しいものではないのに、其処にあるのはただの終点だけだというのに、どれだけの月日が経とうとも、その錯覚だけは取り除かれることはない。
「今日は気分があまり良くないんだ…これ以上、酔わせるな」
狂っているのか美しいのかも判らなくごちゃ混ぜになった視界に宴の狂乱ぶりを思い出して、妹紅は愚痴をこぼす。右足を軸に、伸ばした両手の掌を交差させながら、炎を伴って夜に舞った。狂気の弾を絡み溶かし炭さえも残さずに消してゆく。
スペルカードが、と兎の嘆き声も聞こえたけれど、竹林へ次々と飛び火して産声をあげる自分の炎の轟音にかき消される。
 「燃えて、燃えて、灰さえも燃やし尽くせ。燻せ、燻せ、その煙が月まで届くまで」
誰に向けたか判らない、まるで呪文のような。事実、この言葉は妹紅の内で呪として絡まる感情であり想いだった。それを、八つ当たりにも等しい無造作で、目の前の相手へ伝染させた。
スペルカード宣言による反動で隙だらけとなり、因幡の兎のように皮を剥かれ焦がされるしかなくなった一匹の玉兎が、その瞬間を見たくないためにもきつく目を閉じるのが見えた。いつもなら手加減をして焦げ目がつく程度に抑えていた炎が、しかし今日に限って調整を誤って殺しても死なない相手に向けるべき威力で彼女を喰らおうとしている。
 さすがにまずいかも、と僅かながらに後悔が妹紅の内に湧いた途端、紅蓮をさらに他色へ変貌させるものが喰らいついた。

 天呪「アポロ13」
 
 赤と青が織りなす一筋の矢が、空中で兎を捉えていた炎を打ち落とす。地上から天上へ向かう全てを撃つ呪われた数字、そしてその技。こんなにも、単純でありながら複雑で、妹紅には理解できない方程式によって生み出された……それでもお遊びのスペルカード。
 「し、ししょおっ」
 鈴仙の師匠であり、月の頭脳であり、妹紅にとってはある意味この体質になった元凶ともいえる存在――八意永琳。彼女は自身の弓を携え、鈴仙を庇うようにして妹紅との合間に立っていた。
 涙声となっていた鈴仙も慌てたように彼女の背の後ろへと回り込む。どうも彼女は兎なだけに逃げ足が速いように思える。
 だが、そんなことよりも、今は永琳のほうが問題だ。
 「兎の次はお医者さんか。愛しの姫様はまだ籠の中か?」
 皮肉の一言も、彼女の冷徹な視線で一蹴される。彼女は言葉よりも、その表情や瞳で意思を表している。月光のように透いた白い顔、物憂げに伏せられた眉毛、そこに隠れる退屈に染まった瞳、その奥に宿る探求者の心。何かを期待しているようで、何かを嘲っているようで、何かを諦めているような、たくさんの感情が詰まっているような、いないような溜息が桜色の唇から洩れるのが聞こえた。
 出会って三百年、妹紅には未だ永琳の心の端さえ理解することができていない。
 「今晩は。今宵もお楽しみのところ悪いけれど、もう兎は帰りの支度をしなくてはいけないわ」
 鈴を転がしたような玲瓏の声色。たしかにそれは綺麗だけれど、妹紅には金属の冷たさしか感じられない。
「なんだつれないな、お前が代わりに遊んでくれるのか?」
「いいえ、兎はまだまだ勉強不足ですから、私が教えなければ」
炎に照らされた強がりを見透かすように、永琳が僅かに口元を歪める。これがあの輝夜だったならば、死そうが死すまいが構わずに戦っただろうが、永琳となれば無残に負ける可能性が限りなく高い。妹紅も自分でそれを自覚しているため、彼女を引き留める理由がなかった。そのうえ、あくまで復讐の炎は輝夜に向けられもので、原因に関係しているとはいえ相手たる実感は輝夜ほどではない。
「燃え尽きることができず、燻されたままのようだ。いらつく、この感情の矛先は何処へ向ければいいんだ」
思わず口走った愚痴に、永琳は少しだけとぼけたような表情で人差し指を唇に沿え、考えたような仕草をする。
「そうですね、自ら想いの限り燃やした炎に焼かれることが一番手っ取り早いですよね」
「自殺はもう勘弁だ」というか酷過ぎる案だ。
「あら、でしたら貴方の想い人の様子を見て、心の関心を彼女へ向けるべきね」
一瞬、医者として患者を心配する顔つきに永琳が変化する。妹紅はすぐに彼女が慧音のことを言っていることに気がつき、ついで永琳の台詞に違和感を持ち、最後に意味を理解して顔に朱をさした。
「だ、だだだあれが想い人だ!たしかに慧音は大切だけど、そんなんじゃないぞっ!!?」
「ふふふ、真っ赤で初々しいわ。若いっていいわねぇ……」
「し、師匠、その台詞はいろんな意味で禁句です」
永琳の後ろに隠れて余裕が出たのか、鈴仙が小さくぽそりとつっこみをいれていた。どうせ永琳は地獄耳だからばれるだろうに、実際よく見ると永琳の顔にうっすら青筋が浮かんでいるような気がする、鈴仙も命知らずな部分がある。
「まぁ、彼女のことはよく見ておいた方がいいのは確かよ」
不意に、永琳が深淵を思わせる瞳で、こちらを真っ直ぐに射抜いた。これは、医者としての、年長者としての瞳だ。いつものからかいが含まれない言葉に、妹紅も口を引き締めて永琳を睨む。
「……どういう風の吹きまわしだ」
「どうもこうも、これでも医者の端くれなのよ。患者がいれば気にかけるものよ」
「お前が端くれというのには、すごく違和感がある」
端くれというより、最先端なのではないか?いや、先端という意味合いでは端くれも間違いではないのか、端っこだし。
「夢が夢であるには、幻想が幻想であるには楔が必要。その楔が解かれれば、夢は漂い霧散する流れに身を任さなければならない。だから、楔は深く打ち込まなければ、腐る前に取り換えなければいけない」
妹紅の返しを無視して、永琳は言葉を連ねていく。比喩、譬えが多すぎて、妹紅には理解することができなかった。
もしくは、理解したくなかった。
「まぁ、薄々わかっていたけれど、白沢については知らなさそうね。貴重なサンプルだから協力してほしかったんだけれど」
「お前が何を言っているか判らないけど、慧音にちょっかい出そうとしているんなら容赦しないぞ」
嫌な感じのする単語が飛び出す永琳の話に、妹紅は眉をひそめて警戒する。彼女の行動はよくわからないだけに、どう動くかも判らなかったし理解できない気持ち悪さが妹紅に纏わりつく。
「とにかく、今夜はもうお開きにしましょう?二日酔いには迎え酒でも飲むといいわ」
「医者が誤った情報流してどうするんだよ」
妹紅の呆れた声に、永琳は静かに微笑むと鈴仙と共に竹林の上空へと上がってゆく。既に空に浮かんでいた妹紅と交差して、三日月を背後に携えた。
既に興醒めした妹紅に、彼女たちへの敵意はない。自らは地上へと降りたって、落ち葉に埋もれた土を踏みしめ振り返る。もう一度、永琳と視線を交わすと、今度は振り返ることはなく迷うことなく竹林の出口へと向かっていった。
「腐りかけの、取れかけた楔を、貴方ならどうするのかしら」






――そんな、永琳の言葉も聞こえぬままに




妹紅と慧音、そして幻想郷のおしまいの話。


wordで書いた文章をそのまま転載しているので、少々読みづらいかもしれません。ごめんなさい
一応長編で、かなり終わるまでに時間がかかりそうです。長いブランクがでる可能性大orz

この作品では慧音の能力を独自解釈している部分があります。この後の展開にも関わる、白沢としての能力についてです。
あと永琳については、以前投稿した「ヤゴコロノココロ」で一人称を語る永琳と同じ性格です。ようは研究一筋で自分以外の全てが研究対象。それ以上でも以下でもないという考えの持ち主です、いまのところ。

正直、歌詞引用部分にはビクついています。やはり違法と当たるならすぐに修正しますが、二つの曲をやはり載せたくて、つい
schlafen
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コメント



0.210簡易評価
5.無評価名前が無い程度の能力削除
まだ序章なので点数は入れられませんが、楽しみにしています。
あと途中、文章が長いのに改行が少なくてやや読み辛く感じました。
次回からもう少し改行があると(特に台詞付近)もっと良くなると思います。
9.100名前が無い程度の能力削除
あなたの話は好きだ

けーね先生ご病気とかなんだか破滅的な予感がひしひしと
10.無評価schlafen削除
コメント、ご指摘ありがとうございます。読み辛くてすみません…次の投稿では改行を増やします。現在進行形で次作を書いているのでもう少々かかるかもしれませんが…

自分の作品が肯定されることはものすごく嬉しいですっ、ありがとうございます…っ